インバータ

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インバーターから転送てんそう
自立じりつがた太陽光たいようこう発電はつでんプラントのインバータ(ラインがわ沿いのシュパイアーにて)

インバータ英語えいご: inverter)とは、直流ちょくりゅうまたは交流こうりゅうから周波数しゅうはすうことなる交流こうりゅう発生はっせいさせる(ぎゃく変換へんかんする)電源でんげん回路かいろ、またはその回路かいろ装置そうちのことである。ぎゃく変換へんかん回路かいろ(ぎゃくへんかんかいろ)、ぎゃく変換へんかん装置そうち(ぎゃくへんかんそうち)などともばれる。制御せいぎょ装置そうちわせることなどにより、しょうエネルギー効果こうかをもたらすことも可能かのうなため、利用りよう分野ぶんや拡大かくだいしている。

インバータとぎゃく機能きのう回路かいろ装置そうち)はコンバータ、または整流せいりゅうじゅん変換へんかんともう。

回路かいろ方式ほうしき[編集へんしゅう]

回路かいろ一般いっぱん半導体はんどうたい素子そし電力でんりょくよう半導体はんどうたい素子そし)と受動じゅどう素子そしとをわせて構成こうせいされる。かい転変てんぺんりゅうくら機械きかいてき要素ようそ不要ふようなため効率こうりつがよく、保守ほしゅ容易よういである。波形はけい出力しゅつりょく方法ほうほうとしてパルス変調へんちょうもちいられる。

電圧でんあつがたインバータ[編集へんしゅう]

出力しゅつりょくインピーダンスちいさく、電圧でんあつげんとして動作どうさするものである。コンバータ回路かいろ直流ちょくりゅうがわだい容量ようりょうコンデンサ並列へいれつ接続せつぞくされている。

電流でんりゅうがたインバータ[編集へんしゅう]

出力しゅつりょくインピーダンスおおきく、電流でんりゅうげんとして動作どうさするものである。じゅん変換へんかん回路かいろ直流ちょくりゅうがわだい容量ようりょうリアクトル直列ちょくれつ接続せつぞくされている。

電力でんりょく変換へんかんけいのインバータ回路かいろ[編集へんしゅう]

DC-ACインバータ回路かいろけいのインバータ回路かいろ[編集へんしゅう]

ロイヤー回路かいろ
電流でんりゅう共振きょうしんがた
コレクタ共振きょうしんがた回路かいろ

初期しょきころロイヤー回路かいろ使つかわれていた。トランスを飽和ほうわさせるブロッキング発振はっしんがたで、けっして性能せいのういものではなかった。 現在げんざいでもこのブロッキング発振はっしんがたのロイヤー回路かいろ無機むきELよう点灯てんとう回路かいろとして使つかわれている。また、液晶えきしょうバックライトよう蛍光けいこうかんひや陰極いんきょくかん)の点灯てんとうようとしてはこれとよく構成こうせいコレクタ共振きょうしんがた回路かいろというものが使つかわれている。両者りょうしゃはたびたび混同こんどうされるが動作どうさ原理げんりことなる。

蛍光けいこうかん点灯てんとうようのインバータ回路かいろ[編集へんしゅう]

DC-ACインバータ回路かいろけいのインバータ回路かいろであるが、チョークコイルがたもちいたLC共振きょうしんかた共振きょうしんトランス利用りようして効率こうりつ改善かいぜんはかった共振きょうしんがたがあり、インバータ回路かいろ分野ぶんやではかなり特殊とくしゅなインバータである。インバータが特殊とくしゅなのは負荷ふか放電ほうでんかんというまけせい抵抗ていこう特性とくせいゆうする素子そし駆動くどうするため、まけせい抵抗ていこう対処たいしょするための独自どくじ工夫くふう必要ひつようだからである。 LC共振きょうしんがたおも電流でんりゅう共振きょうしんがた回路かいろ基本きほんにしたものがおおく、それに様々さまざま工夫くふうくわえている。おも蛍光けいこうとうなどのねつ陰極いんきょくかん点灯てんとう用途ようとてきする。 一方いっぽう共振きょうしんトランスをもちいたインバータ回路かいろひや陰極いんきょくかん点灯てんとう用途ようと(ひや陰極いんきょくかんインバーター)にもちいられ、その用途ようとはノートパソコン、液晶えきしょうモニタ、液晶えきしょうテレビバックライト照明しょうめいなど幅広はばひろい。

DC-DCコンバータのインバータ回路かいろ[編集へんしゅう]

ロイヤー回路かいろ
コレクタ共振きょうしんがた

初期しょきころロイヤー回路かいろ使つかわれていた。トランスを飽和ほうわさせるブロッキング発振はっしんがたで、けっして性能せいのういものではなかった。周波数しゅうはすうひくく、すうじゅうHzへるつすうkHzきろへるつである。

現在げんざいコレクタ共振きょうしんがた回路かいろというものがおお使つかわれ小型こがたされている。周波数しゅうはすうすうじゅうkHzきろへるつである。

モーター制御せいぎょけいのインバータ回路かいろ[編集へんしゅう]

駆動くどう周波数しゅうはすうひくく、だい電流でんりゅうだい電力でんりょくである。駆動くどう対象たいしょうさんそう誘導ゆうどう電動でんどうもしくは同期どうき電動でんどうがほとんどであり、スイッチング素子そし各相かくしょう2くみずつもちいたさんそう出力しゅつりょくインバータがもちいられる。じき始動しどうくらべてインバータ方式ほうしきでは電動でんどう回転かいてん速度そくど調整ちょうせい出力しゅつりょくトルク調整ちょうせい容易よういになることによって効率こうりつ大幅おおはば改善かいぜんすることができる。しょうエネの観点かんてんからも、電動でんどうではじき制御せいぎょからのえが推奨すいしょうされる。

整流せいりゅう直流ちょくりゅうからさんそう交流こうりゅうつく回路かいろ

回転かいてん磁界じかいしき交流こうりゅう電動でんどうでは、電機でんきさそえおこり起電きでんりょく周波数しゅうはすう回転かいてんすうがほぼ比例ひれいするので、インバータによりさそえおこり起電きでんりょく+インピーダンス降下こうか電圧でんあつくわえててい起動きどう電流でんりゅうていスベリ(ていおくかく)に制御せいぎょする方式ほうしき開発かいはつされて、鉄道てつどうかいではそれをVVVFインバータ制御せいぎょ、VVVF制御せいぎょ可変かへん電圧でんあつ可変かへん周波数しゅうはすう制御せいぎょ)とんで、1990年代ねんだい以降いこう現在げんざいではほとんどのしんせいしゃ動力どうりょく方式ほうしきとなっている。

VVVFインバータのスイッチング素子そしとして、てい出力しゅつりょくようバイポーラトランジスタ、MOS-FET、だい出力しゅつりょくようゲートターンオフサイリスタ(自己じこしょうかたサイリスタ)や、より高速こうそく絶縁ぜつえんゲートバイポーラトランジスタ (IGBT)しゅとして使用しようされている。さらに、IGBTよりオン抵抗ていこうちいさく消費しょうひ電力でんりょくすくなくなるSiCパワー半導体はんどうたい (炭化たんかケイ素けいそMOSFET)[1]へのえが、2015ねん1がつ小田急おだきゅうせん営業えいぎょう運転うんてん[2]から、山手やまてせんE235けい車両しゃりょう東海道新幹線とうかいどうしんかんせんN700Sの2020ねん運行うんこう開始かいし[3]、へとすすしている。

 速度そくど0をふく任意にんい電圧でんあつ任意にんい周波数しゅうはすう正弦せいげん生成せいせいする方式ほうしき基本きほんてきにPWM(パルスはば変調へんちょう方式ほうしきっているが、だい容量ようりょう素子そし最大さいだい動作どうさ電圧でんあつ不足ふそくすることから中間ちゅうかん電圧でんあつ設定せっていした「3レベルインバータ」も使つかわれ、それにたいしオン・オフ2のPWMインバータを「2レベルインバータ」とぶ。工場こうじょうなどでさらにおおきな電動でんどう制御せいぎょする場合ばあい「5レベルインバータ」などのさらにレベルすうやしたものが使つかわれることもある。

制御せいぎょよう半導体はんどうたい素子そし[編集へんしゅう]

1990年代ねんだい前半ぜんはんまでは、だい出力しゅつりょくようにはゲートターンオフサイリスタ (GTO)、しょう出力しゅつりょく用途ようとにはパワーバイポーラトランジスタしゅとして使つかわれていたが、1990年代ねんだい後半こうはん以降いこうは、よりオン抵抗ていこうひくく、高速こうそく駆動くどう可能かのう絶縁ぜつえんゲートバイポーラトランジスタ (IGBT; だい出力しゅつりょくよう)やパワーMOSFET(しょう出力しゅつりょくよう)が製造せいぞうされるようになったことから、これらの素子そし使用しようするものがほとんどとなった。さらに、前項ぜんこう記述きじゅつしたSiCパワー半導体はんどうたいへとえがすすんでいる。SiCパワー半導体はんどうたい製造せいぞうメーカーには三菱電機みつびしでんきやロームなどがある。

インバータ装置そうち[編集へんしゅう]

厳密げんみつには、直流ちょくりゅう電力でんりょく交流こうりゅう電力でんりょく変換へんかんする装置そうちあるいは装置そうち一部いちぶをインバータとぶ。バッテリー電源でんげん交流こうりゅう変換へんかん装置そうち直流ちょくりゅう電気でんき鉄道てつどうのインバータ装置そうちはこのタイプのインバータ装置そうちである。一方いっぽう日本にっぽんにおいては、そうすう周波数しゅうはすう電圧でんあつとうことなる交流こうりゅうるために、商用しょうよう電源でんげんたんしょう交流こうりゅうさんそう交流こうりゅうを、一旦いったん整流せいりゅう直流ちょくりゅう変換へんかんしてから、再度さいど交流こうりゅうにするための、整流せいりゅう (コンバータ)と (厳密げんみつ意味いみでの)インバータをわせ、どういちパッケージない収容しゅうようした電力でんりょく変換へんかん装置そうち全体ぜんたいをインバータとぶこともおおい(産業さんぎょうようインバータなど)。

インバータの用途ようと[編集へんしゅう]

車載しゃさいインバータ
自動車じどうしゃアクセサリーソケットカーバッテリーから直流ちょくりゅう12 Vを交流こうりゅう100 Vに変換へんかんする。

一口ひとくちにインバータとってもインバータの応用おうよう範囲はんい幅広はばひろく、それぞれの分野ぶんやにおけるインバータ回路かいろ用途ようとにおけるインバータ回路かいろとはおたがいにまったことなるものである。応用おうようめんおおきくけると、モーター制御せいぎょ、DC-ACインバータ、DC-DCコンバータ、放電ほうでんランプよう安定あんてい、そのとなる。

インバータの保全ほぜん[編集へんしゅう]

インバータは固体こたい回路かいろ素子そしのみから構成こうせいされるため、メンテナンスフリーの装置そうちであるかのように誤解ごかいされる場合ばあいもあるが、実際じっさいは、とりわけコンバータとインバータをわせた装置そうちにおいては、コンバータ平滑へいかつよう電解でんかいコンデンサ経年けいねん劣化れっかけられないゆう寿命じゅみょう部品ぶひんであり、いずれは交換こうかん必要ひつようになる。故障こしょうによる長時間ちょうじかん停止ていしこのましくない用途ようとでは、予防よぼう保全ほぜんとして、電解でんかいコンデンサを5〜10ねん程度ていど間隔かんかく定期ていきてき交換こうかんすることがこのましい。 また、電動でんどうようなどの比較的ひかくてき容量ようりょうおおきいインバータは近年きんねん小型こがたすすみ、素子そしをファンにより強制きょうせい冷却れいきゃくしていることがおおい。そのため、ファンの交換こうかんも2〜4ねん間隔かんかく定期ていきてき交換こうかんすることがのぞましい。

インバータの制御せいぎょ方式ほうしき[編集へんしゅう]

パルスはば変調へんちょう(PWM)とパルス振幅しんぷく変調へんちょう(PAM)がある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ NEDOプロジェクト実用じつようドキュメント”. www.nedo.go.jp. 2018ねん10がつ24にち閲覧えつらん
  2. ^ Good チャンネル (2015-01-30), 小田急おだきゅう1000かたち1066F(更新こうしんしゃ) 2015ねん1がつ9にち営業えいぎょう運転うんてん開始かいし, https://www.youtube.com/watch?v=ABEUhe603Us 2018ねん10がつ24にち閲覧えつらん 
  3. ^ 東海道新幹線とうかいどうしんかんせん新型しんがた車両しゃりょう「N700S」はリニア時代じだい布石ふせき (3/4)」『ITmedia ビジネスオンライン』。2018ねん10がつ24にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]