クルースン (小惑星)

クルースン （クルイシン他た） 3753 Cruithne
パウエル天文台てんもんだいで撮影さつえいされたCruithne
仮かり符号ふごう・別名べつめい	1986 TO
分類ぶんるい	地球ちきゅう近傍きんぼう小惑星しょうわくせい
軌道きどうの種類しゅるい	アテン群ぐん （火星かせい横断おうだん 金星かなぼし横断おうだん）
発見はっけん
発見はっけん日び	1986年ねん10月がつ10日とおか
発見はっけん者しゃ	ダンカン・ワルドロン
軌道きどう要素ようそと性質せいしつ 元もと期き:2008年ねん5月がつ14日にち (JD 2,454,600.5)
軌道きどう長ちょう半径はんけい (a)	0.998 AUえーゆー
近日きんじつ点てん距離きょり (q)	0.484 AUえーゆー
遠日点えんじつてん距離きょり (Q)	1.511 AUえーゆー
離はなれ心しん率りつ (e)	0.515
公転こうてん周期しゅうき (P)	1.00 年ねん （363.99 日にち）
平均へいきん軌道きどう速度そくど	29.82 km/s
軌道きどう傾斜けいしゃ角かく (i)	19.81 度ど
近日きんじつ点てん引数ひきすう (ωおめが)	43.74 度ど
昇のぼり交点こうてん黄き経けい (Ωおめが)	126.29 度ど
平均へいきん近きん点てん角かく (M)	134.76 度ど
物理ぶつり的てき性質せいしつ
直径ちょっけい	5 km 以下いか
質量しつりょう	1.3 ×1014 kg
平均へいきん密度みつど	2.0? g/cm3
表面ひょうめん重力じゅうりょく	0.0014 m/s2
脱出だっしゅつ速度そくど	0.0026 km/s
自転じてん周期しゅうき	27.44 時じ間あいだ
スペクトル分類ぶんるい	Q
絶対ぜったい等級とうきゅう (H)	15.1
アルベド（反射はんしゃ能のう）	0.15（推定すいてい）
表面ひょうめん温度おんど	最低さいてい 平均へいきん 最高さいこう ~378 K
■Template （■ノート ■解説かいせつ） ■Project

クルースン (3753 Cruithne)（日本にっぽんではほかにクルイシン、クルイーニャ、クルーフニェ、クルイニェなどの表記ひょうきがある）は太陽系たいようけいの地球ちきゅう近傍きんぼう小惑星しょうわくせい（アテン群ぐん）であり、地球ちきゅうに沿そった軌道きどうを持もつ（一部いちぶに地球ちきゅうの自然しぜん衛星えいせいであると唱となえる者ものもいるが事実じじつではない）。

1986年ねん10月がつ10日とおか、オーストラリアのクーナバラブラン市しにあるサイディング・スプリング天文台てんもんだいにおいて、ダンカン・ワルドロン (J. Duncan Waldron) がロバート・マクノート、マルコム・ハートレイ、マイケル・ホーキンスらと共ともに発見はっけんした。その後ご、1983年ねんにチリのヨーロッパ南天なんてん天文台てんもんだいで発見はっけんされた1983 UHと同一どういつであることが判わかった。

名前なまえ

クルースンは、イギリス諸島しょとうに最初さいしょに住すみ着ついたケルトの部族ぶぞく集団しゅうだんクリフニャ族ぞくにちなんで命名めいめいされた。クリフニャ族ぞくはヨーロッパ大陸たいりくから移うつり住すみ、イギリス諸島しょとうに現あらわれたのは、紀元前きげんぜん800年ねんから同どう500年ねんにかけてである[1]。

当時とうじのケルト人じんが「Cruithne」をどう発音はつおんしていたのか、正確せいかくなところはわかっていない。現代げんだいのアイルランド・ゲール語ごでの発音はつおんは、英語えいご版ばんウィキペディアなどを元もとにカタカナで表記ひょうきすると、「クリフニャ」が近ちかい ([ˈkrihnʲə]) が、英語えいご化かされた発音はつおんでは「クルーフニェ」([krúxnjə]) となる。ただし小惑星しょうわくせいの名称めいしょうについては、ポール・ウィガートのWebサイト（外部がいぶリンク参照さんしょう）では「krooy-nyuh」または「KROOee-nyuh」と発音はつおんするべきだとされており、これに近ちかい表記ひょうきは「クルイーニャ」などである。日本にっぽんでは現在げんざいのところ、「クルースン」もしくは「クルイシン」と表記ひょうきされることが多おおい。

軌道きどう

地球ちきゅうから見みたクルースンは豆まめのような形かたちの軌道きどうを描えがく。さらに長期ちょうき的てきには、この豆まめ自体じたいが地球ちきゅうの軌道きどうに沿そって往復おうふく運動うんどうする。

クルースンと地球ちきゅうがそれぞれの軌道きどうを周しゅうっている。

1997年ねんまでに、カナダ・ヨーク大学だいがくのポール・ウィガートとキンモ・イナネン、フィンランド・トゥルク大学だいがくのセッポ・ミッコラによって、この小惑星しょうわくせいが異常いじょうな軌道きどうを持もつことが割わり出だされた。

クルースンは、実際じっさいには地球ちきゅうの周まわりを回まわっているわけではない。その代かわり、地球ちきゅうの軌道きどうの周まわりを螺旋らせん状じょうに動うごく。クルースンの（見みかけ上じょう）馬蹄ばてい形がたの軌道きどう (Horseshoe orbit) の両りょう端はしでは、それぞれ地球ちきゅうの反対はんたい側がわに接近せっきんするが、接触せっしょくはしない。近日きんじつ点てんは金星きんぼしよりも太陽たいように近ちかく、遠日点えんじつてんは火星かせい軌道きどうの長ちょう半径はんけいとほぼ等ひとしい。

馬蹄ばてい形がたの軌道きどう自体じたいが回転かいてんするため、クルースンが元もとの馬蹄ばてい形がた軌道きどうに戻もどるには地球ちきゅう年ねんで385年ねんかかる。このようにクルースンの軌道きどうは地球ちきゅうから観測かんそくする限かぎり非常ひじょうに複雑ふくざつに見みえ、直感ちょっかんにも反はんする。しかし、太陽たいようを基準きじゅんに取とると、理解りかいしやすい。多少たしょう楕円だえん形がたではあるが、比較的ひかくてき平凡へいぼんな軌道きどうをほとんど地球ちきゅう年ねんの1年ねんで公転こうてんする。地球ちきゅうの重力じゅうりょくが楕円だえん軌道きどうにわずかな影響えいきょうを与あたえるため、クルースンの歳とし差さ運動うんどうが変化へんかし、極端きょくたんに軌道きどうが地球ちきゅうに近ちかづくことはなくなる。

クルースンは直径ちょっけい約やく5kmで、地球ちきゅうに1500万まんkmまで接近せっきんする。これは地球ちきゅう - 月つき間あいだの距離きょりの約やく40倍ばいである。クルースンの軌道きどうは長期ちょうき的てきには安定あんていしていないと考かんがえられているが、ウィガートとイナネンの計算けいさんによると、長ながい年月としつきにわたって地球ちきゅうの軌道きどうと同期どうきしていたことが分わかった。この先さき数すう百ひゃく万まん年ねんの間あいだ、衝突しょうとつの危険きけんがないことは確実かくじつである。

クルースンと同様どうように地球ちきゅうと共鳴きょうめい軌道きどうにある別べつの地球ちきゅう近傍きんぼう小惑星しょうわくせいは、2004年ねん現在げんざいで3つ発見はっけんされている。(54509) YORP (2000 PH₅)、(85770) 1998 UP₁、2002 AA₂₉である。

他たにクルースンのような馬蹄ばてい型がたの軌道きどうを持もつ自然しぜんの天体てんたいとして、土星どせいの衛星えいせいであるヤヌスとエピメテウスが知しられている。地球ちきゅうとクルースンの場合ばあいに比くらべれば2つの衛星えいせいの質量しつりょうの違ちがいは遥はるかに小ちいさいため、2つの衛星えいせいは完全かんぜんに互たがいの軌道きどうを入いれ替かわることができる（ラグランジュ点てん#他たの同期どうき軌道きどう天体てんたい、土星どせいの衛星えいせいと環たまき#共有きょうゆう軌道きどう衛星えいせいを参照さんしょう）。

火星かせいにもこのような共鳴きょうめい軌道きどうにある小惑星しょうわくせい (5261) エウレカがあり、木星もくせいにはトロヤ群ぐんと呼よばれる約やく400個こもの同種どうしゅの天体てんたいが従したがっている。土星どせいにもテティスに従したがうテレストとカリプソやディオネに従したがうヘレネのようなトロヤ衛星えいせいがある。しかしながら、いずれも馬蹄ばてい形がたの軌道きどうはとっていない。

SF作家さっかのスティーヴン・バクスターは、クルースンの奇妙きみょうな軌道きどうのためか、著書ちょしょ「Manifold:Time（多様たよう体たい：時間じかん）」のなかでクルースンを舞台ぶたいに取とり上あげている。

関連かんれん項目こうもく

• 小惑星しょうわくせいの一覧いちらん (3001-4000)
• 準じゅん衛星えいせい
• 軌道きどう共鳴きょうめい
• ラグランジュ点てん

外部がいぶリンク

• Cruithneの軌道きどう要素ようそ （英語えいご） （JPL）
• 軌道きどうを確定かくていしたP.ウィガートのWebサイト Paul Wiegert's page about Cruithne, with movies （英語えいご）
• クルースンの軌道きどうを表示ひょうじするJava Applet
• ケルトの歴史れきしについての英語えいごのWebサイト (The Dalriada Celtic Heritage Trus)
• （2004年ねん11月がつ20日はつか 15:13版はんより訳出やくしゅつ）
• 地球ちきゅうに付つきまとう小惑星しょうわくせい

前まえの小惑星しょうわくせい カミッロ (小惑星しょうわくせい)

小惑星しょうわくせい クルースン (小惑星しょうわくせい)

次つぎの小惑星しょうわくせい キャスリーン (小惑星しょうわくせい)