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黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん

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黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん
分類ぶんるい
ドメイン : 細菌さいきん Bacteria
もん : フィルミクテスもん
Firmicutes
つな : バシラスつな
Bacilli
: バシラス
Bacillales
: ブドウ球菌きゅうきん
Staphylococcaceae
ぞく : ブドウ球菌きゅうきんぞく
Staphylococcus
たね : 黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん
Staphylococcus aureus
学名がくめい
Staphylococcus aureus
Rosenbach 1884

黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん(おうしょくブドウきゅうきん、漢字かんじ表記ひょうき黄色おうしょく葡萄ぶどう球菌きゅうきんStaphylococcus aureus)とは、ヒト動物どうぶつ皮膚ひふ消化しょうかかんちょうつねざいきんちょうない細菌さいきん)であるブドウ球菌きゅうきんひとつ。

ヒトの膿瘍のうようひとし様々さまざま表皮ひょうひ感染かんせんしょう食中毒しょくちゅうどく、また肺炎はいえんずいまくえん敗血症はいけつしょうとう致死ちしてきとなるような感染かんせんしょう起因きいんきんでもある。学名がくめいStaphylococcus aureus (スタフィロコッカス・アウレウス)。ぞくめいStaphylococcusStaphylo-は「ブドウぼうじょうの」、coccus は「球菌きゅうきん」のであり、たね小名しょうみょうaureus は「黄金おうごんしょくの」を意味いみする(きむ元素げんそ記号きごうや、オーロラなどとおな語源ごげん)。葡萄ぶどうぼう形状けいじょうをしているため、本来ほんらい漢字かんじ表記ひょうきは「黄色おうしょく葡萄ぶどう球菌きゅうきん」だが、このようにかれることはほぼく、「葡萄ぶどう」の部分ぶぶんは「ブドウ」と片仮名かたかな表記ひょうきされる。

性状せいじょう[編集へんしゅう]

黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん(グラム染色せんしょく

ブドウ球菌きゅうきんは、通性つうせい嫌気いやけせいグラム陽性ようせい球菌きゅうきんである。顕微鏡けんびきょう観察かんさつすると、ブドウぼうのように複数ふくすう細菌さいきん集団しゅうだん形成けいせいしている。細菌さいきん比較ひかくしてこう濃度のうど (10%) の食塩しょくえん存在そんざいでも増殖ぞうしょく可能かのうであり、またカタラーゼ活性かっせいブドウ糖ぶどうとう発酵はっこうせいつなどの生化学せいかがくてき特徴とくちょう利用りようして分離ぶんり同定どうていされる。

のブドウ球菌きゅうきん黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんちがいは、コアグラーゼばれるウサギ血漿けっしょう凝集ぎょうしゅうさせる酵素こうそさんせいするかどうかでまり、ヒトのからだひょう生息せいそくしてコアグラーゼをさんせいするものが黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんである。また典型てんけいてき一部いちぶ黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん黄色おうしょく色素しきそさんせいするため、培地ばいちうえ培養ばいようしたとき黄色きいろコロニー細菌さいきん集落しゅうらく)を形成けいせいする。当初とうしょはこの性質せいしつによって判別はんべつされており、これが「黄色おうしょく」とばれる由来ゆらいであったが、現在げんざい色素しきそさんせい有無うむではなく、コアグラーゼさんせいのう判別はんべつされる。

薬剤やくざいたいせい性状せいじょうによりバンコマイシンたいせい黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんメチシリンたいせい黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんなどに区別くべつされる。

医学いがくてき特徴とくちょう[編集へんしゅう]

黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん人体じんたい皮膚ひふ表面ひょうめん毛孔けあな存在そんざいする。とく鼻腔びこううち存在そんざいするつねざいきんであり、やく30% - 100%のヒトが保有ほゆうしているとわれる(諸説しょせつあり)。ヒトの皮膚ひふつねざいするブドウ球菌きゅうきんなかでは毒性どくせいたかく、のブドウ球菌きゅうきんでは健常けんじょうしゃたいして病気びょうきこさない(ただし日和見ひよりみ感染かんせんこすことはある)のにたいし、黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん健常けんじょうしゃたいしても病気びょうきこしうる。ただし黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんも、健常けんじょうしゃでは通常つうじょう生育せいいく場所ばしょである皮膚ひふ表面ひょうめん鼻腔びこうなどでの増殖ぞうしょく自体じたい発病はつびょうにつながることはすくなく、創傷そうしょうなどから体内たいない侵入しんにゅうした場合ばあい発病はつびょうすることがおおい。感染かんせんりょくつよ部類ぶるいぞくするが、きんすくなければ通常つうじょうその毒性どくせいよわい。

病原びょうげん因子いんし[編集へんしゅう]

黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん病原びょうげん因子いんし

黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん病原びょうげんせいかかわる因子いんしには以下いかのものがられている。

  • 細胞さいぼう局在きょくざいする病原びょうげん因子いんし
    • プロテインA - 細胞さいぼうかべ存在そんざいするタンパク質たんぱくしつで、黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんのほとんどがゆうする特徴とくちょうてき成分せいぶんひとつ。抗体こうたい免疫めんえきグロブリン)のFc領域りょういき結合けつごうする性質せいしつち、これによって抗体こうたい生物せいぶつ活性かっせい抑制よくせいすることで、きん免疫めんえきけいによって排除はいじょされることをふせはたらきをつ。
    • フィブロネクチン結合けつごう因子いんし - 細胞さいぼうかべ存在そんざいするタンパク質たんぱくしつで、フィブロネクチン結合けつごうして体内たいない定着ていちゃくするはたらきをつ(定着ていちゃく因子いんし
    • タイコさん - 細胞さいぼうかべ存在そんざいする分子ぶんし宿主しゅくしゅ細胞さいぼうとの結合けつごうたかめる(定着ていちゃく因子いんし
  • そと毒素どくそ細胞さいぼうがい放出ほうしゅつされる毒素どくそ
    • エンテロトキシンぐん - 食中毒しょくちゅうどく原因げんいんとなる黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんさんせいする。下痢げり腹痛はらいたなどの直接ちょくせつ原因げんいんになるほか、嘔吐おうと中枢ちゅうすうにも作用さようして嘔吐おうと原因げんいんにもなる。スーパー抗原こうげんとしての活性かっせいつ。
    • TSST-1(どく素性すじょうショック症候群しょうこうぐん毒素どくそ-1) - どく素性すじょうショック症候群しょうこうぐん後述こうじゅつ)の原因げんいんとなる毒素どくそつよいスーパー抗原こうげん活性かっせいち、発熱はつねつ悪心あくしん、ショック症状しょうじょうこす。免疫めんえきけいをかくらんする役割やくわりたす。こう吸収きゅうしゅうせい月経げっけいよう鼻腔びこうようタンポン使用しようによって、ほん毒素どくそさんせいいちじるしく増大ぞうだいすることがられている。
    • 表皮ひょうひ剥脱はくだつ毒素どくそ - スーパー抗原こうげん一種いっしゅ
    • 溶血ようけつもと(ヘモリジン)- 赤血球せっけっきゅう破壊はかいする溶血ようけつ活性かっせい毒素どくそぐん[1]であり、とくαあるふぁ毒素どくそ重要じゅうよう病原びょうげん因子いんし免疫めんえき細胞さいぼう破壊はかいすることできん排除はいじょふせはたらきをつ。また組織そしき破壊はかいによって病巣びょうそうから周辺しゅうへん組織そしき侵入しんにゅうするさいにもはたらく。
    • ロイコシジン - 白血球はっけっきゅうころ毒素どくそ[1]であり、免疫めんえき細胞さいぼう破壊はかいによってきん排除はいじょ対抗たいこうしている。
  • 酵素こうそ病原びょうげんせいかかわる酵素こうそぐん
    • コアグラーゼ、クランピング因子いんし - 血漿けっしょう凝固ぎょうこさせ、フィブリン形成けいせいこす。これによってきん増殖ぞうしょくとなる凝集ぎょうしゅうかたまりつくし、白血球はっけっきゅう血漿けっしょうちゅう抗体こうたいによる排除はいじょふせはたらきがあるとかんがえられている。
    • スタフィロキナーゼ - 析出せきしゅつしたフィブリン溶解ようかいさせるはたらきをつ。きん凝集ぎょうしゅうかたまりなか増殖ぞうしょくしたのち、その凝集ぎょうしゅうかたまり分解ぶんかいして周囲しゅうい感染かんせんひろげるさいはたらくとかんがえられている。
    • プロテアーゼDNaseリパーゼ - タンパク質たんぱくしつ核酸かくさん脂質ししつ分解ぶんかいし、周辺しゅうへん組織そしき分解ぶんかいして感染かんせん拡大かくだいかかわる。

疫学えきがく[編集へんしゅう]

毎年まいとしアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは50まんにん黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん感染かんせんしょう医療いりょう機関きかん受診じゅしんする。抗生こうせい物質ぶっしつ安易あんい処方しょほう原因げんいんで、黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんは、とくおおくの一般いっぱん利用りようされる抗生こうせい物質ぶっしつたいせい抵抗ていこうせい)を変種へんしゅしてきた。とく問題もんだいとなるのは、そのようなたいせいきんたい開発かいはつされた薬剤やくざいたいするたいせいきん出現しゅつげんすることである。単一たんいつ薬剤やくざいたいたいせい獲得かくとくしたきんは、たいせいゆうする薬剤やくざいめいかんペニシリンたいせいきんメチシリンたいせいきんMRSAバンコマイシンたいせいきんVRSAばれる。また複数ふくすう薬剤やくざいたいたいせい獲得かくとくしたきんざいたいせいきんばれる。なお、メチシリンにたいする感受性かんじゅせいのあるきんはMSSAとばれる。

臨床りんしょうぞう[編集へんしゅう]

黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんによる疾患しっかんは、感染かんせん病原びょうげんせい毒素どくそ病原びょうげんせいとに大別たいべつされる。前者ぜんしゃはブドウ球菌きゅうきん体内たいない感染かんせん増殖ぞうしょくすることによる疾患しっかんであり、各種かくしゅ化膿かのうせい疾患しっかん肺炎はいえん急性きゅうせいしんないまくえんきんしょうふくまれる。後者こうしゃ感染かんせん増殖ぞうしょくそのものよりも、ブドウ球菌きゅうきんさんせいする毒素どくそによる症状しょうじょうであり、食中毒しょくちゅうどくどく素性すじょうショック症候群しょうこうぐん(Toxic shock syndrome, TSS)、熱傷ねっしょうさま皮膚ひふ症候群しょうこうぐんがこれにあたる。

感染かんせんしょう[編集へんしゅう]

黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんによる感染かんせんは、表皮ひょうひおよびその直下ちょっか組織そしき限局げんきょくした部位ぶいられることがおおい。毛孔けあな創傷そうしょうから感染かんせんきると、伝染でんせんせいうみかさぶた(とびひ、インペティーゴ)、(せつ、フルンケル)、よう(よう、カルブンケル)、蜂巣はちすえんなど、表皮ひょうひ限局げんきょくせい化膿かのうせい疾患しっかん原因げんいんになる。また、カテーテルや心臓しんぞうべんなど、医療いりょう行為こういもちいる異物いぶつ付着ふちゃくして、そこで骨髄こつづいえん関節かんせつえんなどの深部しんぶ限局げんきょくせい感染かんせんこすことがある。これらの疾患しっかんしょうじる膿瘍のうよううち細菌さいきん増殖ぞうしょくするが、さらに細菌さいきん増殖ぞうしょくすすむと、スタフィロキナーゼや各種かくしゅプロテアーゼなどのはたらきによって病巣びょうそう周辺しゅうへん組織そしき破壊はかいしながら周囲しゅうい浸潤しんじゅんし、ときにりゅうはいって、きんしょう敗血症はいけつしょう急性きゅうせいしんないまくえん肺炎はいえんなどをこすことがある。

皮膚ひふ感染かんせんしょう[編集へんしゅう]

黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんによる感染かんせんしょうとしては頻度ひんどたかく、正常せいじょう免疫めんえきつヒトにもしばしば発症はっしょうする。

皮膚ひふ感染かんせんしょうのうちもっと表面ひょうめんちか部分ぶぶんこるのが伝染でんせんせいうみかさぶた(Impetigo、「とびひ」)である。皮膚ひふ表面ひょうめんにべったりとした黄色おうしょくうみかさぶた(かさぶた)をともなったびらんあらわれる。びらんはやめかゆいため、とく小児しょうにではこのびらんを掻破してしまう。びらんを掻破したつめ健常けんじょう皮膚ひふめんを掻破することにより、その健常けんじょう皮膚ひふめんあらたなびらんを形成けいせいする。こうして病巣びょうそう播種はしゅしていくのが「伝染でんせんせいうみかさぶた疹の特徴とくちょうである。

毛孔けあなから感染かんせんし、もう嚢およびその周囲しゅうい真皮しんぴ皮下ひか組織そしき一部いちぶ炎症えんしょうこすのが(せつ、Furuncle)である。癤が複数ふくすう毛孔けあなにおよび、癒合ゆごうしたものはよう(よう、Carbuncle)とばれる。とく顔面がんめんにできた癤やよう面疔めんちょうばれ、放置ほうちするとずいまくえんこす危険きけんがあるため、確実かくじつ治療ちりょう必要ひつようとされる。

表皮ひょうひ内部ないぶ感染かんせんこすのがはち窩織えん蜂巣はちすえん)である。通常つうじょう細胞さいぼう構造こうぞう細菌さいきんおよ炎症えんしょう細胞さいぼう破壊はかいし、「はちじょう病理びょうり組織そしき形成けいせいすることがこの由来ゆらいである。はち窩織えん局所きょくしょ発赤はっせき腫脹しゅちょうし、ねつかん疼痛とうつうともなう。境界きょうかいはやや不明瞭ふめいりょうであることがおおい(Aぐんβべーた溶血ようけつせい連鎖れんさ球菌きゅうきんこる丹毒たんどくでは境界きょうかい明瞭めいりょうである)。

うみかさぶた疹は局所きょくしょ消毒しょうどくし、掻破しないようにこころがけるだけでもなおることがある。皮膚ひふ感染かんせんしょうには抗菌こうきんやく投与とうよ必要ひつようである。ペニシリンけいのクロキサシリン (MCIPC)、スルバクタム/アンピシリンごうざい (SBT/ABPC)、だい1世代せだいセフェムのセファゾリン (CEZ) などが通常つうじょうもちいられる。正常せいじょう免疫めんえき患者かんじゃではMRSAによる皮膚ひふ感染かんせん頻度ひんどひくく、治療ちりょう最初さいしょからこうMRSAやくもちいることはしない。

肺炎はいえんはい化膿かのうしょう[編集へんしゅう]

高齢こうれいしゃ人工じんこう呼吸こきゅう管理かんりちゅう患者かんじゃなどには、黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんによる肺炎はいえんはい化膿かのうしょうこりうる。これらの患者かんじゃおおくでは過去かこ抗菌こうきんやく投与とうよされており、MRSAの頻度ひんどたかいことに注意ちゅうい必要ひつようである。喀痰かくたんおよび胸水きょうすいのグラム染色せんしょく迅速じんそく診断しんだん有用ゆうようであり、適切てきせつ抗菌こうきんやく選択せんたく必要ひつようである。

その病巣びょうそう感染かんせんしょう[編集へんしゅう]

人工じんこうべん人工じんこう関節かんせつ中心ちゅうしん静脈じょうみゃくカテーテルなど体内たいない異物いぶつ存在そんざいする患者かんじゃでは、りゅうちゅう侵入しんにゅうした黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんがこれら異物いぶつ定着ていちゃくして感染かんせんしょうこすことがある。また、異物いぶつがなくても、骨髄こつづいえん関節かんせつえんなどの特殊とくしゅ病巣びょうそう感染かんせんしょうこす場合ばあいがある。黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんによるこれらの病巣びょうそう感染かんせんしょうでは、しばしば抗菌こうきんやく投与とうよのみでは不足ふそくであり、病巣びょうそうたいする外科げかてき処置しょち必要ひつようとなる(人工じんこうべんえ、カテーテル抜去ばっきょ関節かんせつ腔の切開せっかいはいうみなど)。

どく素性すじょう疾患しっかん[編集へんしゅう]

食中毒しょくちゅうどく[編集へんしゅう]

透過とうかがた電子でんし顕微鏡けんびきょう写真しゃしん(50,000ばい

黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんによる食中毒しょくちゅうどくは、食品しょくひんちゅう増殖ぞうしょくしてそこで黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんエンテロトキシンどくもとさんせいするためにきるものである。この毒素どくそたい熱性ねっせいで、食品しょくひん加熱かねつすることによってブドウ球菌きゅうきんそのものが死滅しめつしても、毒素どくそたい熱性ねっせいのためそのままのこ[2]。それをべた場合ばあいはげしい嘔吐おうとともな食中毒しょくちゅうどくこす。このような食中毒しょくちゅうどく毒素どくそがた食中毒しょくちゅうどくぶ。一方いっぽうサルモネラ病原びょうげん大腸菌だいちょうきんなどの場合ばあいきた細菌さいきんちょうない感染かんせんすることによってきる感染かんせんがた食中毒しょくちゅうどくこす。すなわちブドウ球菌きゅうきんによる食中毒しょくちゅうどく感染かんせんしょうではなく、むしろどくキノコべるケースにちかい。

黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんによる食中毒しょくちゅうどく潜伏期せんぷくきみじかく、汚染おせんされた食品しょくひんべたあと2〜3時間じかん(エンテロトキシン濃度のうどたかければすうじゅうふん程度ていど)で発症はっしょうし、そのすみやかに終息しゅうそくする。しかし、症状しょうじょうはげしい場合ばあいには、ショック症状しょうじょうおちい場合ばあいもあるため、健康けんこう異常いじょうかんじた場合ばあい医療いりょう機関きかん受診じゅしんするのがのぞまれる。おも悪心あくしん嘔吐おうとあらわれ、場合ばあいによっては腹痛はらいた下痢げりねば血便けつべんともなうこともある。発熱はつねつすくない。黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんによる食中毒しょくちゅうどくは、症状しょうじょう嘔吐おうと集中しゅうちゅうするのが特徴とくちょうでもある。黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん自体じたい体内たいないはい感染かんせんしょうではないため、抗菌こうきんやく投与とうよ不要ふようであり、輸液により水分すいぶんとう電解でんかいしつ補充ほじゅうして症状しょうじょう改善かいぜんつ。

どく素性すじょうショック症候群しょうこうぐん[編集へんしゅう]

どく素性すじょうショック症候群しょうこうぐん (えい: Toxic shock syndrome, TSS) は、黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんさんせいするTSST-1 (Toxic shock syndrome toxin 1) という毒素どくそによる症候群しょうこうぐん。TSST-1がスーパー抗原こうげんとしてはたらき、発疹はっしん下痢げり嘔吐おうと血圧けつあつ低下ていか(ショック)、播種はしゅせい血管けっかんない凝固ぎょうこ臓器ぞうき不全ふぜんなどをたす致命ちめいてき疾患しっかんである。なお、黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん以外いがい細菌さいきん毒素どくそによってこされることもある[3]

昇圧しょうあつざい輸血ゆけつ蛋白たんぱく分解ぶんかい酵素こうそ阻害そがいやくなどの対症療法たいしょうりょうほうのほか、毒素どくそ除去じょきょおよび急性きゅうせい腎不全じんふぜんたいする治療ちりょうのために血漿けっしょう交換こうかん持続じぞくてき血液けつえき濾過ろか透析とうせきなどの血液けつえき浄化じょうかほうおこなう。

新生児しんせいじTSSさま発疹はっしんしょう[編集へんしゅう]

新生児しんせいじTSSさま発疹はっしんしょう(Neonatal TSS-like Exanthematous Disease, NTED(エヌテッド、とまれることがおおい))は、生後せいご数日すうじつ以内いない新生児しんせいじ発症はっしょうするどく素性すじょう疾患しっかんで、原因げんいんきんはほとんどMRSAである。TSST-1 like toxinという毒素どくそがスーパー抗原こうげんとなって発症はっしょうする。発疹はっしん軽度けいど発熱はつねつ、ときに哺乳ほにゅう不良ふりょう症状しょうじょうであり、血液けつえき所見しょけんでは血小板けっしょうばん減少げんしょう軽度けいど炎症えんしょう反応はんのうともなう。ときに血小板けっしょうばん輸血ゆけつ必要ひつようとなることもあるが、TSSとはことなり、おおむね良好りょうこう疾患しっかんである。治療ちりょうほうとして特異とくいてきなものはないが、おおくの場合ばあいこうMRSAやく投与とうよされる。

ブドウ球菌きゅうきんせい熱傷ねっしょうさま皮膚ひふ症候群しょうこうぐん[編集へんしゅう]

ブドウ球菌きゅうきんせい熱傷ねっしょうさま皮膚ひふ症候群しょうこうぐん(Staphylococcal Scalded Skin Syndrome, SSSS(フォーエス、とまれることがおおい))は、乳幼児にゅうようじ特有とくゆうどく素性すじょう疾患しっかんである。黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんさんせいするExfoliative (Epidermolytic) toxin-A,Bがその原因げんいんであり、毒素どくそ表皮ひょうひ沈着ちんちゃくしてスーパー抗原こうげんとしてはたらくことで、表皮ひょうひ細胞さいぼうあいだ結合けつごう破壊はかいされる。

症状しょうじょう全身ぜんしん皮膚ひふのびらん、水疱すいほう形成けいせいで、いちじるしいいたみをともなう。一見いっけん正常せいじょうえる皮膚ひふめんでも、物理ぶつりてき刺激しげきにより水疱すいほう形成けいせいする(ニコルスキー現象げんしょう)。そのため、水疱すいほう・びらんはあいだこす、つまりひじの内側うちがわやわきのしたくびまわりなどにできやすい。おおくの場合ばあいくち周囲しゅういにはうみかさぶた疹ができており、うみかさぶたからは黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん検出けんしゅつされる。治療ちりょう特異とくいてきなものはないが、うみかさぶた疹をともなっていることがおおいためセファゾリンなどの抗菌こうきんやく使つかうことがおおい。MRSAが検出けんしゅつされることもすくなくないが、こうMRSAやく通常つうじょうもちいない。また、機嫌きげん経口けいこう摂取せっしゅれなくなることがしばしばあり、輸液が必要ひつようとなることがおおい。SSSSそのものは、数日すうじつ自然しぜん軽快けいかいする疾患しっかんである。

治療ちりょう[編集へんしゅう]

感受性かんじゅせいのある抗生こうせい物質ぶっしつにより治療ちりょうをおこなう。
さまざまな薬剤やくざいたいするたいせい獲得かくとくした菌株きんしゅもある。黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんはもともとペニシリン感受性かんじゅせいであったが、現在げんざい分離ぶんりされるもののおおくはペニシリンたいせいである。セフェムけいストレプトマイシンなどの薬剤やくざいにもたいせいのものがおおい。これらの状況じょうきょうから、もちいる薬剤やくざいについては当該とうがいきんたい感受性かんじゅせいのある薬剤やくざいもちいるのがのぞましい。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 金子かねこあつし成谷なるたに宏文ひろふみ神尾かみおこう黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん成分せいぶん蛋白質たんぱくしつ毒素どくそ 化学かがく生物せいぶつ 36かん (1998) 3ごう p.160-167, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.36.160
  2. ^ 渡辺わたなべわたるきになる微生物びせいぶつがく講談社こうだんしゃサイエンティフィク、2015ねん11月24にち、19ぺーじISBN 9784061541832 
  3. ^ 武谷たけや雄二ゆうじ月経げっけいのはなし 歴史れきし行動こうどう・メカニズム』 2154かん中央公論ちゅうおうこうろんしんしゃ中公新書ちゅうこうしんしょ〉、2012ねん3がつ25にち、195ぺーじISBN 978-4-12-102154-0 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]