スミレサイシン

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スミレサイシン
スミレサイシン、横山岳、滋賀県長浜市にて、2017年5月2日撮影
スミレサイシン、横山よこやま岳たけし、滋賀しが県けん長浜ながはま市しにて
2017年ねん5月がつ撮影さつえい
分類ぶんるい（APG IV）
界さかい : 植物しょくぶつ界かい Plantae
階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ Angiosperms
階級かいきゅうなし : 真正しんしょう双そう子葉しよう類るい Eudicots
階級かいきゅうなし : バラ上うえ類るい Superrosids
階級かいきゅうなし : バラ類るい Rosids
階級かいきゅうなし : マメ類るい Fabids
目め : キントラノオ目め Malpighiales
科か : スミレ科か Violaceae
属ぞく : スミレ属ぞく Viola
種たね : スミレサイシン
V. vaginata
学名がくめい
Viola vaginata Maxim. (1877)[1]
シノニム
和名わみょう
スミレサイシン
品種ひんしゅ
  • Viola vaginata Maxim. f. albescens Sugim. ウスジロスミレサイシン[3]
  • Viola vaginata Maxim. f. albiflora Honda シロバナスミレサイシン[4]
  • Viola vaginata Maxim. f. satomii (F.Maek. et T.Hashim.) E.Hama, nom. nud. サンインスミレサイシン[5]

スミレサイシン（菫すみれ細ほそ辛からし[6]、学名がくめい: Viola vaginata）は、スミレ科かスミレ属ぞくに分類ぶんるいされる多年草たねんそうの1種たね[7][8][9]。和名わみょうは花はな後ごの葉はの形状けいじょうがウマノスズクサ科かのウスバサイシンに似にているスミレであることに由来ゆらいする[7][10][11]。

分布ぶんぷと生育せいいく環境かんきょう[編集へんしゅう]

山地さんちの落葉らくよう樹林じゅりん下かに生育せいいくするスミレサイシン
分布ぶんぷ域いきの北部ほくぶのものは葉はが大おおきい（福島ふくしま県けん会津あいづ地方ちほう）

日本にっぽんの固有こゆう種しゅ[7]。北海道ほっかいどう南西なんせい部ぶ、本州ほんしゅう（山口やまぐち県けんまでの日本海にほんかい側がわ）、北日本きたにっぽんでは太平洋たいへいよう側がわにも[9]、四国しこく（徳島とくしま県けん）に分布ぶんぷする[11]。特とくに日本海にほんかい側がわの多おお雪ゆき地帯ちたいに生育せいいくする代表だいひょう的てきなスミレ[9]。日本海にほんかい側がわにスミレサイシンが分布ぶんぷするのに対たいして、太平洋たいへいよう側がわにはナガバノスミレサイシンが分布ぶんぷする[9]。

主おもにあまり標高ひょうこうが高たかくない山地さんちの半はん日陰ひかげの湿しめり気けのある[12]落葉樹らくようじゅ林下りんかに、大小だいしょうの集団しゅうだんを作つくって生育せいいくする[6][9]。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

多年生たねんせい草本そうほん[6]。地下茎ちかけいはワサビのように太ふとく[13]、横よこにはい、節ふしが多おおく[7]、密みつに接近せっきんする[8]。地上ちじょう茎くきが無ない無む茎くき性せいのスミレで、草丈くさたけは5 - 15センチメートル (cm) [9]。葉はは日本にっぽんのスミレの中なかでは最大さいだいで[8]、花はな期きにはあまり展開てんかいしていないことが多おおく[13]、基部きぶが表面ひょうめんに向むかって巻まき、花はなより遅おくれて開ひらき、数すう枚まいが叢生そうせいする[6][14]。葉はは両面りょうめんとも緑色みどりいろでやや厚あつく、ほとんど無む毛け[9]、三角さんかく状じょう広こう披針形ひしんけいで[6]、花時はなどきは長ながさ3 - 5 cm[15]、果はて時じにはさらに大おおきくなって長ながさ15 cmに達たっする[2]。葉はの先さきは尖とがり、基部きぶは心しん形がた[7]、縁えんには低ひくい鋸歯きょしがある[8]。分布ぶんぷ域いきの北部ほくぶでは一般いっぱんに葉はは大おおきく幅広はばひろになり、西部せいぶではより小ちいさく狭長きょうちょうになる[16]。葉柄ようへいは花期かきに長ながさ15 cmにもなる[8]。古ふるい托たく葉は[10]は葉柄ようへいから離はなれて根本こんぽんにつき[7]、膜質まくしつで褐色かっしょく[14]。

  • 左上：スミレサイシンの葉は心形（表面） 右上：スミレサイシンの葉（裏面） 左下：葉の形状が似ていて和名の由来となっているウスバサイシンの葉 右下：太平洋側にすみ分けるように分布しているナガバノスミレサイシンの葉は披針形
    左上ひだりうえ：スミレサイシンの葉はは心しん形がた（表面ひょうめん）
    右みぎ上じょう：スミレサイシンの葉は（裏面りめん）
    左下ひだりした：葉はの形状けいじょうが似にていて和名わみょうの由来ゆらいとなっているウスバサイシンの葉は
    右みぎ下か：太平洋たいへいよう側がわにすみ分わけるように分布ぶんぷしているナガバノスミレサイシンの葉はは披針形ひしんけい
  • 花より遅れて展開中の葉
    花はなより遅おくれて展開てんかい中ちゅうの葉は

花はなは淡あわ紫色むらさきいろで[7]、花弁はなびらは長ながさ15-20 mm、側がわ弁べんは無む毛け、唇くちびる弁べんに紫むらさき条じょうが入はいる[8]。距は短みじかく太ふとく袋ふくろ状じょうで長ながさ4-5 mm[7]。雌蕊めしべの柱頭ちゅうとうはくちばし状じょうに長ながく、花はな柱ばしらの上部じょうぶはカマキリの頭あたま形がた[9]。萼がく片へんは広こう披針形ひしんけいで[8]、付属ふぞく体たいには鋭するどい切きれ込こみがある[9]。花期かきは3月がつ[11]-6月がつ[7]。果実かじつは蒴果で熟じゅくした後のちに裂きれ開ひらけし、種子しゅしを飛とばす[10]。

  • 花は淡紫色、側弁は無毛、唇弁に紫条が入る
    花はなは淡あわ紫色むらさきいろ、側がわ弁べんは無む毛け、唇くちびる弁べんに紫むらさき条じょうが入はいる
  • 距は短く太く袋状で、萼片は広披針形
    距は短みじかく太ふとく袋ふくろ状じょうで、萼がく片へんは広こう披針形ひしんけい
  • 果実は蒴果で熟した後に裂開し、種子を飛ばす
    果実かじつは蒴果で熟じゅくした後のちに裂きれ開ひらけし、種子しゅしを飛とばす

利用りよう[編集へんしゅう]

花はなと葉はを食用しょくようとする。葉はは夏なつから秋あきまで利用りようでき、さっと茹ゆでて水みずにさらし、おひたし、和あえ物ものにしたり、生せいのまま天てんぷらにする[6]。花はなは熱湯ねっとうにくぐらせて、酢すの物もの、椀わん種しゅにしたり、生花せいかを料理りょうりのあしらいにする[6]。

地下茎ちかけいをすり下おろして[2]、または粉こなにしてとろろのように料理りょうりして食用しょくようされる地方ちほうがある[10]。そのため、本ほん種たねを「トロロスミレ」とよぶ地方ちほうがある[2]。

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

スミレサイシン類るいに分類ぶんるいされる[9]。以下いかの品種ひんしゅが知しられている。

  • ウスジロスミレサイシン（薄白うすじろ菫すみれ細ほそ辛からし、学名がくめい：Viola vaginata Maxim. f. albescens Sugim.[3]）
白しろ花はなの品種ひんしゅのシロバナスミレサイシン
  • シロバナスミレサイシン（白しろ花はな菫すみれ細ほそ辛からし、学名がくめい：Viola vaginata Maxim. f. albiflora Honda[4]） - 白しろ花はなの品種ひんしゅ[9]。
  • サンインスミレサイシン（山陰さんいん菫すみれ細ほそ辛からし、学名がくめい：Viola vaginata Maxim. f. satomii (F.Maek. et T.Hashim.) E.Hama, nom. nud.[5]） - 葉はが細長ほそながくなるもので[9]、ナガバノスミレサイシンよりも先端せんたんがさらに細ほそく尖とがる[13]。北陸ほくりくより西にしの[13]、山陰さんいん地方ちほうに多おおい[9]。山陰さんいん地方ちほうのものを変種へんしゅ var. satomii として扱あつかう見解けんかいもある[17]が、寺尾てらお (1977)の研究けんきゅうによれば、スミレサイシンの地理ちり的てき変異へんいは連続れんぞく的てきで、種たねとしては均一きんいつなものとしている[16]。

種たねの保全ほぜん状じょう況きょう評価ひょうか[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは国くにレベルの環境省かんきょうしょうによるレッドリストの指定していはないが[18]、以下いかの都道府県とどうふけんでレッドリストの指定していを受うけている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “Viola vaginata Maxim.　スミレサイシン（標準ひょうじゅん）”. BG Plants 和名わみょう−学名がくめいインデックス（YList）. 2023年ねん5月がつ5日にち閲覧えつらん。
  2. ^ a b c d 門田かどた裕一ひろいち (2016)「スミレ科か」『改訂かいてい新版しんぱん 日本にっぽんの野生やせい植物しょくぶつ 3』p.215
  3. ^ a b 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “ウスジロスミレサイシン”. BG Plants 和名わみょう-学名がくめいインデックス（YList）. 2020年ねん5月がつ5日にち閲覧えつらん。
  4. ^ a b 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “シロバナスミレサイシン”. BG Plants 和名わみょう-学名がくめいインデックス（YList）. 2020年ねん5月がつ5日にち閲覧えつらん。
  5. ^ a b 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “サンインスミレサイシン（シノニム）”. BG Plants 和名わみょう-学名がくめいインデックス（YList）. 2020年ねん5月がつ5日にち閲覧えつらん。
  6. ^ a b c d e f g 高橋たかはし監修かんしゅう (2003), 152頁ぺーじ
  7. ^ a b c d e f g h i 林はやし (2009)、343頁ぺーじ
  8. ^ a b c d e f g 佐竹さたけ (1982)、249頁ぺーじ
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m いがり (2015)、110頁ぺーじ
  10. ^ a b c d 牧野まきの (1982)、344頁ぺーじ
  11. ^ a b c 林はやし (2014)、50頁ぺーじ
  12. ^ いがり (2015)、116頁ぺーじ
  13. ^ a b c d いがり (2015)、111頁ぺーじ
  14. ^ a b 小野おの (1987)、363頁ぺーじ
  15. ^ 林はやし (2014)、51頁ぺーじ
  16. ^ a b 寺尾てらお (1977)、63頁ぺーじ
  17. ^ 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “サンインスミレサイシン（標準ひょうじゅん）”. BG Plants 和名わみょう-学名がくめいインデックス（YList）. 2020年ねん5月がつ6日にち閲覧えつらん。
  18. ^ “環境省かんきょうしょうレッドリスト2019の公表こうひょうについて”. 環境省かんきょうしょう. 2020年ねん5月がつ5日にち閲覧えつらん。
  19. ^ “徳島とくしま県けん版ばんレッドデータブック（レッドリスト）”. 徳島とくしま県けん. 2020年ねん5月がつ5日にち閲覧えつらん。
  20. ^ “レッドデータブックあいち2020・植物しょくぶつ編へん3” (PDF). 愛知あいち県けん. pp. 312. 2020年ねん5月がつ5日にち閲覧えつらん。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • いがりまさし『増補ぞうほ改訂かいてい日本にっぽんのスミレ』山やまと溪谷社けいこくしゃ〈山やま溪けいハンディー図鑑ずかん〉、2015年ねん1月がつ15日にち。ISBN 9784635070065。 
  • 大橋おおはし広ひろ好こう・門田かどた裕一ひろいち・木原きはら浩ひろし他た編へん『改訂かいてい新版しんぱん 日本にっぽんの野生やせい植物しょくぶつ 3』、2016年ねん、平凡社へいぼんしゃ
  • 小野おの幹雄みきお、林はやし弥栄やさか（監修かんしゅう） 編へん『原色げんしょく高山こうざん植物しょくぶつ大だい図鑑ずかん』北きた隆たかし館かん、1987年ねん3月がつ30日にち。ISBN 4832600079。 
  • 寺尾てらお博ひろし「スミレサイシンとナガバノスミレサイシンの葉は形がたの地理ちり的てき変異へんい」『植物しょくぶつ分類ぶんるい，地理ちり』第だい28巻かん、日本にっぽん植物しょくぶつ分類ぶんるい学会がっかい、1977年ねん、58-64頁ぺーじ、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00003217441、NAID 110003763084。 
  • 佐竹さたけ義よし輔、大井おおい次じ三郎さぶろう、北村きたむら四郎しろう、亘理わたり俊次しゅんじ、冨とみ成忠しげただ夫おっと 編へん『日本にっぽんの野生やせい植物しょくぶつ 草本そうほんII離はなれ弁べん花はな類るい』平凡社へいぼんしゃ、1982年ねん3月がつ17日にち。ISBN 458253502X。 
  • 高橋たかはし秀男ひでお監修かんしゅう 田中たなかつとむ・松原まつばら渓けい著ちょ『日本にっぽんの山菜さんさい』学習研究社がくしゅうけんきゅうしゃ〈フィールドベスト図鑑ずかん13〉、2003年ねん4月がつ1日にち、152頁ぺーじ。ISBN 4-05-401881-5。 
  • 林はやし弥栄やさか『日本にっぽんの野草やそう』山やまと溪谷社けいこくしゃ〈山やま溪けいカラー名鑑めいかん〉、2009年ねん10月がつ。ISBN 9784635090421。 
  • 林はやし弥栄やさか『野草やそう 見分みわけのポイント図鑑ずかん』（新装しんそう）講談社こうだんしゃ、2014年ねん9月がつ10日とおか。ISBN 978-4062191272。 
  • 牧野まきの富太郎とみたろう、本田ほんだ正次まさつぐ『原色げんしょく牧野ぼくや植物しょくぶつ大図おおず鑑あきら』北きた隆たかし館かん、1982年ねん7月がつ。ASIN B000J6X3ZE。 NCID BN00811290。全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:85032603。https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001728467-00。 

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