(Translated by https://www.hiragana.jp/)
毒素性ショック症候群 - Wikipedia コンテンツにスキップ

毒どく素性すじょうショック症候群しょうこうぐん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
毒どく素性すじょうショック症候群しょうこうぐん
黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんの産さん生せいするToxic shock syndrome toxin-1タンパク
概要がいよう
種類しゅるい ブドウ球菌きゅうきん（月経げっけい時じ・非ひ月経げっけい時じ）、溶連菌ようれんきん[1]
診療しんりょう科か 感染かんせん症しょう
症状しょうじょう 発熱はつねつ, 発疹はっしん, 落屑, 血圧けつあつ低下ていか[1]
発症はっしょう時期じき 早はやい[1]
原因げんいん 化膿かのうレンサ球菌きゅうきんまたは黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきん[1]
危険きけん因子いんし 月経げっけいカップ及およびタンポン、幼児ようじの皮膚ひふ病変びょうへん[1]
診断しんだん法ほう 症状しょうじょうに基もとづいて[1]
鑑別かんべつ 敗血症はいけつしょう性せいショック、川崎病かわさきびょう、スティーブンス・ジョンソン症候群しょうこうぐん、猩紅熱しょうこうねつ[2]
治療ちりょう 抗生こうせい物質ぶっしつ、膿瘍のうようの切開せっかいとドレナージ、免疫めんえきグロブリンの静脈じょうみゃく内ない投与とうよ[1]
予よ後ご 死亡しぼうのリスクは〜50％（溶連菌ようれんきん）、〜5％（ブドウ球菌きゅうきん）[1]
頻度ひんど 年間ねんかん10万まん人にんあたり3人にん（先進せんしん国こく）[1]
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
Patient UK 毒どく素性すじょうショック症候群しょうこうぐん

毒どく素性すじょうショック症候群しょうこうぐんまたはトキシックショック症候群しょうこうぐん（どくそせいショックしょうこうぐん、英語えいご: toxic shock syndrome、TSS）は、細菌さいきん性せいの毒素どくそにより引ひき起おこされる疾患しっかんである[1]。

症状しょうじょうには発熱はつねつ、発疹はっしん、落屑、低てい血圧けつあつなどがあげられる[1]。これらの症状しょうじょうは乳房ちぶさ炎えん、骨髄こつづい炎えん、壊死えし性せい筋すじ膜まく炎えん、肺炎はいえんなどの根本こんぽんにある特定とくていの感染かんせん症しょうに関係かんけいしていることがある[1]。

黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんを菌きん体たいとするものをtoxic shock syndromeとし、急速きゅうそくな進行しんこうを特徴とくちょうとするA群ぐん溶連菌ようれんきんによるものをtoxic shock-like syndrome（TSLS）と区別くべつすることがある[3]。後者こうしゃはトキシックショック様さま症候群しょうこうぐんとも訳やくされ[4]、Streptococcal Toxic Shock-like Syndrome[5][6]（またはsevere invasive streptococcal infection[5]）として劇げき症しょう型がた溶連菌ようれんきん感染かんせん症しょう[6]や劇げき症しょう型がた溶血ようけつ性せいレンサ球菌きゅうきん感染かんせん症しょう[5]とも呼よばれている（略称りゃくしょうはTSLS[5]のほかSTSSも用もちいる[6]）。

概要がいよう[編集へんしゅう]

TSSは、化膿かのうレンサ球菌きゅうきんまたは黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんのどちらかのタイプの細菌さいきんによるものである[1]。TSS発症はっしょうの根本こんぽん的てきな機き序じょは、浸潤しんじゅん性せいのレンサ球菌きゅうきん感染かんせん症しょうまたは限局げんきょく性せいのブドウ球菌きゅうきん感染かんせん症しょうに感染かんせんしている間あいだに生産せいさんされるスーパー抗原こうげんが原因げんいんである[1]。ブドウ球菌きゅうきん型がたTSSの危険きけん因子いんしには、非常ひじょうに吸収きゅうしゅう性せいの高たかいタンポンの使用しようや幼児ようじの皮膚ひふ病変びょうへんなどがあげられる[1]。診断しんだんは通常つうじょう、症状しょうじょうに基もとづきおこなわれる[1]。

治療ちりょうには抗生こうせい物質ぶっしつ、膿瘍のうようの切開せっかいと液えき排はい、さらに免疫めんえきグロブリンの点滴てんてき投与とうよなどである[1]。レンサ球菌きゅうきんによるTSS患者かんじゃには、外科げか手術しゅじゅつによる感染かんせん組織そしきの迅速じんそくな除去じょきょが一般いっぱん的てきに推奨すいしょうされているが、必要ひつよう性せいについての根拠こんきょは乏とぼしい[1]。外科げか的てき創傷そうしょう面めん切除せつじょを遅おくらせることを勧すすめる場合ばあいもある[1]。TSSの全体ぜんたい的てきな死亡しぼうリスクはレンサ球菌きゅうきん性せい疾患しっかんで約やく50％、ブドウ球菌きゅうきん性せい疾患しっかんで5％である[1]。発症はっしょうから2日にち以内いないに死亡しぼうする可能かのう性せいがある[1]。

米国べいこくでは、レンサ球菌きゅうきん性せいTSSは年間ねんかん100,000人にんあたり約やく3人にんに発生はっせいし、ブドウ球菌きゅうきん性せいTSSは年間ねんかん100,000人にんあたり約やく0.5人にんに発生はっせいしている[1]。発展はってん途上とじょう国こくではより一般いっぱん的てきに診みられる疾患しっかんである[1]。TSSが最初さいしょに解説かいせつされたのは1927年ねんである[1]。非常ひじょうに吸水きゅうすい能のう及および含水能のうの高たかくウエットな状態じょうたいが続つづくタンポンとの関連かんれんが高たかいため、これらの製品せいひんは販売はんばいされなくなった[1]。

TSSの歴史れきし[編集へんしゅう]

トキシックショック症候群しょうこうぐん（TSS）は1978年ねんにJames K. Toddによって命名めいめいされた[7]。ニューヨーク大学だいがくランゴーン医療いりょうセンター（英語えいご版ばん）の臨床りんしょう微生物びせいぶつ学がく・免疫めんえき学がく部長ぶちょうであるフィリップ・M・チエルノ（Philip M. Tierno Jr.）は、1980年代ねんだい初頭しょとうに、TSSの発症はっしょうの背景はいけいにタンポンの存在そんざいがあることを明あきらかにした。チエルノは、1978年ねんにより吸収きゅうしゅう性せいの高たかいタンポンが導入どうにゅうされたこと、およびタンポンを一いち晩ばん着用ちゃくようすることを推奨すいしょうするメーカーの比較的ひかくてき最近さいきんの決定けっていを、TSSの発生はっせい率りつの増加ぞうかの原因げんいんとした[8]。しかし、その後ごのメタ分析ぶんせきでは、タンポンの吸収きゅうしゅう性せいと化学かがく組成そせいはTSSの発生はっせい率りつと直接ちょくせつ相関そうかんしていないが、酸素さんそと二酸化炭素にさんかたんその含有がんゆう量りょうはより強つよく関連かんれんしていることが明あきらかになった[9][10]。

米国べいこく食品しょくひん医薬品いやくひん局きょくは、タンポン使用しよう時じにTSSを発症はっしょうするリスクを減へらすために、以下いかのガイドラインを提案ていあんしている[11]：

  • タンポン挿入そうにゅう時じにはパッケージの指示しじに従したがう
  • 自分じぶんにとって必要ひつような、最もっとも吸収きゅうしゅう性せいの低ひくいものを選択せんたくする（吸収きゅうしゅう性せいのテストはFDAによって承認しょうにんされている）
  • タンポン使用しようのガイドラインと指示しじに従したがうこと（箱はこのラベルに記載きさいされている）
  • レーヨンではなく、綿めんや布製ぬのせいのタンポンを使用しようすることを検討けんとうする
  • タンポンは少すくなくとも6～8時じ間あいだごと、または必要ひつように応おうじて頻繁ひんぱんに交換こうかんする
  • タンポンとナプキンを交互こうごに使つかう
  • 夜間やかんや就寝しゅうしん時じのタンポン使用しようを避さける
  • TSSなどタンポンに関連かんれんした健康けんこうリスクの警告けいこく表示ひょうじに対たいする意識いしきを高たかめる（危険きけん因子いんしに気付きづいたらすぐにタンポンを取とり外はずす）

イギリス[12][13][14]とアメリカ[15][16]では、タンポンに起因きいんするTSSの症例しょうれいは非常ひじょうに稀まれである。チエルノの研究けんきゅうによると、すべてのコットン製せいのタンポンはTSSが発症はっしょうしにくいという結果けっかが出でている。これは、従来じゅうらいのコットン/レーヨンタンポンやナトラケア社しゃの100%オーガニックコットンタンポンを含ふくむ20ブランドのタンポンを直接ちょくせつ比較ひかくして行おこなわれた。実際じっさい、チエルノは、「結論けつろんから言いうと、合成ごうせい素材そざいのタンポンではTSSが発生はっせいする可能かのう性せいがあるが、すべてコットン製せいのタンポンでは発生はっせいしないということだ」と述のべている[17]。

日本にっぽんでの現状げんじょう[編集へんしゅう]

日本にっぽん衛生えいせい材料ざいりょう工業こうぎょう連合れんごう会かいは、生理せいり用品ようひんに同封どうふうされている説明せつめい書しょに記載きさいされている内容ないようを、忘わすれずに定期ていき的てきに読よむよう、以下いかの注意ちゅうい喚起かんきをしている[18]：

  1. タンポンの挿入そうにゅう時じと取とり出だすときは手てを洗あらう
  2. タンポンは、説明せつめい書しょに記載きさいされている通とおり、定期ていき的てきに交換こうかんする
  3. 一いち度どに２ふたつ以上いじょう挿入そうにゅうしない
  4. 夜よる寝ねる前まえには、新あたらしいタンポンと交換こうかんし、朝あさ起おきたら取とり除のぞく
  5. 生理せいり期間きかんの最後さいごには、タンポンを取とり除のぞく

日本にっぽんの最大手さいおおてであるユニ・チャームは、TSSについて次つぎのように掲載けいさいしている[19]：

  • 使用しよう前まえには、商品しょうひんに添付てんぷされている説明せつめい書しょを必かならず読よみ、使用しよう上じょうの注意ちゅうい事項じこうを守まもって正まさしく使つかう
  • 1回かいのタンポンの使用しようは8時じ間あいだを超こえない
  • 使用しように際さいして手指しゅしを清潔せいけつにし、長時間ちょうじかん使用しようを避さけ、取とり出だし忘わすれない
  • 産後さんご8週間しゅうかんまでと、出産しゅっさん後ご初はじめての生理せいり時じは、膣ちつ内ないの免疫めんえき機能きのうが低下ていかしているため、通常つうじょうよりTSSになりやすいと考かんがえられる
  • TSSの初期しょき症状しょうじょうがあらわれた場合ばあいには、直ただちに医療いりょう機関きかんで治療ちりょうを受うける

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y Low, DE (July 2013). “Toxic shock syndrome: major advances in pathogenesis, but not treatment.”. Critical Care Clinics 29 (3): 651–75. doi:10.1016/j.ccc.2013.03.012. PMID 23830657. 
  2. ^ Ferri, Fred F. (2010). Ferri's differential diagnosis : a practical guide to the differential diagnosis of symptoms, signs, and clinical disorders (2nd ed.). Philadelphia: Elsevier/Mosby. p. Chapter T. ISBN 0323076998 
  3. ^ 樽井たるい武彦たけひこ. “toxic shock-like syndrome（TSLS）”. 杏林製薬きょうりんせいやく. 2024年ねん6月がつ11日にち閲覧えつらん。
  4. ^ 立花たちばな隆夫たかお. “第だい10回かい 壊死えし性せい筋すじ膜まく炎えん・軟部組織そしき感染かんせん症しょう”. 医学いがく出版しゅっぱん. 2024年ねん6月がつ11日にち閲覧えつらん。
  5. ^ a b c d “感染かんせん症しょうの話はなし 劇げき症しょう型がた溶血ようけつ性せいレンサ球菌きゅうきん感染かんせん症しょう”. 岩手いわて県けん. 2024年ねん6月がつ13日にち閲覧えつらん。
  6. ^ a b c “上気じょうき道どうの感染かんせん症しょうについて”. 広島ひろしま市し医師いし会かいだより（第だい527号ごう付録ふろく） (2010年ねん3月がつ15日にち). 2024年ねん6月がつ13日にち閲覧えつらん。
  7. ^ Delaney, Janice; Lupton, Mary Jane; Toth, Emily (1988) (英語えいご). The Curse: A Cultural History of Menstruation. University of Illinois Press. ISBN 9780252014529. https://books.google.com/?id=njfQfrMr31EC&pg=PA142&dq=history+of+tampons#v=onepage&q=history%20of%20tampons&f=false 
  8. ^ “A new generation faces toxic shock syndrome”. The Seattle Times. (2005年ねん1月がつ26日にち). http://www.seattletimes.com/seattle-news/health/a-new-generation-faces-toxic-shock-syndrome/ 
  9. ^ Lanes, Stephan F.; Rothman, Kenneth J. (1990). “Tampon absorbency, composition and oxygen content and risk of toxic shock syndrome”. Journal of Clinical Epidemiology 43 (12): 1379–1385. doi:10.1016/0895-4356(90)90105-X. ISSN 0895-4356. PMID 2254775. 
  10. ^ Ross, R. A.; Onderdonk, A. B. (2000). “Production of Toxic Shock Syndrome Toxin 1 by Staphylococcus aureus Requires Both Oxygen and Carbon Dioxide”. Infection and Immunity 68 (9): 5205–5209. doi:10.1128/IAI.68.9.5205-5209.2000. ISSN 0019-9567. PMC 101779. PMID 10948145. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC101779/. 
  11. ^ “e-CFR: Title 21: Food and Drugs Administration”. Code of Federal Regulations. Section 801.430: User labeling for menstrual tampons: U.S. Food and Drug Administration. 2017年ねん2月がつ11日にち閲覧えつらん。
  12. ^ Kent, Ellie (2019年ねん2月がつ7日にち). “I nearly died from toxic shock syndrome and never used a tampon”. BBC Three. 2019年ねん10月がつ19日にち閲覧えつらん。
  13. ^ “TSS: Continuing Professional Development”. Toxic Shock Syndrome Information Service (2007年ねん10月がつ1日にち). 2019年ねん10月がつ19日にち閲覧えつらん。
  14. ^ Mosanya, Lola (2017年ねん2月がつ14日にち). “Recognising the symptoms of toxic shock syndrome saved my life”. BBC Newsbeat. 2019年ねん10月がつ19日にち閲覧えつらん。
  15. ^ “Toxic Shock Syndrome”. NORD (National Organization for Rare Disorders) (2015年ねん2月がつ11日にち). 2019年ねん10月がつ19日にち閲覧えつらん。
  16. ^ “What You Need To Know About Toxic Shock Syndrome”. University of Utah Health (2018年ねん7月がつ2日にち). 2019年ねん10月がつ19日にち閲覧えつらん。
  17. ^ Lindsey, Emma (2003年ねん11月6日にち). “Welcome to the cotton club”. The Guardian. https://www.theguardian.com/world/2003/nov/07/gender.uk 
  18. ^ TSS（トキシックショック症候群しょうこうぐん）について 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん 日本にっぽん衛生えいせい材料ざいりょう工業こうぎょう連合れんごう会かい
  19. ^ TSSについて タンポンNavi　ソフィ（ユニ・チャーム）

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

分類ぶんるい
外部がいぶリソース
（英語えいご）
「https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=毒どく素性すじょうショック症候群しょうこうぐん&oldid=100694198」から取得しゅとく