オートチューン

オートチューン (Auto-Tune) は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのアンタレス・オーディオ・テクノロジーズ (Antares Audio Technologies) 社しゃが開発かいはつ・販売はんばいする、楽器がっき・ボーカル用よう音程おんてい補正ほせい用ようソフトウェアである。使用しようの際さいに「iLOKキー」と呼よばれるUSBロックを必要ひつようとする。

概要がいよう

オートチューンは音楽おんがく用ようソフトウェアのプラグインとして動作どうさし、音程おんていの不安定ふあんていな歌声うたごえ・楽器がっきの音声おんせいをデジタル信号しんごう処理しょりによって補正ほせいする。い換いかえれば音程おんていを外はずした音痴おんちな歌声うたごえでも一いち音おとずつ補正ほせいしていけば上手うまい歌声うたごえへと作つくり変かえることができるということであり、このことを揶揄やゆして「禁断きんだんのプラグイン」というあだ名なが存在そんざいする。

この設定せっていを極端きょくたんにすると「ケロケロボイス」や「ケロールサウンド」などと呼よばれる著いちじるしく平坦へいたんな音程おんていや独特どくとくの音程おんてい変化へんかといったエフェクトが得えられる。そのため、2005年ねんのT-ペインのヒットなどを皮切かわきりに、音程おんてい補正ほせいソフトというより一いち種しゅのエフェクターとして脚光きゃっこうをあびるようになった。なお、そのようなオートチューンの効果こうかは、ヴォコーダーやトーキング・モジュレーター（トークボックス）による効果こうかにも似にているが、原理げんりはそれぞれ異ことなる。詳細しょうさいは各項かくこうを参照さんしょうのこと。

2010年ねん現在げんざいでは、Celemony社しゃのMelodyne、ヤマハのPitch Fixなどを代表だいひょうに、様々さまざまな音程おんてい補正ほせいソフトが開発かいはつ・発売はつばいされているが、オートチューンが一番いちばん早はやく発売はつばいされた事ことと、T-ペインの発言はつげんなどで幅広はばひろく名前なまえが知しられるようになった事ことから、「オートチューン」は音程おんてい補正ほせいソフトの代名詞だいめいしになっている。

歴史れきし

1996年ねん、技師ぎしとして石油せきゆ会社かいしゃのエクソンモービルで働はたらいていたアンディ・ヒルデブランド(Andy Hildebrand)は、地震じしんデータ解析かいせき用ようソフトが音程おんていの補正ほせいにも使つかえることを偶然ぐうぜん発見はっけんする。翌よく1997年ねんにアンタレス社しゃはこの技術ぎじゅつを製品せいひん化か、「オートチューン」と命名めいめいし発売はつばいした。1998年ねんには、シェールが自身じしんの楽曲がっきょく「Believe」において本来ほんらいの音程おんてい補正ほせい目的もくてきではなく、ロボットボイスを生うむエフェクターとしてこのソフトを使用しよう。同どう楽曲がっきょくがヒットしたことによって、オートチューンは一躍いちやく有名ゆうめいになった。

2000年ねんになると、ダフトパンクのヒット曲きょく「ワン・モア・タイム」のボーカルにも使用しようされ、エレクトロニカ界隈かいわいでの利用りようが活発かっぱつ化かされた。これにより、オートチューンを用もちいて製作せいさくされた楽曲がっきょくに対たいしてはフィルターハウスという新あらたなジャンルが生うまれ、以降いこうはそう呼よばれるようになる。

2005年ねん、同年どうねんにデビューしたT-ペインが自身じしんの大半たいはんの楽曲がっきょくにオートチューンを使用しようし、「I'm Sprung」などのヒット曲きょくを生うみ出だしていったことをきっかけに、オートチューンは再度さいど注目ちゅうもくされるようになる。このヒットを受うけ、ヒップホップ音楽おんがくやダンスホールレゲエにおいてオートチューンの使用しようが流行りゅうこうし、ヒップホップではカニエ・ウェスト、リル・ウェイン、エイコンらが、ダンスホールレゲエにおいてはデマルコ、セラーニ、ムンガらがオートチューンを取とり入いれた曲きょくを次々つぎつぎと発表はっぴょうした。中なかでも2009年ねんにブラック・アイド・ピーズが発表はっぴょうした『The End』はシングルカットされた2曲きょくで、同どう一いちアーティストによる26週しゅう連続れんぞくNo.1というBillboard Hot 100新しん記録きろくとなる大だいヒットとなった。

2007年ねんには、中田なかたヤスタカがサウンド・プロデュースしているテクノポップユニットPerfumeが、全編ぜんぺんにわたってオートチューンを使用しようした「ポリリズム」をヒットさせた事ことで、オートチューンは日本にっぽんでも広ひろく注目ちゅうもくを浴あびることとなった。

2008年ねんには、アメリカのコミックバンドであるグレゴリー・ブラザーズが、ニュース番組ばんぐみに出演しゅつえんしている政治せいじ家かやニュースキャスターの発言はつげんにオートチューンを掛かけ、彼かれらが歌うたやラップを歌うたっているように加工かこうを施ほどこした楽曲がっきょく「Auto-Tune The News」シリーズを発表はっぴょうしたり、メタルコアのアタック・アタック!がオートチューンを導入どうにゅうした「Someday Came Suddenly」をヒットさせるなど、より幅広はばひろいジャンルでオートチューンが用もちいられるようになった。

2009年ねんにも、アメリカの歌手かしゅケシャがオートチューンを使用しようした楽曲がっきょく「Tik Tok」でビルボードチャート10週しゅう連続れんぞく1位いを記録きろくするなど、オートチューンは比較的ひかくてきポピュラーなエフェクターとして使用しようされ続つづけている。

使用しよう例れい

合成ごうせい音声おんせいの歌声うたごえをより自然しぜんに聞きこえさせる目的もくてきで用もちいられることもある。

批判ひはん

簡単かんたんに音程おんていを補正ほせいして完璧かんぺきな音おと高だかを作つくり出だし、画一かくいつ的てきなサウンドを生うみ出だすオートチューンなどの音声おんせい補正ほせいソフトの使用しようには批判ひはん的てきな意見いけんも存在そんざいする。日本にっぽんの音楽家おんがくか菊地きくち成しげる孔あなは音程おんてい補正ほせいの流行りゅうこうを批判ひはんして「現代げんだいに於おける『音痴おんち』は『生なま声こえで音程おんていをちゃんと取とれない』という原義げんぎよりも抽象ちゅうしょう化かされ、『音程おんてい修正しゅうせいを施ほどこしているのが解わかってしまう』こと。の方ほうに移うつっています」と証言しょうげんしている。また、カントリー歌手かしゅのロレッタ・リンやガース・ブルックス、レゲエ・ディージェイのニンジャマン、MCの般若はんにゃらはオートチューンに否定ひてい的てきな見解けんかいを表明ひょうめいし使用しようを拒否きょひしている。

さらにロックバンドのデス・キャブ・フォー・キューティーは、第だい51回かいグラミー賞しょう授賞じゅしょう式しきの壇上だんじょうでオートチューン使用しように抗議こうぎするスピーチをし、ジェイ・Zは2009年ねんに「オートチューンの死し」という意味いみの楽曲がっきょく「D.O.A. (Death of Autotune)」をシングルとして発表はっぴょうし、アルバム『The Blueprint 3』に収録しゅうろく予定よていだったオートチューンを使用しようした楽曲がっきょくを収録しゅうろくしない決定けっていとするなど、より明確めいかくにアンチ・オートチューンの姿勢しせいを見みせるミュージシャンもいる。

関連かんれん項目こうもく

• ヴォコーダー
• トーキング・モジュレーター
• Pro Tools
• シンセサイザー
• サンプラー

外部がいぶリンク

• Antares Audio Technologies公式こうしきウェブサイト