ステルス艦かん

ステルス艦かんとは、ステルス性せいを有ゆうする軍艦ぐんかんのことである。

歴史れきし

最初さいしょのステルス艦かんと呼よべるものは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん期きのドイツ海軍かいぐん・日本にっぽん海軍かいぐんの潜水せんすい艦かん。元々もともと潜水せんすい艦かんは、"ultimate stealth weapon（究極きゅうきょくのステルス兵器へいき）^[1]^[2]" とも言いわれていたが、潜航せんこう時じはともかく浮上ふじょう時じにはステルス性せいは無なかった。そのため、レーダーの発達はったつに伴ともない、浮上ふじょう行動こうどうを大幅おおはばに制限せいげんされるようになっていた。これに対抗たいこうするため、艦橋かんきょうの形状けいじょう変更へんこう（セイル側面そくめんを外そと向むきに傾かたむける）や艦上かんじょう構造こうぞう物ぶつの撤去てっきょなどにより、レーダー反射はんしゃ断だん面積めんせきの低減ていげんを図はかったのがステルス艦かんの始はじまりである。

ステルス艦かんの種類しゅるい

潜水せんすい艦かん

潜水せんすい艦かんが時々ときどき、船体せんたいに帯磁たいじした磁力じりょくを消磁しょうじ所しょで消けしているのも磁力じりょく的てきなステルスである。潜水艦せんすいかんを含ふくむ戦闘せんとう用よう艦艇かんていは、時間じかんと共ともに地磁気ちじきや摩擦まさつによって自身じしんの船体せんたいが磁気じきを帯おびてくるためにこれを専用せんようの施設しせつで定期ていき的てきに消磁しょうじしている。これを船体せんたい消磁しょうじと呼よび、一種いっしゅのステルス技術ぎじゅつと言いえる。消磁しょうじを行おこなわずに磁気じきを周囲しゅういに放射ほうしゃしたまま敵性てきせい海面かいめん・海中かいちゅうを航行こうこうすると、磁気じき探知たんち性せい機雷きらいに触さわ雷かみなりしたり、敵てき航空機こうくうきなどの磁気じき探知たんち機き（MAD）に発見はっけんされたりする危険きけんが増ます。チタン製せいの耐たい圧あつ殻からを持もつ潜水せんすい艦かんは、耐たい圧あつ殻からをチタン製せいにすること自体じたいが艦かん体たいの消磁しょうじになる。

また、静粛せいしゅく性せいもひとつのステルス性せいと言いえる。とくに潜水せんすい艦かんでは敵てきソナーによる探知たんちを最小さいしょう化かするため、外そと殻から外面がいめんに振動しんどう吸収きゅうしゅう素材そざいを貼はり付づけてアクティブ・ソナーの水中すいちゅう波はを吸収きゅうしゅうするようにしている。浮上ふじょうした際さいのレーダー反射はんしゃ断だん面積めんせきを抑おさえるために、セイルの外形がいけいや断面だんめんを台形だいけいにしたり、レーダー波は吸収きゅうしゅう材ざいをセイルに貼はり付つけることもある。

水上みずかみ艦船かんせん

スウェーデン海軍かいぐんのヴィスビュー級きゅうコルベット。艦かん体たいと艦橋かんきょうが一体化いったいかして、断面だんめんが台形だいけいと逆ぎゃく台形だいけいの組くみ合あわせとなっている。円錐えんすい形がたのものはレドーム。主砲しゅほうの砲身ほうしんは砲塔ほうとうに格納かくのうされており、外そとからは見みえない。

RSS Formidable。VLSをレーダー遮蔽しゃへい板ばんで囲かこい、ステルス化かしている。この他ほか、ハープーンも遮蔽しゃへい板ばんで囲かこみ、水平すいへい方向ほうこうからのレーダー反射はんしゃを抑制よくせいしている。

水上みずかみ艦船かんせんにおけるステルス性せいの寄与きよとして、レーダー反射はんしゃ断だん面積めんせき（RCS）の減少げんしょうを試こころみるための艦かん体たいの単純たんじゅん化か・平面へいめん化かがある。

従来じゅうらい、艦かん体たいの断面だんめんは生産せいさん性せいを考慮こうりょして垂直すいちょくや曲面きょくめんになるのが普通ふつうであったが、艦かん体たいや艦橋かんきょうの断面だんめんを従来じゅうらいの垂直すいちょくから台形だいけいや菱形ひしがたにすることで、反射はんしゃしたレーダー波はを海面かいめんや空中くうちゅうに逸そらすことで、レーダー波はの減少げんしょうになる。マストの支柱しちゅうの断面だんめんを台形だいけいや菱形ひしがたにすることも試こころみられており、中なかには先進せんしん型がた閉囲マスト/センサー（AEM/S）のような思おもい切きったレーダー反射はんしゃ断だん面積めんせきを減へらす工夫くふうもある。煙突えんとつも、平面へいめんで構成こうせいしたりマストと一体化いったいか、さらに煙突えんとつを廃はいして舷側げんそく排気はいきにすることで反射はんしゃ断だん面積めんせきを最低限さいていげんにすることができる。また、艦かん体たい上じょうにある突起とっき物ぶつ（マスト・兵へい装そう類るい）も、艦かん体たいに格納かくのうしたり平面へいめんのカバーを被かぶせることで、レーダー波はの反射はんしゃ断だん面積めんせきを減少げんしょうさせることができる。中なかにははやぶさ型がたミサイル艇ていのように、欄干らんかんも断面だんめんを菱形ひしがたにするなどして徹底てっていしたステルス性せいを追求ついきゅうする例れいもある。

形状けいじょうにとらわれないステルス性せいの寄与きよ法ほうとして、レーダー波はを吸収きゅうしゅうする素材そざい（例たとえば炭素たんそ繊維せんい強化きょうかプラスチック(CFRP)）を貼はり付つけることもある。この方法ほうほうを用もちいると、それまで保有ほゆうしていた非ひステルスの艦艇かんていにステルス性せいを与あたえることも可能かのうである。

ミサイルの発射はっしゃ装置そうちをVLSにして艦かん体たいに組くみ込こむことも、低てい視認しにん性せいも相あいまって反射はんしゃ断だん面積めんせきの減少げんしょうになる。計画けいかくのみに終おわったが、アーセナル・シップは上部じょうぶ構造こうぞう物ぶつがほとんどなく、低ていレーダー反射はんしゃ断だん面積めんせきと低てい視認しにん性せいを強つよく意識いしきした設計せっけいとなっている。艦載かんさい砲ほうも、砲塔ほうとうを平面へいめんで構成こうせいした多角たかく形がたにすることでステルス性せいを持もたせたものがある。ヴィスビュー級きゅうコルベットに搭載とうさいされたボフォース57mm砲ほうは、射撃しゃげき時じ以外いがいは砲身ほうしんを砲塔ほうとうに格納かくのうする。艦載かんさい艇てい格納かくのう部ぶや対たい艦かんミサイルの発射はっしゃ管かん、魚雷ぎょらい発射はっしゃ管かんをシャッターで覆おおうことで反射はんしゃ断だん面積めんせきを大幅おおはばに減少げんしょうさせることができる。

水上みずかみ艦艇かんていのステルス性せいがどの程度ていどになるかは、公開こうかいされている情報じょうほうが少すくなく不明ふめいな点てんが多おおい。VLSを世界せかいで初はじめて搭載とうさいし、また艦橋かんきょうと艦かん体たいを傾斜けいしゃさせるなどステルス性せいへの配慮はいりょがなされたキーロフ級きゅうミサイル巡洋艦じゅんようかんの1番ばん艦かん「キーロフ」が初はじめてデンマーク海峡かいきょうを通過つうかした際さい、満載まんさい排水はいすい量りょうが26,500tという大型おおがた艦かんである本ほん艦かんが、NATO軍ぐんのレーダーには「2,000t程度ていどの小型こがたフリゲート」にしか写うつらなかったという逸話いつわがある。

問題もんだい点てん

ステルス性せいを重視じゅうしした戦闘せんとう艦かんでは、平時へいじにおけるレーダー反射はんしゃ断だん面積めんせきも少すくないため、そのままでは衝突しょうとつなどの海難かいなん事故じこの可能かのう性せいがある。そのため、平時へいじの航行こうこう中ちゅうには、わざわざコーナー・リフレクターを甲板かんぱん上じょうの見通みとおしの良よい場所ばしょに設置せっちして、ステルス性能せいのうの漏洩ろうえいを防ふせぐと共ともに一般いっぱん航行こうこう時じの安全あんぜんを図はかるように留意りゅういするケースが出でてきた。

艦船かんせんでのステルス性能せいのうが今後こんご一層いっそう向上こうじょうすれば、一般いっぱん船舶せんぱくや友軍ゆうぐん艦船かんせんとの衝突しょうとつ事故じこを防ふせぐためにも必要ひつような処置しょちになる。

主おもなステルス艦かん一覧いちらん

DDG(X)のコンセプトイメージ

先進せんしん型がた閉囲マスト/センサーを廃はいしたサン・アントニオ級きゅうドック型がた輸送ゆそう揚陸ようりく艦かん「フォート・ローダーデール」

ラファイエット級きゅうフリゲート

デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級きゅうフリゲート

シンガポール

フォーミダブル級きゅうフリゲート

アダ級きゅうコルベット

駆逐くちく艦かん「タヒヤ・ミスル」

ベトナム

フリゲート「ディン・ティエン・ホアン」

マレーシア

レキウ級きゅうフリゲート

インドネシア

シグマ型がたコルベット「ディポネゴロ」級きゅう
ミサイル艇てい「KRI Klewang」（en）^{[注ちゅう 2]}

サウジアラビア

アル・リヤド級きゅうフリゲート

デンマーク

フィンランド

ハミナ級きゅうミサイル艇てい

朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこく

へサム級きゅうミサイル艇てい

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

^ 元々もともと、海中かいちゅうの抵抗ていこう軽減けいげんや艦内かんない容積ようせき拡張かくちょうのため船体せんたいに4°の傾斜けいしゃを持もたせた結果けっか、副次的ふくじてきにある程度ていどのステルス効果こうかが生うまれた。
^ 63mトリマランミサイル艇ていとしてインドネシアのNorth Sea Boats社しゃ（en）が開発かいはつしたが2012年ねん9月がつに炎上えんじょうし喪失そうしつした