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アシツキ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
アシツキ
1. アシツキのぐんたい全形ぜんけい (うえ) と細胞さいぼういと (した)
分類ぶんるい
ドメイン : 細菌さいきん Bacteria
もん : シアノバクテリアもん (藍色あいいろ細菌さいきんもん) Cyanobacteria
: ネンジュモ Nostocales
: ネンジュモ Nostocaceae
ぞく : ネンジュモぞく Nostoc
たね : アシツキ Nostoc verrucosum
学名がくめい
Nostoc verrucosum
Vaucher ex Bornet & Flahault 1886[1]
シノニム
和名わみょう
アシツキ (あしづけ葦附あしつき)[2][3]、アシツキノリ (あしづけこけ葦附あしつきこけ)[4]、コトブキノリ (寿ことぶきこけ)[3]、コトブキタケ[3] (寿ことぶきだけ)、ミトクノリ (三徳さんとくこけ)[3][5]、シガノリ (滋賀しがこけ)[3][5]、カモガワノリ[5][6][ちゅう 1] (鴨川かもがわこけ)、キブネノリ[5][ちゅう 1] (貴船きふねこけ)、シラカワノリ[5][ちゅう 1] (白川しらかわこけ)、アネガワクラゲ[7][6][ちゅう 1] (姉川あねがわ水母くらげ)、カワタケ[8][ちゅう 2] (かわだけかわだけ)

アシツキあしづけ葦附あしつき学名がくめい: Nostoc verrucosum)は、ネンジュモぞくぞくするあいの1しゅである。多数たすう細胞さいぼういと寒天かんてんしつ基質きしつつつまれたかたまりぐんたい)を形成けいせいし(1)、清冽せいれつ流水りゅうすい湧水わきみずいしなどに付着ふちゃくしている。日本にっぽんではふるくから食用しょくようとされ、『万葉集まんようしゅう』にもアシツキをんだうたがある。近年きんねん減少げんしょうし、天然記念物てんねんきねんぶつ[10]じゅん絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅ[11]指定していしている地域ちいきもある。

別名べつめい地方ちほうめいおおく、アシツキノリ葦附あしつきこけ)、コトブキノリ寿ことぶきこけ)、コトブキタケ寿ことぶきだけ)、ミトクノリ三徳さんとくこけ)、シガノリ滋賀しがこけ)ともよばれる[3][4][5]。アシツキの別名べつめいとして、にカモガワノリ(鴨川かもがわこけ)やキブネノリ(貴船きふねこけ)、シラカワノリ(白川しらかわこけ)、アネガワクラゲ(姉川あねがわ水母くらげ)などもげられるが[5][11][7]、これらのきんえんしゅイシクラゲすこともある[4]。カワタケ(かわだけかわだけ)とよばれることもあるが[8]、このはアシツキやイシクラゲ以外いがいに、遠縁とおえん食用しょくようあいであるスイゼンジノリすこともある[9]。また菌類きんるいのコウタケ(Sarcodon aspratus; 担子きんもんハラタケつなイボタケ)も、カワタケ(かわだけ)とばれることがある[12]

特徴とくちょう

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多数たすうのトリコーム(細胞さいぼういと)がねばしつとう埋没まいぼつしたかたまりぐんたい)を形成けいせいし、水中すいちゅういわなどに付着ふちゃくしている[5][13]ぐんたい表面ひょうめんうすいが丈夫じょうぶ外皮がいひとなり、内部ないぶ軟質なんしついろくら褐色かっしょくからくら緑色みどりいろぐんたい最初さいしょちゅう球形きゅうけいから半球はんきゅうがただが、次第しだい表面ひょうめん凸凹おうとつこぶじょう隆起りゅうきあつまりのようになり、全体ぜんたい平面へいめんてき定形ていけいになる(うえ1じょう)。ふるぐんたいでは表面ひょうめんあなひらいて内部ないぶ軟質なんしつ露出ろしゅつし、また所々ところどころがわずかに中空なかぞらになる。おおきいものは直径ちょっけい10センチメートル (cm) 以上いじょうになる。

細胞さいぼういと湾曲わんきょくしており(うえ1)、ぐんたい周縁しゅうえんでは細胞さいぼういと密集みっしゅうしているが、中心ちゅうしんではあらである[5][13]ぐんたい周縁しゅうえんでは、かく細胞さいぼういとさや褐色かっしょく明瞭めいりょう細胞さいぼういと構成こうせいする細胞さいぼうたんだるがた直径ちょっけい3-4マイクロメートル (µm)。異質いしつ細胞さいぼう球形きゅうけい直径ちょっけい 5–6 µm。アキネート(耐久たいきゅう細胞さいぼう)は楕円だえんがたおおきさ 5–7 × 7–8 µm、アキネートの細胞さいぼうかべ平滑へいかつ黄色おうしょく

多量たりょうねばしつとう細胞さいぼうがい高分子こうぶんし物質ぶっしつ)をさんせいすることやトレハロース蓄積ちくせきするてんでは、陸生りくせいきんえんしゅであるイシクラゲ類似るいじしているが、水生すいせいのアシツキは乾燥かんそうたいせいしめさないてんことなる[14]。マイコスポリンさまアミノ酸あみのさん (MAAs) として、おもにポルフィラ-334 (porphyra-334) をもつてん特異とくいである[15]。また細菌さいきん増殖ぞうしょくおさえる脂肪酸しぼうさんさんせいすることがしめされている[3]

分布ぶんぷ生態せいたい

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北米ほくべい南米なんべいアフリカヨーロッパ中東ちゅうとうみなみアジアひがしアジアオーストラリアニュージーランドなど世界せかい各地かくち分布ぶんぷする[1]日本にっぽんでも本州ほんしゅう関東かんとう中部ちゅうぶ近畿きんき中国ちゅうごく地方ちほう)や九州きゅうしゅうから報告ほうこくされている[5][8]

低温ていおん清流せいりゅう湧水わきみずぶしてき出現しゅつげんする[3][4]。ふつう水中すいちゅういわいし付着ふちゃくしており、またヨシ(アシ、あし)など植物しょくぶつくき付着ふちゃくしていることもあるとされる[4]

人間にんげんとのかかわり

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アシツキは、日本にっぽんタイ食用しょくようとされることがある[3]日本にっぽんではふるくから記録きろくがあり、『万葉集まんようしゅう』にアシツキを採取さいしゅする女性じょせいたちをんだ大伴家持おおとものやかもちうたしるされている[2][5][16][17][18]下記かき)。ゆうしんかわ庄川しょうがわ古称こしょうであり、このうたげん富山とやまけん礪波となみぐんまれた[18][19]

かみかわをかみがは べにくれなゐにほふ むすめをとめらし 葦附あしつきあしつきると たすらし

多数たすう地方ちほうめいがあることから(上記じょうき参照さんしょう)、身近みぢか食用しょくようであったとかんがえられている[3]河川かせん改修かいしゅうなど生育せいいく環境かんきょう悪化あっかにより、現在げんざいではまれな存在そんざいになった[3]近年きんねんでは培養ばいよう成功せいこうしており、食品しょくひんにも利用りようされている[20][21][22]

分類ぶんるい

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分子ぶんし系統けいとうがくてき研究けんきゅうからは、狭義きょうぎネンジュモぞくイシクラゲなどがふくまれる)にきんえんではあるものの、系統的けいとうてきにはややことなることが示唆しさされている[23]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ a b c d ただし、おなネンジュモぞくぞく食用しょくようともされるイシクラゲ意味いみすることもある[5][4]
  2. ^ ただし、遠縁とおえん食用しょくようあいであるスイゼンジノリ意味いみすることもある[9]

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d Guiry, M.D. & Guiry, G.M. (2021ねん). “Nostoc verrucosum”. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. 2021ねん9がつ26にち閲覧えつらん
  2. ^ a b あしづけ」『精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてんhttps://kotobank.jp/word/%E8%91%A6%E4%BB%98コトバンクより2021ねん9がつ28にち閲覧えつらん 
  3. ^ a b c d e f g h i j k Oku, N., Yonejima, K., Sugawa, T. & Igarashi, Y. (2014). “Identification of the n-1 fatty acid as an antibacterial constituent from the edible freshwater cyanobacterium Nostoc verrucosum”. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 78: 1147-1150. doi:10.1080/09168451.2014.918484. 
  4. ^ a b c d e f 米田よねだ勇一ゆういち (1962). “アシツキノリとカモガワノリ”. 植物しょくぶつ分類ぶんるい 地理ちり 20: 313. 
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 廣瀬ひろせ弘幸ひろゆき & 山岸やまぎしだか旺 (1977). “Nostoc verrucosum”. 日本にっぽん淡水たんすい図鑑ずかん. 内田うちだろうづる圃. pp. 31, 99. ISBN 978-4753640515 
  6. ^ a b ノストック」『ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてんhttps://kotobank.jp/word/%E3%83%8E%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%83%E3%82%AFコトバンクより2021ねん10がつ1にち閲覧えつらん 
  7. ^ a b 片岡かたおかひろしなお (1990). “藻類そうるいこう反応はんのう変異へんいたい分離ぶんり現状げんじょうゆめ”. 植物しょくぶつひかり反応はんのう機構きこう解析かいせき変異へんいかぶ. 東北大学とうほくだいがく遺伝いでん生態せいたい研究けんきゅうセンター. pp. 13-24 
  8. ^ a b c 河川かせん自然しぜん環境かんきょう. 球磨川くまがわ水系すいけい流域りゅういきおよ河川かせん概要がいよう. 国土こくど交通省こうつうしょう河川かせんきょく. (2006). p. 19. https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/kihonhoushin/060719/pdf/ref5.pdf 
  9. ^ a b かわだけ”. 全国ぜんこくるなび. 公益社こうえきしゃだん法人ほうじん 日本にっぽん観光かんこう振興しんこう協会きょうかい. 2021ねん9がつ28にち閲覧えつらん
  10. ^ 日本にっぽん 編集へんしゅう (2019ねん7がつ29にち). “万葉集まんようしゅうでもまれた富山とやまのアシツキ 培養ばいよう技術ぎじゅつ確立かくりつ あい機能きのうせい素材そざい開発かいはつけて前進ぜんしん 富山県立大とやまけんりつだい”. 2021ねん9がつ26にち閲覧えつらん
  11. ^ a b アシツキ”. 日本にっぽんのレッドデータ 検索けんさくシステム. 2021ねん9がつ28にち閲覧えつらん
  12. ^ かわだけ」『動植物どうしょくぶつめいよみかた辞典じてん 普及ふきゅうばんhttps://kotobank.jp/word/%E7%9A%AE%E8%8C%B8コトバンクより2021ねん10がつ1にち閲覧えつらん 
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  21. ^ 万葉まんようそば」もちもちしょくかん 人工じんこう栽培さいばい成功せいこうのアシツキ使用しよう. 岐阜ぎふ新聞しんぶん. 2019ねん8がつ30にち.
  22. ^ 北日本きたにっぽん新聞しんぶん (2019ねん5がつ30にち). “アシツキそば 利賀とが名産めいさんに 城端じょうはな大福寺だいふくじ試食ししょくかい”. 北陸ほくりく信越しんえつ観光かんこうナビ. 2021ねん4がつ23にち閲覧えつらん
  23. ^ Genuário, D.B., Vaz, M.G.M.V., Hentschke, G.S., Sant’anna, C.L. & Fiore, M.F. (2015). “Halotia gen. nov., a phylogenetically and physiologically coherent cyanobacterial genus isolated from marine coastal environments”. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 65: 663–675. doi:10.1099/ijs.0.070078-0. 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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