(Translated by https://www.hiragana.jp/)
エゴノキ - Wikipedia コンテンツにスキップ

エゴノキ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
エゴノキ
エゴノキ（横浜よこはま市し・2006年ねん5月がつ）
分類ぶんるい（APG IV）
界さかい : 植物しょくぶつ界かい Plantae
階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ angiosperms
階級かいきゅうなし : 真正しんしょう双そう子葉しよう類るい eudicots
階級かいきゅうなし : コア真正しんせい双そう子葉しよう類るい core eudicots
階級かいきゅうなし : キク上うえ群ぐん superasterids
階級かいきゅうなし : キク類るい asterids
目め : ツツジ目め Ericales
科か : エゴノキ科か Styracaceae
属ぞく : エゴノキ属ぞく Styrax
種たね : エゴノキ S. japonica
学名がくめい
Styrax japonicus Siebold et Zucc. (1846)[1]
シノニム
和名わみょう
エゴノキ（えごの木き）、
ロクロギ、チシャノキ、
オオバエゴノキ、シマエゴノキ、
ホソバエゴノキ、ヒメエゴノキ
英名えいめい
Japanese snowbell
果実かじつ

エゴノキ（えごの木き[9]、学名がくめい: Styrax japonica）とはエゴノキ科かエゴノキ属ぞくの落葉らくよう小しょう高木たかぎである。

名称めいしょう

[編集へんしゅう]

和名わみょう「エゴノキ」は、果実かじつを口くちに入いれると喉のどや舌したを刺激しげきしてえぐい（えごい）ことに由来ゆらいする[10][11]。別名べつめいチシャノキ[12][10]、ロクロギ[10]、チサノキなどとも呼よばれ[13]、歌舞伎かぶきの演題えんだい『伽羅きゃら先代せんだい萩はぎ』に登場とうじょうするちさの木き（萵苣ちさの木き）はこれである。

「齊ひとし墩果」が漢かん名めいとされる場合ばあいがあるが、これは本来ほんらいはオリーブの漢かん名めいである[14]。ロクロギとも呼よばれる[14][13]。現代げんだい中国ちゅうごく語ごでは「野の茉莉まり」と呼よぶ[15]。

分布ぶんぷ・生育せいいく地ち

[編集へんしゅう]

日本にっぽん、朝鮮半島ちょうせんはんとう、中国ちゅうごく、フィリピン北部ほくぶの東ひがしアジア地域ちいきに分布ぶんぷし、日本にっぽんでは北海道ほっかいどう（日高ひだか地方ちほう）、本州ほんしゅう、四国しこく、九州きゅうしゅう、沖縄おきなわまで分布ぶんぷする[12]。丘陵きゅうりょう地ちや山地さんち[9]、山野さんやや山麓さんろくの雑木林ぞうきばやしに多おおく見みられる[10]。植うえ栽もされる[9]。

特徴とくちょう

[編集へんしゅう]

落葉らくよう広葉樹こうようじゅの高木たかぎで、高たかさは7 - 15メートル (m) ほどになる[10]。樹皮じゅひは暗くら紫むらさき褐色かっしょくから暗くら灰ばい褐色かっしょくで、ほぼ滑なめらかできめが細こまかい[10][9]。枝えだはジグザグ状じょうに伸のびて、一いち年ねん枝えだは細ほそく無む毛けまたは星ほし状じょう毛げが残のこる[9]。老木ろうぼくは樹皮じゅひに浅あさい裂さけ目めが入はいる[9]。葉はは互生ごせいし、両りょう端はしのとがった長ちょう楕円だえん形がたで長ながさ4.5 - 8センチメートル (cm) [10]。若芽わかめが伸のびだしたころは、全体ぜんたいに褐色かっしょくの星ほし状じょう毛げに覆おおわれている[9]。

花期かきは5 - 6月がつごろ[10]。短みじかい側がわ枝えだの先端せんたんに、房ぼう状じょうに白しろい花はなを下向したむきに1 - 6個こつけ[10]、芳香ほうこうがある。花はなの直径ちょっけいは約やく25ミリメートル (mm) 、花冠かかんは先端せんたんが深ふかく5裂きれして[10]、大おおきくは開ひらかずややつぼみ加減かげんで咲さく。雄蕊おしべは10本ほん[10]。品種ひんしゅにより淡紅あわべに色しょくの花はなをつける。

果はて期きは10月がつ[10]。果実かじつは長ながさ10 - 13 mmの卵たまご球形きゅうけいで灰白色かいはくしょくをしており[10]、大おおきい種子しゅしを1個いっこ含ふくむ。熟じゅくすと果皮かひは不規則ふきそくに破やぶれて種子しゅしが露出ろしゅつする[12]。冬場ふゆばは、果皮かひが取とれて種子しゅしだけが残のこった果実かじつをよく見みかける[9]。果皮かひに有毒ゆうどくなエゴサポニンを多おおく含ふくむ[10]。ピーク時じには果実かじつにも同どう量りょうのサポニンを蓄たくわえるが、11月を過すぎると急激きゅうげきに減少げんしょうする[11]。エゴサポニンは胃いや喉のどの粘膜ねんまくに炎症えんしょうを起おこし、溶血ようけつ作用さようもある。

冬芽とうがは互生ごせいし、裸はだか芽めで褐色かっしょくの毛けに覆おおわれており、副ふく芽めが縦たてに1 - 2個こつく[9]。葉は痕こんは半円はんえん形がたで、維管束たば痕あとが1個いっこある[9]。

利用りよう

[編集へんしゅう]

庭木にわきなどとして栽培さいばいもするほか、緻密ちみつで粘ねばり気けのある材ざいを将棋しょうぎのこまや和かず傘かさのロクロ[16][13]などの素材そざいとされロクロギの別名べつめいはこれに由来ゆらいする。 また、蜜みつ源げん植物しょくぶつとしても利用りようされる場合ばあいがある[17]。

園芸えんげい種しゅとしては桃色ももいろ花はなの品種ひんしゅ「ピンクチャイム」や枝えだがしなる「シダレエゴノキ」などの改良かいりょう種しゅもある。また盆栽ぼんさいとしても楽たのしまれており中なかには手てのひらサイズのミニ盆栽ぼんさいもある。

昔むかしは若わかい果実かじつを石鹸せっけんと同おなじように洗浄せんじょう剤ざいとして洗濯せんたくなどに用もちいた[12][10][13]。またサポニンには魚さかな毒性どくせいがあるので地方ちほうによっては魚さかなの捕獲ほかくに使つかったといわれる[12][10][13]。しかし、同様どうように毒どく流ながし漁りょうに用もちいられたと言いわれるサンショウの樹皮じゅひとの比較ひかく実験じっけんからエゴノキのサポニンの魚さかな毒性どくせいの強つよさは漁りょうに使つかえるほどのものではないのではないかと疑問ぎもん視しする見解けんかいもある[要よう出典しゅってん]。

動物どうぶつとの関係かんけい

[編集へんしゅう]

ヒゲナガゾウムシ科かの甲虫かぶとむし・エゴヒゲナガゾウムシ（ウシヅラカミキリ） Exechesops leucopis（Jordan, 1928）が果実かじつに穴あなを開あけて産卵さんらんし幼虫ようちゅうが種子しゅしの内部ないぶを食たべて成長せいちょうするが落下らっか種子しゅし内ないで休眠きゅうみん中ちゅうの成熟せいじゅく幼虫ようちゅうを「ちしゃの虫むし」と呼よび1935年ねんごろからウグイ、オイカワなどの川かわ釣づりの釣つり餌えさとして流通りゅうつうしている。この昆虫こんちゅうの発生はっせいが見みられる地点ちてんは散在さんざい的てきでありかなり稀まれであるが、発生はっせい地ちの種子しゅしの寄生きせい率りつは70%にも及およぶという。

新しん梢こずえにはしばしば菊花きっか状じょうの構造こうぞうが認みとめられるが、これはエゴノネコアシと呼よばれる虫むしこぶである。イネ科かのアシボソを一いち次じ寄よせ主ぬしとしエゴノキとの間あいだで寄よせ主ぬし転換てんかんを行おこなうアブラムシ、エゴノネコアシアブラムシ Ceratovacuna nekoashi（Sasaki, 1907）が春はるに二に次じ寄よせ主おもであるエゴノキに移動いどうしてきて新芽しんめを変形へんけいさせてこれを形成けいせいする。

子供こどもが、エゴノキの花はなを「セッケン花はな」「シャボン花はな」などと称しょうし、花はなを多数たすう摘つみ、それを手てで揉もんで泡立あわだてて遊あそぶことがある。この行為こうい自体じたいに危険きけんはないが、口くちに入いれると有害ゆうがいなのでその点てんに注意ちゅういを要ようする。泡立あわだてた手てを水みずで洗あらい流ながせば特とくに害がいは無ないが、きちんと洗あらい流ながさずに菓子かし類るいやオニギリなどを手てづかみで食たべるなどすると有害ゆうがい物質ぶっしつであるエゴサポニンなどを摂取せっしゅしかねない危険きけんがある。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “Styrax japonicus Siebold et Zucc. エゴノキ（標準ひょうじゅん）”. BG Plants 和名わみょう−学名がくめいインデックス（YList）. 2022年ねん12月25日にち閲覧えつらん。
  2. ^ 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “Styrax japonicus Siebold et Zucc. f. angustifolius (Koidz.) Sugim. エゴノキ（シノニム）”. BG Plants 和名わみょう−学名がくめいインデックス（YList）. 2022年ねん12月25日にち閲覧えつらん。
  3. ^ 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “Styrax japonicus Siebold et Zucc. var. jippei-kawamurae (Yanagita) H.Hara エゴノキ（シノニム）”. BG Plants 和名わみょう−学名がくめいインデックス（YList）. 2022年ねん12月25日にち閲覧えつらん。
  4. ^ 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “Styrax japonicus Siebold et Zucc. f. zigzag (Koidz.) Sugim. エゴノキ（シノニム）”. BG Plants 和名わみょう−学名がくめいインデックス（YList）. 2022年ねん12月25日にち閲覧えつらん。
  5. ^ 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “Styrax japonicus Siebold et Zucc. f. rubicalyx Satomi エゴノキ（シノニム）”. BG Plants 和名わみょう−学名がくめいインデックス（YList）. 2022年ねん12月25日にち閲覧えつらん。
  6. ^ 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “Styrax japonicus Siebold et Zucc. f. parviflorus Y.Kimura エゴノキ（シノニム）”. BG Plants 和名わみょう−学名がくめいインデックス（YList）. 2022年ねん12月25日にち閲覧えつらん。
  7. ^ 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “Styrax japonicus Siebold et Zucc. f. jippei-kawamurae (Yanagita) T.Yamaz. エゴノキ（シノニム）”. BG Plants 和名わみょう−学名がくめいインデックス（YList）. 2022年ねん12月25日にち閲覧えつらん。
  8. ^ POWO (2019). Plants of the World Online. Facilitated by the Royal Botanic Gardens, Kew. Published on the Internet; http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:826818-1 Retrieved 9 May 2020.
  9. ^ a b c d e f g h i j 鈴木すずき庸夫みちお・高橋たかはし冬ふゆ・安やす延のべ尚文なおふみ 2014, p. 66.
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 西田にしだ尚道なおみち監修かんしゅう 学習がくしゅう研究けんきゅう社しゃ編へん 2009, p. 60.
  11. ^ a b 羽根田はねだ治おさむ『新装しんそう版ばん・野外やがい毒どく本ほん：被害ひがい実例じつれいから知しる日本にっぽんの危険きけん生物せいぶつ』山やまと渓谷社けいこくしゃ 2014年ねん、ISBN 9784635500357 p.142.
  12. ^ a b c d e 平野ひらの隆久たかひさ監修かんしゅう 永岡書店ながおかしょてん編へん 1997, p. 194.
  13. ^ a b c d e 仲野なかの良典よしのり (2013年ねん7月がつ29日にち). “用途ようとの広ひろいエゴの実み”. 京都きょうと民みん報ほうWeb. 2020年ねん5月がつ8日にち閲覧えつらん。
  14. ^ a b 牧野まきの, 富太郎とみたろう『牧野まきの日本にっぽん植物しょくぶつ圖鑑ずかん』北きた隆たかし館かん、1940年ねん、223頁ぺーじ。http://www.hokuryukan-ns.co.jp/makino/index.php?no1=P223。 
  15. ^ アレン・コーンビス 著ちょ、濱谷はまや稔夫としお 翻訳ほんやく・監修かんしゅう『木きの写真しゃしん図鑑ずかん 完璧かんぺき版ばん』日本にほんヴォぉーグ社ぐしゃ、1994年ねん、299頁ぺーじ。ISBN 4-529-02356-7
  16. ^ “みのひだ写真しゃしん館かん：和かず傘かさの未来みらい支ささえたい ロクロ職人しょくにんに３２歳さいが弟子でし入いり ／岐阜ぎふ”. 毎日新聞まいにちしんぶん. 2020年ねん5月がつ8日にち閲覧えつらん。
  17. ^ 添田そえた隆典たかのり (2020年ねん5月がつ2日にち). “＜食卓しょくたくものがたり＞蜂蜜はちみつ（東京とうきょう都とあきる野の市し） 魅惑みわくの甘あまみ自然しぜんと共ともに”. 2020年ねん5月がつ8日にち閲覧えつらん。

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • 鈴木すずき庸夫みちお・高橋たかはし冬ふゆ・安やす延のべ尚文なおふみ『樹皮じゅひと冬芽とうが：四季しきを通つうじて樹木じゅもくを観察かんさつする 431種しゅ』誠まこと文ぶん堂どう新光しんこう社しゃ〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年ねん10月がつ10日とおか、66頁ぺーじ。ISBN 978-4-416-61438-9。 
  • 西田にしだ尚道なおみち監修かんしゅう 学習がくしゅう研究けんきゅう社しゃ編へん『日本にっぽんの樹木じゅもく』 5巻かん、学習研究社がくしゅうけんきゅうしゃ〈増補ぞうほ改訂かいてい ベストフィールド図鑑ずかん〉、2009年ねん8月がつ4日にち、60頁ぺーじ。ISBN 978-4-05-403844-8。 
  • 平野ひらの隆久たかひさ監修かんしゅう 永岡書店ながおかしょてん編へん『樹木じゅもくガイドブック』永岡書店ながおかしょてん、1997年ねん5月がつ10日とおか、194頁ぺーじ。ISBN 4-522-21557-6。 

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]
ウィキメディア・コモンズには、エゴノキに関連かんれんするメディアがあります。
ウィキスピーシーズにエゴノキに関かんする情報じょうほうがあります。
「https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=エゴノキ&oldid=99949574」から取得しゅとく