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耳嚢 - Wikipedia
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耳みみ嚢

曖昧さ回避 「耳みみ袋ぶくろ」はこの項目こうもくへ転送てんそうされています。防寒ぼうかん具ぐについては「耳みみあて」をご覧らんください。

耳みみ嚢（みみぶくろ）は、江戸えど時代じだい中期ちゅうきから後期こうきにかけての旗本はたもと・南みなみ町奉行まちぶぎょうの根岸ねぎし鎮衛が、佐渡さど奉行ぶぎょう時代じだい（1784-87）に筆ふでを起おこし、死しの前年ぜんねんの文化ぶんか11年ねん（1814）まで、約やく30年ねんにわたって書かきためた全ぜん10巻かんの雑話ざつわ集しゅう。公務こうむの暇ひまに書かきとめた来訪らいほう者しゃや古老ころうの興味深きょうみぶかい話はなしを編集へんしゅうしたもので、さまざまな怪談かいだん奇き譚たんや武士ぶしや庶民しょみんの逸事いつじなどが多数たすう収録しゅうろくされている[1]。耳みみ袋ぶくろとも表記ひょうきされる。

概要がいよう

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奇談きだん・雑話ざつわの聞書ききがきの集録しゅうろくで、話者わしゃには姓名せいめいまたは姓せいを記しるした者ものが約やく120名めい、ある人ひとの話はなしとしたものや、又聞またぎきの話はなしも収おさめられている。その他た、著名ちょめいな高級こうきゅう旗本はたもと、同僚どうりょう、下僚かりょう、医師いし、剣術けんじゅつ者しゃの名なが見みられる。収録しゅうろくされた話はなしの内容ないようは、そのほとんどが奇異きい談だん・巷説こうせつだが、虚偽きょぎの噂うわさ話ばなしや先行せんこうする小説しょうせつの内容ないようを事実じじつ談だんとして収おさめるものもある。文章ぶんしょうは文学ぶんがく的てき表現ひょうげんというには粗あらく、当時とうじの社会しゃかい相しょうを知しる資料しりょうとしては虚構きょこうが多おおいが、当時とうじの幅広はばひろい階層かいそうの人々ひとびとが享受きょうじゅした巷説こうせつを知しることができる作品さくひんとされる [2] 。

『耳みみ嚢』の諸しょ本ほんは、二に巻かん本ほん・三さん巻かん本ほん・五ご巻かん本ほん・六ろく巻かん本ほん・八はち巻かん本ほんなどがあるが、五ご巻かん本ほんを二分にぶんして10冊さつとしたり、貸かし本屋ほんや側がわで冊数さっすうを細分さいぶん化かしたりした本ほんが見みられる。なかでも、カリフォルニア大学だいがくバークレー校こう所蔵しょぞうの旧きゅう三井みつい文庫ぶんこ本ほんは、現在げんざい唯一ゆいいつ知しられる十じゅう巻かん完備かんび本ほんとして貴重きちょうとされる[2] [3]。

著者ちょしゃはこの書しょの流布るふすることを嫌きらい、読よみたいと望のぞむ人ひとのために同家どうけに近ちかしい者ものなどが無断むだんで、急いそぎ筆写ひっしゃしたために何なに種類しゅるいもの刊本かんぽんが出回でまわりその間あいだに異同いどうがあるとも推測すいそくされている[4]。この門外不出もんがいふしゅつの方針ほうしんは、本書ほんしょを無断むだんで出版しゅっぱんした者ものがあったためにさらに強つよまる。ただしその出版しゅっぱんの時期じきや犯人はんにんの正体しょうたい[注釈ちゅうしゃく 1]は明あきらかではない[7]。

明治めいじにも、林はやし若わか樹じゅ『集しゅう古こ随筆ずいひつ : 四よん大だい奇書きしょ』に伊勢いせ貞丈さだたけ、東あずま蘭洲らんしゅう、山東さんとう京伝きょうでんと並ならんで収載しゅうさいされる[8]。

内容ないよう

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書かかれた主おもな人物じんぶつ、事物じぶつ

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刊行かんこう本ほん

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発行はっこう年ねん順じゅん
電子でんし化かされた上巻じょうかんdoi:10.11501/1684161と下巻げかんdoi: 10.11501/1684162の公開こうかい範囲はんいは、共ともに国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん／図書館としょかん送信そうしん参加さんか館かん内ないでの公開こうかい。
  • 『耳みみ袋ぶくろ』岩波いわなみ文庫ぶんこ、再版さいはん1949年ねん、1966-1967年ねん、NCID BN02575734。
  • 『耳みみ袋ぶくろ』旧きゅう岩波いわなみ版ばんは、のち復刻ふっこく版ばん（オンデマンド版ばん、一穗いちほ社しゃ、全ぜん1巻かん）が出版しゅっぱん。ISBN 4-86181-025-6
現代げんだい語ご抄訳しょうやく

注釈ちゅうしゃく

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ 無断むだん出版しゅっぱんについては千坂ちさか廉れん斎ときがその随筆ずいひつに式亭しきてい三馬さんばが犯人はんにんではないかとの臆測おくそくを記しるしたことがあるが、森もり銑三せんぞうによって「根ねもない浮説ふせつ」と否定ひていされている[5]。勝かつ海舟かいしゅうは談話だんわの中なかで「根岸ねぎし肥前ひぜん守もりの小姓こしょうを勤つとめていた13歳さいの滝沢たきざわ馬琴ばきんが『耳みみ嚢』を読よみたいという肥前ひぜん守もりの縁者えんじゃ（児島こじま春はる庵あん）のところに原稿げんこうを持もっていく使つかいを任まかされたところ、道中どうちゅうに読よんで全文ぜんぶんを記憶きおくし、約やく10年ねん後ごにその内容ないようを公おおやけにした」という情報じょうほうを伝つたえている[6]。
  2. ^ 柳田やなぎだによる解題かいだい新版しんぱんは『柳田やなぎだ國男くにお集しゅう 幽冥ゆうめい談だん』（東あずま雅夫まさお編へん、ちくま文庫ぶんこ、2007年ねん）に収録しゅうろく。なお単行たんこう初版しょはんは『老ろう読書どくしょ歴れき』に収録しゅうろく。
  3. ^ 注記ちゅうき：本文ほんぶんは底本ていほん『日本にっぽん庶民しょみん生活せいかつ資料しりょう集成しゅうせい』巻まき16（三さん一いち書房しょぼう刊かん）所収しょしゅうの10巻かん本ほんにより作成さくせい[9]。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ “旗本はたもと御家人ごけにん - 25. 耳みみ嚢（みみぶくろ）”. www.archives.go.jp. 国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かん. 2020年ねん2月がつ21日にち閲覧えつらん。
  2. ^ a b 根岸ねぎし鎮衛・長谷川はせがわ強つよし校こう注ちゅう 1991, pp. 421-434（上うえ）.
  3. ^ a b 国文学研究資料館こくぶんがくけんきゅうしりょうかん『調査ちょうさ研究けんきゅう報告ほうこく』第だい9号ごう、長谷川はせがわ強つよし「（翻刻ほんこく）旧きゅう三井みつい文庫ぶんこ『耳みみ嚢』（巻一けんいち）」、P.181、1988年ねん。第だい10号ごう、長谷川はせがわ強つよし「（翻刻ほんこく）旧きゅう三井みつい文庫ぶんこ『耳みみ嚢』（巻まき之の二に）」、P.55、1989年ねん。
  4. ^ 根岸ねぎし鎮衛・長谷川はせがわ強つよし校こう注ちゅう 2000, p. 499.
  5. ^ 根岸ねぎし鎮衛・長谷川はせがわ強つよし校こう注ちゅう 2000, p. 507.
  6. ^ 関せき如来にょらい（編へん）『当世とうせい名家めいか蓄音機ちくおんき』文ぶん禄ろく堂どう、1900年ねん、31頁ぺーじ。 
  7. ^ 根岸ねぎし鎮衛・長谷川はせがわ強つよし校こう注ちゅう 2000, p. 505.
  8. ^ 『集しゅう古こ随筆ずいひつ : 四よん大だい奇書きしょ』、魁さきがけ真しん楼ろう、1899年ねん（明治めいじ32年ねん）。国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション、doi:10.11501/898501、コマ番号ばんごう107–。
  9. ^ “耳みみ袋ぶくろ / 根岸ねぎし鎮衛著ちょ ; 鈴木すずき棠三さん編へん注ちゅう. -- 1 ; 2. -- 東京とうきょう : 平凡社へいぼんしゃ , 1972.3-1972.4. -- 2冊さつ : 挿図そうず ; 18cm. -- (東洋文庫とうようぶんこ ; 207,208)”. 国立こくりつ情報じょうほう学がく研究所けんきゅうじょ. 2020年ねん10月がつ27日にち閲覧えつらん。
  10. ^ 根岸ねぎし鎮衛、鈴木すずき棠三 『耳みみ袋ぶくろ』〈平凡社へいぼんしゃライブラリー〉、2000年ねん、NCID BA46647171。

関連かんれん文献ぶんけん

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発行はっこう年ねん順じゅん

  • 佐藤さとう恭きょう道どう、戸出といで一郎いちろう、雨宮あまみや義弘よしひろ「「耳みみ嚢」にみられる歯痛しつうの治療ちりょう法ほうについて」『日本にっぽん歯科医しかい史し学会がっかい会誌かいし』第だい27巻かん第だい3号ごう、東京学芸大学とうきょうがくげいだいがく国語こくご科か古典こてん文学ぶんがく研究けんきゅう室しつ、2008年ねん4月がつ、139-142頁ぺーじ、ISSN 02872919、2020年ねん8月がつ8日にち閲覧えつらん。 
  • 佐々木ささき雅章まさあき「近世きんせい随筆ずいひつ『耳みみ嚢』における狸たぬき : 類るい話ばなしを通つうじて」『学芸がくげい古典こてん文学ぶんがく』第だい6巻かん、東京学芸大学とうきょうがくげいだいがく国語こくご科か古典こてん文学ぶんがく研究けんきゅう室しつ、2013年ねん3月がつ、151-160頁ぺーじ、ISSN 18827012、2020年ねん8月がつ8日にち閲覧えつらん。 
  • 佐々木ささき雅章まさあき「『耳みみ嚢』における猫ねこ : 怪異かいい譚たんの視点してんから」『学芸がくげい古典こてん文学ぶんがく』第だい7巻かん、東京学芸大学とうきょうがくげいだいがく国語こくご科か古典こてん文学ぶんがく研究けんきゅう室しつ、2014年ねん3月がつ、139-150頁ぺーじ、ISSN 18827012、2020年ねん8月がつ8日にち閲覧えつらん。 
  • 東あずま雅夫まさおほか（編纂へんさん）『鉱物こうぶつ』国書刊行会こくしょかんこうかい〈書物しょもつの王国おうこく 6〉、1997年ねん、ISBN 4336040060、NCID BA33421471。収載しゅうさいした作家さっかはアンドレ・ブレトン、渋沢しぶさわ龍彦たつひこ、宮沢みやざわ賢治けんじ、稲垣足穂いながきたるほ、杜もり光こう庭にわ、葛かずら洪ひろし、戴孚、蒲かば松まつ齢よわい、柴田宵曲しばたしょうきょく、田中たなか貢太郎こうたろう、寺山てらやま修司しゅうじ、H・G・ウェルズ、ジョルジュ・サンドほか。
  • 人文じんぶん社しゃ編集へんしゅう部ぶ（編へん）、根岸ねぎし鎮衛『耳みみ嚢で訪たずねるもち歩あるき裏うら江戸えど東京とうきょう散歩さんぽ』、人文じんぶん社しゃ 〈古地こち図ずライブラリー別冊べっさつ〉、2006年ねん、ISBN 4795912971 、NCID BA76286957。
  • Z会かい（編へん）『日本にっぽんの名作めいさく「こわい話はなし」傑作けっさく集しゅう』、集英社しゅうえいしゃ〈集英社しゅうえいしゃみらい文庫ぶんこ あ-4-1〉、2012年ねん、ISBN 9784083211119、NCID BB11884848。収載しゅうさいした作家さっかは芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ、ラフカディオ・ハーン、上田うえだ秋成あきなり、小川おがわ未明みめい、中島なかじま敦あつし、岡本おかもと綺堂きどう、根岸ねぎし鎮衛、夏目なつめ漱石そうせき、内田うちだ百間ひゃっけん、平尾ひらおリョウ。
  • 京極きょうごく夏彦なつひこ、根岸ねぎし鎮衛、宮部みやべみゆき『旧きゅう談だん』、KADOKAWA 〈角川かどかわ文庫ぶんこ19551, き26-64〉、2016年ねん、ISBN 9784041035511、NCID BB20921650。
  • 東あずま雅夫まさお、松川まつかわ碧あおい泉いずみ、伊東いとう潮うしお花はな、門もん賀が美央子みおこ『あやかしの深川ふかがわ : 受うけ継つがれる怪異かいいな土地とちの物語ものがたり』、猿江さるえ商會しょうかい、2016年ねん、ISBN 9784908260056、NCID BB21991414。文学ぶんがく散歩さんぽのガイド。谷崎たにざき潤一郎じゅんいちろう、日影ひかげ丈たけ吉よし、宮部みやべみゆき、泉いずみ鏡花きょうか、永井ながい荷風かふう、種村たねむら季き弘ひろし、今尾いまお哲也てつや、三遊亭円朝さんゆうていえんちょう、根岸ねぎし鎮衛などの作品さくひんに取材しゅざいした。

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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