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ジエチル亜鉛あえん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
ジエチル亜鉛あえん
Diethylzinc
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IUPAC名めい

diethylzinc

別称べっしょう
DEZ
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 557-20-0 チェック
特性とくせい
化学かがく式しき (C2H5)2Zn
モル質量しつりょう 123.50 g/mol
外観がいかん 無色むしょくの液体えきたい
密度みつど 1.205 g/mL
融点ゆうてん

-28℃

沸点ふってん

117℃

水みずへの溶解ようかい度ど 激はげしく反応はんのうする
溶解ようかい度ど 芳香ほうこう族ぞく炭化たんか水素すいそや脂肪しぼう族ぞく飽和ほうわ炭化たんか水素すいそに任意にんいの割合わりあいで溶解ようかい。
危険きけん性せい
主おもな危険きけん性せい 可燃かねん性せい (F); 腐食ふしょく性せい (C); 環境かんきょうに対たいする危険きけん性せい (N)
発火はっか点てん 常温じょうおんで自然しぜん発火はっか
関連かんれんする物質ぶっしつ
関連かんれん物質ぶっしつ ジメチル亜鉛あえん
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・常つね圧あつ (100 kPa) におけるものである。

ジエチル亜鉛あえん（ジエチルあえん、英えい: diethylzinc）は化学かがく式しき(C2H5)2Znで表あらわされる有機ゆうき亜鉛あえん化合かごう物ぶつ。亜鉛あえんにエチル基もとが2つ付ついた構造こうぞうで、自然しぜん発火はっか性せいがある。

合成ごうせい

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1848年ねんに、イギリスの科学かがく者しゃエドワード・フランクランドが世界せかい初はつの有機ゆうき亜鉛あえん化合かごう物ぶつとして、亜鉛あえんとヨウ化かエチルからの合成ごうせいに成功せいこうした[1]。その後ご彼かれはジエチル水銀すいぎんを出発しゅっぱつ点てんとした合成ごうせい法ほうに改良かいりょうした[2]。現代げんだいでは、ヨウ化かエチルと臭におい化かエチルを1:1で混合こんごうしたものと亜鉛あえん–銅どうカップルの反応はんのうにより製造せいぞうされる[3]。

反応はんのう

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ジエチル亜鉛あえんは有機ゆうき合成ごうせい化学かがくにおいて、カルボニル基もとの付加ふか反応はんのうの際さいのC2H5シントンとして用もちいられる。例たとえばベンズアルデヒド[4]やイミン[5]への不ふ斉ひとし付加ふか反応はんのうなどがあり、グリニャール試薬しやくが発見はっけんされるまでは求もとめ核かく剤ざいとして使用しようされた。ジヨードメタンを作用さようさせるとシモンズ・スミス試薬しやくを生成せいせいする[6][7]。

構造こうぞう

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ジエチル亜鉛あえんは空間くうかん群ぐん対称たいしょう性せいI41mdの正方まさかた晶あきら系けい体からだ心こころ正方せいほう単位たんい胞で結晶けっしょう化かする。固かた相しょうでは、ジエチル亜鉛あえんはほぼ直線ちょくせん状じょうのZn中心ちゅうしんを示しめす。Zn-C結合けつごうの長ながさは194.8(5) pm、C-Zn-C角度かくどは176.2(4)° とわずかに曲まがっている[8]。気き相しょうでの構造こうぞうは非常ひじょうに似にたZn-C距離きょり (195.0(2) pm) を示しめす[9]。

用途ようと

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空気くうきに触ふれると自然しぜん発火はっかすることから、ロケットの燃料ねんりょう点火てんか剤ざいとして使用しようされ、点火てんかプラグを不要ふようとした。アメリカ議会ぎかい図書館としょかんでは、本ほんを真空しんくう中ちゅうでジエチル亜鉛あえん蒸気じょうきに曝さらすことにより酸性さんせい紙しの劣化れっか防止ぼうしの試こころみがなされたが、安全あんぜん性せいや、本ほんに不快ふかい臭しゅうが残のこるなどの理由りゆうにより実用じつよう化かには至いたらなかった[10]。

安全あんぜん性せい

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水みずとの接触せっしょくにより爆発ばくはつ的てきに反応はんのうし、メタン等ひとしの可燃かねん性せい炭化たんか水素すいそや金属きんぞくの水素すいそ化物ばけものを生しょうじることから日本にっぽんの消防しょうぼう法ほうでは危険きけん物ぶつ第だい3類るいに分類ぶんるいされる。空気くうきに触ふれると自然しぜん発火はっかするが不ふ活性かっせい気体きたい中なかでは安定あんていしており、市販しはんのものはヘキサンやヘプタン、トルエンなどの溶液ようえきで販売はんばいされている。衝撃しょうげきに対たいしても安定あんていしている[11]。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ E. Frankland (1850). “On the isolation of the organic radicals”. Quarterly Journal of the Chemical Society 2: 263. doi:10.1039/QJ8500200263. 
  2. ^ E. Frankland, B. F. Duppa (1864). “On a new reaction for the production of the zinc-compounds of the alkyl-radical”. Journal of the Chemical Society 17: 29–36. doi:10.1039/JS8641700029. 
  3. ^ C. R. Noller (1943). "Diethyl Zinc". Organic Syntheses (英語えいご).; Collective Volume, vol. 2, p. 184
  4. ^ Masato Kitamura, Hiromasa Oka, Seiji Suga, and Ryoji Noyori (2004). "Catalytic Enantioselective Addition of Dialkylzincs to Aldehydes Using (2S)-(−)-3-exo-(Dimethylamino)isoborneol [(2S)-DAIB]: (S)-1-Phenyl-1-propanol". Organic Syntheses (英語えいご).; Collective Volume, vol. 10, p. 635
  5. ^ Jean-Nicolas Desrosiers, Alexandre Côté, Alessandro A. Boezio, and André B. Charette (2005). "Preparation of Enantiomerically Enriched (1S)-1-Phenylpropan-1-amine Hydrochloride by a Catalytic Addition of Diorganozinc Reagents to Imines". Organic Syntheses (英語えいご). 83: 5.
  6. ^ André B. Charette and Hélène Lebel (2004). "(2S,3S)-(+)-(3-Phenylcyclopropyl)methanol". Organic Syntheses (英語えいご).; Collective Volume, vol. 10, p. 613
  7. ^ Yoshihiko Ito, Shotaro Fujii, Masashi Nakatuska, Fumio Kawamoto, and Takeo Saegusa (1988). "One-Carbon Ring Expansion of Cycloalkanones to Conjugated Cycloalkenones: 2-Cyclohepten-1-one". Organic Syntheses (英語えいご).; Collective Volume, vol. 6, p. 327
  8. ^ John Bacsa; Felix Hanke; Sarah Hindley; Rajesh Odedra; George R. Darling; Anthony C. Jones; Alexander Steiner (2011). “The Solid State Structures of Dimethylzinc and Diethylzinc”. Angewandte Chemie International Edition 50: 11685–11687. doi:10.1002/anie.201105099. 
  9. ^ A. Haaland; J. C. Green; G. S. McGrady; A. J. Downs; E. Gullo; M. J. Lyall; J. Timberlake; A. V. Tutukin et al. (2003). “The length, strength and polarity of metal–carbon bonds: dialkylzinc compounds studied by density functional theory calculations, gas electron diffraction and photoelectron spectroscopy”. Dalton Transactions: 4356–4366. doi:10.1039/B306840B. 
  10. ^ Nicholson Baker (2002). Double Fold: Libraries and the Assault on Paper. Vintage. ISBN 0375726217 
  11. ^ 製品せいひん安全あんぜんデータシート (PDF) （宇部興産うべこうさん）
Zn(I)
有機ゆうき亜鉛あえん(I)化合かごう物ぶつ
Zn(II)
有機ゆうき亜鉛あえん(II)化合かごう物ぶつ
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