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キャブレター - Wikipedia

キャブレター (えい: carburetor, carburettor) は、ガソリン液化えきか石油せきゆガスなどを燃料ねんりょうとする混合こんごう燃焼ねんしょう機関きかんにおいて燃料ねんりょう空気くうき混合こんごうする装置そうちである。フロートしき燃料ねんりょう噴射ふんしゃしきなどがある。ガソリンやメタノールのように常温じょうおんつねあつ液体えきたい燃料ねんりょうベルヌーイの法則ほうそく利用りようして吸入きゅうにゅう空気くうききりじょう散布さんぷして、噴霧ふんむ粒子りゅうし蒸発じょうはつすることで混合こんごうされる。日本語にほんごでは気化きかばれる場合ばあいもあり、太平洋戦争たいへいようせんそうまえ戦後せんごもなくのころカーブレーター表記ひょうきされることもあった[1]

Bendix-Technico せいの ストロンバーグしき1バレル ダウンドラフトキャブレターModel.BXUV-3と、部品ぶひん各部かくぶ名称めいしょう
1979ねんしき Evinrude Type I 船舶せんぱくようサイドドラフトキャブレター

概要がいよう

編集へんしゅう
 
キャブレターの基本きほん概要がいよう

キャブレターの語源ごげんは、「炭化たんか水素すいそ混合こんごうする」という意味いみ動詞どうし“carburet”に動作どうさぬし名詞めいし形成けいせいする接尾せつび“-or”または“-er”をくわえたものである[2]。ガソリンなどのように常温じょうおんつねあつ液体えきたい燃料ねんりょうもちいるものと、液化えきか石油せきゆガスLPG自動車じどうしゃ)や圧縮あっしゅく天然てんねんガス天然てんねんガス自動車じどうしゃ)のように気体きたい燃料ねんりょうもちいるものでは構造こうぞうことなる。

液体えきたい燃料ねんりょうようのキャブレターにおいて、燃料ねんりょうタンクからおくされた燃料ねんりょう燃料ねんりょうチャンバー(えい: fuel chamber)とばれる部屋へや一時いちじめられる。められた燃料ねんりょういちはしかるように、ジェットばれるほそかんもうけられ、もう一端いったんはエンジンの吸入きゅうにゅう空気くうき通過つうかするベンチュリ解放かいほうされている。ベンチュリは吸入きゅうにゅう空気くうきりゅう途中とちゅうほそしぼった構造こうぞうで、吸入きゅうにゅう空気くうきがベンチュリを通過つうかするとき流速りゅうそく増加ぞうかする。流速りゅうそく増加ぞうかした吸入きゅうにゅう空気くうきベルヌーイの定理ていりによりしずかあつ低下ていかする一方いっぽう燃料ねんりょうチャンバーない大気たいきあつたもたれているため、燃料ねんりょうチャンバーからベンチュリへと燃料ねんりょうされる。ジェットの出口でぐちちいさなあな、もしくはみぞじょうで、された燃料ねんりょう吸入きゅうにゅう空気くうききりじょう噴出ふんしゅつし、蒸発じょうはつしながら拡散かくさんして混合こんごうとなる。

気体きたい燃料ねんりょうもちいられるキャブレターは、吸気きゅうきかんしょうじるあつ作動さどうするダイアフラムアクチュエータにより燃料ねんりょうりゅうべん開閉かいへいし、吸気きゅうきかんおく燃料ねんりょうりょう調節ちょうせつする[3]

キャブレターよりも精密せいみつにエンジンの負荷ふかじょうきょうおうじたそらもえ混合こんごう形成けいせいできる燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうち普及ふきゅうし、燃費ねんぴ排出はいしゅつガス抑制よくせいたいする性能せいのう要件ようけんたかくなるにつれて、自動車じどうしゃやオートバイではキャブレターにわって燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうち(フューエルインジェクション)を採用さいようする車種しゃしゅ主流しゅりゅうとなった。レシプロエンジン搭載とうさいした航空機こうくうきではキャブレターと燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうちのいずれも使つかわれており、民間みんかん小型こがたではキャブレターがなが使つかわれて、燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうち移行いこうしたのは近年きんねん[いつ?]のことである。チェーンソーかりはらいなどのエンジンでは、燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうちくらべると電気でんき不要ふよう構成こうせい部品ぶひんすくなく、部品ぶひんコストがひくいキャブレターが使つかわれている。

種類しゅるい

編集へんしゅう
 
1961ねんしきフェラーリ・250TRスパイダーの、フェラーリ・コロンボ Type125 “テスタロッサ”エンジン。6のウエーバーせいダウンドラフト2バレルキャブレターが装備そうびされ、12気筒きとうのそれぞれに1バレルずつが混合こんごう供給きょうきゅうする。

液体えきたい燃料ねんりょうようのキャブレターは多様たよう形式けいしきがあり、ベンチュリのかず方向ほうこう機能きのうのほか、燃料ねんりょうチャンバーの方式ほうしきにより分類ぶんるいされる。

ベンチュリのかず

編集へんしゅう
 
ホーリーせいModel#2280 2バレルキャブレター
 
ホーリーせい高性能こうせいのう2ステージ4バレル・ダウンドラフトキャブレター

もっと単純たんじゅんなキャブレターはベンチュリが1個いっこであるが、よりおおくの混合こんごう効率こうりつよくエンジンに供給きょうきゅうするために複数ふくすうのベンチュリをそなえるものもある。1個いっこ場合ばあいシングルバレル複数ふくすう場合ばあいマルチバレルあるいはベンチュリのかず表現ひょうげんして2バレル4バレルばれる。また、エンジンの負荷ふか、すなわちエンジンにおくられる混合こんごうりょうおうじて2種類しゅるいのベンチュリが段階だんかいてきはたらくキャブレターがあり、ステージドキャブレターあるいは2ステージキャブレターばれる。これにたいし、エンジン負荷ふか全域ぜんいきを1つのベンチュリでまかなう方式ほうしきシングルステージキャブレターばれる。

たとえば、直列ちょくれつ4気筒きとうエンジンでシングルステージの2バレルキャブレターが2搭載とうさいされる場合ばあいや、Vがた8気筒きとうエンジンにシングルステージの4バレルキャブレターが2搭載とうさいされる場合ばあいがある。

ステージドキャブレターは、スロットルひらきおうじてメインバレル(プライマリーバレル)と、バレル(セカンダリーバレル)が段階だんかいてき作動さどうする。バレルは、メインバレルとどうみちかあるいはメインバレルより小径しょうけいで、リンク機構きこうやダイヤフラムアクチュエータにより動作どうさする。メインバレルとバレルを2くみった2ステージ4バレルキャブレターもある。ボアの直径ちょっけい相違そういやチョークバルブの有無うむなどで、外観がいかんからシングルステージの2バレルと判別はんべつ可能かのうである。アクセルひらきちいさいときはメインバレルのみをひらき、ベンチュリを通過つうかする空気くうき流速りゅうそく増加ぞうかさせてたかいベンチュリ効果こうか確保かくほする。アクセルひらきおおきいときはバレルもひらいて、よりおおくの混合こんごう供給きょうきゅうする。これにより、ひろ範囲はんい適切てきせつ混合こんごう形成けいせいする。ヤマハ・V-MAXのVブーストシステムもステージドキャブレターの一種いっしゅである。

ベンチュリの方向ほうこう

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吸気きゅうき方向ほうこうによる分類ぶんるい
1.サイドドラフト
2.アッパードラフト
3.ダウンドラフト
 
アッパードラフトのいちれい。1925ねんのPelapone PD6定置ていちエンジン
 
KPGC10がたスカイラインGT-RのS20がたエンジン。たてきエンジンにミクニソレックスせいサイドドラフト2バレルキャブレターを3連装れんそうしている。エアクリーナーボックスは純正じゅんせいでエンジンひだり前方ぜんぽうのグリル付近ふきんから走行そうこうふう吸気きゅうきおこなっている。

吸入きゅうにゅう空気くうきながれる方向ほうこうによって、ホリゾンタルドラフト(サイドドラフト)、アップドラフト、ダウンドラフトとばれる。

ホリゾンタルドラフト(サイドドラフト)
吸入きゅうにゅう空気くうきがキャブレター側面そくめんよりはいり、反対はんたいがわ混合こんごうおくされる。オートバイや船舶せんぱく用船ようせんがいでもこの形式けいしきおおい。
アップドラフト
吸入きゅうにゅう空気くうきがキャブレター下部かぶよりはいり、上方かみがた混合こんごうおくされる。自動車じどうしゃようとしては1930年代ねんだい以前いぜんふるいエンジンでおお利用りようされた。当時とうじ直列ちょくれつしきサイドバルブエンジンにたか位置いちのタンクからポンプなしで燃料ねんりょう重力じゅうりょく供給きょうきゅうする手法しゅほうおおられており、エンジンわきてい位置いちにキャブレターをき、サイドバルブエンジンのインテークに混合こんごうおくるレイアウトがおおく、これにアップドラフトしき構造こうぞうてきしていたことによる。気化きか効率こうりつやレスポンスにおいてサイドドラフトやダウンドラフトにおおきくおとるため、1940年代ねんだい以降いこう自動車じどうしゃようとしてはすたれていった。現在げんざいは、一部いちぶ航空機こうくうきようエンジンでこの形式けいしき使つかわれている。
ダウンドラフト
吸入きゅうにゅう空気くうきがキャブレター上部じょうぶよりはいり、下方かほう混合こんごうおくされる。キャブレターの配置はいちはエンジン直上ちょくじょうまたは側面そくめんだか位置いちとなり、燃料ねんりょうポンプをようするが、効率こうりつやレスポンスにすぐれることから、Vがた8気筒きとうエンジンやOHV方式ほうしき普及ふきゅうすすんだ1940年代ねんだい以降いこうのアメリカせい乗用車じょうようしゃひろ採用さいようされ、20世紀せいき後半こうはんにおける自動車じどうしゃよう世界せかいてき主流しゅりゅうとなった。1980年代ねんだい以降いこう燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうち一般いっぱんしたため姿すがたしていったが、軽自動車けいじどうしゃ廉価れんかグレードでは1990年代ねんだい中盤ちゅうばんまで、小型こがた普通ふつう自動車じどうしゃのごく一部いちぶ商用しょうようしゃでは2000年代ねんだい初頭しょとうまで、それぞれキャブレター仕様しよう存在そんざいしていた。

ベンチュリ形式けいしき種類しゅるい

編集へんしゅう
 
ウェーバーせい固定こていベンチュリキャブレター(55DCO-SPがた)
 
キムコせいスクーターようのCVがたキャブレター
 
ケイヒンせいピストンバルブがたキャブレター
 
強制きょうせい開閉かいへいしきいちれい、ケイヒンせいFCRスライドバルブがたキャブレター
固定こていベンチュリしき
スロットル操作そうさによらずベンチュリの開口かいこう面積めんせきつね一定いってい方式ほうしきである。
自動車じどうしゃようとしては高性能こうせいのうエンジンようウェーバーソレックスをはじめ、おおくのアメリカしゃ日本にっぽんしゃ一部いちぶのダウンドラフトキャブレターにみられる。今日きょうではこのタイプのキャブレターを製造せいぞうするメーカーはすくなくなっているが、日本にっぽん国内こくないではオーイーアール(OER)が旧式きゅうしきのソレックスなどの更新こうしんけにこのタイプのキャブレターの製造せいぞう販売はんばいつづけている。オートバイにおいては、ハーレーダビッドソン1989ねんまでこの形式けいしきのキャブレターを使用しようつづけていた。また、戦前せんぜんから戦後せんごあいだもなくにかけて使用しようされたリンカート(Linkart)キャブレターは、日本にっぽんせいりくおうでも日本にっぽん気化きかのライセンス生産せいさんひん搭載とうさいされていた。しかし、りくおう倒産とうさんした1960年代ねんだいからは、日本にっぽんせいオートバイではこの形式けいしきのキャブレターが採用さいようされることはなくなった。(よんりんでは固定こていベンチュリーしきりんでは可変かへんベンチュリーしき一般いっぱんてき
可変かへんベンチュリしき
ベンチュリの開口かいこう面積めんせき自動じどう変化へんかさせる方式ほうしきで、エンジン回転かいてん全域ぜんいきにわたって適切てきせつ吸気きゅうき流速りゅうそくられる。今日きょうまでのこるものではVMがたとCVがたの2方式ほうしき大別たいべつされる。
自動車じどうしゃにおいては、日立ひたち、ゼニス・ストロンバーグをはじめとするサイドドラフト・SUキャブレターもっと一般いっぱんてき使用しようされた。
ピストンバルブしき(VMがた
VM (Villiers Monoblock または Variable Manifold)がたでは ピストンバルブがスロットルとなり、空気くうき流量りゅうりょう調整ちょうせい同時どうじにベンチュリの開口かいこう面積めんせき変化へんかさせる。するどいエンジンレスポンスがられる一方いっぽう、エンジンがもとめる混合こんごう吸入きゅうにゅうりょうえてスロットルバルブをけると空気くうき流速りゅうそく低下ていかしてジェットからの燃料ねんりょう吐出としゅつりょうすくなくなる。このため、運転うんてんしゃ技能ぎのうによってエンジン性能せいのう左右さゆうされる。なお、あつしきたいして、ピストンバルブしき強制きょうせい開閉かいへいしき通称つうしょうすること一般いっぱんてきとなっているが、本来ほんらい強制きょうせい開閉かいへいしきはスロットルをひらがわだけでなく、がわもケーブルでく2ほんきスロットルのことであり、むしろあつしき一般いっぱんてきである。しかし現在げんざいではピストンバルブしき用語ようごとされることがおおい。
あつしき(CVがた
CV(Constant Velocity または Constant Vacuum)がたではスロットルは固定こていベンチュリーしきおなじく、空気くうき流量りゅうりょう調整ちょうせいするバタフライバルブを操作そうさする。ベンチュリはバキュームピストンによって開口かいこう面積めんせき自動的じどうてき変化へんかし、その下端かたんにはあなけられている。バキュームピストンにはダイアフラムしきではまくいており、まく片側かたがわには吸気きゅうきかんしょうじるあつがかかり、反対はんたいがわ大気たいき開放かいほうされている。バキュームピストンはばねで支持しじされ、ばねのちからあつのバランスでベンチュリの開口かいこう面積めんせき流量りゅうりょうおうじて自動的じどうてきまり、流量りゅうりょうわらなければ流速りゅうそくがほぼ一定いっていになるように自動じどう調節ちょうせつされる。この仕組しくみのため吸入きゅうにゅうあつちいさな2ストロークエンジンにはてきさない。ベンチュリの開口かいこう面積めんせきはスロットル操作そうさ直接的ちょくせつてき影響えいきょうけないため、エンジン出力しゅつりょくのスロットルにたいするレスポンスはほかの方式ほうしきよりもゆるやかである。
過渡かと特性とくせい操縦そうじゅうせいおおきく影響えいきょうするオートバイにおいては、インジェクションが普及ふきゅうするまでは2ストロークしゃ競技きょうぎようしゃ、および原付げんつきなどしょう排気はいきりょうしゃのぞけば一般いっぱんてき存在そんざいであった。
その
上記じょうきの2形式けいしき該当がいとうしないものとして、フォード開発かいはつしたVV(Variable Venturi)がたげられる。この形式けいしき固定こていベンチュリがたダウンドラフトキャブレターをベースに、スロットルポジションセンサーでスロットルバルブのひらき監視かんししながら、メータリングロッドのいた可動かどうしきベンチュリをサーボモーターでうごかしてベンチュリみち常時じょうじ変化へんかさせていく[4]。「MOTORCRAFT.VV」の商品しょうひんめいられ、1977ねんから1991ねんまで、おもピックアップ大型おおがたトラック中心ちゅうしん搭載とうさいされた。ステージド・マルチバレルキャブレターが主流しゅりゅうであったアメリカでもフォードの一部いちぶ車種しゃしゅのみの採用さいようわった。

燃料ねんりょうチャンバーの種類しゅるい

編集へんしゅう
 
1950年代ねんだいのホーリーせい“Visi-Flo” Model.1904キャブレターのフロートしつ。ガラスせいフロートチャンバーがもちいられていた

燃料ねんりょうチャンバーは、ジェットへの安定あんていした燃料ねんりょう供給きょうきゅうたもつために一時いちじてき燃料ねんりょうめておく構造こうぞうである。燃料ねんりょうめるりょう調節ちょうせつする方式ほうしきには、うわき(フロート)を利用りようしてえきめんたもフロートチャンバーと、ダイヤフラムを利用りようしてチャンバーない燃料ねんりょう一定いっていたもダイヤフラムチャンバーがある。

フロートチャンバー
燃料ねんりょうチャンバーのなかには真鍮しんちゅう樹脂じゅし、あるいはコルクなどでつくられたフロートが内蔵ないぞうされており、チャンバーないたされている燃料ねんりょうえきめんあぶらめん)におうじて上下じょうげうごく。フロートにはフロートバルブばれるべん連動れんどうしてうごくようにけられ、燃料ねんりょうタンクからおくられてくるりゅう開閉かいへいする。燃料ねんりょうがチャンバーないまるとフロートが上昇じょうしょうしてフロートバルブをげ、燃料ねんりょう流入りゅうにゅうするりゅうじる。燃料ねんりょう消費しょうひされて、チャンバーないあぶらめんがるとフロートが下降かこうして、フロートバルブがひらく。この一連いちれん動作どうさにより、チャンバーないあぶらめんたかさが一定いっていたもたれる。フロートチャンバーない大気たいきあつになるように外部がいぶとの通気つうきせい確保かくほされ、通気つうきあなにはエアベントチューブそなえられている場合ばあいもある。
フロートチャンバーないあぶらめん調整ちょうせいでき、フロートのアームをげたり、フロートのめネジを調整ちょうせいしたりといった方法ほうほうで、フロートバルブがじるあぶらめんたかさがえられる。
金属きんぞくせいフロートの腐食ふしょくによるあなあきや樹脂じゅしせいフロートの燃料ねんりょうみによって浮力ふりょく低下ていかし、混合こんごうとなったり燃料ねんりょうのオーバーフローがこることがある。この場合ばあいはフロートを交換こうかんすることになるが、チャンバーを分解ぶんかいしなければ発見はっけんできないため、異常いじょうづきにくい。
ダイヤフラムチャンバー
チェーンソーかりはらいなどのつエンジン機器ききでは、機器きき保持ほじする角度かくどによってキャブレターがおおきくかたむ場合ばあいがある。フロートチャンバーは原理げんりじょうおおきくかたむいた状態じょうたいでは正常せいじょう動作どうさしないため、こうした機器ききにおいてはダイヤフラムチャンバーがもちいられている。ダイヤフラムとは柔軟じゅうなんせいたか材質ざいしつつくられたまくじょう部品ぶひんで、燃料ねんりょうタンクから燃料ねんりょうすポンピングダイヤフラムと、燃料ねんりょうチャンバーへの流入りゅうにゅう経路けいろ開閉かいへいするメタリングダイヤフラムがある。ポンピングダイヤフラムはエンジンが始動しどうすると吸入きゅうにゅうあつ脈動みゃくどうによりたわみをかえして燃料ねんりょうをチャンバーへおくむ。メータリングダイヤフラムは燃料ねんりょうチャンバーの隔膜かくまくとしてまれ、一方いっぽう大気たいきあつたもたれている。メータリングダイヤフラムにはメータリングレバーをかいして、チャンバー流入りゅうにゅう経路けいろ開閉かいへいするインレットニードルが連動れんどうするようにけられている。エンジン停止ていしちゅうはばねのちからによりインレットニードルがじてチャンバーに流入りゅうにゅうする燃料ねんりょうめているが、エンジンが始動しどうしてチャンバーない燃料ねんりょう消費しょうひされると大気たいきあつされたダイヤフラムバルブがインレットニードルをひらき、チャンバーない燃料ねんりょう補充ほじゅうする。こうしてチャンバーないあぶらりょう一定いっていたもたれる。
ポンピングダイヤフラムは、エンジンが停止ていしちゅう燃料ねんりょうおくることができないため、機種きしゅによってはそらになった燃料ねんりょうチャンバーに手動しゅどう燃料ねんりょうおくプライミングポンプそなえる場合ばあいがある[5]

電子でんし制御せいぎょしきキャブレター

編集へんしゅう

アメリカや日本にっぽんでは1980年代ねんだい前半ぜんはんから、O2センサーそらもえ信号しんごうわせて、ECUによって制御せいぎょされる電子でんし制御せいぎょしきキャブレター(ECC)[6]比較的ひかくてき安価あんかなNAしゃ中心ちゅうしんひろまった。

きっかけとなったのは、アメリカでのマスキーほう改正かいせいCAFE(企業きぎょうべつ平均へいきん燃費ねんぴ規制きせい)の開始かいし、および昭和しょうわ53ねん排出はいしゅつガス規制きせい1978ねん昭和しょうわ53ねん)に日本にっぽん施行しこうされたことであった。それまでのはいガス浄化じょうか装置そうちペレット触媒しょくばいくらべると高価こうか耐久たいきゅうせいおとり、排気はいき効率こうりつわる方式ほうしき(サーマルリアクターなど)が主流しゅりゅうであった。日本にっぽんではよく1979ねん昭和しょうわ54ねん)にしょうエネほう制定せいていされ、自動車じどうしゃ各社かくしゃさんげん触媒しょくばい基礎きそにO2センサーによるフィードバック制御せいぎょおこな方式ほうしき転換てんかんし、燃費ねんぴはいガス対策たいさく両立りょうりつできるようになった。

ECCよりも以前いぜん電子でんし制御せいぎょしき燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうち(EFI)は登場とうじょうしていたが、ECCは既存きそんのキャブレター仕様しよう部品ぶひん構成こうせいおおきくえる必要ひつようがなく、インジェクター燃料ねんりょうポンプなどの高価こうか電子でんし機器きき必要ひつようないため、EFIと比較ひかくして安価あんかであった。また、ECUが故障こしょうしても走行そうこう不能ふのうにはおちいらないことも長所ちょうしょであった[7]。ECCはこうした長所ちょうしょ背景はいけいに、1980年代ねんだい各国かっこくはいガス規制きせい十分じゅうぶん対応たいおうできたことから、廉価れんか車両しゃりょう中心ちゅうしん幅広はばひろ採用さいようされた。しかし、1990年代ねんだい中盤ちゅうばん以降いこうになると燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうち価格かかく量産りょうさん効果こうかにより大幅おおはば低下ていかし、はいガス規制きせいさら強化きょうかされる傾向けいこうとなったことから、こうした電子でんし制御せいぎょしきキャブレターは現在げんざいでは採用さいようされなくなった。

自動車じどうしゃとう

編集へんしゅう
 
二輪車にりんしゃのキャブレター(矢印やじるし
 
キャブレターのフロート(矢印やじるし
 
オートバイようキャブレターのメインジェットのいちれい
 
1990ねんしき日産にっさん・マイクラ(マーチ)のMA10Sエンジン。円盤えんばんがたのエアクリーナーボックスのしたにダウンドラフトキャブレターを搭載とうさいしている。

ガソリンエンジンを搭載とうさいした自動車じどうしゃやオートバイではふるくからキャブレターが利用りようされてきたが、自動車じどうしゃ排出はいしゅつガス規制きせい性能せいのうへの要求ようきゅうたかまるにつれて燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうち(フューエルインジェクション)が採用さいようされるようになった。先進せんしんこく新規しんき販売はんばい登録とうろくされる自動車じどうしゃはほとんどが電子でんし制御せいぎょ燃料ねんりょう噴射ふんしゃ採用さいようしており、キャブレターはガソリンエンジン自動車じどうしゃ主流しゅりゅうではなくなった。日本にっぽん販売はんばいされる市販しはんしゃ最後さいごにキャブレターを搭載とうさいしていたのは、軽自動車けいじどうしゃではスズキ・キャリイ(10代目だいめ最初さいしょの1ねんのDA52Tまで。)、(広義こうぎの)普通ふつうしゃでは2002ねん12がつまで生産せいさんされていた三菱みつびし・リベロカーゴ(CB1V・CB2V)だった。オートバイでは4りん自動車じどうしゃにややおくれてフューエルインジェクションの採用さいようひろがった。比較的ひかくてき排気はいきりょうおおきな車種しゃしゅでは燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうち主流しゅりゅうとなったが、発展はってん途上とじょうこくけでしょう排気はいきりょう車種しゃしゅではキャブレターを採用さいようする車種しゃしゅすくなくない。日本にっぽんでは、原付げんつきふくむオートバイも2006ねんから排出はいしゅつガスの規制きせい対象たいしょうとなり、燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうちへの移行いこうすすんだ。

自動車じどうしゃやオートバイでは車両しゃりょう製造せいぞう搭載とうさいされる純正じゅんせいのキャブレターのほかに、純正じゅんせいひんえて利用りようするアフターマーケットせいのキャブレターがある。アフターマーケットひん構成こうせい部品ぶひん交換こうかんしてメインジェットやスロージェットなどをこまかく調整ちょうせいできるのにたいし、純正じゅんせいひんのほとんどが車種しゃしゅごとに設計せっけいされているせん用品ようひん調整ちょうせいよう交換こうかん部品ぶひんがない場合ばあいや、あってもアフターマーケットひんくらべると調整ちょうせい可能かのう項目こうもくすくなく、調整ちょうせいはばせま場合ばあいおおい。

自動車じどうしゃでは「ツインキャブ」や「6れんキャブ」などといった用語ようごもちいて、その車種しゃしゅ訴求そきゅうりょくたかめたりする場合ばあいがあるが、これらは搭載とうさいされるキャブレターのかずしめしている。たとえば、直列ちょくれつ4気筒きとうエンジンにシングルステージ2バレルキャブレターを2搭載とうさいして「ツインキャブ」とんだり、6気筒きとうエンジンにシングルバレルキャブレターを6搭載とうさいして「6れんキャブ」とされる。オートバイではかく気筒きとうに1つずつのキャブレターを搭載とうさいする車種しゃしゅ一般いっぱんてきで、訴求そきゅうりょくのある用語ようごとしてはもちいられない。

自動車じどうしゃやオートバイにもちいられるキャブレターはひろ範囲はんいのエンジン回転かいてん速度そくど、あるいはひろ範囲はんい負荷ふか対応たいおうするため、複雑ふくざつ機能きのうもとめられる。スロットルひらきおうじて適正てきせいりょう混合こんごう生成せいせいするだけでなく、エンジンの負荷ふか状態じょうたいおうじて空気くうき燃料ねんりょう混合こんごうそらもえ)を適切てきせつ調整ちょうせいする機構きこうまれる。また、排出はいしゅつガス規制きせい適用てきようされるようになると、はいガスちゅう有害ゆうがい成分せいぶん濃度のうどおさえるように補正ほせいする機能きのうくわえられるようになった。

キャブレターの基本きほん構造こうぞうの1つである「ジェット」は、機能きのうおうじてことなる位置いちみちのものがそなえられていて、「アイドリング系統けいとう」や「スロットル系統けいとう」などとけられている。一部いちぶ機構きこうはスロットルひらきおうじて動作どうさするように、リンク機構きこう吸入きゅうにゅうあつもちいたダイヤフラムアクチュエータで作動さどうするほか、電子でんし制御せいぎょキャブレターではサーボ機構きこうにより作動さどうする。

メイン系統けいとう

編集へんしゅう

メイン系統けいとうはスロットル系統けいとうともばれ、ちゅうそく回転かいてん部分ぶぶん負荷ふかいき)から高速こうそく回転かいてんこう負荷ふかいき)で燃料ねんりょうおく経路けいろで、メインジェット、ニードルジェットホルダ(メインエアブリードと一体いったい)、ジェットニードル、ニードルジェットおよびメインエアジェットで構成こうせいされる。ジェットニードルはほそ円錐えんすいじょう部品ぶひんで、円筒えんとうがたのニードルジェットホルダにまれている。スロットルバルブの開閉かいへいおうじて、ジェットニードルが上下じょうげしてニードルジェットホルダとの隙間すきま変化へんかし、おくされる燃料ねんりょうりょうわる。

キャブレターによっては、1個いっこ以上いじょう小径しょうけいブースターベンチュリ(追加ついかベンチュリ)が、メインベンチュリの内部ないぶ設置せっちされ、スロットルバルブ微動びどうにおけるメインベンチュリ流速りゅうそく変化へんかのろさをおぎなっている。

アイドリング系統けいとう

編集へんしゅう

スロー系統けいとうともばれ、アイドリングなどの低速ていそく回転かいてん燃料ねんりょうおく経路けいろで、スロージェット(アイドリングジェット、パイロットジェット)、スロージェットホルダ、バイパスポート、アイドルポート、スローエアジェットで構成こうせいされる。スロットルバルブが完全かんぜんじている位置いちからわずかにひらかれるとき、スロットルバルブの下流かりゅう高速こうそく気流きりゅう発生はっせいするため、スロージェットはこの位置いちもうけられる。   スロージェットのりゅう面積めんせき変化へんかしないが、スロットルバルブがひらかれるとスロージェット付近ふきん流速りゅうそく低下ていかして、燃料ねんりょうされる作用さようちいさくなる。すなわち、ちゅう高速こうそく回転かいてんではアイドリング系統けいとうはたらかなくなる。

スロットルバルブをアイドリングにてきしたひらき固定こていするための機構きこうとして、アイドリングアジャストスクリューばれるネジがそなけられている。このネジをむことでスロットルバルブはよりひらき(アイドリング回転かいてんすうがる)、ゆるめることでスロットルバルブはよりじる(アイドリング回転かいてんすうがる)。

パワージェット

編集へんしゅう

パワージェット(パワーバルブ)は、こう回転かいてんだか負荷ふかにメインジェットからの燃料ねんりょう供給きょうきゅう補助ほじょする機構きこうである。スロットルバルブ全開ぜんかい付近ふきん領域りょういきそらもえくして出力しゅつりょくたかくする。同時どうじに、そらもえたかくすると混合こんごう比熱ひねつちいさくなるうえ、燃料ねんりょう気化きかねつえるので燃焼ねんしょうしつ過熱かねつふせぐ(燃料ねんりょう冷却れいきゃくという)。これにより、プレイグニッションデトネーションふせはたらきがある。パワージェットは、吸気きゅうき管内かんない圧力あつりょくとスプリングで開閉かいへい制御せいぎょされるバルブで、吸気きゅうき管内かんないあつつよときじており、スロットルバルブがひらいてあつよわくなるとひらくようになっている。

パワージェットはそのエンジンの特性とくせいおうじて補正ほせいする燃料ねんりょうりょう厳密げんみつ設定せっていされるため、オートバイようキャブレターなどの場合ばあいにはあらかじめ設定せってい固定こていされており、一部いちぶ市販しはんレーサー車両しゃりょう[8]のぞいて調整ちょうせい不可能ふかのう場合ばあいおおい。

初期しょきの2ストロークエンジンにもちいられたパワージェットのなかには、4ストロークエンジンのパワージェットとはぎゃくに、吸気きゅうき管内かんないつよあつ状態じょうたいのときにひらき、よわくなるとじる設定せっていのものがもちいられているキャブレターが存在そんざいした。これは、全開ぜんかい領域りょういき混合こんごうがややうすめになることで、よりこう回転かいてんまで回転かいてんびていく2ストロークエンジンの特性とくせいかしたものである。このような動作どうさをするキャブレターの場合ばあいには、常用じょうよう回転かいてんいきではつねにパワージェットから燃料ねんりょう供給きょうきゅうされるため、メインジェットはパワージェットがないどうサイズのキャブレターよりもややうすめの番手ばんて選択せんたくされる。しかし、エンジンだか回転かいてんいき過度かどにパワージェットからの燃料ねんりょう供給きょうきゅうらすとエンジンきのリスクがおおきくなる。近年きんねんの2ストロークエンジンのパワージェットはもっとシンプルな構成こうせいであり、バルブはなく、フロートしつから上流じょうりゅうがわ天井てんじょう部分ぶぶんにバイパスがもうけられているだけである。これにより、吸入きゅうにゅうあつおおきくなったときのみ、燃料ねんりょうされる。

いくつかの固定こていベンチュリーがたキャブレターではパワージェットのわりとなるこう回転かいてんだか負荷ふか増量ぞうりょう機構きこうとして、可変かへんベンチュリーがたのジェットニードルとおなメータリングロッドステップアップロッドばれる機構きこうもちいるものもある。メータリングロッドとは全体ぜんたいがテーパーじょう加工かこうされているぼうであり、メインジェットにある燃料ねんりょう通路つうろあなまれている。メインジェットのりゅう面積めんせき不変ふへんであるため、メータリングロッドを出入でいりさせると燃料ねんりょう通路つうろだん面積めんせき変化へんかさせることができる。メータリングロッドは吸入きゅうにゅうあつにより上下じょうげするバキュームピストン(ダイアフラム)もしくはスロットルリンケージにけられており、スロットルバルブをひらくとメインジェットから強制きょうせいてきかれて、メインジェットの燃料ねんりょう流量りゅうりょう次第しだい増量ぞうりょうしていく。

加速かそくポンプ

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パワージェットがこう回転かいてんいきでの全般ぜんぱんてき燃料ねんりょう増量ぞうりょう補正ほせいおこなうのにたいして、加速かそくポンプは加速かそくなどでスロットルバルブが急速きゅうそくひらかれたさい補正ほせいする。

チョーク系統けいとう

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スターター系統けいとうともばれ、エンジン始動しどうそらもえくする機構きこうである。チョークのわりにティクラーもちいられる場合ばあいもある。自動車じどうしゃようのキャブレターではオートチョーク機構きこうまれている場合ばあいもあり、オートチョークを動作どうささせる操作そうさとしてエンジンを始動しどうするまえにアクセルをすうかいむことがユーザーマニュアルに記載きさいされていた。

 
EFEヒーターを裏面りめんからみたところ。1985ねんしきオールズモビル・Cutlass Supreme Broughamの2バレルダウンドラフトキャブレターにもちいられていたもの。

一部いちぶ車両しゃりょうひやあいだ始動しどう始動しどうせい向上こうじょう目的もくてき初期しょき燃料ねんりょう気化きか促進そくしん装置そうち(EFE)ばれる機構きこうつものがある。これはインテークマニホールドとキャブレターのあいだはさまれる格子こうしじょう電熱でんねつヒーターであり、燃料ねんりょう気化きかをより促進そくしんする効果こうかがある。

キャブレターときゅう(キャブターボ)

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キャブレターにきゅうける場合ばあいには、スロットルバタフライがキャブレター本体ほんたい内蔵ないぞうされている関係かんけいじょう通常つうじょうきゅうインテークマニホールドあいだにキャブレターがかれる。キャブレターのフロートチャンバーにもブーストがかれば、ベンチュリにブーストがかってもフロートの動作どうさには問題もんだいはない

Vがた8気筒きとうエンジンにスーパーチャージャー搭載とうさいする場合ばあいきゅううしろにキャブレターをけるレイアウトにくらべて構成こうせいじょうバックタービンが発生はっせいしないメリットがあるとされるが、きゅう内部ないぶ混合こんごうまれ圧縮あっしゅくされる。

1962ねんしきシボレー・コルヴェアの「モンザ・スパイダー」キャブターボエンジン
1968ねんしきAMC・AMXのドラッグレース仕様しよう

キャブレターの調整ちょうせい

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混合こんごうにおける空気くうき燃料ねんりょう比率ひりつそらもえばれ、たとえばガソリンの場合ばあいは14.7が理論りろんそらもえであるが、環境かんきょう条件じょうけんによってことなる空気くうき密度みつどおうじて燃料ねんりょうおくりょう調整ちょうせいしたり、運転うんてん条件じょうけんによっては理論りろんそらもえとはことなるそらもえ混合こんごうおく必要ひつようがある。キャブレターでは燃料ねんりょう空気くうきりゅう調整ちょうせいすることで状況じょうきょうおうじてそらもえ調整ちょうせいできる。航空機こうくうき場合ばあい高度こうどによって空気くうき密度みつど変化へんかするため、操縦そうじゅうしつないそらもえけいともにキャブレターを調整ちょうせいする操作そうさばんもうけられていることもおおい。メイン系統けいとうではジェットニードルの固定こてい位置いち変化へんかさせてニードルジェットホルダとの隙間すきま変化へんかさせたり、メインジェットを内径ないけいおおきなもの交換こうかんしたりする。アイドリング系統けいとうではパイロットスクリュなどのニードルバルブで流量りゅうりょう調整ちょうせいされる。場合ばあいによってはブースターベンチュリを交換こうかんしたり、フロートめん調整ちょうせいおこなわれる。1つのエンジンに複数ふくすうあつがたキャブレターが装備そうびされている場合ばあいあつけいもちいて、すべてのキャブレターでスロットルバルブが同調どうちょうするように調整ちょうせいされる。

キャブレターのそらもえ最適さいてきかどうかを確認かくにんするためには、ガス分析ぶんせき装置そうち使用しようして排気はいきガスにふくまれる一酸化いっさんか炭素たんそ炭化たんか水素すいそおよび酸素さんそ含有がんゆうりょう測定そくていする方法ほうほうがあるが、点火てんかプラグ碍子がいし電極でんきょくしょくることである程度ていどまでそらもえ推測すいそくすることが可能かのうである。もしもプラグの碍子がいし乾燥かんそうしてくろすすけている場合ばあいにはもえ調ちょうすぎることをしめし、しろうすいグレーをしめしている場合ばあいにはもえ調ちょううすすぎることをしめしていて、きつねしょく茶色ちゃいろちかいグレーが最適さいてき燃焼ねんしょう状態じょうたいとされている。あるいはガラスじょう透明とうめい碍子がいし点火てんかプラグとおして燃焼ねんしょうしつほのお直接ちょくせつする方法ほうほうがある[9]

特有とくゆう不具合ふぐあい

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ランオン (えい: run-on)
燃焼ねんしょうしつうちすす堆積たいせきしたエンジンでは、メインスイッチをってもエンジンの運転うんてんつづく、ランオンばれる現象げんしょう発生はっせいする場合ばあいがある。点火てんかプラグへの電力でんりょく供給きょうきゅうめても燃焼ねんしょうしつないでくすぶりつづけるすすが火種ひだねとなって混合こんごう点火てんかし、キャブレターは吸入きゅうにゅう空気くうきがベンチュリにながれるかぎ燃料ねんりょうおくすため、燃料ねんりょうチャンバーないそらになるまでエンジンの運転うんてんつづく。点火てんかプラグによらない爆発ばくはつであることからディーゼリング (えい: dieseling)ともばれる。
オーバーフロー (えい: overflow)
フロートチャンバーを利用りようしたキャブレターでは、燃料ねんりょうチャンバーからあふれて外部がいぶやベンチュリに燃料ねんりょうながす、オーバーフローという現象げんしょう発生はっせいすることもある。フロートバルブのたかさが適切てきせつ調整ちょうせいされていない場合ばあいや、フロートやフロートじくなどフロートバルブの動作どうさ関連かんれんする部品ぶひん異常いじょうがある場合ばあいに、フロートチャンバーに流入りゅうにゅうするに燃料ねんりょう過剰かじょうとなってあふれす。あるいは、オートバイなどで転倒てんとうしたさいに、燃料ねんりょうチャンバーからベンチュリに燃料ねんりょう過剰かじょうなが場合ばあいもある。重度じゅうどなオーバーフローはシリンダーない燃料ねんりょうまる。
アイシング (えい: icing)
冬期とうき上空じょうくう飛行ひこうちゅうなど、環境かんきょう温度おんどひくいときには空気くうきちゅう水分すいぶん凍結とうけつしてキャブレターの機能きのう阻害そがいする場合ばあいもある。燃料ねんりょう気化きかするさい気化きかねつ周囲しゅうい空気くうき部品ぶひんからねつうばい、温度おんど低下ていかして結氷けっぴょうする。こおりはジェットるいふさいできりおこなえなくなったり、スロットルバルブにいてエンジン回転かいてんげられなくなる場合ばあいもある。これをふせぐため、インテークマニホールドのキャブレター直下ちょっかエキゾーストマニホールド一体化いったいかさせて排気はいきねつ利用りようしたり、エンジンであたためられた冷却れいきゃくすい電熱でんねつでキャブレター本体ほんたいあたためる対策たいさくっているものもある。
パーコレーション (えい: percolation)
周辺しゅうへん温度おんどたか状況じょうきょうなどで燃料ねんりょうタンク、燃料ねんりょうポンプ配管はいかん、キャブレターなどの温度おんどたかくなると、燃料ねんりょうけいのどこかでガソリン蒸気じょうき発生はっせいして気泡きほうとなるパーコレーション発生はっせいする。パーコレーションがこると混合こんごううすくなり、エンジンがいききをこして運転うんてんつづけられなくなる。一度いちどこると燃料ねんりょうけい温度おんどげる以外いがい回避かいひする方法ほうほうはない。
加速度かそくど方向ほうこうによる不具合ふぐあい
キャブレターの動作どうさ重力じゅうりょくなどの加速度かそくど依存いぞんしている。設計せっけいじょう想定そうていことなるきに加速度かそくどがかかると燃料ねんりょう供給きょうきゅう途切とぎれるため、航空機こうくうきでは背面はいめん飛行ひこう制限せいげん時間じかんがある。解決かいけつさくとしては、イギリス・ロイヤル・エアクラフト・エスタブリッシュメントベアトリス・シリング考案こうあんしたミス・シリングのオリフィス搭載とうさいや、燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうちへのえなどがある。

おもなキャブレター製造せいぞうメーカー

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日本にっぽん

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  • Pierburg(ボルボフォルクスワーゲンアウディ純正じゅんせいキャブレターを製造せいぞうしていた)
  • Villiers英国えいこくのオートバイや小型こがたエンジンけキャブレターメーカー)
  • ウェーバーイタリアのメーカー。現在げんざいスペイン製造せいぞうマニエッティ・マレリ傘下さんか
  • アマル英国えいこくのオートバイけキャブレターメーカー )
  • ゼニス英国えいこくのメーカー。ストロンバーグしきキャブレターの元祖がんそでもある)
  • スキナーズ・ユニオンえい連邦れんぽうおよびヨーロッパけん幅広はばひろ使用しようされたSUしきキャブレターの本家ほんけ本元ほんもと
  • デロルト(イタリアのメーカー。イタリア製いたりあせい自動車じどうしゃやオートバイにひろ採用さいようされる)
  • ソレックスフランスのメーカー。日本にっぽんでは高性能こうせいのうキャブレターの代名詞だいめいしてき存在そんざいだが、現在げんざい消滅しょうめつ
  • Argelite(ホーリーとマニエッティ・マレリのアンダーライセンスのもとで、アルゼンチン市場いちばにキャブレターを出荷しゅっかするメーカー)

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ フォード V-8 新型しんがたカーブレーターカタログ[リンク]
  2. ^ Random House Dictionaryより。
  3. ^ Principles of Gas Carburetion”. Alternate Fuels Technologies, Inc. 2014ねん2がつ5にち閲覧えつらん
  4. ^ Ford Motercraft 2バレルキャブレターのパーツリスト
  5. ^ [1]
  6. ^ 電子でんし制御せいぎょキャブのいちれいであるホンダ・PGM-CARB
  7. ^ 排出はいしゅつガス対策たいさく中心ちゅうしんにしたスバルエンジンの開発かいはつ 山岸やまぎし曦一 - 社団しゃだん法人ほうじん自動車じどうしゃ技術ぎじゅつかい
  8. ^ HRCによる RS125R/RS250Rのパワージェット設定せっていほう説明せつめい
  9. ^ Colortune”. Autoexpertproducts.com. 2009ねん9がつ5にち閲覧えつらん[リンク]
  10. ^ Expolded view”. Lectronfuelsystems.com. 2009ねん9がつ5にち閲覧えつらん

特許とっきょ関係かんけい

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参考さんこう文献ぶんけん

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外部がいぶリンク

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