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OHV - Wikipedia

OHVとは、 Over Head Valve(オーバー・ヘッド・バルブ)の略語りゃくごで、4ストローク機関きかんの吸排気はいきべん機構きこう形式けいしきひとつ。従来じゅうらいサイドバルブスライドバルブたいバルブ機構きこうシリンダーヘッドうえそなえた形式けいしきう。日本語にほんごでは頭上ずじょうべんしき表記ひょうきされる。OHVやOver Head Valveはたんほん方式ほうしきしめ用語ようごであり、吸排気はいきべんをシリンダーヘッドの上部じょうぶそなえるほか機構きこうふく一般いっぱん概念がいねんではなく、シリンダーヘッドにカムシャフトをたないものをす。

OHVエンジンのプッシュロッド機構きこう

カムシャフトをシリンダヘッドにそなえたSOHCDOHCも吸排気はいきべんをシリンダーヘッドの上部じょうぶそなえるが、一般いっぱんてきOHVとはばれない。

構造こうぞう

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カムシャフトがシリンダーブロックがわ位置いちし、プッシュロッドとよばれるながぼうかいしてロッカーアームバルブ開閉かいへいさせる[1]。したがって「プッシュロッドエンジン」とばれることもある[2]最初さいしょのOHVエンジンはスコットランドけいアメリカじんであるデビッド・ダンバー・ビュイック英語えいごばんにより1902ねん開発かいはつされた。それ以前いぜん内燃ないねん機関きかんべん機構きこうにはサイドバルブ以下いかSV)やスライドバルブもちいられていた。

がわべんしきのSVにたいして頭上ずじょうべんしきのOHVが有利ゆうりなのは、バルブ開口かいこうをシリンダーボアみちない配置はいちすることで、燃焼ねんしょうしつちいさくできるてんである[3]。 これによりOHVはSVにくらべて燃焼ねんしょうしつ表面積ひょうめんせきちいさくなったことで、ヘッドからげるねつすくなくなり、さらにノッキングこしにくい燃焼ねんしょうしつ形状けいじょうにしやすく圧縮あっしゅくたかくとれるため、一段いちだんねつ効率こうりつたかめられること出力しゅつりょく燃費ねんぴ向上こうじょうさせることが可能かのうとなった。一方いっぽうこう回転かいてんでも吸排気はいきバルブの開閉かいへいタイミングをただしくとれるSOHC(OHC、シングルカム)や、開閉かいへい独立どくりつして変化へんかさせることが可能かのうDOHC(ツインカム)にくらべると燃費ねんぴ出力しゅつりょくめん不利ふりとされ、また、きびしさを排出はいしゅつガス規制きせいへの対応たいおう不利ふりとされる[4]

SV方式ほうしきからの移行いこうには吸気きゅうきべんがOHV、排気はいきべんがSVというIOE(intake/inlet over exhaust)エンジン存在そんざいした。IOEエンジンはウィリス時代じだいジープハーレーダビッドソンなどにもられ、米国べいこくなどでは「Fヘッド」、日本にっぽんでは「Fあたましき[注釈ちゅうしゃく 1]通称つうしょうされる。自動車じどうしゃオートバイではOHVの登場とうじょうによってすたれたが、汎用はんよう石油せきゆ発動はつどうではそのおおられた。またぎゃく吸気きゅうきべんがSV、排気はいきべんがOHVというEOI(Exhaust over intake)エンジンも存在そんざいした。

SVのOHVは、吸排気はいきポートとどうべん機構きこうつヘッドに交換こうかんし、サイドバルブがかよっていた部分ぶぶんにプッシュロッドをとおしてシリンダーヘッドのバルブを駆動くどうさせること可能かのうとなるため、初期しょきのOHVエンジンにはSVエンジンをベースにしたものもみられた。このよう構造こうぞうじょう比較的ひかくてき容易よういにOHVすることも出来できることから、SVをOHVするキットなども存在そんざいする。

ながいプッシュロッドではその慣性かんせい質量しつりょうと、ねつ膨張ぼうちょうによる寸法すんぽう変化へんか、および、駆動くどう弾性だんせい変形へんけい問題もんだいとなるため、カムシャフトをたか位置いち配置はいちしてプッシュロッドをみじかくした、ハイカムシャフト(ハイカム[注釈ちゅうしゃく 2]方式ほうしきばれるものもある[5][注釈ちゅうしゃく 3]。この場合ばあい、カムシャフトはローラーチェーンなどをかいして駆動くどうされ、どうべんけい往復おうふく慣性かんせい重量じゅうりょうはSOHCとくらべさほどおおきくならず、また、ヘッド直上ちょくじょうにカムシャフトがないためDOHC同様どうようのセンタープラグ理想りそうてきべん配置はいちれる利点りてんがある。また、エンジン下部かぶのシリンダーブロックないにカムを配置はいちする構造こうぞうにより、騒音そうおんめんでもOHCより有利ゆうり場合ばあいおおい。

OHV方式ほうしき採用さいようれい

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OHVは往復おうふく運動うんどうする部品ぶひんおおく、とくにプッシュロッドの重量じゅうりょうによりこう回転かいてんポペットバルブ追従ついしょうせい悪化あっかさせるバルブジャンプや、往復おうふく運動うんどう機構きこう共振きょうしんによるバルブサージング発生はっせいしやすく、エンジン許容きょよう回転かいてんすうげることがむずかしい。しかし、飛行機ひこうき船舶せんぱく使つかわれるレシプロエンジンではプロペラさだめられた回転かいてんすうよりも高速こうそく回転かいてんさせる必要ひつようがないうえ耐久たいきゅうせい信頼しんらいせいすぐれるため、 OHV は多用たようされている。これは常用じょうよう回転かいてんいきひくディーゼルエンジンにもてはまる。ただし自動車じどうしゃようディーゼルエンジンのうち小型こがたのものはガソリンエンジンとの設計せっけい共通きょうつうすすみ、部品ぶひん点数てんすう削減さくげん軽量けいりょうめん、さらに燃費ねんぴめんなどでもOHCが有利ゆうりとされ、OHVは淘汰とうたされた[6]トラックバスようなか排気はいきりょう、およびだい排気はいきりょうのエンジンの一部いちぶには、OHV機構きこうのままでありながら、きびしさを自動車じどうしゃ排出はいしゅつガス規制きせい対応たいおうするため[6]4バルブされたものもある[注釈ちゅうしゃく 4]

よんりんしゃ

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日本にっぽん

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日本にっぽんしゃでは、1960年代ねんだいから1980年代ねんだい製造せいぞうされた乗用車じょうようしゃのエンジンにOHVがおお採用さいようされた。どういち車種しゃしゅ複数ふくすうのグレードを設定せっていする場合ばあい上位じょういグレードにはSOHCもしくはDOHCを、下位かいグレードにOHVを採用さいようすることで差別さべつはかられていた。なお、ホンダおよびスズキ[注釈ちゅうしゃく 5]は、よんりんしゃにOHVを一切いっさい採用さいようしていない。

しかし1990年代ねんだい以降いこうLPG自動車じどうしゃふく一部いちぶトヨタせい商用しょうようしゃのぞいてOHVはほとんど採用さいようされなくなり、ポペットバルブをたないロータリーエンジンのぞき、すべてSOHCもしくはDOHCにえられた。

唯一ゆいいつ例外れいがい水平すいへい対向たいこうエンジンで、エンジンりょうわきにシリンダーヘッドを構造こうぞうから、ながらくOHCはかえって効率こうりつで、寸法すんぽう重量じゅうりょう増大ぞうだい整備せいびせい(イニシャルコスト)の悪化あっかまねくものとされていた。スバル・レオーネ当時とうじ富士重工業ふじじゅうこうぎょうげんSUBARU)のフラグシップしゃという位置いちづけでありながらながらくOHVを採用さいようつづけ、1984ねんには1,800 ccエンジンのみSOHCされたものの、バルブ駆動くどう形式けいしきだけるならば他社たしゃいちだん以上いじょうおくれた状況じょうきょう展開てんかいしていた[注釈ちゅうしゃく 6]

オーバーホールリビルドがしやすく、とく二輪車にりんしゃディーゼルエンジンふく汎用はんようOHVエンジン全般ぜんぱんでは、タイミングチェーンがなく[注釈ちゅうしゃく 7]整備せいびしやすいてん長所ちょうしょとなる。日本にっぽん乗用車じょうようしゃ最後さいごまでOHVを採用さいようした車種しゃしゅは、一般いっぱん市販しはんしゃではガソリンしゃトヨタ・タウンエースワゴン/ライトエースワゴン、ディーゼルしゃダイハツ・ラガー、それ以外いがいでは2008ねん7がつ以前いぜんのモデルまで存在そんざいしていた3Y-PEがたLPGエンジンを搭載とうさいしたトヨタ・クラウンセダン/クラウンコンフォート/コンフォートである。

なお、大型おおがたトラックやバスに搭載とうさいされるディーゼルエンジン高速こうそく回転かいてんかないことから、相対そうたいてき堅牢けんろうかつ軽量けいりょう設計せっけい可能かのうなOHVが選択せんたくされることが一般いっぱんてきであったが、1990年代ねんだいごろからOHVすすみ、2021ねん時点じてんでの日本にっぽん自動車じどうしゃようOHVディーゼルエンジンは日野自動車ひのじどうしゃN04Cがたエンジン三菱みつびしふそうトラック・バス4V20がたエンジンのみとなっている[注釈ちゅうしゃく 8]

アメリカしゃにおけるOHVエンジンはコストダウンのなみされて徐々じょじょりつつあるが、ピックアップトラック優遇ゆうぐう税制ぜいせい[注釈ちゅうしゃく 9]とエンジンチューニングの容易たやすさ、とくにシリンダーブロックの頑丈がんじょうさゆえのターボチャージャーナイトラス・オキサイド・システムのようなパワーアップが容易よういであり、そういった車種しゃしゅをベースに制作せいさくされるホットロッドがカスタマイズの文化ぶんかとして定着ていちゃくしていることから、依然いぜんとしてOHVエンジン搭載とうさいしゃおお存在そんざいする。

シボレー・コルベットには、1980年代ねんだい末期まっきのC4がたに「ZR-1」とばれるDOHC搭載とうさいモデルが存在そんざいしたが、それ以降いこうはDOHCをはいし、現在げんざいいたるまですべてOHVとなっている。OHVのシリンダーヘッドはバルブとロッカーアームだけで構成こうせいされているため、どう排気はいきりょうという条件下じょうけんかであればSOHCおよびDOHCよりもエンジンそのものを小型こがた軽量けいりょうかつてい重心じゅうしんにできる。また、Vがたエンジンや水平すいへい対向たいこうエンジンでは、カムシャフトがDOHCでは4ほん、SOHCでも2ほん必要ひつようとなるが、OHVであれば1ほんむためエンジン内部ないぶ摩擦まさつ抵抗ていこうげやすく、重量じゅうりょうもコストもらせる。コルベットはエンジンフードがひくいシルエットもりのひとつであり、ぜんこうひくくできるOHVエンジンはそのシルエットの構成こうせい一役ひとやくっている。また「コルベットにはDOHCのようにこう回転かいてん馬力ばりきかせぐエンジンより、OHVのようにてい回転かいてんだいトルクによって馬力ばりきかせぐエンジンが似合にあう」といった思想しそう影響えいきょうしているものとされる。

クライスラー半球はんきゅうがた燃焼ねんしょうしつ由来ゆらいするヘミエンジンを21世紀せいき復活ふっかつさせた。これには、かずある自動車じどうしゃメーカーのなかで、自社じしゃのアイデンティティを前面ぜんめんし、他社たしゃとの差別さべつはかねらいがある。

現代げんだいのDOHCエンジンにおいては、位相いそう変化へんかタイプの可変かへんバルブタイミング機構きこう一般いっぱんてきとなっているが、OHVでは1ほんのカムシャフトで吸排気はいきバルブを駆動くどうする関係かんけいじょう吸気きゅうき位相いそう変化へんかさせた場合ばあい排気はいき位相いそうとも変化へんかするため、オーバーラップりょう変化へんかによる効果こうかられない。このためOHVでの採用さいようおくれたが、オーバーラップりょう変化へんかせずとも、負荷ふか回転かいてんすうにあわせバルブタイミングを最適さいてきすることで一定いってい効果こうか[注釈ちゅうしゃく 10]られるため、GMスモールブロックやHEMIなどのだい排気はいきりょうOHVエンジンにも可変かへんバルブタイミング機構きこう採用さいようされるようになっている。またマッスルカーなどふるいOHVしゃこうけするホットロッドけのアフターパーツも存在そんざいする。欧州おうしゅうでもベントレーのOHVエンジン[注釈ちゅうしゃく 11]可変かへんバルブタイミング機構きこう採用さいようしているれいがある。さらに近年きんねんではダッジ・バイパー(2009ねんモデル以降いこう)がじゅう構造こうぞう中空なかぞらカムシャフトをもちいることで、排気はいきのみ位相いそう変化へんかをさせる機構きこう採用さいようしている[注釈ちゅうしゃく 12]。バイパーでは排気はいきのみの位相いそう変化へんかとしているが、機構きこうじょう吸気きゅうきのみ位相いそう変化へんか、さらには吸排気はいきそれぞれの位相いそう変化へんか可能かのうであり、可変かへんバルブタイミング機構きこうかんしてのDOHCとのはある程度ていどげんじているといえる。

アメリカやイギリス、オーストラリアなどではOHVエンジンのプライベートチューンもさかんで、日本にっぽんでは1990年代ねんだいしょう燃費ねんぴがたエンジンからようやく採用さいようはじまったローラーロッカーアームが、比較的ひかくてきはや時期じきからチューニングパーツとして販売はんばいされていた。OHVエンジンのカムとリフター(タペット)のあいだにはこう荷重かじゅうがかかり、すべ摩擦まさつとなるフラットタペットなどではごくあつ条件じょうけんとなるためエンジンオイルにはある程度ていどたい摩耗まもうせいもとめられる。近年きんねんあたらしい規格きかくのエンジンオイルではたい摩耗まもうせい不足ふそくするケースもあるとされ、とくにバルブスプリングレートを強化きょうかしている場合ばあいはさらにたか荷重かじゅうがかかるため注意ちゅうい必要ひつようとなる。海外かいがいではフラットタペットOHVエンジンけにたい摩耗まもうせい強化きょうかしたエンジンオイルが設定せっていされていることもある。またローラーロッカーアームなどと同様どうよう摩擦まさつ摩耗まもう低減ていげんするためにローラーリフター仕様しようとするチューニングも一般いっぱんてきおこなわれている。

モータースポーツ

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モータースポーツでは、カーボンコンポジットのプッシュロッドももちいられた。B110/310けい日産にっさん・サニーは、レース仕様しようとしてA12がたエンジンをベースにプッシュロッドをカーボン素材そざいとし、10,000 rpmというこう回転かいてん実現じつげんしていた。これは当時とうじ市販しはんようエンジンベースではSOHCであっても達成たっせい不可能ふかのう数値すうちだった。

また、アメリカンモータースポーツの代表だいひょうかくといえるNASCARにおいては、原則げんそくとして参加さんかするくるまのエンジンがOHVに限定げんていされているため、トヨタ・タンドラのように市販しはんしゃではDOHCエンジンを搭載とうさいしているくるまがOHVにエンジンをかわそうして参加さんかしているれいもある[9]

インディ500においては、1994ねんペンスキーが3,400ccOHVターボのメルセデスエンジンで優勝ゆうしょうかざっている。当時とうじフォード・コスワース・DFSエンジンなどにおされ、旧式きゅうしきしていたビュイックエンジンの救済きゅうさいのために存在そんざいしたOHV優遇ゆうぐう規定きてい[注釈ちゅうしゃく 13][10]のっとかたちイルモアによりつくられたこのエンジンは、最高さいこう回転かいてんすう10,000rpm以上いじょうで1,000馬力ばりきえる出力しゅつりょく発揮はっきするOHVエンジン[注釈ちゅうしゃく 14]となった。

最高さいこう出力しゅつりょくNASCARもちいられている自然しぜん吸気きゅうきのエンジンで800馬力ばりきNHRAのトップフューエルクラスでもちいられているきゅうエンジンでは8,500〜10,000馬力ばりきと、非常ひじょうたか出力しゅつりょく発生はっせいさせている。

二輪車にりんしゃ

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オートバイようのOHVエンジン

オートバイにおいてはハーレーダビッドソン1936ねんのナックルヘッドエンジン以来いらい伝統でんとうてきにOHV形式けいしき空冷くうれいVがた2気筒きとうエンジンを搭載とうさいつづけていることがひろられている。ハーレーのエンジンは典型てんけいてきてい回転かいてんだかトルクがた設計せっけいで、当時とうじ競合きょうごう他社たしゃ車両しゃりょうもおおむねハーレーと同様どうよう状況じょうきょうであった。

ホンダスーパーカブ1958ねん昭和しょうわ33ねん)の発売はつばい開始かいしではOHVであったが、1964ねん昭和しょうわ39ねん)から排気はいきりょうごとで順次じゅんじSOHC実施じっしされ主力しゅりょくとなる50ccモデルは1966ねん変更へんこうされた。また、1977ねんにOHVながら4バルブを採用さいようしたVがた2気筒きとうエンジンを搭載とうさいしたホンダ・GL400/500市販しはんした。これはキャブレター内側うちがわんでライダーの膝元ひざもと余裕よゆうたせ、かつ吸排気はいき直線ちょくせんするために、シリンダー方向ほうこうをねじる目的もくてきであえてOHVを採用さいようし(ツイステッドOHVとしょうしている)、このエンジンは最高さいこう出力しゅつりょくを9,000rpmで発生はっせいし、やく10,000rpmまでまわった。

こう回転かいてん指向しこうでないクルーザーかたオートバイでは、近年きんねんではハーレーダビッドソンしゃほかヤマハ発動機やまははつどうきカワサキもVがた2気筒きとうエンジンを限界げんかいまで大型おおがたするにあたって、エンジンだかおさえるためにOHVを採用さいようしている。また、ホンダからは整備せいび事情じじょうわる東南とうなんアジア・南米なんべい諸国しょこくけにOHV125ccエンジンを搭載とうさいしたCG125やXR125Lが現在げんざいでも販売はんばいされている。なおスズキも2003ねんから2007ねんにかけて製造せいぞう販売はんばいしたチョイノリ専用せんよう設計せっけいのOHV50ccエンジンを採用さいようしていた。

航空機こうくうきようエンジン

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ライト R-1820 サイクロン 9

航空機こうくうきようレシプロエンジンにもとめられる性能せいのうは、ちゅうてい回転かいてんすういきでのたかいトルクである。これはプロペラにおいては、先端せんたん音速おんそくたっすると衝撃波しょうげきはによる効率こうりつ低下ていか発生はっせいするため、エンジンの回転かいてんをプロペラにつたえるさい変速へんそくもちいて回転かいてんすう一定いってい以下いかおさえる必要ひつようがあるからである。当然とうぜんながらエンジン回転かいてんすうたかいと変速へんそくもより大掛おおがかりなものとなり、効率こうりつわるい。したがって、前述ぜんじゅつされた高速こうそく回転かいてんいきにおけるOHV特有とくゆう問題もんだい発生はっせいない。また、空冷くうれいエンジンではシリンダが直列ちょくれつ配置はいちされることはまれで、とくほしがたエンジン場合ばあいは、OHCによるバルブ駆動くどう気筒きとうかず同数どうすうのカムシャフトとその駆動くどうけいとをはいすることになるため、設計せっけいとして現実げんじつてきでない。

汎用はんようエンジン

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べん機構きこうにOHVをもちいた石油せきゆ発動はつどうれい

OHVは、おな排気はいきりょうのSOHCエンジンとくらべて構造こうぞう単純たんじゅんなため整備せいびしやすく(とはいえSVほどではないが)、軽量けいりょう・コンパクトという利点りてんがあり、4ストロークエンジンによる自家じか発電はつでんポンプ農耕のうこうようとう汎用はんようエンジンといった自動車じどうしゃ以外いがい用途ようとでは主役しゅやく維持いじしている。しかし、一方いっぽう汎用はんようエンジン大手おおて本田技研工業ほんだぎけんこうぎょう2003ねん従来じゅうらい同社どうしゃのOHVエンジンより軽量けいりょうコンパクトな SOHCエンジン、GX35排気はいきりょう:35.8cc、おもに1インチエンジンポンプ、動力どうりょく散布さんぷかりばらよう)を発表はっぴょうし、つづいて2005ねんにもSOHCのiGX440排気はいきりょう:438cc)を発表はっぴょうするなどどうべん機構きこうをOHV からSOHCにえている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 三菱自動車みつびしじどうしゃジープジュピターなど、JH4がたエンジン搭載とうさいしゃのカタログの記述きじゅつ
  2. ^ こう出力しゅつりょくのためにバルブのストロークをおおきくとったハイリフトカムシャフトも「ハイカム」とりゃくされるが、まったくの別物べつものである。
  3. ^ 日本にっぽんせい自動車じどうしゃメーカーのハイカムシャフト方式ほうしきOHVエンジンのれい:トヨタ・KがたおよびDOHCヘッド仕様しようのぞTがた日産にっさん・Aがた三菱みつびし・4G4がたミンセイ・UDかくかたなど。ミンセイ・UDはユニフロー掃気ディーゼルエンジンのため、頭上ずじょうべんはすべて排気はいきべんである。
  4. ^ ちゅう排気はいきりょうクラスではトヨタ・15B-Fがた日野ひの・N04Cかたけい三菱みつびしふそう・4V20がたなどが、だい排気はいきりょうクラスでは三菱みつびしふそう・6D40がたなどがこれに該当がいとうする。
  5. ^ 4サイクルエンジンのみ
  6. ^ なお、スバルでも軽自動車けいじどうしゃようエンジンをふく排気はいきりょう1,200 cc以下いか直列ちょくれつエンジン市販しはんしゃはつ投入とうにゅう以降いこう一貫いっかんしてSOHCもしくはDOHCである。
  7. ^ ただし一部いちぶ自動車じどうしゃよう例外れいがいてきにタイミングチェーンやタイミングベルトもちいられる場合ばあいがある。
  8. ^ ただし、日本にっぽんにも輸入ゆにゅうされているスカニアのディーゼルエンジンはすべてOHVであったが、2023ねん11月に登場とうじょうしたスカニアSUPERはDOHCが採用さいようされた[7]
  9. ^ ピックアップトラックやSUVはライトトラック分類ぶんるいされ、アメリカでは関税かんぜいが25 パーセント[8]かかる。かつては日本にっぽんせい商用しょうようしゃにも自国じこく産業さんぎょう保護ほご名目めいもくたか関税かんぜいせられていたが、日米にちべい貿易ぼうえき摩擦まさつ関税かんぜいげられ、現在げんざい無税むぜいである。
  10. ^ たとえばていちゅう回転かいてんていちゅう負荷ふかおそかくすること吸気きゅうきおそじとなりポンピングロス低減ていげん排気はいきおそびらきになること膨張ぼうちょうエネルギーの有効ゆうこう回収かいしゅう排気はいきおそじで内部ないぶEGR導入どうにゅうができ、しょう燃費ねんぴせいはいガス清浄せいじょうせい向上こうじょう寄与きよする。これは一般いっぱん走行そうこうにおける負荷ふかひくだい排気はいきりょうしゃほど有効ゆうこうとなる。
  11. ^ ベントレー・ミュルザンヌ (2010)
  12. ^ 吸気きゅうきがわではなく排気はいきがわ可変かへんさせるのはだい排気はいきりょうだいトルクのバイパーでは吸気きゅうきがわ制御せいぎょせずともていちゅう回転かいてんでも十分じゅうぶん出力しゅつりょくがあるためメリットはすくなく、排気はいきがわ制御せいぎょによるしょう燃費ねんぴせいはいガス清浄せいじょう向上こうじょうほうがメリットがあるため。
  13. ^ 当時とうじ、DFSエンジンなどレース専用せんようDOHCエンジンは排気はいきりょうが2,660ccと規定きていされていたが、ビュイックエンジンなど市販しはんしゃようエンジンのブロックをもちいOHVかつ1気筒きとうあたり2バルブの場合ばあいかぎり、3,430ccまで排気はいきりょう拡大かくだいすることがゆるされていた。市販しはんしゃブロックのみのあいだはそれほど意味いみかったが、専用せんようブロックの使用しよう許可きょかされたことでメルセデスとイルモアの計画けいかくうごすことになる。
  14. ^ こう回転かいてんだか出力しゅつりょく実現じつげんするための機構きこう工夫くふう特徴とくちょうで、ロッカーアームにはスイングアームしきローラーロッカーアームを採用さいよう。ロッカーアームやバルブリフター支点してん接点せってんにはすべニードルローラーベアリングもちいるなど徹底てっていしたフリクションロス低減ていげんさくられた。DOHCのDFSエンジンがカムが4ほん必要ひつようだったのにたいし、OHVのメルセデスエンジンはカムが1ほんこと軽量けいりょううえおおきなとなった。

出典しゅってん

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  1. ^ GP企画きかくセンター 2000, p. 21.
  2. ^ GP企画きかくセンター 1999, p. 53.
  3. ^ GP企画きかくセンター 1999, p. 52.
  4. ^ 小野おの正樹まさき (2019ねん4がつ3にち). “【HVやEV全盛期ぜんせいき復権ふっけん希望きぼう】クルマかい化石かせき技術ぎじゅつ!?? なぜOHVエンジンはのこっているのか?”. 講談社こうだんしゃビーシー ベストカーWeb. 2019ねん8がつ13にち閲覧えつらん
  5. ^ GP企画きかくセンター 1999, p. 54.
  6. ^ a b きびしさを自動車じどうしゃ排出はいしゅつガス規制きせい柔軟じゅうなん対応たいおうするにあたっては、むしろSOHCないしはDOHCのほうが有利ゆうりである。
  7. ^ スカニアジャパン、物流ぶつりゅう業界ぎょうかい課題かだいいど新型しんがたSCANIA「SUPER」を発表はっぴょう”. 2024ねん12月13にち閲覧えつらん
  8. ^ 米国べいこくゆずれないトラックだか関税かんぜいのからくり 「light truck」とは (1/4ページ)」『SankeiBiz』(産経新聞さんけいしんぶんしゃ)2014ねん2がつ19にち2019ねん8がつ9にち閲覧えつらん
  9. ^ NASCAR 2014 レース車両しゃりょう解説かいせつ”. TOYOTA GAZOO Racing. 2019ねん2がつ20日はつか閲覧えつらん
  10. ^ 勝利しょうりのエンジン50せん」カール・ルドヴィクセンちょ 二玄社にげんしゃ 2004ねん11がつ10日とおか発行はっこう 211ページ

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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