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紫 - Wikipedia

むらさき

いろ名前なまえあかあおあいだしょく

むらさき(むらさき)は、じゅんしょく一種いっしゅあおあかあいだしょく紫色むらさきいろ(むらさきいろ、ししょく)は同義語どうぎご

むらさき
むらさき
 
16しん表記ひょうき #6A0DAD
RGB (106, 13, 173)
CMYK (39, 92, 0, 32)
HSV (275°, 92%, 68%)
マンセル 10PB 4/26
表示ひょうじされているいろいちれいです
紫色むらさきいろ水晶すいしょうアメシスト

伝統でんとうてきには多年草たねんそうであるむらさきくさもちいたり特定とくてい巻貝まきがい色素しきそせんもちいた(かい紫色むらさきいろ[1]むらさき対応たいおうする表現ひょうげんとして、英語えいごではパープル (purple) やバイオレット (violet) がある。英語えいごではパーピュア (purpure) といい、紋章もんしょうがくもちいる。にじななしょくあか橙色だいだいいろ黄色おうしょくみどりあおあいむらさき)のうち、ひかり波長はちょうもっとみじかい(380〜430nm)。これより波長はちょうみじかいものを紫外線しがいせんという。

名前なまえ由来ゆらい

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むらさき」の原義げんぎいろの「むらさき」、あるいは一説いっせつに、紫色むらさきいろめたきぬだという[2]

この漢字かんじ草本そうほんの「ムラサキ」を意味いみするのは国訓こっくんであり、本来ほんらいは「むらさきくさ」のかたちでしかその意味いみはない。なお漢籍かんせきかれた「むらさきくさ」は別種べっしゅだというせつもあるが、現代げんだい中国ちゅうごくでは「むらさき」と同種どうしゅである[3]

「ムラサキ」はもともとむらさきそうという植物しょくぶつ和名わみょうであり、この植物しょくぶつ紫根しこん)を染料せんりょうにしたことから、これにより染色せんしょくされたいろも「ムラサキ」とぶようになった。この名称めいしょう自体じたいは、ムラサキが群生ぐんせいする植物しょくぶつであるため、『ぐん(むら)』+『き』とばれるようになったとされる[4]

日本にっぽんではむらさきしめいろすう非常ひじょう豊富ほうふである[5]ふかむらさきである「こきいろ」やあかむらさきである「うすしょく」のように、平安へいあん時代じだい貴族きぞくは「いろ」というだけで「むらさき」をしていた[5]

枕草子まくらのそうし』の冒頭ぼうとう、「すこあかりてむらさきだちたるくもほそくたなびきたる」という箇所かしょは『紫色むらさきいろくも』という意味いみと、『むらがってく(ムラサキの)はなのような』という両方りょうほう意味いみがあるともされる。なお、ムラサキのはな白色はくしょくである。

英語えいご表現ひょうげん

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英語えいご表現ひょうげんでは、あおのblueからあかのredまで、おおよそblue、violet、purple、redのじゅんあかみがしていく[5]。ただし、日本語にほんごとのずれも指摘してきされており、日本にっぽん産業さんぎょう規格きかく(JIS)の一般いっぱんしょくめいえいしょくめい対応たいおうさせていくと、JISの一般いっぱんしょくめいに「あおむらさき」をふく範囲はんいでは半数はんすうちかくがblueでカバーされるという指摘してきがある[5]

パープル (purple)
パープル (purple) のかたについてプリニウスの『博物はくぶつ』では特定とくてい巻貝まきがい色素しきそせんもちいたかいむらさきについてべている[1]元々もともとこの単語たんごは、巻貝まきがい一種いっしゅ"purpura"(ラテン語らてんご、プールプラ)に由来ゆらいする。この巻貝まきがい分泌ぶんぴつえき染色せんしょく原料げんりょうとされ、結果けっかとして出来できいろもpurpuraとばれた。クレタとうちかくの小島こじまからは紀元前きげんぜん1400ねんごろかいむらさき採取さいしゅしたとおもわれる貝殻かいがら発見はっけんされている[1]
いろ名称めいしょうとしてのパープルは、聖書せいしょではあおスカーレットとともによくてくるいろで、ギリシャ神話しんわにもパープルはよく登場とうじょうする[1]。ただ、プリニウスの『博物はくぶつ』はかいむらさきめであたかもパープル (purple) とバイオレット (violet) の両方りょうほうつくせるようなかたをしている[1]。これに関連かんれんしてパープル (purple) のした範囲はんいについて疑問ぎもんていされており、海産かいさん巻貝まきがい材料ざいりょうとするむらさきしみでもきぬめたものと羊毛ようもうめたものでは色調しきちょうちがうことが指摘してきされている(羊毛ようもうめた場合ばあいあかみがつよくなる)[1]。また、かいむらさきかい種類しゅるいによってもあかっぽくまるものやあおっぽくまるものがある[1]
なお、"purple"は、むらさきべに両義りょうぎふくめる場合ばあいがある。たとえば、おこってかおあかくする様相ようそうを、英語えいごでは"turn purple with rage"と表現ひょうげんする。細菌さいきんがくにおいても、"purple" は「むらさき」ではなく "red"(紅色こうしょく)をす。紅色こうしょく細菌さいきん (purple bacteria) などのれいがある。
バイオレット (violet)
紫色むらさきいろ」をすことがあり、こちらも基本きほんしょくとしてのむらさき単語たんごとして使つかわれる。この"violet"は本来ほんらいスミレ意味いみする単語たんごであり、直訳ちょくやくすると菫色すみれいろ(すみれいろ)となる。ローマ時代じだいにはバイオレットパープルと青色あおいろパープルの区別くべつがあったとされる[1]。なお、アイザック・ニュートン定義ていぎによるにじの7しょくのうち、もっとたん波長はちょうがわいろであるむらさき英語えいごでは"violet"であり、"purple"ではない。
バイオレット (violet)は、植物しょくぶつ固有こゆうしょく由来ゆらいする一方いっぽうにじ一色いっしょくとして基本きほん色彩しきさいとしても認知にんちされており、ブルー (blue)やパープル (purple) よりも範囲はんいせまいが固有こゆうしょくめい基本きほんしょくめい中間ちゅうかんのような位置いちづけになっている[5]

派生はせいしょく

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マゼンタ (webcolor)
  16しん表記ひょうき #DA508F
あおむらさき (webcolor)
  16しん表記ひょうき #7445AA
ふかむらさき (webcolor)
  16しん表記ひょうき #493759
あさむらさき (webcolor)
  16しん表記ひょうき #C4A3BF

ひかりいろとしてのむらさき

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purple (webcolor)
  16しん表記ひょうき #800080
mediumpurple (webcolor)
  16しん表記ひょうき #9370DB
violet (webcolor)
  16しん表記ひょうき #EE82EE
mediumvioletred (webcolor)
  16しん表記ひょうき #C71585
fuchsia (webcolor)
  16しん表記ひょうき #FF00FF
magenta (webcolor)
  16しん表記ひょうき #FF00FF

むらさき一般いっぱん可視かしこう波長はちょうのうち最小さいしょう波長はちょうである、およそ380〜430nmの波長はちょういろとして知覚ちかくされる。

ウェブカラーでは基本きほん16しょくとして"purple"が定義ていぎされており、いろ指定していするさいpurple入力にゅうりょくすると16進数しんすう表記ひょうきにして#800080いろむらさき)が表示ひょうじされる(みぎ)。

派生はせいしょくとしては"violet"やマゼンタ"magenta"などが定義ていぎされている。これらは、フクシャ"fuchsia"をのぞけば基本きほん16しょくとして定義ていぎされておらず、すべてのブラウザでただしく発色はっしょくされる保証ほしょうはされていない。"magenta"と"fuchsia"は同色どうしょくとして定義ていぎされてはいるが、"magenta"は基本きほん16しょくではない。

物体ぶったいしょくとしてのむらさき

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むらさきJIS慣用かんようしょくめい
  マンセル 7.5P 5/12
パープルJIS慣用かんようしょくめい
  マンセル 7.5P 5/12
菫色すみれいろJIS慣用かんようしょくめい
  マンセル 2.5P 4/11
バイオレットJIS慣用かんようしょくめい
  マンセル 2.5P 4/11
ふじしょくJIS慣用かんようしょくめい
  マンセル 10PB 6.5/6.5

むらさき代表だいひょうてきいろではあるが、あかあお絵具えのぐわせてもつくることができる(その場合ばあいは、ややくろっぽい色調しきちょうになる)。

日本にっぽん産業さんぎょう規格きかく(JIS)では一般いっぱんしょくめい慣用かんようしょくめいさだめている。

JIS一般いっぱんしょくめい伝統でんとうしょくめい対照たいしょうすると、群青ぐんじょうからあいまでのいろに「あおむらさき」をふく表現ひょうげんふじむらさきからべにしょうねずみまでのいろに「むらさき」の表現ひょうげん、「牡丹ぼたん」から「べにしょうねずみ」までのいろに「あかむらさき」をふく表現ひょうげんてている[5]

一方いっぽう、JIS慣用かんようしょくめいでは、むらさきとパープルはみぎひょうのように同色どうしょくとして定義ていぎされている。またそれとは別個べっこに、菫色すみれいろやバイオレットが同色どうしょくとして定義ていぎされていることがある。

また、JIS慣用かんようしょくめいでは、あかむらさきあおむらさきいろつぎのように定義ていぎされている。

あかむらさきJIS慣用かんようしょくめい
  マンセル 5RP 5.5/13
あおむらさきJIS慣用かんようしょくめい
  マンセル 2.5P 4/14

ほかにも近似きんじしょくがいろいろ定義ていぎされている。くわしくはJIS慣用かんようしょくめい参照さんしょう

むらさきいろりょう

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スミレのはな

顔料がんりょう

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無機むき顔料がんりょう

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酸化さんかてつむらさき mars violet
あじとぼしいくらしゅ酸化さんかてつあかのこと。天然てんねんにも存在そんざいし、日本にっぽんではむらさき(シド)としてさんする。近年きんねんでは、1975ねん昭和しょうわ50ねん)の法輪寺ほうりんじ三重みえとう再建さいけんさいし、彩色さいしきもちいられた。
むらさき群青ぐんじょう ultramarine violet
あかあじつよ色目いろめ合成ごうせいウルトラマリンのことである。
マンガンむらさき manganese violet
1868ねんニュルンベルクはじめて製造せいぞうされた。きわめて堅牢けんろう顔料がんりょうであり、水分すいぶんにさらされない環境かんきょうでの保存ほぞんにおいては信頼しんらいせいたかい。さまざまな異名いみょうがある。
コバルトむらさき cobalt violet
砒酸ひさんコバルト、燐酸りんさんコバルト、コバルト-リチウム-りん 酸化さんかぶつかた熔体、含水燐酸りんさんアンモニウムコバルト、ホウさんコバルトなどがある。いずれもあらつぶ着色ちゃくしょくりょくとぼしい。またいろがややあわい。きわめて高価こうか顔料がんりょうである。また、一部いちぶでは燐酸りんさんコバルトはちみず和物あえもの顔料がんりょうとして使用しようされるが、安定あんていせいくためこのましくない。

有機ゆうき顔料がんりょう

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  • インジゴイドけいむらさき
  • キナクリドンけいむらさき
  • オキサジンけいむらさき
  • アントラキノンけいむらさき
  • カルボニウムけいむらさき
  • キサンテンけいむらさき

染料せんりょう

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天然てんねん染料せんりょう

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むらさきかい(パープル)
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特定とくてい巻貝まきがいくちちかくにある色素しきそせんもちいる[1]巻貝まきがいえらせんから分泌ぶんぴつえき染料せんりょう原料げんりょうとする)。もっと簡単かんたん方法ほうほうはこれらの巻貝まきがい色素しきそせんあつめてきて、そのしるめて日光にっこうにさらして紫色むらさきいろめる方法ほうほうである[1]

しかし、古代こだいからチルス特産とくさんとされたチリアンパープル(ティリアンパープル)は、だい規模きぼ工場こうじょう生産せいさん発酵はっこうめの一種いっしゅであった[1]。プリニウスの『博物はくぶつ』によるとせん部分ぶぶん塩漬しおづけにして3にちき、なまりなべで10日間にちかんゆっくりとあたためたものを染色せんしょくえきにしたとされ、尿にょう使用しようすることもあったという(アンモニアすいとして反応はんのうさせる役割やくわり[1]

なお、この色素しきそにおい化合かごうぶつの6,6'-ジブロモインディゴであることがかっている(インディゴ参照さんしょう)。

巻貝まきがい1個いっこから採取さいしゅできる粘液ねんえき微量びりょうであるため、ふく1ちゃく染色せんしょくには巻貝まきがいすうせんからすうまん必要ひつようとした。中世ちゅうせい地中海ちちゅうかいでは染色せんしょく目的もくてきによる巻貝まきがい乱獲らんかくすすみ、だい航海こうかい時代じだいはいころには巻貝まきがい激減げきげんし、かいによるむらさき染色せんしょくすたれていった。

南米なんべいではペルーでも紀元前きげんぜん200ねんごろにはかいむらさきによる染色せんしょくおこなわれていた[1]マヤ文明ぶんめいのあったユカタン半島はんとう地方ちほう西にし現在げんざいメキシコ南部なんぶオアハカ地方ちほうでも、別種べっしゅ巻貝まきがい分泌ぶんぴつえき染料せんりょうとする同様どうよう染色せんしょく伝統でんとうてきおこなわれている。ここでは巻貝まきがいから分泌ぶんぴつえき採取さいしゅしたのち巻貝まきがいうみもどしたため、巻貝まきがい個体こたいすうはあまりっておらず、現在げんざいでもこの染色せんしょくほうおこなわれている。

日本にっぽんさんかいでもアカニシイボニシなどでかいむらさき染色せんしょくおこなうことができる[1]

むらさきくさ
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ムラサキの紫根しこん(しこん)とばれ、これを乾燥かんそうして粉末ふんまつじょうにしたうえかして色素しきそ抽出ちゅうしゅつし、生地きじ灰汁あくによる媒染ばいせんすうじゅうかいほどこしてようやく染物そめもの完成かんせいする。紫根しこん紫色むらさきいろ色素しきそは、この植物しょくぶつからってシコニン (Shikonin) と命名めいめいされている。もともとムラサキが栽培さいばい困難こんなんなうえ、染色せんしょく手間暇てまひまがかかるため、紫根しこんによる染物そめもの高価こうかである。

なお、紫根しこんきず殺菌さっきん作用さようなどをつために、漢方かんぽうでは生薬きぐすりとしても利用りようされている。

むらさきキャベツ(あかキャベツ)
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むらさきキャベツ(あかキャベツ)の紫色むらさきいろ色素しきそアントシアニン (anthocyanin) である("cyan" とあるが、シアン化物ばけものではない)。この色素しきそ水溶液すいようえきは、強酸きょうさんせいマゼンタちかあざやかなあか紫色むらさきいろじゃく酸性さんせいうすあか紫色むらさきいろ中性ちゅうせいむらさきあお紫色むらさきいろじゃく塩基えんきせいあお緑色みどりいろつよ塩基えんきせい黄色おうしょくしめす。このように水溶液すいようえきいろ変化へんかするため、pH指示しじやくとして利用りようできる。また、酸性さんせいあざやかなあか紫色むらさきいろ発色はっしょくするため、食品しょくひんへの着色ちゃくしょくりょうとしてもちいられることがおおい。食品しょくひん原材料げんざいりょうめいには「むらさきキャベツ色素しきそ」「アントシアニン色素しきそ」などさまざまな呼称こしょう明記めいきされている。

アントシアニンはむらさきキャベツののみならず、黒豆くろまめブルーベリーアサガオ花弁はなびらなどおおくの植物しょくぶつふくまれている。アジサイ花弁はなびらにもふくまれており、土壌どじょうのpHやアルミニウムイオン濃度のうどなどによって花弁はなびらいろことなる。

この色素しきそ溶液ようえきは、むらさきキャベツのやアサガオの花弁はなびらなどを60℃程度ていど蒸留じょうりゅうすいまたは無水むすいアルコールに30ふんほどひたすとられる。そしてこの溶液ようえきはそのままpH指示しじやくとして利用りようできる。

人工じんこう染料せんりょう

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1856ねん発明はつめいされた、世界せかいはつ合成ごうせい染料せんりょうである。これはアニリン染料せんりょう一種いっしゅであり、この色素しきそはモーベイン (Mauveine) と命名めいめいされた。「モーブ」(mauve) はフランス語ふらんすごあおいとくゼニアオイ (en:Malva) を意味いみする。

この発明はつめいは、とくイギリスではニュースとなった。パープルかい分泌ぶんぴつえきなどきわめて高価こうか天然てんねん染料せんりょうしかなかった発明はつめい当時とうじ高級こうきゅういろとされたものをより安価あんか染色せんしょくできるようになったからである。あいだもなくべつあかむらさきけい合成ごうせい染料せんりょうフクシン(後述こうじゅつ)が発明はつめいされたため、合成ごうせい染色せんしょく市場いちば独占どくせんするほどにはいたらなかったが、このいろふく流行りゅうこうし、合成ごうせい染色せんしょく事業じぎょうだい成功せいこうおさめた。

現在げんざいでは染料せんりょうとしては合成ごうせい染料せんりょうもちいられていることがおおく、このいろめいとしてもちいられる(モーブ (いろ)参照さんしょう)。

モーブにつづいて、1859ねん発明はつめい発表はっぴょうされた色素しきそである。フランス実業じつぎょうルナール・フレール (Renard Frères) の専属せんぞく化学かがくしゃヴェルガンにより発明はつめいされた。このアニリンけい色素しきそ固形こけいでは緑色みどりいろをしているが、熱湯ねっとうやエタノールに溶解ようかいさせるとあか紫色むらさきいろ変化へんかする。さらに少量しょうりょうアルデヒドくわえると紫色むらさきいろになる。マゼンタ染料せんりょう顔料がんりょう使つかわれる。

現在げんざいではこの色素しきそによるあかむらさき紫色むらさきいろ染色せんしょくおこなわれるほか、印刷いんさつインクや、実験じっけん観察かんさつのための細胞さいぼう染色せんしょくやアルデヒドなどの分析ぶんせき試薬しやくにももちいられる。

このあざやかなあか紫色むらさきいろ発色はっしょくする色素しきそは、フクシアはなあざやかなあか紫色むらさきいろ見立みたててフクシンとづけられた。これは、フクシアの命名めいめいのもととなったドイツ植物しょくぶつ学者がくしゃフックス (en:Leonhart Fuchs) の単語たんご意味いみドイツで「キツネ」 (Fuchs) であることと、実業じつぎょうルナールフランス語ふらんすごでの意味いみもまたキツネ (renard) であることをなぞらえた命名めいめいでもある。

フクシンによって発色はっしょくされるいろフクシャとも、マゼンタともばれる。この色素しきそによる染色せんしょく発売はつばいされた1859ねん、イタリアとフランスの連合れんごうぐんオーストリア=ハンガリー帝国ていこくぐんやぶ戦争せんそうきていた(マジェンタのたたか)。いろめいは、このたたかいの最後さいご戦勝せんしょうマジェンタ (Magenta) を記念きねんしてづけられたものである。

なお、このとしとほぼおなじく、イギリスでドイツの化学かがくしゃホフマンによりどう系統けいとうのアニリンあか色素しきそ・ローズアニリン (rosaniline) が発明はつめいされている。この色素しきそも、マゼンタしょくとして使用しようされる。

むらさき文化ぶんか

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階級かいきゅうかんする文化ぶんか

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西洋せいよう

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地中海ちちゅうかい周辺しゅうへん地域ちいきでは紀元前きげんぜんからかいえき使つかってあかむらさきめたふくけた人々ひとびとがいた[6]古代こだいエジプトのラムセス2せいころ記録きろくにはむらさきめのもの交易こうえきについてべたものがみられる[1]

カルタゴハンニバル古代こだいローマのカエサルクレオパトラなどにこのまれ、むらさき次第しだい権威けんい象徴しょうちょうとなった[6]

マ帝国まていこく
紀元前きげんぜん1600ねんから使用しようされた染料せんりょうかい紫色むらさきいろ英名えいめい:ロイヤルパープル)は、マ帝国まていこくなどでは特権とっけん階級かいきゅうにふさわしいいろとされた。マ帝国まていこく全盛期ぜんせいきには宮廷きゅうてい貴族きぞく以外いがい人間にんげんむらさき着用ちゃくようすることがきんじられたこともあったという[1]
ひがしマ帝国まていこく
皇帝こうていであること」をしめす「ポルフュロゲネトス英語えいごばんギリシアばん」 (まれ: Πορφυρογέννητος)「むらさきうまれのもの」の)のむらさきも、当時とうじ希少きしょう高価こうかであったかい紫色むらさきいろからている。これはコンスタンティノープルだい宮殿きゅうでんにあった「ポルフュラ(Πορφύρα, Porphyra)」という紫色むらさきいろかべおおわれた皇后こうごう専用せんよう産室さんしつ由来ゆらいしている。この産室さんしつまれたものだけが「ポルフュロゲネトス」の称号しょうごうけてばれ(皇帝こうてい嫡出ちゃくしゅつであることを意味いみする)、この称号しょうごう皇子おうじ皇女おうじょ特別とくべつあつかいされた[7]。このかたりは6世紀せいきから使つかわれていたとされるが、846ねんまで言葉ことば使用しようされたれいつかっていないのはたしかである[8]
このかたり英語えいご慣用かんよう、"born in the purple"(王家おうけ帝室ていしつ)のまれ)の語源ごげんともなっている[9]

東洋とうよう

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中国ちゅうごく
古代こだい中国ちゅうごくぎょう思想しそうではせいいろあおあかしろくろ)を最上さいじょうとし、中間色ちゅうかんしょくであるむらさきはそれより下位かいあいだしょく位置いちづけた。『論語ろんご』(貨篇)にある儒教じゅきょう開祖かいそ孔子こうし言葉ことばに「むらさきしゅうばうをあく(にく)む」というものがある[1][10]。なお、『韓非子かんぴし』には、ひとし桓公かんこうむらさきこのんだが、国中くになかむらさきられるようになったことをうれい、かんなか相談そうだんしたところ「むらさきにおいをあくむ」として退しりぞけることをこころみた結果けっかむらさきものがいなくなったという逸話いつわがある[1]。この逸話いつわむらさきかんして、むらさきくさめたむらさきにもにおいがあるが、かいしみあたらしい状態じょうたいだととくくさいがつよいため、当時とうじ中国ちゅうごくにもかいめがあったのではないかとの見方みかたもある[1]
むらさきかんする記述きじゅつは『史記しき』などにはほとんどみられないが、『てんかんしょ』では太一たいち天帝てんてい)の位置いちする星座せいざを「むらさきみや」のちに「むらさきほろかき」とんでいる[1]天帝てんていまわりにむらさきかき設定せっていされるという思想しそうは、中国ちゅうごくふる民間みんかん信仰しんこうに、神仙しんせんせつ仏教ぶっきょう道教どうきょうなどが習合しゅうごうして形成けいせいされたとかんがえられている[1]時代じだいてき西方せいほう紫色むらさきいろ信仰しんこう東西とうざい交流こうりゅうつうじて流入りゅうにゅうしたともかんがえられている[1]
南北なんぼくあさ時代じだいむらさき地位ちい上昇じょうしょうし、五色ごしきうえ高貴こうきいろとされた。ずい大業おおわざ元年がんねん605ねん)にふくしょく身分みぶんもうけたとき、ひん以上いじょう高官こうかんしゅむらさきふく[11]、6ねん610ねん)にはひん以上いじょうむらさきだけにした[12]高官こうかんだけでなく、道教どうきょう道士どうし仏教ぶっきょう僧侶そうりょなか高徳こうとくしゃにも紫衣しえゆるし、これがとうだいにも継承けいしょうされた。
日本にっぽん
日本にっぽんでは推古天皇すいこてんのう16ねん608ねん)にずい使裴世きよしあさにわむかえたとき、皇子おうじ諸王しょおうしょしん衣服いふくが「にしきむらさき・繍・五色ごしき綾羅りょうら」であった、とするのがむらさきはつである[13]。これよりさき推古天皇すいこてんのう11ねん604ねん制定せいていかんむりじゅうかいさい上位じょうい大徳だいとくしょうとく)のかんむりむらさきだったとする学説がくせつがあるが、史料しりょうにはしるされず、確証かくしょうはない[14]すめらぎごく天皇てんのう2ねん643ねん)に蘇我蝦夷そがのえみし私的してきむらさきかんむりにゅう鹿しかさづけたことから、大臣だいじんかんむりむらさきであったことがられる[15]大化たいか3ねん647ねん)のななしょくじゅうさんかいかんむり以降いこうふくしょく規定きていでは、むらさきふかむらさき(またはくろむらさき)とあさむらさき(またはあかむらさき)の2しょくけ、ふかむらさきくろむらさき)をより高貴こうきいろとした[16]道教どうきょう正式せいしき受容じゅようされなかった日本にっぽんでは、高徳こうとく僧侶そうりょたいして紫衣しえゆるされた(紫衣しえ事件じけん参照さんしょう)。

風習ふうしゅう

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  • タイでは、未亡人みぼうじんあさむらさきふく風習ふうしゅうがある。未亡人みぼうじんふくということでタブーされていたが、現在げんざいはタイ王室おうしつ一人ひとりむらさききがいたといった影響えいきょうで、ほとんどにされない[17]タイ太陽暦たいようれきでは曜日ようびごといろというものがあり、土曜日どようびいろむらさきである[18]
  • カナダの工学こうがくせいには、新入生しんにゅうせい歓迎かんげいしゅう(Frosh Week)などのイベントで細胞さいぼう染色せんしょくようクリスタルバイオレット染料せんりょう上着うわぎみずからの全身ぜんしん皮膚ひふめる伝統でんとうがある。

慣用かんよう

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  • purple prose - 読者どくしゃ共感きょうかんるために,感傷かんしょう悲哀ひあいかん誇張こちょうするなどした作品さくひん[19]
  • turn purple - おこっている表現ひょうげん
  • purple patch - 華麗かれい章句しょうく幸運こううん時期じきこと[20]
  • purple-suiter - 英語えいごけん軍隊ぐんたいのスラングで、ぐんしゅ協同きょうどうしての任務にんむおこなっている人員じんいんことアメリカぐんにおいて、「パープル」はぐんしゅえた「統合とうごう運用うんよう」をあらわ用語ようごとしてもちいられている[21]
  • Purple squirrel - 2000ねんからられるかたりである[22]直訳ちょくやくすると「むらさき栗鼠りす」。求人きゅうじん業界ぎょうかいで、資格しかく経験けいけんなどの条件じょうけん完璧かんぺき一致いっちしたレアな人物じんぶつことをいう。
  • むらさきしゅうばう - まがいものが本物ほんものにとってかわり、その地位ちいうばうことのたとえ。なるもののたとえ[23]

近似きんじしょく

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参考さんこう文献ぶんけん

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 高木たかぎゆたか. “うみむらさき”. かみりょう文庫ぶんこ だい11かん. 財団ざいだん法人ほうじんさんだかあきらかい. 2023ねん1がつ15にち閲覧えつらん
  2. ^ 角川かどかわだい字源じげん』「むらさき
  3. ^ 藥用やくよう植物しょくぶつ圖像ずぞうすうよりどころ - 記錄きろくぺーじめん
  4. ^ 小松こまつ英雄ひでお日本語にほんご歴史れきしISBN 4305702347
  5. ^ a b c d e f 山口やまぐちさずか「色彩しきさいかんする言語げんご研究けんきゅう」『東京女子大学とうきょうじょしだいがく言語げんご文化ぶんか研究けんきゅうだい18かん東京女子大学とうきょうじょしだいがく、2010ねん、56-69ぺーじISSN 0918-7766NAID 120006512182 
  6. ^ a b 澤田さわだ 忠信ただのぶ. “古代紫こだいむらさき染料せんりょう(6,6'-ジブロモインジゴ)の現代げんだい社会しゃかいへのよみがえりを目指めざして”. 科学かがく技術ぎじゅつ振興しんこう機構きこうしん技術ぎじゅつ説明せつめいかい. 2023ねん1がつ15にち閲覧えつらん
  7. ^ 井上いのうえ浩一こういち歴史れきしがくなぐさアンナ・コムネナ生涯しょうがい作品さくひん』(2020ねん 白水しろみずしゃ) P13
  8. ^ "Porphyrogennetos" in Oxford Dictionary of Byzantium, Oxford University Press, New York & Oxford, 1991, p. 1701. ISBN 0195046528
  9. ^ Lane, Nick, Born to the Purple: the Story of Porphyria”. Scientific American (2002ねん12月16にち). 2008ねん10がつ19にち閲覧えつらん
  10. ^ 論語ろんご貨第じゅうなな。ウィキソース論語ろんご/貨第じゅうなな
  11. ^ きゅうとうしょまき45・あずかふくこころざし。ウィキソースきゅうとうしょ/まき45
  12. ^ ずいしょまき12・礼儀れいぎこころざし7。ウィキソースずいしょ』/まき12
  13. ^ 日本書紀にほんしょきまきだい22、推古天皇すいこてんのう16ねん8がつみずのえじょう新編しんぺん日本にっぽん古典こてん文学ぶんがく全集ぜんしゅう日本書紀にほんしょき』2の558-559ぺーじ
  14. ^ かんむりじゅうかいについては『日本書紀にほんしょきまきだい22、推古天皇すいこてんのう11ねん12月みずのえさる(5にちじょう新編しんぺん日本にっぽん古典こてん文学ぶんがく全集ぜんしゅう日本書紀にほんしょき』2の540-543ぺーじむらさきとする学説がくせつをめぐっては、「かんむりじゅうかい#いろ」と、その脚注きゃくちゅうしるした文献ぶんけん参照さんしょう
  15. ^ 日本書紀にほんしょきまきだい24、すめらぎごく天皇てんのう2ねん10がつみずのえじょう新編しんぺん日本にっぽん古典こてん文学ぶんがく全集ぜんしゅう日本書紀にほんしょき』3の76-77ぺーじ
  16. ^ 日本書紀にほんしょきまきだい25、大化たいか3ねんとしじょう新編しんぺん日本にっぽん古典こてん文学ぶんがく全集ぜんしゅう日本書紀にほんしょき』3の166-167ぺーじ。これ以後いご養老ようろう律令りつりょういた位階いかい紫色むらさきいろ関係かんけいについては、ふかむらさきあさむらさきりょう記事きじ参照さんしょう
  17. ^ 平成へいせい19海外かいがい輸出ゆしゅつ環境かんきょう現地げんち調査ちょうさ報告ほうこく タイへん 農林水産省のうりんすいさんしょう
  18. ^ タイにおける曜日ようびごといろ仏像ぶつぞう外務省がいむしょう
  19. ^ purple prose(ランダムハウス英和大えいわだい辞典じてん-goo英和えいわ辞典じてん
  20. ^ purple patch(ランダムハウス英和大えいわだい辞典じてん-goo英和えいわ辞典じてん
  21. ^ Matthew A. Douglas; David Strutton (2009), “Going “purple”: Can military jointness principles provide a key to more successful integration at the marketing-manufacturing interface?”, Business Horizons 52 (3): 251-263, doi:10.1016/j.bushor.2009.01.004, ISSN 0007-6813 
  22. ^ “Sendouts.com Ad Capitalizes on Absentee President; Rodgers Townsend Has A Projected Winner with Its Topical Ad Campaign”. PR Newswire. (2000ねん11月13にち). http://www.thefreelibrary.com/Sendouts.com+Ad+Capitalizes+on+Absentee+President.-a066896003 2016ねん6がつ10日とおか閲覧えつらん 
  23. ^ むらさきしゅうば(コトバンク)

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