ゲティスバーグの戦たたかい

ゲティスバーグの戦たたかい
戦争せんそう：南北戦争なんぼくせんそう
年月日ねんがっぴ：1863年ねん7月がつ1日にち - 7月がつ3日にち
場所ばしょ：ペンシルベニア州しゅうアダムズ郡ぐん近郊きんこう
結果けっか：アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの勝利しょうり
交戦こうせん勢力せいりょく
アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく	アメリカ連合れんごう国こく
指導しどう者しゃ・指揮しき官かん
ジョージ・ミード	ロバート・E・リー
戦力せんりょく
93,921	71,699
損害そんがい
23,055 （戦死せんし 3,155 負傷ふしょう 14,531 捕虜ほりょ・不明ふめい 5,365）	23,231 （戦死せんし 4,708 負傷ふしょう 12,693 捕虜ほりょ・不明ふめい 5,830）
南北戦争なんぼくせんそう 戦線せんせん 東部とうぶ戦線せんせん - 西部せいぶ戦線せんせん - 南部なんぶ沿岸えんがん戦線せんせん - ミシシッピ川がわ流域りゅういき戦線せんせん - 太平洋たいへいよう岸がん戦線せんせん - 北きた軍ぐんによる海上かいじょう封鎖ふうさ 方面ほうめん作戦さくせん ニューメキシコ - バレー - 半島はんとう - 北きたバージニア - メリーランド - ストーンズリバー - ビックスバーグ - タラホーマ - ゲティスバーグ - モーガンの襲撃しゅうげき - ブリストー - ノックスビル - レッド川かわ - オーバーランド - アトランタ - 1864年ねんのバレー - バミューダ・ハンドレッド - リッチモンド・ピータースバーグ - フランクリン・ナッシュビル - プライスの襲撃しゅうげき - 海うみへの進軍しんぐん - カロライナ - アポマトックス 主要しゅよう戦闘せんとう サムター - ブルラン1 - ウィルソンズ・クリーク - ドネルソン砦とりで - ピーリッジ - ハンプトン・ローズ - シャイロー - ニューオーリンズ - コリンス - セブンパインズ - 七なな日間にちかん - ブルラン2 - アンティータム - ペリービル - フレデリックスバーグ - ストーンズリバー - チャンセラーズヴィル - ゲティスバーグ - ビックスバーグ - チカマウガ - チャタヌーガ3 - 荒野あらの - スポットシルバニア - コールドハーバー - アトランタ - モービル湾わん - フランクリン2 - ナッシュビル - ファイブフォークス

ゲティスバーグの戦たたかい（ゲティスバーグのたたかい、英語えいご: Battle of Gettysburg）は、南北戦争なんぼくせんそうにおいて事実じじつ上じょうの決戦けっせんとなった戦たたかい。ゲティスバーグ戦役せんえきの中核ちゅうかくを成なし、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく軍ぐんとアメリカ連合れんごう国こくが双方そうほう総力そうりょくを結集けっしゅう、南北戦争なんぼくせんそう史上しじょう最大さいだいの激戦げきせんとなった。

背景はいけい

南みなみ軍ぐんおよび北きた軍ぐんの状況じょうきょう

チャンセラーズヴィルの戦たたかいが南みなみ軍ぐんの勝利しょうりに終おわり、勢いきおいに乗のったリー将軍しょうぐんは北部ほくぶへの更さらなる攻撃こうげきを企図きとしていた。目標もくひょうはボルティモアやフィラデルフィアで、これらを攻略こうりゃくすることにより、北部ほくぶの継つぎ戦せん意欲いよくを失うしなわせることができると考かんがえたからである。

同どう時期じき、北きた軍ぐんは司令しれい官かんをジョセフ・フッカーからジョージ・ミードに変更へんこうするという、指揮しき系統けいとうの改善かいぜんに追おわれていた。チャンセラーズヴィルの戦たたかいで敗北はいぼくしたフッカーが、エイブラハム・リンカーンにより更迭こうてつされたのである。代かわりにミードが選えらばれた理由りゆうの一ひとつは彼かれがアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく内ないで生うまれていなかったこと、すなわちアメリカ市民しみんでも国外こくがいで生うまれている場合ばあいは大統領だいとうりょう選せんに出馬しゅつばできないという政治せいじ的てきな理由りゆうからだと言いわれている。

地理ちり的てき背景はいけい

ゲティスバーグは、当時とうじのアメリカにとって重要じゅうような地点ちてんであった。その理由りゆうのひとつは、ゲティスバーグが鉄道てつどうや主要しゅよう道路どうろが集あつまる交差点こうさてんであり、そこを確保かくほできれば戦争せんそうを有利ゆうりに進すすめられるからであった。つまりゲティスバーグは補給ほきゅうと部隊ぶたい増強ぞうきょうの要所ようしょだったのである。しかし、ゲティスバークの地理ちり的てき重要じゅうよう性せいを双方そうほうとも理解りかいしていたにもかかわらず、南みなみ軍ぐん、北きた軍ぐんともにこの地点ちてんへ積極せっきょく的てきに進軍しんぐんしようとはしなかった。その理由りゆうとしては、ここに部隊ぶたいを送おくり込こむと必然ひつぜん的てきに大だい規模きぼな衝突しょうとつが避さけられないことが挙あげられる。

戦闘せんとう経過けいか

ゲティスバーグの戦たたかい (破線はせんは騎兵きへいの動向どうこう)

  アメリカ連合れんごう国軍こくぐん (南みなみ軍ぐん)

  アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく軍ぐん (北きた軍ぐん)

序盤じょばん

ゲティスバーグの戦たたかいは6月がつ初旬しょじゅんごろから起おこっていた小競こぜり合あいから発展はってんした戦たたかいである。6月3日にちに最初さいしょの衝突しょうとつが起おこると、リー将軍しょうぐんはただちに戦場せんじょうに兵へいを派遣はけんし、騎兵きへいを町まちの北西ほくせいにある丘陵きゅうりょうの尾根おねに配置はいちした。だが、本格ほんかく的てきな戦闘せんとうが始はじまったのは、7月がつ1日にち午前ごぜん5時じからであった。当初とうしょ、南みなみ軍ぐんがこの地域ちいきに部隊ぶたいを送おくり込こんだのは、北きた軍ぐんの勢力せいりょく下かにあったゲティスバーグを偵察ていさつする目的もくてきであったとされる。しかし、先さきに述のべた地理ちり的てき要因よういんから部隊ぶたい間あいだの衝突しょうとつが頻繁ひんぱんに起おこるようになったため、両りょう軍ぐんは援軍えんぐんをゲティスバーグに集結しゅうけつさせざるをえなくなった。これにより、運命うんめいの7月がつ1日にち午前ごぜん5時じを迎むかえることとなる。

1日にち目め

7月がつ1日にち午前ごぜん5時じ早朝そうちょう、南みなみ軍ぐんの歩兵ほへいが北きた軍ぐんの騎兵きへいを射撃しゃげきしたのがゲティスバーグの戦たたかいの始はじまりとされる。当初とうしょはいつもどおりの小競こぜり合あいだったが、次第しだいに大だい規模きぼな戦たたかいに発展はってんした。このとき衝突しょうとつした部隊ぶたいは北きた軍ぐん4個こ騎兵きへい大隊だいたいに対たいし、南みなみ軍ぐんは2個こ歩兵ほへい旅団りょだんであった。部隊ぶたいの集結しゅうけつが不完全ふかんぜんであった北きた軍ぐんは援軍えんぐんを待まつ間あいだ、兵力へいりょく面めんから見みても優勢ゆうせいな南みなみ軍ぐんの歩兵ほへい隊たいの前進ぜんしんをくい止とめることに傾注けいちゅう、これに成功せいこうした。

アルフレッド・ルドルフ・ウォード画が『レイノルズの死し』。ジョン・F・レイノルズが戦死せんしする場面ばめんを描えがいている。

この初期しょきの戦たたかいが行おこなわれている間あいだ、ゲティスバーグの地理ちりを生いかし、両りょう陣営じんえいに大だい多数たすうの援軍えんぐんが派遣はけんされ続つづけた。午後ごごになると南みなみ軍ぐんの総そう司令しれい官かんリー将軍しょうぐんも到着とうちゃくした。北きた軍ぐん側がわは騎兵隊きへいたいの応戦おうせんにより南みなみ軍ぐんの進撃しんげきを食くい止とめていたものの、優勢ゆうせいとはいいがたかった。北きた軍ぐん側がわは第だい1軍団ぐんだん（ジョン・F・レイノルズ将軍しょうぐん指揮しき）と第だい11軍団ぐんだん（オリバー・O・ハワード将軍しょうぐん指揮しき）の部隊ぶたいが徐々じょじょに到着とうちゃくして防衛ぼうえい線せんに加くわわっていったが、ゲティスバーグの北きたと西にしの尾根おねの攻防こうぼう戦せんでは南みなみ軍ぐん側がわが優勢ゆうせいであり、この戦たたかいで第だい1軍団ぐんだん司令しれい官かんのレイノルズ将軍しょうぐんが戦死せんしした。第だい1軍団ぐんだんの指揮しき権けんはアブナー・ダブルデイがこれを引ひき継つぐこととなったが、北きた軍ぐんは防衛ぼうえい線せんを支ささえきれず、ゲティスバーグ市内しないから撤退てったいしていった。

ミードから一時いちじ的てきな現場げんば責任せきにん者しゃとして先さきに派遣はけんされたウィンフィールド・スコット・ハンコック将軍しょうぐんが、ゲティスバーグに到着とうちゃくした。ハンコックは防衛ぼうえい戦闘せんとうに優すぐれる指揮しき官かんで、ゲティスバーグの南みなみの丘おかに陣地じんちを構築こうちくさせ、さらにカルプス・ヒル、セミタリー・ヒル、セミタリー・リッジ、ラウンド・トップ、リトル・ラウンド・トップの防衛ぼうえい線せんを築きずいて守備しゅび隊たいを配置はいちした。この防衛ぼうえい線せんによって、数すうキロにもおよぶ味方みかたとの連絡れんらくや援軍えんぐんの増派ぞうはがきわめて容易よういに行おこなえるようになり、戦闘せんとうが有利ゆうりに運はこぶもととなった。不利ふりであった北きた軍ぐんは徐々じょじょに勢力せいりょくを盛もり返かえし、均衡きんこうを保たもつことに成功せいこうした。

南みなみ軍ぐんのリー将軍しょうぐんは、北きた軍ぐんの陣地じんちの構築こうちくが終おわる前まえに攻撃こうげきをかけるべきだと判断はんだんし、配下はいかのリチャード・イーウェル将軍しょうぐんに命令めいれいを出だした。ところが、この命令めいれいは、「もし君きみがそれを合理ごうり的てきだと思おもうならば丘おかの上うえにいる北きた軍ぐんを攻撃こうげきするべきだと私わたしは思おもうが、残のこりの部隊ぶたいが到着とうちゃくするまで大だい規模きぼな戦闘せんとうは避さけるように」という非常ひじょうに曖昧あいまいなものであった。命いのちを受うけたイーウェルは、南みなみ軍ぐんの損害そんがいを過大かだいに評価ひょうかしていたこともあり、この日ひの攻撃こうげきを中止ちゅうしした。

その夜よる、北きた軍ぐん司令しれい官かんのミード将軍しょうぐんがようやく戦場せんじょうに到着とうちゃくする。彼かれは戦況せんきょうを把握はあくすると、ハンコック将軍しょうぐんが築きずかせた陣地じんちを主体しゅたいに防衛ぼうえい戦せんを続行ぞっこうすることを決断けつだんした。

2日にち目め

攻撃こうげきを中止ちゅうししていた南みなみ軍ぐんは、2日にちの早朝そうちょうに攻撃こうげきを再開さいかいすることを目標もくひょうとしていたものの準備じゅんびに手間取てまどり、結局けっきょく午後ごご4時じごろになって攻撃こうげき態勢たいせいを整ととのえた。このような遅延ちえんは北きた軍ぐんの有利ゆうりに結むすびつくはずだったが、何故なぜかダニエル・シックルズ将軍しょうぐんは特とくに何なにの理由りゆうもなく、セミタリー・リッジ以南いなんの守備しゅび軍ぐんを配置はいち換かえし、最前線さいぜんせんに移動いどうさせるというよく分わからない行動こうどうに出でていた。この配置はいち換かえでリトル・ラウンド・トップ陣地じんちが手薄てうすになってしまったため、この丘おかに南みなみ軍ぐんが攻撃こうげきを開始かいしした。北きた軍ぐんはまたもや戦況せんきょう不利ふりとなる。しかし、たまたまリトル・ラウンド・トップ陣地じんちに通信つうしん兵へいがおり、南みなみ軍ぐんの行動こうどうをいち早はやく察知さっちし報告ほうこく、このとき戦況せんきょう把握はあくをしていたウォーレン将軍しょうぐんがこの情報じょうほうを受うけ南みなみ軍ぐんの動うごきを確認かくにんした。リトル・ラウンド・トップ陣地じんちが陥落かんらくすれば、北きた軍ぐんの不利ふりが決定的けっていてきになると予測よそくしたウォーレンは、出来できる限かぎりの部隊ぶたいをかき集あつめて陣地じんちへ移動いどうさせた。このとき移動いどうさせた部隊ぶたいは4個こ連隊れんたいだったとされる。南みなみ軍ぐんの攻撃こうげきは熾烈しれつを極きわめ、陣地じんちの近ちかくの森もりと草原そうげんにおいて展開てんかいされた。ここで起おきたリトル・ラウンド・トップの戦たたかいは、ゲティスバーグの戦たたかいの中なかでもっとも激はげしかったと言いわれている。4時じ間あいだにわたる熾烈しれつな戦闘せんとうが行おこなわれたが、北きた軍ぐんのミード将軍しょうぐんの巧たくみな戦闘せんとう指揮しきにより、南みなみ軍ぐんは陣地じんちの突破とっぱに失敗しっぱいした。北きた軍ぐんは兵力へいりょくの面めんでは劣勢れっせいに立たたされていたが、ミード将軍しょうぐんは南みなみ軍ぐんが突破とっぱしようとする所ところを変かえるたびにその場所ばしょへ兵へいを移動いどうさせて、的確てきかくに対処たいしょしていたのである。

このころになって、北側きたがわでも南みなみ軍ぐんの攻撃こうげきが開始かいしされたが、あっけなく敗退はいたいした。

3日にち目め

リー将軍しょうぐんは、3日にち目めの戦たたかいも基本きほん的てきにこれまでと同どう一線いっせん上じょうで行おこなう構想こうそうを立たてていた。即すなわち、ロングストリート将軍しょうぐんは北きた軍ぐん左翼さよくを攻せめ、イーウェル将軍しょうぐんはカルプスヒルの北きた軍ぐんを攻撃こうげきするというものである。しかし、ロングストリートが攻撃こうげき準備じゅんびを完了かんりょうする前まえに、前日ぜんじつの失地しっち奪還だっかんを意図いとする北きた軍ぐん第だい12軍団ぐんだんによるカルプスヒルへの砲撃ほうげきが開始かいしされた。これに対応たいおうして、南みなみ軍ぐんのカルプスヒルへの2回かい目めの攻撃こうげきが実施じっしされ、午前ごぜん11時じ迄まで7時じ間あいだにおよぶ苦くるしい戦たたかいが継続けいぞくされた。

これにより、リー将軍しょうぐんは作戦さくせん構想こうそうの変更へんこうを余儀よぎなくされた。修正しゅうせい後ごの作戦さくせんではロングストリートは揮下の第だい1軍団ぐんだん所属しょぞくのジョージ・エドワード・ピケット将軍しょうぐんが率ひきいるバージニア師団しだんにヒルの軍団ぐんだんから抽出ちゅうしゅつした6個こ旅団りょだんを加くわえ、セメタリーリッジに陣取じんどる北きた軍ぐん左翼さよく中央ちゅうおう部ぶの第だい2軍団ぐんだんに対たいして攻撃こうげきを加くわえることになった。また、この攻撃こうげきを支援しえんするため、南みなみ軍ぐん砲兵ほうへいによる北きた軍ぐん前線ぜんせんに対たいする砲撃ほうげきを行おこなうことに決定けっていした。

午後ごご1時じ南みなみ軍ぐんによる170門もんの野砲やほうを用もちいた南北戦争なんぼくせんそう最大さいだい規模きぼの砲撃ほうげきが開始かいしされた。砲撃ほうげきに続つづいて実施じっしされるであろう歩兵ほへい突撃とつげきに備そなえ貴重きちょうな弾薬だんやくを節約せつやくするため、北きた軍ぐん砲兵ほうへいは当初とうしょ対抗たいこう射撃しゃげきを行おこなわなかった。15分ふん程ほどたってから、さらに野砲やほう80門もん程ほどが砲撃ほうげき戦せんに加くわわった。大だい規模きぼな砲撃ほうげきではあったものの、南みなみ軍ぐんは弾薬だんやく不足ふそくで北きた軍ぐんに大おおきな損害そんがいを与あたえる迄までに至いたらなかった。

午後ごご3時じごろ、砲火ほうかが静しずまり12,500人にんの南みなみ軍ぐん歩兵ほへいが姿すがたを現あらわして、1200メートル離はなれた北きた軍ぐん前線ぜんせんへの前進ぜんしんを開始かいしした。世よに言いう「ピケットの突撃とつげき(ピケット・チャージ)」である。厳密げんみつに言いえば、ピケットはあくまでこの突撃とつげきを指揮しきした将官しょうかんの1人ひとりであり、必かならずしも彼かれがこの突撃とつげきの総そう責任せきにん者しゃではなかったが「ピケットの突撃とつげき」と知しられるようになった。激はげしい砲撃ほうげきと北きた軍ぐん第だい2軍団ぐんだんからの銃火じゅうかにより、突撃とつげきした南みなみ軍ぐん兵士へいしの過半数かはんすうは自陣じじんに帰還きかんすることはなかった。それでも進軍しんぐんして来くる南みなみ軍ぐんの勢いきおいに呑のまれて、北きた軍ぐんの前線ぜんせんは一時いちじ的てきに動揺どうようし、防御ぼうぎょ用ようの低ひくい石壁いしかべが部分ぶぶん的てきには破やぶられたが、防衛ぼうえいラインへの兵力へいりょく増強ぞうきょうが成功せいこうし、南みなみ軍ぐんの攻撃こうげきは最終さいしゅう的てきに撃退げきたいされた。

また、この日ひは激はげしい騎兵きへい戦せんが2箇所かしょで行おこなわれた。スチュアート将軍しょうぐんの騎兵きへい部隊ぶたいは南みなみ軍ぐん左翼さよくの防御ぼうぎょと歩兵ほへい戦せんの戦果せんかを更さらに拡大かくだいし、北きた軍ぐん補給ほきゅう線せんと通信つうしん線せんを脅おびやかすため、北きた軍ぐんの右翼うよくを迂回うかいし、ゲティスバーグの5km東ひがしに進出しんしゅつし、ここで北きた軍ぐん騎兵きへいと衝突しょうとつした。グレッグ准じゅん将しょうの騎兵きへい師団しだんとカスター准じゅん将しょうの騎兵きへい旅団りょだんにより、互たがいにサーベルを交かわす長ながく激はげしい白兵戦はくへいせんが戦たたかわれた。南みなみ軍ぐんハンプトン旅団りょだんに対たいするカスターの突撃とつげきは南みなみ軍ぐんの攻撃こうげきを鈍なまらせ、北きた軍ぐん後背こうはいを脅おびやかすというスチュアート将軍しょうぐんの目的もくてきを阻止そしすることに成功せいこうした。一方いっぽう、ピケットの突撃とつげきの後のち、ミード将軍しょうぐんはキルパトリック准じゅん将しょうに対たいし、ビッグラウンドトップ南西なんせいのロングストリート軍団ぐんだん歩兵ほへい陣地じんちへの騎兵きへい攻撃こうげきを命めいじた。キルパトリック准じゅん将はた揮下のファーンズワース准じゅん将しょうはこの行動こうどうの無謀むぼうさを指摘してきし抗議こうぎしたものの、命令めいれいに従したがって攻撃こうげきを敢行かんこうした。彼かれの指揮しきする旅団りょだんは大おおきな損害そんがいを受うけ、自身じしんも戦死せんしした。

戦闘せんとうの影響えいきょう

3日にち合あわせての死傷ししょう者しゃ（および行方ゆくえ不明ふめい者しゃ・捕虜ほりょ）は両りょう軍ぐん合あわせて50,000人にん近ちかくにもなった。被こうむった損害そんがいは両りょう軍ぐんとも同どう程度ていどだったものの、人的じんてき資源しげんに劣おとる南みなみ軍ぐんにとっては「死傷ししょう者しゃ2万まん3千せん」は非常ひじょうに大おおきい損失そんしつであった。それに対たいして徴兵ちょうへい可能かのう人口じんこうで南部なんぶに大おおきく勝まさる北きた軍ぐんは、比較的ひかくてきすぐに人員じんいんを補充ほじゅうすることができた。後のちにグラント将軍しょうぐんがリー将軍しょうぐんに相対あいたいしたときは、この人的じんてき資源しげんの優位ゆういを可能かのうな限かぎり（場合ばあいによっては必要ひつよう以上いじょうに）利用りようして、リー将軍しょうぐんに対たいして最終さいしゅう的てきな勝利しょうりを収おさめている。しかも、このゲティスバークにおいて北きた軍ぐんは南みなみ軍ぐんの侵攻しんこうを食くい止とめ、南部なんぶに追おい返かえすことに成功せいこうするという戦果せんかを上あげたが、南みなみ軍ぐんは特とくにこれといった目的もくてきを達成たっせいしていない。戦闘せんとう自体じたいは贔屓目ひいきめに見みれば引ひき分わけ・もしくは総そう兵力へいりょくで劣おとる南みなみ軍ぐんが健闘けんとうしたと言いえなくもないが、攻勢こうせいに出でる前まえにリー将軍しょうぐんが南部なんぶ首都しゅとでディヴィス大統領だいとうりょうらに説明せつめいした「東部とうぶ戦線せんせんでの攻勢こうせいが西部せいぶ戦線せんせんの危機きき的てき状況じょうきょうを救すくう」という状況じょうきょうは実現じつげんしなかった。

それどころかそれまでなんとか北きた軍ぐんの攻勢こうせいに耐たえていた西部せいぶ戦域せんいきの要所ようしょであるヴィックスバーグが、ゲティスバーグの戦たたかいが終おわった次つぎの日ひ（1863年ねん7月がつ4日にち）、籠城ろうじょうむなしくグラント将軍しょうぐんに攻略こうりゃくされてしまう。ヴィックスバーグの攻囲こうい戦せんは5月18日にちに始はじまったため、2ヶ月かげつ近ちかく耐たえた後のちでの開城かいじょうだった。この敗北はいぼくによって南部なんぶはミシシッピ川がわより西にしの州しゅう（テキサス州しゅう、ルイジアナ州しゅう、それにアーカンソー州しゅう）との交通こうつうをほとんど遮断しゃだんされてしまった。この危機きき的てき状況じょうきょうを打開だかいするため、南みなみ軍ぐん司令しれい部ぶは敗北はいぼくしたと言いえまだ余力よりょくのあるリーの北きたバージニア軍ぐんからロングストリートの軍団ぐんだんを抽出ちゅうしゅつし、西部せいぶ戦線せんせんに派遣はけんしなければならなかった。ゲティスバーグの戦たたかいで多おおくの兵へいを失うしなった上うえに1個いっこ軍団ぐんだんを抽出ちゅうしゅつされてさらに兵力へいりょくを減げんじた北きたバージニア軍ぐんは、それ以降いこう大だい規模きぼな攻勢こうせいに出でることが不可能ふかのうな状態じょうたいに陥おちいった。無為むいに任まかせて自軍じぐんから兵力へいりょくを抽出ちゅうしゅつされることを嫌きらったリーは、このあと一いち回かいだけ小規模しょうきぼな攻勢こうせいを仕掛しかけているが（ブリストー駅えきの戦たたかい）その時ときは自身じしんが戦場せんじょうにたどり着つく前まえに戦闘せんとうは終結しゅうけつしていた。なお、この戦たたかいでも南みなみ軍ぐんは敗北はいぼくしている（逆ぎゃくのい方いかたをすればリーは攻勢こうせいに出でたときはすべて最終さいしゅう的てきに敗北はいぼくしている）。

転換てんかん点てん

この戦たたかいが南北戦争なんぼくせんそうの転換てんかん点てんであったかどうかというのはやや疑問ぎもんの余地よちがある。確たしかにこの戦たたかいのあと北きた軍ぐんの優位ゆういがゆるぎないものとなったのは事実じじつだが、それは別べつにこの戦たたかいに勝かったから戦争せんそうでの優位ゆういが確定かくていしたわけではない。い方いかたを変かえればこの戦たたかいに勝かった時期じきが北部ほくぶにとっての転換期てんかんきであってこの戦たたかい自体じたいが戦争せんそうの趨勢すうせいを決けっしたわけではない。ではなぜリー将軍しょうぐんはわざわざこの時期じきを選えらんで北部ほくぶへ侵攻しんこうしたのだろうか？兵力へいりょくで劣おとり、装備そうびも十分じゅうぶんではなく、食料しょくりょうさえ満足まんぞくに行いき渡わたっていなかった北きたバージニア軍ぐんは明あきらかに北部ほくぶに侵攻しんこうできるような状況じょうきょうには無なかった。しかしその反面はんめん、この時期じきを逃のがしてしまったらもはや戦争せんそうの趨勢すうせいは決きまってしまう可能かのう性せいが非常ひじょうに大おおきかったのだ。守まもってばかりでは戦争せんそうに勝かつことはできない上うえに南部なんぶはその「守まもり」すら満足まんぞくに行おこなえていなかった。

南部なんぶはゲティスバーグの戦たたかいの起おこる前まえの時点じてんですでに西部せいぶ地域ちいきをほとんど失うしなっていた。南部なんぶの最大さいだい都市としであったニューオルリンズ市しはすでに北きた軍ぐんの手てに落おちており、ミシシッピ川がわの交通こうつうの要所ようしょであるヴィックスバーグもまさに陥落かんらく寸前すんぜんと言いえる状況じょうきょうにあった。ヴィックスバーグが陥落かんらくした後のちは西部せいぶ戦線せんせんに投入とうにゅうされていた北きた軍ぐんの部隊ぶたいが東部とうぶ戦線せんせんに送おくられてくることは明あきらかであり、兵力へいりょくの点てんでは常つねに北きた軍ぐんに劣おとっていた南みなみ軍ぐんにとってはさらに厳きびしい戦たたかいを強しいられることになるだろうというのは目めに見みえていた。また、北部ほくぶの海軍かいぐんによるアナコンダ作戦さくせん（南部なんぶの港湾こうわんを封鎖ふうさする作戦さくせんで、終戦しゅうせん近ちかくには海うみに出でた南部なんぶの船ふねの実じつに3隻せきに1隻せきが拿捕だほされていた）が功こうを奏そうし始はじめておりもともと高たかくなかった南部なんぶの継つぎ戦せん能力のうりょくはさらに削けずられていった。この時点じてんで何なんらかの一撃いちげきを与あたえなければこのまま南部なんぶが北部ほくぶの物量ぶつりょうに『磨すり潰つぶされて』しまうだろうということはこの時点じてんで多おおくの者ものの眼めに明あきらかだっただろう。当然とうぜんリー将軍しょうぐんもそれに気きづいていただろうし、何なん度ど撃退げきたいしてもすぐに兵力へいりょくを補充ほじゅうして侵攻しんこうしてくるポトマック軍ぐんの相手あいてをしている虚むなしさにも気きづいたであろう。いくら自軍じぐんが勝利しょうりし続つづけていたとはいえ北きたバージニア軍ぐんも会戦かいせんのたびに多おおくの兵へいを失うしなっていたし、人的じんてき資源しげんの点てんで北部ほくぶに劣おとる南部なんぶはその穴あなを埋うめることがなかなかできなかった。

南部なんぶは北部ほくぶより1年ねんも早はやく徴兵ちょうへい制せいを導入どうにゅうしていたが多おおくの徴兵ちょうへいの例れいに漏もれず、大おおいに不評ふひょうだった。また、奴隷どれいを10人にん以上いじょう保有ほゆうしている・もしくは監督かんとくしている市民しみんは徴兵ちょうへいされないとしたこともその不満ふまんに拍車はくしゃをかけることとなった。要ようするに奴隷どれいを保有ほゆうしていない貧乏びんぼうな南部なんぶ人じんが奴隷どれいを保有ほゆうしている裕福ゆうふくな南部なんぶ人じんのために戦たたかっている戦争せんそうだという構図こうずができあがってしまったからである。物資ぶっし不足ふそくだった南部なんぶでは十分じゅうぶんな物資ぶっし（武器ぶき、弾薬だんやく、制服せいふく、それに食料しょくりょうなど)が将兵しょうへいに満足まんぞくに行いき渡わたらなかったこともあり、南みなみ軍ぐんは常つねに脱走だっそう兵へいの多おおさに悩なやまされていた。結局けっきょく南みなみ軍ぐんの場合ばあいこうむった損害そんがいは他たの部隊ぶたいから兵へいを（もしくは部隊ぶたいごと）引ひき抜ぬいて補充ほじゅうに充あてたり徴兵ちょうへい枠わくを拡大かくだいすることでなんとかしようとしたがあまり成功せいこうしなかった。

北きたバージニア軍ぐんを率ひきいて北部ほくぶに侵攻しんこうし、北部ほくぶの地ちでポトマック軍ぐんに壊滅かいめつ的てきな打撃だげきを与あたえることができればいくら人的じんてき資源しげんが豊ゆたかな北部ほくぶでもまた同どう規模きぼの軍ぐんを編成へんせいするのには時間じかんがかかるはずであり、また国内こくないでの敗北はいぼくに衝撃しょうげきを受うけた北部ほくぶの市民しみん達たちが1864年ねんの大統領だいとうりょう選せんで戦争せんそう継続けいぞくを叫さけぶリンカーン大統領だいとうりょうではなく停戦ていせん・和平わへいを旗印はたじるしに掲かかげる民主党みんしゅとうのジョージ・マクレランを次期じき大統領だいとうりょうに選えらぶ可能かのう性せいもあった。勿論もちろんこれは全すべてうまくいった場合ばあいのシナリオであり、リー将軍しょうぐんもそこまでうまく物事ものごとが運はこぶとは思おもっていなかっただろう。だが、簡単かんたんに言いえば南部なんぶにはそれ以外いがいに選択肢せんたくしが無なかったのである。ある意味いみ、これはリー将軍しょうぐんが戦争せんそうの転換てんかん点てんに近ちかづいてきたと気きづき、なんとかその敗勢はいせいを挽回ばんかいしようとしたがゆえに起おこった戦たたかいだったとも言いえる。

エピソード

• ゲティスバーグは南北戦争なんぼくせんそう最大さいだいの激戦げきせんだったが、砲撃ほうげきの激はげしさもまた南北戦争なんぼくせんそう最大さいだいであった。
• ゲティスバーグに南みなみ軍ぐんが残のこしていった小銃しょうじゅうを調しらべてみると、全ぜん小銃しょうじゅうのわずか二に十じゅうパーセントしか銃弾じゅうだんを使用しようしていなかった。
• ゲティスバーグの戦たたかいは世界せかい最後さいごの集団しゅうだん密集みっしゅう突撃とつげきが行おこなわれた戦たたかいでもあった。
• ゲティスバーグの戦たたかいの最後さいごに南みなみ軍ぐんの大だい規模きぼな突撃とつげき作戦さくせんが行おこなわれ、南みなみ軍ぐんは先頭せんとうに立たった司令しれい官かん以下いか陣地じんちの突破とっぱに成功せいこうした。しかし成功せいこうした部隊ぶたいは150名めいほどだったといわれており、結局けっきょくほとんどが戦死せんしして失敗しっぱいに終おわった。
• 戦死せんし者もののほとんどは砲撃ほうげきによるものである。

現在げんざい

当時とうじの戦闘せんとうを再現さいげんするために、現在げんざいでも所々しょしょに詳細しょうさいを説明せつめいする案内あんない板ばんとともに大砲たいほうやその他たの武器ぶきが多数たすう配置はいちされ、全米ぜんべいのみならず世界せかい的てきに有名ゆうめいな古戦場こせんじょうの一ひとつとして、夏季かきを中心ちゅうしんに多おおくの観光かんこう客きゃく・見学けんがく者しゃが訪おとずれる。

指揮しき官かん

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

• ジョージ・ミード
• アレクサンダー・S・ウェブ
• フィリップ・シェリダン
• ジョージ・アームストロング・カスター

アメリカ連合れんごう国こく

• ロバート・E・リー

TV

• 「アメリカ南北戦争なんぼくせんそう」NHK教育きょういく(1992)

参考さんこう文献ぶんけん

• 「戦場せんじょうの歴史れきし：コンピュータマップによる戦後せんごの研究けんきゅう」河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ(1986)

関連かんれん項目こうもく

• ゲティスバーグ演説えんぜつ

外部がいぶリンク

• 1863年ねん7月がつゲティスバーグの戦たたかい - ウェイバックマシン（2005年ねん4月がつ7日にちアーカイブ分ぶん） （日本語にほんご）