「NO」と言いえる日本にっぽん

「NO」と言いえる日本にっぽん 新しん日米にちべい関係かんけいの方策ほうさく The Japan That Can Say No
著者ちょしゃ	石原いしはら慎太郎しんたろう、盛田もりた昭夫あきお
発行はっこう日び	1989年ねん1月がつ
発行はっこう元もと	光文社こうぶんしゃ・カッパ・ホームス
ジャンル	評論ひょうろん、随筆ずいひつ
国くに	日本にっぽん
言語げんご	日本語にほんご
コード	ISBN 978-4334051587
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『「NO」と言いえる日本にっぽん』（ノーといえるにほん）とは、日米にちべい貿易ぼうえき摩擦まさつの中なかソニーの会長かいちょうである盛田もりた昭夫あきおと作家さっかである石原いしはら慎太郎しんたろうによって共同きょうどう執筆しっぴつされた1989年ねんのエッセイである。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのビジネスの方法ほうほうに批判ひはん的てきな目めを向むけ、日本にっぽんが多おおくのこと、ビジネスから国際こくさい問題もんだいにまでに関かんして他国たこくに依存いぞんしない態度たいどを取とるべきだ、と主張しゅちょうしている。

アメリカでは日本にっぽんでの発売はつばい直後ちょくごからアメリカ議会ぎかい内うちで英語えいご訳わけが付ふされたコピー紙しが秘ひそかに回覧かいらんされたと言いわれており、多おおくの非ひ公認こうにんの翻訳ほんやく書しょが作つくられて広ひろまった。フランク・ボールドウィンによるサイモン・アンド・シュースター社しゃの翻訳ほんやく書しょ（絶版ぜっぱん）には盛田もりたによるエッセイが含ふくまれていない。1996年ねんに出版しゅっぱんされた中国人ちゅうごくじんナショナリストのエッセイを集あつめた『「NO」と言いえる中国ちゅうごく』の題名だいめいはこの本ほんをもじったものである。

続篇ぞくへんに『それでも「NO」と言いえる日本にっぽん』（共著きょうちょは渡部わたなべ昇一しょういち・小川おがわ和久かずひさ）および『 断固だんこ「NO」と言いえる日本にっぽん』（共著きょうちょは江藤えとう淳あつし） があるが、後述こうじゅつの理由りゆうにより盛田もりたは関与かんよしていない。

主張しゅちょう

この作品さくひんは石原いしはらと盛田もりたのエッセイを交互こうごに収録しゅうろくしている。石原いしはらのエッセイは、日本にっぽんは尊重そんちょうされるべき強国きょうこくであり、アメリカと取引とりひきをする際さいに日本人にっぽんじんは自分じぶん自身じしんの権利けんりや意見いけんをより主張しゅちょうすべきであると論ろんじている。盛田もりたのエッセイは、アメリカ企業きぎょうの悲劇ひげき的てきな欠点けってんや、日本にっぽんがその印象いんしょうや地位ちいを向上こうじょうさせるにあたって何なにができるかについて焦点しょうてんを当あてている。

以下いかがそれらの主張しゅちょうの大おおまかな抜ぬき出だしである。

石原いしはら

• 日本にっぽんの技術ぎじゅつの優位ゆうい性せい
  • 世界せかいは特とくに半導体はんどうたいの生産せいさんにおいて日本にっぽんの技術ぎじゅつに依存いぞんするようになった。
  • 日本にっぽんはその技術ぎじゅつの優位ゆうい性せいを交渉こうしょうの武器ぶきとして使用しようすべきである。石原いしはらはアメリカに対たいする交渉こうしょう手段しゅだんとして、ソ連それんと機密きみつ情報じょうほうを交換こうかんするというような脅おどしさえも支持しじした。
  • アメリカは労働ろうどう者しゃのレベルが低ひくいので商品しょうひんの質しつも悪わるく、一方いっぽうで日本にっぽんの労働ろうどう者しゃの優越ゆうえつした教育きょういくは大おおきな強つよみである。
• 自己じこ主張しゅちょう
  • 日本にっぽんの外交がいこう官かんは西洋せいよう人じんと取引とりひきする際さい有効ゆうこうでなく、外国がいこく人じんとの取引とりひきに慣なれている経営けいえい者しゃも交渉こうしょうに参加さんかすべきだ。
  • 日本にっぽんは日米にちべい安全あんぜん保障ほしょう条約じょうやくを終おわらせ、自衛じえいすべきだ。この方ほうが安やすく済すみ、アメリカへの依存いぞんもなくなるだろう。
• 偏見へんけん
  • アメリカは、今いまの時代じだいは欧米おうべい世界せかいによって支配しはいされており、白人はくじん世界せかいが優すぐれているのだと考かんがえており、この偏見へんけんは最後さいごには自みずからの首くびを絞しめることになるだろう。
  • アメリカ人じんとキリスト教きりすときょう宣教師せんきょうしは各地かくちの文化ぶんかを消けし去さり、西洋せいようの文化ぶんかで取とって替がえようとしている。（文化ぶんか帝国ていこく主義しゅぎを参照さんしょう）
• 一部いちぶで事実じじつが認みとめられているもの
  • 以前いぜんアメリカの植民しょくみん地ちであった地域ちいきは問題もんだいで溢あふれているが、一方いっぽうで日本にっぽんの植民しょくみん地ちは繁栄はんえいしている。パラオ

盛田もりた

盛田もりたはニューヨークに長期ちょうき在住ざいじゅうし成功せいこうした経営けいえい者しゃであり、アメリカのビジネス文化ぶんかについて多おおくの考かんがえを持もつ。

• アメリカの企業きぎょう
  • アメリカの企業きぎょうはM&Aのようなマネーゲームに躍起やっきになり、実際じっさいの商品しょうひんの創造そうぞうや製造せいぞう力りょくを蔑ないがしろにしている。
  • アメリカの企業きぎょうは短期たんき的てきな利益りえきに躍起やっきになり、製造せいぞうの海外かいがい移転いてんなどの長期ちょうき的てきな全体ぜんたいの生計せいけいを犠牲ぎせいにしている。
  • アメリカの企業きぎょうの重役じゅうやくの収入しゅうにゅうは多おおすぎて企業きぎょうのためにならない。
  • 日本にっぽんの企業きぎょうは厳格げんかくな共同きょうどう体たいであり、全体ぜんたいとして結果けっかはよい。
  • アメリカとの貿易ぼうえき黒字くろじはアメリカには望のぞましい製品せいひんが欠かけていることが原因げんいんである。
  • アメリカの企業きぎょうは基本きほん的てきな調査ちょうさによれば強力きょうりょくだが、製品せいひんの進歩しんぽやマーケティングにおいてはそうではない。
  • 日本にっぽん政府せいふが日本にっぽんの企業きぎょうを保護ほごすることは当然とうぜんである。政府せいふは税金ぜいきんの収入しゅうにゅうに頼たよっているのだ。
• 日本にっぽんの印象いんしょう、地位ちい
  • ジャパンバッシングが頻繁ひんぱんに起おこっており、これは主しゅとして地元じもとの社会しゃかいに溶とけ込こめない海外かいがいの日本人にっぽんじん経営けいえい者しゃの責任せきにんである。
  • 理解りかいを深ふかめるため、日本人にっぽんじんはアメリカ人じんと交渉こうしょうする時ときは西洋せいようの文化ぶんかや言語げんごに慣なれるため更さらなる努力どりょくをすべきだ。
  • アメリカが日本にっぽんの地位ちいを認みとめていないことはアメリカや世界せかいの経済けいざいによからぬ結果けっかをもたらすだろう。
  • 日本にっぽんは世界せかいのリーダーとしての役割やくわりを自覚じかくし、世界せかい経済けいざいを支ささえる役目やくめを負おうべきだ。
  • 日本にっぽんは経済けいざいのリーダーとしての地位ちいを強つよめ、アジアの復興ふっこうに協力きょうりょくすべきだ。
  • 日本にっぽんは真しんの世界せかいのリーダーになりたいのなら対外たいがい援助えんじょを増ふやすべきだ。盛田もりたはこれを自国じこくへの貢献こうけんと同等どうとうに考かんがえている。

評価ひょうか

エッセイは石原いしはらが総裁そうさい選せんに走はしり回まわっている頃ころに発売はつばいされたものであり、真面目まじめな分析ぶんせきというよりは注意ちゅういを惹ひくための単たんなる道具どうぐに過すぎないのではないかと言いわれてきた。両りょう著者ちょしゃ共どもに本ほんが日本人にっぽんじんの読者どくしゃを想定そうていしたものであると言いって、英語えいごに翻訳ほんやくすることに乗のり気きでないことを明あきらかにした。盛田もりたはその後ご、大変たいへん誤解ごかいされていると言いって身みを引ひいた。彼かれのエッセイは公認こうにんの英語えいご翻訳ほんやく書しょには含ふくめられていない（但ただし、彼かれはその後ごも演説えんぜつやインタビューにおいて同様どうようの考かんがえを公おおやけにしている）。これらのコメントは、エッセイはアメリカへの非難ひなんというよりは日本にっぽん政府せいふの自己じこ主張しゅちょうのなさへの批判ひはん、起爆きばく剤ざい、また選挙せんきょのための宣伝せんでんの類るいであるとする主張しゅちょうを強つよいものにしている。

関連かんれん項目こうもく

• 反米はんべい
• 文化ぶんか帝国ていこく主義しゅぎ
• 日本にっぽんの国際こくさい関係かんけい

外部がいぶリンク

• 英訳えいやく文ぶん