河井かわい信太郎しんたろう

河井かわい 信太郎しんたろう（かわい のぶたろう、1913年ねん10月1日にち - 1982年ねん11月15日にち）は、愛知あいち県けん宝飯ほい郡ぐん蒲郡がまごおり町まち（現げん・蒲郡がまごおり市し）出身しゅっしんの検事けんじ。「東京とうきょう地検ちけん特捜とくそう部ぶ生うみの親おや」とされる。

かわい のぶたろう 河井かわい 信太郎しんたろう
生誕せいたん	(1913-10-01) 1913年ねん10月1日にち 愛知あいち県けん宝飯ほい郡ぐん蒲郡がまごおり町まち （現げん・蒲郡がまごおり市し）
死没しぼつ	(1982-11-15) 1982年ねん11月15日にち（69歳さい没ぼつ）
国籍こくせき	日本にっぽん
出身しゅっしん校こう	中央大学ちゅうおうだいがく法学部ほうがくぶ夜よる間あいだ部ぶ
職業しょくぎょう	検事けんじ
著名ちょめいな実績じっせき	「東京とうきょう地検ちけん特捜とくそう部ぶ生うみの親おや」

経歴けいれき

戦前せんぜん

1913年ねん（大正たいしょう2年ねん）10月がつ1日にちに愛知あいち県けん宝飯ほい郡ぐん蒲郡がまごおり町まち（現げん・蒲郡がまごおり市し）に生うまれ、愛知あいち県立けんりつ蒲郡がまごおり農のう学校がっこう（現げん・愛知あいち県立けんりつ蒲郡がまごおり高等こうとう学校がっこう）在学ざいがく中ちゅうに兄あにのいる東京とうきょうに上京じょうきょうした。東京とうきょう実業じつぎょう高等こうとう学校がっこうから中央大学ちゅうおうだいがく法学部ほうがくぶの夜よる間あいだ部ぶを経へて、高等こうとう文官ぶんかん試験しけんに合格ごうかく。官吏かんりになるまでの間あいだ、海軍かいぐん経理けいり学校がっこう短期たんき現役げんえき学生がくせい（いわゆる短みじか現げん組くみ）に選えらばれたエリートであった。そこで経理けいり・会計かいけいを修得しゅうとくしたことが、のちの特捜とくそう時代じだいに役立やくだった。

東京とうきょう地方ちほう検察庁けんさつちょうの隠退蔵いんたいぞう事件じけん捜査そうさ部ぶが1949年ねんに東京とうきょう地検ちけん特捜とくそう部ぶに改組かいそされた時ときから特捜とくそう部ぶに加くわわっており、経済けいざい事犯じはんに対応たいおうするため中央大学ちゅうおうだいがく経理けいり研究所けんきゅうじょなどで制度せいど確立かくりつのための研究けんきゅうに没頭ぼっとうしていた。「株式会社かぶしきがいしゃの役職やくしょく員いんの刑事けいじ責任せきにん」「会計かいけい上じょうの粉飾ふんしょくと法律ほうりつ上じょうの責任せきにん」で法学ほうがく博士はかせ号ごうを取得しゅとくした

昭電しょうでん疑獄ぎごくでのちの特捜とくそう部ぶの捜査そうさの流ながれである帳簿ちょうぼ捜査そうさを確立かくりつしたとされている。その後ご、造船ぞうせん疑獄ぎごくでは主任しゅにん検事けんじとして大野おおの伴睦ばんぼくの取とり調しらべから4人にんの代議士だいぎしの逮捕たいほに及およんだ際さいには、国会こっかいに喚問かんもんされ野党やとう議員ぎいんから「国くにのためにしゃべって検事けんじをやめろ」、「お前まえには勇気ゆうきはないのか」など激はげしく詰つめ寄よられたが、守秘しゅひ義務ぎむを理由りゆうに金かねをもらっていた議員ぎいんや政府せいふ高官こうかんの名前なまえの公表こうひょうを拒こばみきった。

その後ごも武たけ州しゅう鉄道てつどう汚職おしょく事件じけん、東京とうきょう都議会とぎかい黒くろい霧きり事件じけん、吹原ふきはら・森脇もりわき事件じけん、田中たなか彰治しょうじ事件じけん、共和きょうわ精糖せいとう事件じけん、日通にっつう事件じけんなど多おおくの複雑ふくざつ多岐たきにわたる知能犯ちのうはん会社かいしゃ事件じけんの捜査そうさ・取調とりしらべにあたり　「鬼おに検事けんじ」の名なをほしいままにした。多おおくの特捜とくそう検事けんじを育そだてたことでも知しられ、「東京とうきょう地検ちけん特捜とくそう部ぶ生うみの親おや」といわれている。

但ただし、河合かわいの後輩こうはい検事けんじで、後ごの検事けんじ総長そうちょう伊藤いとう栄樹えいきは「河井かわい検事けんじは、たしかに不世出ふせいしゅつの捜査そうさ検事けんじだったと思おもう。氏しの事件じけんを"カチ割わって"前進ぜんしんする迫力はくりょくは、だれも及およばなかったし、また、彼かれの調しらべを受うけて自白じはくしない被疑ひぎ者しゃはいなかった。しかし、これが唯一ゆいいつの欠点けってんといってよいと思おもうが、氏しは、法律ほうりつ家かとはいえなかった。 法律ほうりつを解釈かいしゃくするにあたって、無意識むいしきで捜査そうさ官かんに有利ゆうりに曲まげてしまう傾向けいこうが見みられた。」と指摘してきする。

戦後せんご

戦後せんご、主しゅとして黎明れいめい期きの東京とうきょう地検ちけん特捜とくそう部ぶに経済けいざい検事けんじ出身しゅっしんの馬場ばば義よし続つづけ（東京とうきょう地検ちけん検事正けんじせい）らと共ともに、田中たなか萬まん一いち（東京とうきょう地検ちけん次席じせき検事けんじ）、山本やまもと清きよし二郎じろう（東京とうきょう地検ちけん特捜とくそう部長ぶちょう）、そして河井かわい信太郎しんたろう（東京とうきょう地検ちけん主任しゅにん検事けんじ）ら私立しりつ大学だいがくである中央大学ちゅうおうだいがく出身しゅっしん者しゃが引ひき上あげられたことから、のちに検察けんさつ内部ないぶでは東大とうだい閥ばつと中大ちゅうだい閥ばつとの主導しゅどう権けん争あらそいが「中東ちゅうとう戦争せんそう」などと称しょうされたように拮抗きっこうした存在そんざいとして知しられてゆくこととなる。1982年ねん11月15日にち、夫人ふじん同伴どうはんで旅行りょこう先さきの京都きょうとで心不全しんふぜんにて死去しきょ。

年表ねんぴょう

• 1938年ねん11月 - 高等こうとう文官ぶんかん試験しけん司法しほう科か試験しけんに合格ごうかく。
• 1939年ねん3月がつ - 中央大学ちゅうおうだいがく法学部ほうがくぶを卒業そつぎょう。
• 1939年ねん4月がつ - 司法官しほうかん試補しほに任官にんかん。海軍かいぐん経理けいり学校がっこう、海軍かいぐん主計しゅけい大尉たいい。
• 1944年ねん5月がつ - 検事けんじに任官にんかん。東京とうきょう刑事けいじ地区ちく裁さい検事けんじ、
• 1945年ねん8月がつ - 静岡しずおか地方裁判所ちほうさいばんしょ沼津ぬまづ支部しぶ兼けん沼津ぬまづ区く裁さい検事けんじ、東京とうきょう地方ちほう検察庁けんさつちょう検事けんじ、司法研修所しほうけんしゅうしょ教官きょうかん。
• 1957年ねん7月がつ - 法務省ほうむしょう刑事けいじ局きょく刑事けいじ課長かちょう。
• 1959年ねん6月がつ - 法務省ほうむしょう在外ざいがい研究けんきゅう員いん（アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアなどに出張しゅっちょう）
• 1961年ねん7月がつ - 東京とうきょう地方ちほう検察庁けんさつちょう特捜とくそう部長ぶちょう
• 1965年ねん9月がつ - 東京とうきょう地方ちほう検察庁けんさつちょう次席じせき検事けんじ - 日通にっつう事件じけんをめぐって井本いもと台たい吉きち検事けんじ総長そうちょうと対立たいりつ。
• 1968年ねん9月がつ - 最高さいこう検察庁けんさつちょう検事けんじ
• 1971年ねん1月がつ - 水戸みと地方ちほう検察庁けんさつちょう検事正けんじせい
• 1972年ねん - 横浜よこはま地方ちほう検察庁けんさつちょう検事正けんじせい
• 1973年ねん - 広島ひろしま高等こうとう検察庁けんさつちょう検事けんじ長ちょう
• 1975年ねん - 大阪おおさか高等こうとう検察庁けんさつちょう検事けんじ長ちょう。

著書ちょしょ

• 河井かわい信太郎しんたろう『検察けんさつ読本とくほん』商事しょうじ法務ほうむ研究けんきゅう会かい、1979年ねん
• 河井かわい信太郎しんたろう『特捜とくそう検事けんじノート』中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ（中公ちゅうこう文庫ぶんこ）、1986年ねん

関連かんれん事項じこう

• 検察庁けんさつちょう#特捜とくそう検察けんさつと公安こうあん検察けんさつ参照さんしょう
• 吉永よしなが祐介ゆうすけ
• 帝人ていじん事件じけん
• 鬼畜きちく (松本まつもと清張せいちょう) - 松本まつもと清張せいちょうの短編たんぺん小説しょうせつとそれを原作げんさくとした映画えいが・テレビドラマ。松本まつもとが河井かわいから聞きいた、実際じっさいに起おきた殺人さつじん事件じけんの話はなしをベースにしている。