ジェームズ・ワトソン

ジェームズ・ワトソン James Watson
生誕せいたん	(1928-04-06) 1928年ねん4月がつ6日にち（96歳さい） アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく イリノイ州しゅうシカゴ
国籍こくせき	アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
研究けんきゅう分野ぶんや	遺伝いでん学がく
出身しゅっしん校こう	シカゴ大学だいがく インディアナ大学だいがく
博士はかせ課程かてい 指導しどう教員きょういん	サルバドール・エドワード・ルリア
博士はかせ課程かてい 指導しどう学生がくせい	マリオ・カペッキ
主おもな業績ぎょうせき	分子生物学ぶんしせいぶつがく
主おもな受賞じゅしょう歴れき	アルバート・ラスカー基礎きそ医学いがく研究けんきゅう賞しょう(1960) ノーベル生理学せいりがく・医学いがく賞しょう(1962) ガードナー国際こくさい賞しょう(2002)
プロジェクト:人物じんぶつ伝でん

ノーベル賞しょう受賞じゅしょう者しゃ 受賞じゅしょう年ねん：1962年ねん 受賞じゅしょう部門ぶもん：ノーベル生理学せいりがく・医学いがく賞しょう 受賞じゅしょう理由りゆう：核酸かくさんの分子ぶんし構造こうぞうおよび生体せいたいにおける情報じょうほう伝達でんたつに対たいするその意義いぎの発見はっけん

ジェームズ・デューイ・ワトソン（James Dewey Watson, 1928年ねん4月がつ6日にち - ）は、アメリカ出身しゅっしんの分子生物学ぶんしせいぶつがく者しゃである。DNAの分子ぶんし構造こうぞうにおける共同きょうどう発見はっけん者しゃの一人ひとりとして知しられる。ワトソンおよびフランシス・クリック、モーリス・ウィルキンスらは、「核酸かくさんの分子ぶんし構造こうぞうおよび生体せいたいにおける情報じょうほう伝達でんたつに対たいするその意義いぎの発見はっけん」に対たいして、1962年ねんにノーベル生理学せいりがく・医学いがく賞しょうを受賞じゅしょうした。

人物じんぶつ・来歴らいれき

イリノイ州しゅうシカゴ生うまれ。1947年ねんにシカゴ大学だいがく卒業そつぎょう後ご、1950年ねんに米こめインディアナ大学だいがく大学院だいがくいんで生物せいぶつ学がくのPhDを取得しゅとく。

グアニン (G) と シトシン (C)、アデニン (A) と チミン (T) の四よっつの塩基えんきとデオキシリボース(糖とう)とリン酸さん基もとの分子ぶんし模型もけいを用もちい、DNA構造こうぞうの研究けんきゅうをしていた際さいに、ロザリンド・フランクリンが撮影さつえいしたX線せん回折かいせつの写真しゃしんをモーリス・ウィルキンスから紹介しょうかいされた。このX線せん回折かいせつのデータを参考さんこうにして、フランシス・クリックらと議論ぎろんの末すえ、DNAの二に重じゅう螺旋らせん構造こうぞうを発見はっけんした。そのことが後こうの分子生物学ぶんしせいぶつがくの飛躍ひやく的てき発展はってんに繋つながり、彼かれはクリックやウィルキンスと共ともに1962年ねんにノーベル生理学せいりがく・医学いがく賞しょうを受賞じゅしょうした。

1956年ねんから1976年ねんには、ボストンのハーバード大学だいがく生物せいぶつ学がく専攻せんこうにて教授きょうじゅをつとめ、分子生物学ぶんしせいぶつがくを広ひろめた。また、1968年ねんから1993年ねんにかけてニューヨークのコールド・スプリング・ハーバー研究所けんきゅうじょの所長しょちょう、1993年ねんから2007年ねんまでは会長かいちょうをつとめた。1989年ねんから1992年ねんには、NIH（国立こくりつ衛生えいせい研究所けんきゅうじょ）の国立こくりつヒトゲノム研究けんきゅうセンター初代しょだい所長しょちょうもつとめる。全米ぜんべい科学かがくアカデミー及およびイギリス王立おうりつ協会きょうかい（ロイヤルソサイエティ）会員かいいん。大統領だいとうりょう自由じゆう勲章くんしょうを受勲じゅくん。ウッズホール海洋かいよう生物せいぶつ学がく研究所けんきゅうじょの在籍ざいせき者しゃの一人ひとり。

2007年ねん5月31日にちには、ベイラー医科いか大学だいがくと米べいバイオ企業きぎょう「454ライフサイエンシズ」が共同きょうどうで解析かいせきしたワトソンの遺伝子いでんし情報じょうほうが、国立こくりつバイオテクノロジー情報じょうほうセンター(NCBI)のデータベースに公開こうかいされた。誰だれのものかが明あきらかにされているゲノム情報じょうほうが公開こうかいされたのはこれが史上しじょう初はつである。

後述こうじゅつする2007年ねんの人種じんしゅ差別さべつ発言はつげんによって名声めいせいは地ちに堕おち、学会がっかいとも距離きょりを置おかれ、名声めいせいを取とり戻もどすために大学だいがくに寄付きふをしようにもノーベル賞しょうメダルを競売きょうばいに出ださざるを得えないほど経済けいざい的てきに困窮こんきゅう。2014年ねん12月4日にち、DNAの二に重じゅうらせん構造こうぞうの発見はっけんで受賞じゅしょうしたノーベル生理学せいりがく・医学いがく賞しょうのメダルが、ニューヨークのクリスティーズで競売きょうばいに掛かけられ、475万まん7000ドル（当時とうじのレートで日本円にほんえん約やく5億おく4700万まん円えん）で落札らくさつされた。存命ぞんめいのノーベル賞しょう受賞じゅしょう者しゃのメダルが競売きょうばいされたのは、史上しじょう初はじめてとなる。当初とうしょ、落札らくさつ者しゃは公開こうかいされていなかったが、ロシアの実業じつぎょう家かで富豪ふごうであるアリシェル・ウスマノフが、自身じしんが落札らくさつ者しゃだったことを明あきらかにした上うえで、「博士はかせは史上しじょう最もっとも偉大いだいな生物せいぶつ学者がくしゃの一人ひとり。メダルは自分じぶんで持もっているべきだ」として無償むしょうで返還へんかんすることを申もうし出でた。

なお、共同きょうどう受賞じゅしょうしたクリックのメダルも、死後しごではあるが2013年ねんに競売きょうばいにかけられ、再生さいせい医療いりょうに携たずさわる中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくのバイオ企業きぎょう経営けいえい者しゃに落札らくさつされている。

また、中国ちゅうごくにコールド・スプリング・ハーバー研究所けんきゅうじょを模もして自みずからの名前なまえを冠かんしたワトソン・ゲノム科学かがく研究所けんきゅうじょを設立せつりつしており、深ふか圳市の上級じょうきゅう顧問こもんも務つとめ、中国ちゅうごくは科学かがく技術ぎじゅつの研究けんきゅうでは米国べいこくを超こえて世界一せかいいちになったとして余生よせいは深ふか圳で建設けんせつを進すすめる研究けんきゅう施設しせつ「ワトソン生命せいめい技術ぎじゅつセンター」でも生活せいかつして中国ちゅうごくの発展はってんに力ちからを注そそぎたいと述のべている。

議論ぎろんと批判ひはん

優すぐれた業績ぎょうせきの反面はんめん、問題もんだい発言はつげんが多おおいことでも知しられる。また、経歴けいれきに関かんする幾いくつかの疑念ぎねんが指摘してきされている。モーリス・ウィルキンスから見みせられたロザリンド・フランクリンによるX線せん回折かいせつ写真しゃしんが、DNAの構造こうぞう解明かいめいにおいて死活しかつ的てきに重要じゅうようとなったが、ワトソン・クリック・ウィルキンスらがフランクリンの成果せいかを入手にゅうしゅした方法ほうほうが不正ふせいであるという指摘してきをかねてから受うけ続つづけている。ワトソンはフランクリンのことを、回想かいそう録ろく『二に重じゅうらせん』の中なかで「気き難むずかしく、ヒステリックなダークレディ」と述のべているが、自身じしんらがフランクリンの写真しゃしんを盗ぬすみ見みたことを正当せいとう化かするために、彼女かのじょが亡なくなったのを良よいことに不当ふとうに貶おとしめているとの批判ひはんをフランクリンの伝記でんき作者さくしゃから受うけている。

2007年ねん10月14日にち、「黒人こくじんは人種じんしゅ的てき・遺伝いでん的てきに劣等れっとうである」という趣旨しゅしの発言はつげんが英紙えいしサンデー・タイムズ一いち面めんに掲載けいさいされた。同紙どうしによるとインタビューにおいてワトソンは「アフリカの将来しょうらいについては全まったく悲観ひかん的てきだ」「（我々われわれ白人はくじんが行おこなっている）アフリカに対たいする社会しゃかい政策せいさくのすべては“アフリカ人じんの知性ちせいは我々われわれと同等どうとうである”という前提ぜんていで行おこなわれているが、それは間違まちがいである」「黒人こくじん従業じゅうぎょう員いんの雇用こよう者しゃであれば、容易よういにそれを納得なっとくできるだろう」などと語かたったという。この報道ほうどうは欧米おうべいで大おおきな波紋はもんを呼よび、英国えいこく滞在たいざい中ちゅうだったワトソンは謝罪しゃざいと発言はつげんの真意しんいが曲解きょっかいされているとの旨むねのコメントを発はっするとともに、米国べいこくに緊急きんきゅう帰国きこくした。結果けっかとして、コールド・スプリング・ハーバー研究所けんきゅうじょを辞職じしょくに追おい込こまれ、名声めいせいは地ちに堕おちた。2019年ねん1月がつ2日にちのPBSのドキュメンタリー番組ばんぐみでも同様どうようの発言はつげんを行おこない、同どう研究所けんきゅうじょの名誉めいよ職しょくを剥奪はくだつされた。

主おもな受賞じゅしょう歴れき

• 1960年ねん アルバート・ラスカー基礎きそ医学いがく研究けんきゅう賞しょう、イーライリリー生物せいぶつ化学かがく賞しょう
• 1962年ねん ノーベル生理学せいりがく・医学いがく賞しょう
• 1971年ねん ジョン・カーティー賞しょう
• 1993年ねん コプリ・メダル
• 1994年ねん ロモノーソフ金きんメダル
• 1997年ねん アメリカ国家こっか科学かがく賞しょう
• 2000年ねん メンデル・メダル
• 2001年ねん ベンジャミン・フランクリン・メダル
• 2002年ねん ガードナー国際こくさい賞しょう
• 2006年ねん カール・ラントシュタイナー記念きねん賞しょう

主おもな著書ちょしょ

• 『二に重じゅうらせん』（原題げんだいThe Double Helix）江上えがみ不二夫ふじお・中村なかむら桂子けいこ訳わけ（新版しんぱん：講談社こうだんしゃブルーバックス、2012年ねん）。ワトソンの回想かいそう録ろく
• 『ワトソン・組ぐみ換かえDNAの分子生物学ぶんしせいぶつがく』松橋まつはし通とおる生せい訳わけ、丸善まるぜん
• 『ワトソン・組ぐみ換かえDNA―新あたらしい分子生物学ぶんしせいぶつがくの展望てんぼう』―David T. Kurtz、John Tooze（共著きょうちょ）松橋まつはし通とおる生せい訳わけ、大坪おおつぼ栄一えいいち訳わけ、丸善まるぜん
• 『遺伝子いでんしの分子生物学ぶんしせいぶつがく』東京電機大学とうきょうでんきだいがく出版しゅっぱん局きょく
• 『DNA』（原題げんだいThe Secret of life）アンドリュー・ベリー共著きょうちょ（青木あおき薫かおる訳わけ、講談社こうだんしゃ、2003年ねん）、のち同どう・ブルーバックス（上下じょうげ）
• 『DNAのワトソン先生せんせい、大おおいに語かたる』吉田よしだ三知みち世よ訳やく、日経にっけいBP社しゃ、2009年ねん

参考さんこう文献ぶんけん

• ロバート・オルビー『二に重じゅうらせんへの道みち<下した>　DNA構造こうぞうの発見はっけん』 紀伊國屋きのくにや書店しょてん、1996年ねん
• ジョイス・ボールドウィン『ジェームス・ワトソン　DNAのパイオニア』ニュートンプレス、2000年ねん
• 高橋たかはし昌一郎しょういちろう『天才てんさいの光ひかりと影かげ ノーベル賞しょう受賞じゅしょう者しゃ23人にんの狂気きょうき』PHP研究所けんきゅうじょ、2024年ねん5月がつ。ISBN 978-4-569-85681-0。 

脚注きゃくちゅう

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