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薬莢 - Wikipedia

薬莢やっきょう(やっきょう、えい: Case, ふつ: Étui)またはやっきょうは、銃砲じゅうほう発射はっしゃやくめる容器ようきであり、これをもちいると弾頭だんとう火薬かやく銃砲じゅうほう迅速じんそく装填そうてんすることができる。また、発射はっしゃやく湿度しつど乾燥かんそうなど環境かんきょう影響えいきょうから保護ほごすることも、薬莢やっきょう重要じゅうよう役割やくわりである。

おもなサイズの薬莢やっきょうひだりから20ばん散弾さんだん[1]7.62x51mm NATOだん5.56x45mm NATOだん.38スペシャルだん.45ACPだん.40S&Wだん9x19mmパラベラムだん.22ロングライフルだん
発射はっしゃ狙撃そげきじゅうから排出はいしゅつされる薬莢やっきょう

現代げんだいでは、薬莢やっきょう真鍮しんちゅう軟鋼なんこうなどの金属きんぞくつくられている場合ばあいおおい。金属きんぞく薬莢やっきょう利点りてんは、発射はっしゃ発生はっせいする高温こうおんこうあつガスのれをふせぐことができるてんにある。

じゅうよう薬莢やっきょう

編集へんしゅう
 
1860年代ねんだいまで使用しようされていた各種かくしゅ一体いったいがた薬莢やっきょう
ひだり1:ドライゼじゅうようかみせい薬莢やっきょう
なかシャスポーじゅう用紙ようしせい薬莢やっきょう
みぎスペンサーじゅう[2]もちい(56-50リムファイアだん[3][4]

現代げんだい銃器じゅうきは、雷管らいかん発射はっしゃやく弾頭だんとう薬莢やっきょうにセットとしておさめた実包じっぽうもちいる製品せいひんが、一部いちぶぜんそうじゅうマズルローダーとうのぞだい多数たすうめている。

薬莢やっきょうしきじゅう発射はっしゃすると、発射はっしゃガスの圧力あつりょく薬莢やっきょうふくらむ。ふくらむことでくすりしつ内部ないぶき、発射はっしゃガスをらさないよう密封みっぷうする。これにより、発生はっせいしたガスを有効ゆうこう利用りようすることができる。

膨張ぼうちょうしてくすりしつりついた薬莢やっきょう容易よういせるように、薬莢やっきょう底部ていぶにはリム輪状りんじょうし)が成形せいけいされており、ゆうそこけられた抽筒エキストラクター)とうようになっている。

薬莢やっきょう形状けいじょうは、初期しょきには弾丸だんがん口径こうけい大体だいたいおな円柱えんちゅうがたストレートケースで、これは現代げんだいでも比較的ひかくてきそうくすりりょうすくない拳銃けんじゅうだん散弾さんだん銃弾じゅうだん(ショットシェル)、グレネードたまなどにもちいられる。一方いっぽう小銃しょうじゅうこう初速しょそく志向しこうされそうくすりりょうえるとストレートケースのままでは薬莢やっきょうながくなりすぎるため、19世紀せいきすえごろから金属きんぞく加工かこう技術ぎじゅつ発達はったつけて薬莢やっきょうどう口径こうけいよりもふとくした(薬莢やっきょうくち部分ぶぶんほそしぼった)形状けいじょうボトルネックケースや、全体ぜんたい先細さきぼそりの円錐えんすい勾配こうばいがつきやくしつへの長大ちょうだい薬莢やっきょう出入でいりたりがすくないテーパードケース登場とうじょうし、きん現代げんだい小銃しょうじゅうだんほか機関きかんほうたま戦車せんしゃほうたまなどのこう初速しょそく弾薬だんやくひろもちいられている(ネックしぼりとテーパード両方りょうほう成形せいけいがなされたものもある)。

一般いっぱんてき利用りようされている薬莢やっきょうには、発射はっしゃやく着火ちゃっかするための雷管らいかん位置いち種類しゅるいによってバリエーションがある。(じゅうよう雷管らいかん#種類しゅるい参照さんしょう

かつては、はりしき(ニードルファイアけい)、カニ目打めうしき(ピンファイアけい)、電気でんき発火はっかしきといった多種たしゅ多様たよう発火はっか方式ほうしき薬莢やっきょう存在そんざいしたが、現在げんざい一般いっぱんてき利用りようされているのは、金属きんぞく薬莢やっきょう底部ていぶ中心ちゅうしん位置いち雷管らいかん挿入そうにゅうし、これをたたいて発火はっかさせる方式ほうしきのセンターファイア[5]方式ほうしきと、薬莢やっきょうはし外周がいしゅうのリム中空ちゅうくう構造こうぞうとして、その内部ないぶかみなりなどの発火はっかやくめ、リムをたたいて発火はっかさせる方式ほうしきのリムファイア[4]方式ほうしきである。

リムファイア方式ほうしきは、 リムない発火はっかやく均一きんいつめることがいまだにむずかしく、センターファイア方式ほうしきくらべて不発ふはつかくりつ格段かくだんたかいことや、雷管らいかん一体いったいになっているために火薬かやく弾頭だんとう雷管らいかんめかえてさい利用りようすること(リロード)ができないなどの欠点けってんがある。 しかし、単純たんじゅん構造こうぞう大量たいりょう生産せいさんいており価格かかく非常ひじょうやすいため、民生みんせい用途ようとではセンターファイア方式ほうしきよりひろ普及ふきゅうしている。

また、センターファイア方式ほうしき薬莢やっきょうには、挿入そうにゅうされる雷管らいかんのタイプによってベルダンしきとボクサーしきの2種類しゅるい存在そんざいし、欧州おうしゅう大陸たいりくぐんではベルダンしきが、えいべいけいぐんではボクサーしき使つかわれており、日本にっぽんではきゅうぐんがベルダンしき自衛隊じえいたいがボクサーしき使用しようしている。

ほうよう薬莢やっきょう

編集へんしゅう
 
金属きんぞくせい薬莢やっきょう使つかM119 105mm榴弾りゅうだんほう砲弾ほうだん

だい口径こうけいほうでは発射はっしゃやくおおいこともあり、漏洩ろうえいする以上いじょう発射はっしゃやくもちいて威力いりょく問題もんだい解決かいけつできたため、薬莢やっきょう採用さいようおくれたが、発射はっしゃやく黒色こくしょく火薬かやくから無煙むえん火薬かやく進化しんかし腔圧ががってくると、しだいに薬莢やっきょう採用さいようされるようになった。金属きんぞく薬莢やっきょうしきほうさいかちほう(きょうほう)とよび、砲弾ほうだん火薬かやくくすり嚢)が分離ぶんりしているものを嚢砲(のうほう)とぶ。さいかちほうはさらに、弾頭だんとう薬莢やっきょう固定こていされている固定こてい薬莢やっきょうほう完全かんぜん弾薬だんやくとう)と、弾頭だんとう薬莢やっきょう固定こていされていない分離ぶんり薬莢やっきょうほうけられる。工作こうさく精度せいど向上こうじょうによる気密きみつせい向上こうじょうもあって、現在げんざいではさいかちほうと嚢砲は並存へいそんしている。

固定こてい薬莢やっきょうしき装填そうてん動作どうさ一回いっかいむので、自動じどう装填そうてん装置そうち導入どうにゅうによる連射れんしゃ速度そくど向上こうじょう容易よういであるが、そのぶん砲弾ほうだん重量じゅうりょう全長ぜんちょうがかさむので、だい口径こうけいほうには不向ふむきである。

嚢砲や分離ぶんり薬莢やっきょうほうでは砲弾ほうだんそうやくをそれぞれいちかい動作どうさ装填そうてんする(だい口径こうけいほうではくすり嚢を複数ふくすうふくすうかいかけて装填そうてんする場合ばあいもある)ため装填そうてん作業さぎょう自体じたいにかかる労力ろうりょくちいさくなるが、作業さぎょう回数かいすうえるぶん連射れんしゃ速度そくど低下ていかする。また、そうくすりりょう加減かげんによって射程しゃてい調整ちょうせいすることも可能かのうである。

一般いっぱんてきに、発射はっしゃ速度そくど重視じゅうしされる戦車せんしゃほう対戦たいせんしゃほう高射こうしゃほう機関きかんほうなどで固定こてい薬莢やっきょうほうおおく、かんほうとく主砲しゅほう)などのだい口径こうけい火砲かほうでは装填そうてん労力ろうりょく軽減けいげんはかるために嚢砲がおおい。しかし、ドイツ海軍かいぐんでは口径こうけい28cmのかんほうでもさいかちほう採用さいようしていたし、嚢砲の戦車せんしゃほう存在そんざいする。

榴弾りゅうだんほうカノンほう場合ばあい口径こうけいくにによって方式ほうしきがややわる。西側にしがわでは比較的ひかくてき小型こがた軽量けいりょうな105mm榴弾りゅうだんほうでは分離ぶんり薬莢やっきょうほうが、155mm以上いじょうだい口径こうけいほう場合ばあいは嚢砲がそれぞれ主流しゅりゅうである。これにたいしてソ連それんロシアでは口径こうけい122mm/130mm/152mmの火砲かほうについては分離ぶんり薬莢やっきょうほう主流しゅりゅうであり、口径こうけい203mmの2S7ピオン 203mmはしカノンほうについては嚢砲である。

砲弾ほうだんよう雷管らいかんには、とくこう発射はっしゃ速度そくど航空こうくう機関きかんほうや、一元いちげんてき射撃しゃげき統制とうせいおこなわれるかんほうなどで発砲はっぽうタイミング精度せいどすぐれる電気でんき発火はっかおももちいられる。

構造こうぞうじょうおよび運用うんようじょう一般いっぱん迫撃はくげきほうロケットほう薬莢やっきょう使用しようしない。

製法せいほう

編集へんしゅう
 
薬莢やっきょう製造せいぞう工程こうてい段階だんかいべつならべたもの、下段げだんかく工程こうていでの断面だんめんしめ

最初さいしょ金属きんぞく薬莢やっきょうであるリムファイアしき[4]薬莢やっきょうは、どういたふかしぼプレスで形成けいせいする技術ぎじゅつ確立かくりつされたことで大量たいりょう生産せいさん可能かのうとなり、はじめて実用じつようされた。

センターファイアしき[6]薬莢やっきょう発明はつめいされた当時とうじは、これを一体いったい成型せいけいする技術ぎじゅつく、薬莢やっきょう基部きぶだけを真鍮しんちゅうつくり、つつじょうかみいて糊付のりづけした部品ぶひんをはめ方法ほうほう製造せいぞうされていたが、やがてプレス技術ぎじゅつがこれにいつき、一体いったい成型せいけいされたぜん金属きんぞくせいのセンターファイアしき[6]薬莢やっきょう実用じつようされた。

だい世界せかい大戦たいせんなかには、1ヶ月かげつ生産せいさんりょうが3おくえたくにすらあり、製造せいぞう速度そくど高速こうそくもとめられつづけてた。 2000ねん以降いこう最新さいしんしき製造せいぞう装置そうちではまいぶん1せん薬莢やっきょう製造せいぞうできる装置そうちすら存在そんざいするが、その製法せいほう19世紀せいき後半こうはん確立かくりつされたものと大差たいさはない。

薬莢やっきょう基部きぶあつさが必要ひつようなセンターファイアしきと、すべ均等きんとうあつさのリムファイアしきはあるものの、円盤えんばんじょうかれた素材そざいすうかいのプレスで円柱えんちゅうじょう成型せいけいする段階だんかいまではりょう方式ほうしきともにおなじである。

こののち工程こうていでは、リムファイアしきはリム成型せいけい発火はっかやく充填じゅうてんおこなわれ、センターファイアしきではリム雷管らいかん挿入そうにゅうするあな切削せっさくしたり、ネックがしぼられる場合ばあいくびしぼプレスがおこなわれる。

なお、工業こうぎょう技術ぎじゅつ未熟みじゅく地域ちいき密造みつぞうされる弾薬だんやくなどは、金属きんぞくぼう規定きていながさに切断せつだんしてから旋盤せんばんけずって製造せいぞうされている。この方法ほうほうでは大量たいりょう生産せいさん需要じゅよう到底とうていたせないうえに、プレス加工かこうによって製造せいぞうされた薬莢やっきょうくらべて、もろれやすい薬莢やっきょうになるため、てい腔圧の拳銃けんじゅうたま程度ていどまでしか製造せいぞうできない。

材質ざいしつ

編集へんしゅう
 
M249 SAWようベルトリンクにつながれたM855とおるきのえだんみどり鋼鉄こうてつだんしん)とM856曳光弾えいこうだんあか):ネックくろずんでいるのは製造せいぞう高周波こうしゅうは加熱かねつあと
 
7.62x39mmだん薬莢やっきょう弾頭だんとうジャケットともに軟鋼なんこうせい雷管らいかん腐食ふしょくせいベルダンしき
 
アルミ合金ごうきんせいの.44スペシャル[7]弾薬だんやくさいかち
 
12ばん散弾さんだん装弾そうだんのカットモデル。薬莢やっきょう樹脂じゅし部分ぶぶんがスラッグ弾頭だんとう・ワッズ・そうやくなどを内包ないほうしている。
 
ラインメタル120mmすべり腔砲よう焼尽しょうじん薬莢やっきょうとM829[8]弾頭だんとう

金属きんぞく薬莢やっきょうでは発射はっしゃやく直接ちょくせつ封入ふうにゅうされるため、発射はっしゃやく反応はんのうしない安定あんていした材質ざいしつもちいられた。伝統でんとうてきもちいられている材質ざいしつは、ひやあいだ加工かこうせいすぐれた真鍮しんちゅうなどどうけい合金ごうきんであるが、どう比較的ひかくてき高価こうかであり、亜鉛あえん産地さんち偏在へんざいしているため、より安価あんか軟鋼なんこう軍用ぐんよう薬莢やっきょう製造せいぞうすることが試行しこうされつづけた。

しかし、20世紀せいき前半ぜんはんまでのプレス加工かこう技術ぎじゅつでは軟鋼なんこう薬莢やっきょう製造せいぞう困難こんなんであり、おおくの諸国しょこくでは平時へいじ演習えんしゅうなどで使つかわれたそら薬莢やっきょう回収かいしゅう兵士へいしもとめており、とく資源しげんとぼしかった日本にっぽんぐんでは厳密げんみつ回収かいしゅうもとめられ、薬莢やっきょう紛失ふんしつした兵士へいし過酷かこく制裁せいさいける伝統でんとう存在そんざいした。資源しげん逼迫ひっぱくした大戦たいせん末期まっきではきゅうきゅうしき普通ふつう実包じっぽうきゅうしき普通ふつう実包じっぽうてつ薬莢やっきょうすすめられたが品質ひんしつてき十分じゅうぶんではなく、火器かき自体じたい製造せいぞう品質ひんしつ低下ていかあいまって作動さどう不良ふりょうえる原因げんいんとなった。

これとは対照たいしょうてきに、豊富ほうふ資源しげん生産せいさん兵站へいたん能力のうりょくほこべいぐん演習えんしゅうでのそら薬莢やっきょう回収かいしゅうをほとんどおこなわなかったため、日本にっぽん韓国かんこくべいぐん演習えんしゅうじょう周辺しゅうへんではそら薬莢やっきょうひろいで生計せいけいてる人達ひとたちがいたほどだった(ジラード事件じけん参照さんしょう)。

だい世界せかい大戦たいせんしたドイツでは、どう節約せつやくのために当時とうじ世界せかい最高さいこう水準すいじゅんにあったプレス加工かこう技術ぎじゅつかした軟鋼なんこう薬莢やっきょう実用じつようされ、戦後せんごドイツの技術ぎじゅつソ連それんは、じゅんてつちかいほどやわらかな軟鋼なんこう素材そざいAK-47よう7.62x39mmだんなどを大量たいりょう生産せいさんしたため、きゅう共産きょうさんけん弾薬だんやくおおくは軟鋼なんこう薬莢やっきょう主流しゅりゅうとなっている。

きゅう共産きょうさんけんせい軟鋼なんこう薬莢やっきょうは、酸化さんかやす軟鋼なんこう保護ほごするため表面ひょうめんにコーティングざいられ、かんはいった状態じょうたい配備はいびされるものがだい部分ぶぶんである。これら軟鋼なんこう薬莢やっきょう安価あんかであるため、回収かいしゅう必要ひつようく、雷管らいかんさい充填じゅうてん困難こんなんなベルダンしきであるため、発射はっしゃ放置ほうちしておいても回収かいしゅうされてさい利用りようされる危険きけんせいすくない。はなっておけば自然しぜんさびかたまりして風化ふうかしてしまうため、環境かんきょうへの負荷ふかちいさい。一方いっぽうこれら弾薬だんやくのパッケージングは部隊ぶたいレベルでの使用しよう前提ぜんていに1000はつ単位たんい大型おおがたのもので、開封かいふう保管ほかん想定そうていされていない。軟鋼なんこう薬莢やっきょう普及ふきゅうはもっぱらこれら軍用ぐんようだんかぎられ、民間みんかんユースをふくきゅう西側にしがわけん薬莢やっきょうは2022ねん現在げんざいいたるまで真鍮しんちゅうせい主流しゅりゅうのままである。

また、弾薬だんやく軽量けいりょうする目的もくてきアルミ合金ごうきんによる薬莢やっきょう試作しさくおこなわれ、この研究けんきゅう過程かていジュラルミン発見はっけんされたこともひろられており、アルミせい薬莢やっきょう高価こうかながら現在げんざいでも使用しようされている。 アルミは真鍮しんちゅうよりもやすいため、全体ぜんたいくすりしつかこんでいる回転かいてんしき拳銃けんじゅうよう弾薬だんやくや、てい腔圧でられるU.S.M1カービンよう弾薬だんやくなどにもちいられた。

腔圧のひく散弾さんだんじゅう装弾そうだんではぜん金属きんぞく構造こうぞう製品せいひんはまれで、薬莢やっきょう底部ていぶのみ金属きんぞくつくり、のこりの前半ぜんはん厚紙あつがみプラスチックつくられている。 最近さいきんでは腔圧のたかいライフルだんでも同様どうよう薬莢やっきょう開発かいはつされており、民間みんかん市場いちばにも出回でまわっている。真鍮しんちゅう薬莢やっきょうよりも軽量けいりょうであるが、外力がいりょくたいする耐久たいきゅうせいおとり(内圧ないあつつよいがやわらかい)、遠距離えんきょり目標もくひょうたいする命中めいちゅう精度せいどおとる。

アメリカ陸軍りくぐんは2017ねん開始かいしした次世代じせだい分隊ぶんたい火器かきプログラム(NGSW)においてしん規格きかくの6.8mm口径こうけい採用さいようめ、弾薬だんやくには合成ごうせい樹脂じゅし薬莢やっきょうTrue Velocityだんと、真鍮しんちゅう・ステンレス(およ継手つぎてのアルミ)ハイブリッド薬莢やっきょう.277 FURYだん候補こうほさだめ、2022ねん1がつ後者こうしゃ採用さいようした。

ドイツ陸軍りくぐんレオパルト2や、陸上りくじょう自衛隊じえいたい90しき戦車せんしゃなどに採用さいようされたラインメタルしゃの120mmすべり腔砲では焼尽しょうじん薬莢やっきょう(しょうじんやっきよう)が採用さいようされている。焼尽しょうじん薬莢やっきょう発射はっしゃやく燃焼ねんしょうともきてくなってしまうニトロセルロースけい素材そざい、腔圧にえるために薬莢やっきょう底部ていぶのみ金属きんぞく素材そざいつくられ、発射はっしゃ底部ていぶのみが排出はいしゅつされる。

従来じゅうらい戦車せんしゃでは、発射はっしゃそら薬莢やっきょう処理しょり問題もんだいとなっていた。だい大戦たいせん一部いちぶ戦車せんしゃでは、きゅうだんはいさいかちのためのしょうハッチが砲塔ほうとうもうけられていたが、せんくんによりこれらが溶接ようせつされてふさがれると、戦闘せんとうちゅうそら薬莢やっきょう処理しょりするための余裕よゆううしなわれたさいには、最悪さいあく場合ばあい車内しゃないゆかそら薬莢やっきょうがゴロゴロころがることとなり、戦闘せんとう行動こうどうすくなからず支障ししょうきたすこととなった。戦後せんごでは、T-62以降いこうソ連それん戦車せんしゃなどに自動じどうはいさいかち装置そうちと、使用しよう薬莢やっきょう車外しゃがい排出はいしゅつするハッチの設置せっちられた。これも、フィルターきの換気かんき装置そうちもうけられているとはいえ、NBC環境かんきょうでは車外しゃがい有害ゆうがい物質ぶっしつ侵入しんにゅうするリスクがあるとして、一部いちぶはそのにふさがれてしまった。結局けっきょくそら薬莢やっきょう問題もんだい焼尽しょうじん薬莢やっきょう採用さいようまで解決かいけつできなかった。ロシアなどきゅうソ連それん諸国しょこく開発かいはつされた戦車せんしゃ砲塔ほうとうには、焼尽しょうじん薬莢やっきょう普及ふきゅうして以降いこうもなお、自動じどう装填そうてんはいさいかち装置そうち連動れんどうして自動的じどうてき開閉かいへいする車外しゃがい排出はいしゅつようハッチがもうけられている。もっとも、これは薬莢やっきょう底部ていぶ専用せんようであるため、ハッチのサイズは必要ひつよう最小限さいしょうげんとなっている。

バリエーション

編集へんしゅう
 
H&Kしゃとダイナマイトノーベルしゃ[9]試作しさくしたG11よう4.73x33mm DM11 ケースレスだん
ひだりから)成型せいけい加工かこうされた推進すいしんやく雷管らいかん弾頭だんとう保護ほごキャップ

薬莢やっきょう金属きんぞく資源しげん消費しょうひし、はいさいかち動作どうさにより連射れんしゃ速度そくど制限せいげんし、弾薬だんやく重量じゅうりょう体積たいせき増加ぞうかさせて補給ほきゅう携行けいこう負担ふたんをかける。工作こうさく精度せいど向上こうじょうともに、薬莢やっきょう廃止はいししてこれらのしょ問題もんだい解決かいけつしようとするこころみがなされ、発射はっしゃやく特殊とくしゅ素材そざいかためて弾頭だんとう起爆きばくやくりつけたケースレス弾薬だんやく研究けんきゅう各国かっこくおこなわれた。

ケースレス弾薬だんやく問題もんだいてんひとつとして、コックオフばれる暴発ぼうはつ現象げんしょうがある。発射はっしゃやく燃焼ねんしょうによるねつは、通常つうじょうなら一部いちぶ薬莢やっきょう吸収きゅうしゅうされたうえ排出はいしゅつされ、またくすりしつねつのこっていても、つぎだん発射はっしゃやくはそれをおおえた薬莢やっきょうによって保護ほごされる。ケースレス弾薬だんやく場合ばあいくすり室内しつないはいねつ不足ふそくおちいりやすく、さらにそこへ発射はっしゃやく直接ちょくせつれるので、暴発ぼうはつのリスクがおおきくなる傾向けいこうにある。

もっと実用じつようちかづいたのは、ドイツのダイナマイト・ノーベルしゃ弾薬だんやくと、H&KしゃG11 アサルトライフルである。ドイツ連邦れんぽうぐんでも採用さいようまりかけたが、コストや信頼しんらいせいめんなんがあり、採用さいようされずに試作しさくのみにわり、東西とうざいドイツさい統一とういつにより、計画けいかく凍結とうけつされた。

なおくすり嚢や液体えきたいそうやくもちいた火器かき薬莢やっきょう使用しようしないが、弾丸だんがん発射はっしゃやくひとつにパッケージされないてん上記じょうきのケースレスだんとは区別くべつしうる。

テレスコープだん

編集へんしゅう

小銃しょうじゅうたまは、通常つうじょう弾薬だんやく同様どうよう薬莢やっきょう先端せんたん弾頭だんとうけているが、ネックがしぼられているためほそくなっている部分ぶぶんよわくなり、とくにむきしの弾頭だんとう変形へんけいする可能かのうせい拳銃けんじゅうだんよりもたかい。

これらを解決かいけつするために研究けんきゅうされているテレスコープだんというものがある。これは、ほそ弾頭だんとうふと薬莢やっきょうんで弾頭だんとう後部こうぶ周囲しゅういそうやくめるもので、弾頭だんとうがむきしになっておらず、薬莢やっきょうほそくなっている部分ぶぶんいために衝撃しょうげきつよい。また、全長ぜんちょうみじかくなるというメリットがある。

2010年代ねんだいいたり、テレスコープだんは40mm口径こうけい機関きかんほう40 CTC」として本格ほんかくてき実用じつようがなされた。

現在げんざい、テレスコープだん使用しようする制式せいしきじゅう存在そんざいしないが、アメリカでM249わる新型しんがた機関きかんじゅう開発かいはつされている。薬莢やっきょう一部いちぶおよびベルトリンクポリマー利用りようすることで軽量けいりょうはかっている。薬莢やっきょうふとさは.50口径こうけいほどで、弾頭だんとう5.56x45mm NATOだんのものを流用りゅうようしている。発射はっしゃ機構きこうは、リヴォルヴァーカノンにたものであると推測すいそくされる。

出現しゅつげんまで

編集へんしゅう

ぜんそうじゅうぜんそうしき)の時代じだいには、弾丸だんがん火薬かやく銃口じゅうこうから別々べつべつ装填そうてんされていた。日本にっぽんでは木製もくせいつつがた容器ようき一発いっぱつぶん弾丸だんがん火薬かやくわせたものを携行けいこうし、装填そうてん手間てま短縮たんしゅくする方式ほうしきがとられるようになり、これを「ごう(はやごう)」とんだ。

欧州おうしゅうでは、歩兵ほへい装備そうびとして1はつぶん火薬かやく弾丸だんがんソーセージのようにかみつつんだかみせい薬莢やっきょう使つかい、装填そうてんにその一端いったんやぶり、中身なかみ弾丸だんがん火薬かやく装填そうてんする方法ほうほう19世紀せいき中頃なかごろまでおこなわれた。かみせい薬莢やっきょうは「パトローネ」「パトロン」「かみはやあい」などとばれた。今日きょう包装ほうそうよう褐色かっしょくかみを「ハトロン紙はとろんし」とうのはその名残なごりである。

しかし、ぜんそうじゅうせた状態じょうたい射撃しゃげき姿勢しせい維持いじしたままでの装填そうてん困難こんなんであり、不発ふはつしょうじた場合ばあい対処たいしょ手間てまがかかることから、火器かき普及ふきゅうした17世紀せいきころから各種かくしゅこうそうしき(ブリーチローダー)じゅう考案こうあんされるようになった。

19世紀せいき初頭しょとうまでにいくつかの実用じつようてきのちそうしき軍用ぐんようじゅう出現しゅつげんする時代じだい到来とうらいしたが、依然いぜんとして弾丸だんがん火薬かやく別々べつべつ状態じょうたいであり、こうそうしき形態けいたい銃身じゅうしん後部こうぶ切断せつだんして独立どくりつしたくすりしつとする形状けいじょうのものであり、回転かいてんしき拳銃けんじゅう同様どうよう銃身じゅうしんくすりしつつなかられる発射はっしゃガスを放置ほうちするデザインだった(ちゅう回転かいてんしき拳銃けんじゅうアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく特許とっきょ取得しゅとくしたのは1836ねんであり、これらそうじゅう出現しゅつげんよりのちのことである)。

黎明れいめい

編集へんしゅう
 
かみせい薬莢やっきょう内部ないぶ構造こうぞう
ひだり:ドライゼよう みぎ:シャスポーよう
 
初期しょき金属きんぞく薬莢やっきょう内部ないぶ構造こうぞう
ひだり:ピンファイア
みぎ:リムファイア[10]

1836ねんプロイセンドライゼじゅう発明はつめいされた。どうじゅうは、弾丸だんがん発射はっしゃやく雷管らいかんかみせいのケースでつつんだ薬莢やっきょう銃身じゅうしんはしから装填そうてんし、ボルトを銃身じゅうしんはし密着みっちゃくさせて閉鎖へいさする仕組しくみと、のちボルトアクションばれるげきはつ機構きこうゆうし、完全かんぜんではないものの、発射はっしゃガスのれをふせぐことに成功せいこうした、最初さいしょ実用じつようレベルのこうそうじゅうだった。

おなねんに、フランスのカシミール・ルフォーシュ[11]によって、側面そくめんちいさなピンが突出とっしゅつした形状けいじょうぜん金属きんぞく薬莢やっきょうであるピンファイアしき薬莢やっきょうからしたピンの外観がいかんから、カニ目打めうしきともばれる)が発明はつめいされ、これをもちいる銃器じゅうき欧州おうしゅうから世界中せかいじゅうひろ輸出ゆしゅつされたため、日本にっぽんにも多数たすう現存げんそんしている。

ピンファイアしき最初さいしょ実用じつよう金属きんぞく薬莢やっきょうとなったが、発火はっかやくくピンが露出ろしゅつしているため暴発ぼうはつ危険きけんたかく、より安全あんぜん携行けいこうできる後発こうはつ薬莢やっきょう出現しゅつげんすると急速きゅうそく衰退すいたいした。

1847ねんには、フランスのフロベールが、現代げんだいまで使つかわれつづけているリムファイア[10]しきばれる一体いったいがた金属きんぞく薬莢やっきょう発明はつめいした。

翌年よくねんには、米国べいこくロケットボールばれる、弾丸だんがん内部ないぶ発射はっしゃやく雷管らいかんおさめた形状けいじょう弾薬だんやく発明はつめいされ、1854ねんからヴォルカニックしき連発れんぱつじゅう[12]として、S&Wしゃから販売はんばい開始かいしされた。

しかし、ロケットボールの構造こうぞうには発射はっしゃやくやせない限界げんかいがあり、同社どうしゃはリムファイアしき特許とっきょって、1858ねんからS&W No.1回転かいてんしき拳銃けんじゅう[13]よう弾薬だんやくとして発売はつばいした結果けっか爆発ばくはつてき普及ふきゅうした。

そのだい口径こうけいした.44 Henry[14]や、最初さいしょ実用じつよう機関きかんじゅうであるガトリングほうようの.58 Gatlingなどのリムファイアしき弾薬だんやく製造せいぞうされておおきな市場いちばたが、無煙むえん火薬かやく実用じつようと、よりていしんせいのある弾道だんどう実現じつげんするためのしょう口径こうけいへのながれのなかで、よりこう腔圧の弾薬だんやく志向しこうされるようになると、薬莢やっきょう基部きぶあつつくれない制約せいやくのあるリムファイアしき徐々じょじょ衰退すいたいし、現在げんざいではしょう口径こうけいのものだけがのこっている。

一方いっぽう、プロイセンのライバルだったフランスでも、かみせい薬莢やっきょうそうしきじゅう開発かいはつすすめられ、ほぼ完全かんぜんにガスれをふせいだシャスポーじゅう1866ねん採用さいようされ、かみせい薬莢やっきょう使用しようするのちそうしきじゅう一応いちおう完成かんせいたが、環境かんきょう変化へんかよわかみせい薬莢やっきょう欠点けってん克服こくふくされず、センターファイアしき金属きんぞく薬莢やっきょう普及ふきゅうはじめると、置換ちかんされてその時代じだいえた。

これら現在げんざいでは消滅しょうめつしてしまったタイプの薬莢やっきょうのうち、かみせい薬莢やっきょう・ヴォルカニックしき・ピンファイアしき構造こうぞうは、20世紀せいき中盤ちゅうばんはいってから弾薬だんやく軽量けいりょうのために試作しさくされはじめた各種かくしゅケースレス弾薬だんやくのデザインの参考さんこうとされているものが散見さんけんされる。

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう
  1. ^ この製品せいひん金属きんぞくはリムがわ一部いちぶのみで、のこりは樹脂じゅしないしせい
  2. ^ Spencer repeating rifle
  3. ^ 56-50
  4. ^ a b c Rimfire ammunition
  5. ^ Centerfire ammunition
  6. ^ a b Centerfire ammunition
  7. ^ .44 Special
  8. ^ M829
  9. ^ Dynamit Nobel AG
  10. ^ a b Rimfire ammunition
  11. ^ Casimir Lefaucheux
  12. ^ Volcanic Repeating Arms
  13. ^ Smith & Wesson Model 1
  14. ^ .44 Henry

関連かんれん項目こうもく

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