サターン (自動車じどうしゃ)

オーラ

アストラ（2008年ねん-）

サターン（Saturn ）は、

• アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのゼネラルモーターズ（GM）の100 %子会社こがいしゃ、「サターン・コーポレーション」
• 上記じょうき会社かいしゃが展開てんかいしていた乗用車じょうようしゃブランド

である。

概要がいよう

設立せつりつ

オイルショック以降いこう日本にっぽん車しゃに自国じこく市場いちばを侵食しんしょくされていたゼネラルモーターズは、挽回ばんかい策さくとして新しんブランドである「サターン」を1985年ねんに設立せつりつし、35億おくドルの投資とうしを行おこない、南部なんぶテネシー州しゅう、スプリングヒルに工場こうじょうを新設しんせつした。この工場こうじょう建設けんせつに当あたっては敷地しきち内ないにあった木きを別べつの場所ばしょに植うえ替かえるなど環境かんきょう保護ほごに最大限さいだいげん配慮はいりょした。名称めいしょうはアポロ計画けいかくで使用しようされたロケットに由来ゆらいする。

また個人こじんの創造そうぞう性せいとチームワークを重視じゅうしした独自どくじの開発かいはつ、生産せいさんシステムを導入どうにゅうしていた。これは現地げんちに大挙たいきょして進出しんしゅつしていた日本にっぽんメーカーの影響えいきょうと、全米ぜんべい自動車じどうしゃ労働ろうどう組合くみあい（UAW）との協議きょうぎの産物さんぶつである。

ターゲット

これまでは日本にっぽん車しゃや西にしドイツ車しゃを購入こうにゅうしていた、高学歴こうがくれきかつ高こう収入しゅうにゅうである、医師いしや大学だいがく教授きょうじゅなどの専門せんもん職しょくや、大だい企業きぎょうに勤務きんむするホワイトカラーをメインターゲットとした。このことから、上記じょうきのように環境かんきょう保護ほごに配慮はいりょしていることを積極せっきょく的てきにアピールした他ほか、維持いじ費ひ（メンテナンスコストや燃費ねんぴ）に配慮はいりょした広告こうこく展開てんかいを行おこなった。

「リテーラー」

また導入どうにゅう前まえのマーケティングリサーチにより、「誠実せいじつさに欠かける」「信頼しんらいできない」「女性じょせいのみでは入はいりにくい雰囲気ふんいき」などの評価ひょうかが多数たすうを占しめたGM各かくブランドのディーラーに対たいする悪評あくひょうを払拭ふっしょくすべく、「ディーラー」でなく「リテーラー」と呼よび、新規しんき契約けいやくを希望きぼうするリテーラーに対たいして審査しんさし、セールスマンには接客せっきゃくマニュアルを徹底てっていした。

併あわせて値引ねびきを行おこなわない価格かかく設定せっていを取とり入いれ、販売はんばい時じの価格かかく交渉こうしょうに伴ともなう不公平ふこうへい感かんを払拭ふっしょくさせた他ほか、納車のうしゃ時じに担当たんとうセールスマンや整備せいび士しなどが揃そろって行おこなう「納車のうしゃセレモニー」や、整備せいび時じの待合室まちあいしつの充実じゅうじつなど、これまでのアメリカ国内こくないの自動車じどうしゃディーラーの常識じょうしきを覆くつがえすようなサービスを導入どうにゅうした。

展開てんかい

SL（初代しょだい、1990年ねん-1995年ねん）

SW（初代しょだい、1993年ねん-1995年ねん）

SC（2代目だいめ）

アイオン（2002年ねん-2007年ねん）

1990年ねんに、最初さいしょのモデル『Sシリーズ』がアメリカ市場いちばで発売はつばいされた。上記じょうきのように環境かんきょう保護ほご、メンテナンスコスト、生産せいさん性せいに配慮はいりょしており、鋼板こうはんモノコックを基本きほんとしながら、ドアやフェンダーに多少たしょうの変形へんけいであれば復元ふくげんする樹脂じゅし製せいパネルを用もちいた車体しゃたいや、消失しょうしつ中子なかご法ほうで成形せいけいされた樹脂じゅし製せいインテークマニホールドの採用さいようなどが目新めあたらしかった。

車種しゃしゅは、4ドアセダンの「SL」と2ドアクーペの「SC」でスタートし、後のちに5ドアワゴンの「SW」も追加ついかされた。このSシリーズは、当初とうしょこそリコールの続発ぞくはつで販売はんばい不振ふしんが続つづいたものの、リテーラーの親身しんみになったサポートが口くちコミで評判ひょうばんとなって業績ぎょうせきが好転こうてんし、多おおくの他たブランドのディーラーがその販売はんばい方法ほうほうとセールスマンの対応たいおうを模倣もほうした。 その自信じしんを元もとにSシリーズは1996年ねんにモデルチェンジされ、日本にっぽん市場いちばへの輸出ゆしゅつのため右みぎハンドル仕様しようが開発かいはつされた。

その一方いっぽう、1999年ねん『Lシリーズ』によって、より上級じょうきゅうのクラスにも進出しんしゅつした。これは第だい2世代せだいオペル・ベクトラのプラットフォームを活用かつようしたモデルで、2.2 Lの直列ちょくれつ4気筒きとうと3.0LのV型がた6気筒きとうガソリンエンジンを搭載とうさいした。このモデルも対たい日にち輸出ゆしゅつが計画けいかくされたが、実行じっこうされなかった。

2002年ねんには同どうブランド初はつのクロスオーバーSUVとなるヴューが、2006年ねんには同おなじく初はつとなるオープン2シータースポーツのスカイが加くわわった。

日本にっぽん進出しんしゅつと撤退てったい

日本にっぽんへは1997年ねん（平成へいせい9年ねん）に進出しんしゅつ。「礼れいをつくす会社かいしゃ、礼れいをつくすクルマ」というキャッチコピーで広告こうこく展開てんかいし、ワンプライス制せいで値引ねびきなし、スーツではなくクールビズスタイルの営業えいぎょうマン、来店らいてん客きゃくに店みせ側がわからは積極せっきょく的てきに声こえを掛かけないノープレッシャー営業えいぎょうなど、誠実せいじつさを最大限さいだいげんに打うち出だしたアメリカにおける販売はんばい面めんでの成功せいこう例れいをそのまま導入どうにゅうした。これらの販売はんばいシステムは「従来じゅうらいにないもの」として一部いちぶ国内こくないメーカーなどから注目ちゅうもくされ、トヨタでは1998年ねん（平成へいせい10年ねん）に開設かいせつしたネッツ店てんがこれらを手本てほんにしたと言いわれている。当時とうじのCM使用しよう曲きょくは杏里あんりの「Close to you」（カーペンターズのカヴァー）、ナレーションは細野ほその晴臣はるおみだった。

日本にっぽんのリテーラー網もうには、JR東日本ひがしにっぽんの子会社こがいしゃであるジェイアじぇいあール東日本るひがしにほん自動車じどうしゃ販売はんばい、ハナテン、ヤナセ、いすゞ自動車ずじどうしゃなどが参入さんにゅうし、なかでもジェイアじぇいあール東日本るひがしにほん自動車じどうしゃ販売はんばいが運営うんえいしたサターンのリテーラーは、新宿しんじゅく駅えき南口みなみぐちという繁華はんか街がいに位置いちしていた。

ラインナップは小型こがたのSシリーズのみ、エンジンは直列ちょくれつ4気筒きとうDOHCの1.9Lのみであった。実用じつよう燃費ねんぴも10km/L前後ぜんごと日本にっぽんでの使用しように適てきした仕様しようであったものの、知名度ちめいどの低ひくさやディーラー網もうの小ちいささ、さらにアメリカ車しゃ特有とくゆうの内うち外装がいそうの質感しつかんの低ひくさが感かんじられたことで日本にっぽん市場いちばには受うけ入いれられず、2001年ねん（平成へいせい13年ねん）には日本にっぽん市場いちばから撤退てったいし、在庫ざいこ車しゃはレンタカーとして沖縄おきなわ県けんのレンタカー業者ぎょうしゃに大量たいりょうに導入どうにゅうされた。サターンが撤退てったいした後のち、一部いちぶの販売はんばい店てんはGMオートワールド（現在げんざいのGMシボレー店てん）のディーラー網もうに参加さんかした。

サターン撤退てったい後ごの現在げんざいでは部品ぶひんの入手にゅうしゅがかなり難むずかしく、親会社おやがいしゃであるゼネラルモーターズのディーラーでも修理しゅうりを断ことわられることが多おおく、ユーザーの悩なやみの種たねになっている。

晩年ばんねん

日本にっぽん市場いちばから撤退てったいしたことでアメリカ国内こくないとカナダのみの展開てんかいとなった後のちは、クロスオーバーSUVやスポーツモデル、ベルト・オルタネーター・スターター式しきのマイルドハイブリッドシステム搭載とうさい車しゃを含ふくむ複数ふくすうのモデルを展開てんかいしていた。

当初とうしょサターン車しゃの特徴とくちょうであった樹脂じゅし製せいパネルは、温度おんど差さによる伸のび縮ちぢみが激はげしく、大おおきく膨張ぼうちょうすると場合ばあいによってはドアの締しまり具合ぐあいが悪わるくなる、サイズに大おおきな遊あそび（隙間すきま）が必要ひつようなため見みた目めが悪わるくなるなどのデメリットから2003年ねんにGMは廃止はいしする方針ほうしんを固かため、2007年ねんに初代しょだいヴューとアイオン（Sシリーズの後継こうけい車しゃ）の生産せいさんを終了しゅうりょうしたことで樹脂じゅし製せいパネルの車両しゃりょうは消滅しょうめつ。同時どうじにスプリングヒル工場こうじょうでのサターン車しゃの製造せいぞうも終了しゅうりょうした。晩年ばんねんはオペル車くるまのバッジエンジニアリングなどが主体しゅたいとなり、独自どくじ性せいは失うしなわれていった。サターンが独自どくじ性せいを失うしなっていった背景はいけいには90年代ねんだい半なかば以降いこう、トラックやSUVの人気にんきに押おされて小型車こがたしゃを売うりにくい状況じょうきょうであったことや、技術ぎじゅつ面めんで日本にっぽん車しゃを超こえられなかったこと、また労使ろうし間あいだの対立たいりつがあった。

売却ばいきゃくから一変いっぺんして廃止はいしへ

ゼネラルモーターズの経営けいえい破綻はたんを受うけ、2009年ねん2月がつに「ブランドの売却ばいきゃくもしくは閉鎖へいさを決定けっていした」との発表はっぴょうがあり、GMの連邦れんぽう倒産とうさん法ほう第だい11章しょう（日本にっぽんの民事みんじ再生さいせい法ほうに相当そうとう）適用てきよう、アメリカ政府せいふ主導しゅどうの事業じぎょう清算せいさん・整理せいりにともない、2009年ねん6月5日にちに、自動車じどうしゃ販売はんばいディーラー業ぎょうを中心ちゅうしんとした自動車じどうしゃ関連かんれん企業きぎょうグループを展開てんかいする「ペンスキー・オートモーティブ」へサターン・ブランドを売却ばいきゃくするとの発表はっぴょうがあったものの、GMへの生産せいさん委託いたく期間きかん終了しゅうりょう後ごの委託いたく先さきをめぐりフランスのルノーと交渉こうしょうを行おこなっていたが、これが決裂けつれつしたため売却ばいきゃくを断念だんねん。その結果けっか、2010年ねん10月までにブランドの廃止はいしが決定けっていされた。

廃止はいし後ご

2010年ねん時点じてんのサターンのラインナップは、ヴュー、スカイ、オーラ（中型ちゅうがたセダン）、アウトルック（大型おおがたクロスオーバーSUV）があったが、このうちヴューは廃止はいし後ごの2011年ねんにシボレー・キャプティバスポーツとして復活ふっかつした。スカイは廃止はいしされ、残のこりの車種しゃしゅはシボレーなどの兄弟きょうだい車しゃに事実じじつ上じょう統合とうごうされた。

2011年ねん11月にGMはかつてのサターンの生産せいさん拠点きょてんであったスプリングヒル工場こうじょうを改修かいしゅうし、2012年ねん後半こうはんに再さい稼働かどうさせると発表はっぴょう。シボレー・エクイノックスなどが生産せいさんされた。2020年ねん10月には同どう工場こうじょうをEVの生産せいさん拠点きょてんへと転換てんかんすると発表はっぴょうした。

車種しゃしゅ一覧いちらん

LS（1999年ねん-2005年ねん）

ヴュー・ハイブリッド

• サターン・Sシリーズ（1991 - 2001年ねん）
  • SL --- セダン
  • SW --- ステーションワゴン
  • SC --- クーペ。左側ひだりがわが観音開かんのんびらきの1+2ドア・ノッチバッククーペも後のちに発売はつばいされた。
• サターン・Lシリーズ Saturn L series英語えいご版ばん（1999 - 2005年ねん）
• サターン・アイオン（2002年ねん - 2007年ねん）- Sシリーズ後継こうけい
• サターン・ヴュー（2002年ねん - 2010年ねん）- 小型こがたクロスオーバーSUV
• サターン・リレイ（2005年ねん - 2007年ねん）- ミニバン。ビュイック・テラーザなどの姉妹しまい車しゃ
• サターン・オーラ（2007年ねん - 2010年ねん）- Lシリーズ後継こうけい。オペル・ベクトラの姉妹しまい車しゃ
• サターン・スカイ（2007年ねん - 2009年ねん）- ロードスター。オペル・GTの姉妹しまい車しゃ
• サターン・アウトルック（2008年ねん - 2010年ねん）- 大型おおがたクロスオーバーSUV。GMC・アカディアの姉妹しまい車しゃ
• サターン・アストラ（2008年ねん - 2009年ねん）- アイオン後継こうけい。オペル・アストラの姉妹しまい車しゃ
• GM・EV1（1996年ねん - 1999年ねん）- 電気でんき自動車じどうしゃ。サターンの販売はんばい網もうでリースされた

参考さんこう文献ぶんけん

カーグラフィック1990年ねん12月がつ号ごう（二玄社にげんしゃ刊かん）

外部がいぶリンク

• 公式こうしきサイト（英語えいご）