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レジオネラ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
レジオネラぞく
Legionella pneumophila
分類ぶんるい
ドメイン : 真正しんしょう細菌さいきん
Bacteria
もん : Pseudomonadotaもん
つな : ガンマプロテオバクテリアつな
Gammaproteobacteria
: レジオネラ
Legionellales
: レジオネラ
Legionellaceae
ぞく : レジオネラぞく
Legionella
学名がくめい
Legionella
Brenner et al. 1979[1]
(IJSEMリストに掲載けいさい 1980)[2]
修正しゅうせい Saini & Gupta 2021[3]
(IJSEMリストに掲載けいさい 2022)[4]
タイプしゅ
レジオネラ・ニューモフィラ
Legionella pneumophila
Brenner et al. 1979[1]
(IJSEMリストに掲載けいさい 1980)[2]
修正しゅうせい Brenner et al. 1988[5]
シノニム
下位かい分類ぶんるいたね

本文ほんぶん参照さんしょう

レジオネラ (Legionella) は、レジオネラぞくぞくする細菌さいきん総称そうしょうであり、グラム陰性いんせい桿菌かんきん。レジオネラ肺炎はいえん在郷ざいきょう軍人ぐんじんびょうひとしおおくのレジオネラしょうこすたねふくむ。通性つうせい細胞さいぼうない寄生きせいせいきんである。

重言じゅうげんであるが「レジオネラきん」という表記ひょうきもされ、厚生こうせい労働省ろうどうしょうなどの文書ぶんしょにも散見さんけんされる。

発見はっけん

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1976ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくペンシルベニアしゅう米国べいこく在郷ざいきょう軍人ぐんじんかい英語えいごばん大会たいかいひらかれたさい参加さんかしゃ周辺しゅうへん住民じゅうみん221にん原因げんいん不明ふめい肺炎はいえんにかかり、一般いっぱん抗生こうせいざい治療ちりょうおこなったが34にん死亡しぼうした。ウイルスリケッチアひとし原因げんいん候補こうほげられたがそれらしいものは検出けんしゅつされず、新種しんしゅのグラム陰性いんせい桿菌かんきん患者かんじゃはいから多数たすう分離ぶんりされた。発見はっけんされた細菌さいきん在郷ざいきょう軍人ぐんじん (legionnaire) にちなんで Legionella pneumophilaづけられた。たね形容けいようの pneumophila は、ほんきんはい感染かんせんすることから、「はいギリシアでpneumōn)をこのむ (-phil)」を意味いみする。この集団しゅうだん感染かんせん事例じれいは、在郷ざいきょう軍人ぐんじんかい大会たいかい会場かいじょうちかくの建物たてもの冷却れいきゃくとうから飛散ひさんしたエアロゾル起因きいんしていたとされている。

特徴とくちょう

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レジオネラぞくきんは2 - 5µmくらいこう気性きしょうグラム陰性いんせい桿菌かんきんで、一本いっぽん以上いじょうむちっている。

通常つうじょう細菌さいきん検査けんさよう培地ばいちでは生育せいいくしないが、これはグルコースなどのとう利用りようできないこと起因きいんする。このため培養ばいようさいにはレジオネラがエネルギーげんおよび炭素たんそげんとして利用りようできるシステインセリンスレオニンなどの特定とくていアミノ酸あみのさんくわえる必要ひつようがある。とくにシステインは必須ひっすである。脂肪酸しぼうさんにより発育はついく阻害そがいけるためこれらを除去じょきょしなければならない。また、有機ゆうきてつ要求ようきゅうする。培養ばいよう条件じょうけんきびしく、pHが6.7〜7.0でないと増殖ぞうしょくせず、いたりてき温度おんどは36°Cである。分裂ぶんれつ周期しゅうき数時間すうじかんで、増殖ぞうしょくには時間じかんがかかり、バンコマイシンひとし抗生こうせい物質ぶっしつくわきん生育せいいくおさえて培養ばいようする。

環境かんきょうちゅうでは人工じんこう培地ばいちとはことなり幅広はばひろ環境かんきょう生育せいいく可能かのうである。おもぬま河川かせんなどのみずなかや、土壌どじょう存在そんざいしている自然しぜん環境かんきょうちゅうつねざいきん一種いっしゅとしてもられる。レジオネラは通性つうせい細胞さいぼうない寄生きせいせいであり、これらの場所ばしょではアメーバなどの原生げんせい生物せいぶつなど生物せいぶつ細胞さいぼううち寄生きせいしたり、藻類そうるい共生きょうせいしており、これによってさまざまな環境かんきょうでの生育せいいく可能かのうになっている[6]上記じょうき人工じんこう培養ばいよう条件下じょうけんか必要ひつようとされるきびしい栄養えいよう要求ようきゅうは、当然とうぜんのことながら生物せいぶつ細胞さいぼうないでは容易よういられるものである。水中すいちゅうでも長期間ちょうきかん( - すうねん生存せいぞんできる。

ヒトの生活せいかつする環境かんきょうにおいても、大量たいりょうみずめて利用りようする場所ばしょでレジオネラが繁殖はんしょくする場合ばあいられている。とくLegionella pneumophila は、空調くうちょう設備せつびもちいる循環じゅんかんすい入浴にゅうよく施設しせつにおいてよくられ、しばしばこれらのみず利用りようするさい発生はっせいする微小びしょう水滴すいてきエアロゾル)をかいしてヒトに感染かんせんする。

レジオネラをふくんだエアロゾルがヒトに吸入きゅうにゅうされると、レジオネラははい到達とうたつし、そこではい胞のマクロファージ貪食どんしょくされる。しかし、レジオネラは通性つうせい細胞さいぼうない寄生きせいせいであり、その殺菌さっきん機構きこうのがれてマクロファージない増殖ぞうしょくすることが可能かのうである(→サルモネラのマクロファージでの増殖ぞうしょく参照さんしょう)。レジオネラはマクロファージにまれるさい出来できしょく胞に作用さようし、しょく胞膜の性質せいしつ変化へんかさせてリソソームとの結合けつごうせいうしなわせるとともに、その変化へんかしたしょく胞 (LCV, Legionella containing vesicle) ない増殖ぞうしょくする。LCVは、あらめんしょう胞体同様どうようリボソーム表面ひょうめん結合けつごうした、多重たじゅうまく構造こうぞうしょう胞であり、このしょう胞を形成けいせいすることでレジオネラは分解ぶんかいされることなく細胞さいぼうない感染かんせんすることが可能かのうだとかんがえられている。

はい線維せんい細胞さいぼう増殖ぞうしょくする L. pneumophila

人工じんこう環境かんきょうでは、レジオネラはしばしばアカントアメーバなどのアメーバるい寄生きせいしていることがられているが、この生活せいかつ様式ようしき衛生えいせいがくじょう、レジオネラを除去じょきょしにくいことにかかわっている。これらの自由じゆう生活せいかつアメーバは浴槽よくそうなどの表面ひょうめん形成けいせいされるバイオフィルム付着ふちゃくして生活せいかつしていることがおおいため、循環じゅんかんしきのろ処理しょり設備せつびからのがれて増殖ぞうしょく可能かのうである。レジオネラ自身じしん単独たんどくでもバイオフィルムの形成けいせい可能かのうである。またバイオフィルムの存在そんざいと、アメーバの細胞さいぼうない寄生きせいしていることによって、レジオネラにたいして消毒しょうどくやく直接ちょくせつ到達とうたつしにくいため、消毒しょうどくやく効果こうかさまたげられる。さらに自由じゆう生活せいかつアメーバのなかには、生育せいいく環境かんきょう悪化あっかするとシスト(嚢子、のうし)とばれる、耐久たいきゅうがた構造こうぞう形成けいせいするものがあり、この状態じょうたいではねつ消毒しょうどくやくたいする抵抗ていこうせい増加ぞうかするため、内部ないぶのレジオネラが保護ほごされるかたちになって完全かんぜん除菌じょきんむずかしくなるという問題もんだいしょうじる。

病原びょうげんせい

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レジオネラは環境かんきょうちゅう普通ふつう存在そんざいするきんであり、通常つうじょうでは感染かんせんしょうこすことはすくない。しかしながら感染かんせんしやすい環境かんきょうしめすような環境かんきょうでは、とく高齢こうれいしゃとう抵抗ていこうりょくすくない人々ひとびとにとって、おもレジオネラぞく一種いっしゅL. pneumophila が、ヒトのレジオネラ感染かんせんしょう(レジオネラ肺炎はいえんおよびポンティアックねつ)の原因げんいんになる。

下位かい分類ぶんるいたね

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レジオネラぞく以下いかたねふくむ(2024ねん9がつ現在げんざい)[7]

IJSEMに正式せいしき承認しょうにんされているたね

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Benson et al. 1991
Gorman et al. 1985
Shimada et al. 2022
Lo Presti et al. 2001
Wilkinson et al. 1988
Girolamini et al. 2022
corrig. (Garrity et al. 1980) Brenner et al. 1980
Wilkinson et al. 1989
Park et al. 2003
Pearce et al. 2012
Brenner et al. 1985
Thacker et al. 1989
La Scola et al. 2004
Lück et al. 2010
Adeleke et al. 2001
Brenner et al. 1980
Brenner et al. 1985
Thacker et al. 1991
Adeleke et al. 2001
Herwaldt et al. 1984
Dennis et al. 1993
Morris et al. 1980
Bornstein et al. 1991
Lo Presti et al. 2001
Brenner et al. 1985
Kuroki et al. 2007
Bercovier et al. 1986
Brenner et al. 1985
Cherry et al. 1982
Thacker et al. 1994
Dennis et al. 1993
McKinney et al. 1982
(Drozanski 1991) Hookey et al. 1996
Brenner et al. 1985
Crespi et al. 2023
Campocasso et al. 2012
(Garrity et al. 1980) Hébert et al. 1980
Wilkinson et al. 1989
Yang et al. 2012
Dennis et al. 1993
Rizzardi et al. 2015
Orrison et al. 1983
Brenner et al. 1985
Brenner et al. 1979 (Approved Lists 1980)
Wu et al. 2019
Dennis et al. 1993
Benson et al. 1990
Cristino et al. 2024
Adeleke et al. 2001
Brenner et al. 1985
Campbell et al. 1984
Brenner et al. 1985
Bajrai et al. 2016
Li et al. 2021
Verma et al. 1992
Brenner et al. 1985
Edelstein et al. 2012
Brenner et al. 1985
Lo Presti et al. 1999
Ishizaki et al. 2016
Thacker et al. 1990
Campocasso et al. 2012
Edelstein et al. 1983
Benson et al. 1996
Dennis et al. 1993
Kuroki et al. 2007
(Garrity et al. 1980) Brenner et al. 1980

IJSEMに承認しょうにんたね

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  • "Legionella clemsonensis"
Palmer et al. 2016
  • "Legionella donaldsonii"
Lo Presti et al. 1999
  • "Legionella indianapolisensis"
Relich et al. 2018
  • "Candidatus Legionella jeonii"
Park et al. 2004
  • "Candidatus Legionella polyplacis"
Rihova et al. 2017
  • Legionella pittsburghensis
Pasculle et al. 1980

参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ a b DON J. BRENNER, Ph.D., ARNOLD G. STEIGERWALT, B.S., and JOSEPH E. McDADE, Ph.D. (the Bureau of Laboratories, Center for Disease Control, Public Health Service, U.S. Department of Health, Education, and Welfare; Atlanta, Georgia) (1 April 1979). “Classification of the Legionnaires' Disease Bacterium: Legionella pneumophila, genus novum, species nova, of the Family Legionellaceae, familia nova”. Annals of Internal Medicine 90 (4): 656-8. doi:10.7326/0003-4819-90-4-656. PMID 434652. 
  2. ^ a b V. B. D. Skerman, Vicki McGowan and P. H. A. Sneath (01 January 1980). “Approved Lists of Bacterial Names”. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 30 (1). doi:10.1099/00207713-30-1-225. 
  3. ^ Navneet Saini 1, Radhey S Gupta 2 (1: Department of Biochemistry and Biomedical Sciences, McMaster University, Hamilton, ON, L8N 3Z5, Canada, 2: Department of Biochemistry and Biomedical Sciences, McMaster University, Hamilton, ON, L8N 3Z5, Canada) (21 April 2021). “A robust phylogenetic framework for members of the order Legionellales and its main genera (Legionella, Aquicella, Coxiella and Rickettsiella) based on phylogenomic analyses and identification of molecular markers demarcating different clades”. Antonie van Leeuwenhoek 114: 957–982. doi:10.1007/s10482-021-01569-9. PMID 33881638. 
  4. ^ Aharon Oren1 and George Garrity2 (1: The Institute of Life Sciences, The Hebrew University of Jerusalem, The Edmond J. Safra Campus, 9190401 Jerusalem, Israel, 2: Department of Microbiology & Molecular Genetics, Biomedical Physical Sciences, Michigan State University, East Lansing, MI 48824-4320, USA) (03 February 2022). “Notification of changes in taxonomic opinion previously published outside the IJSEM. List of changes in taxonomic opinion no. 35”. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 72 (1): 5164. doi:10.1099/ijsem.0.005164. 
  5. ^ D J Brenner 1, A G Steigerwalt, P Epple, W F Bibb, R M McKinney, R W Starnes, J M Colville, R K Selander, P H Edelstein, C W Moss (1: Division of Bacterial Diseases, Centers for Disease Control, Atlanta, Georgia 30333) (1 September 1988). Legionella pneumophila serogroup Lansing 3 isolated from a patient with fatal pneumonia, and descriptions of L. pneumophila subsp. pneumophila subsp. nov., L. pneumophila subsp. fraseri subsp. nov., and L. pneumophila subsp. pascullei subsp. nov”. Journal of Clinical Microbiology 26 (9): 1695-703. doi:10.1128/jcm.26.9.1695-1703.1988. PMC 266699. PMID 3053773. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC266699/. 
  6. ^ 永井ながい宏樹ひろき:レジオネラと宿主しゅくしゅかく細胞さいぼう相互そうご作用さよう 日本にっぽん細菌さいきんがく雑誌ざっし Vol.69 (2014) No.3 p.503-511
  7. ^ Jean P. Euzéby, Aidan C. Parte. “Genus Legionella”. List of Prokaryotic names with Standing in Nomenclature. 2024ねん9がつ14にち閲覧えつらん

外部がいぶリンク

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