ヌーリスターンぐん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヌーリスターンから転送てんそう
ヌーリスターンぐん
はなされる地域ちいきヌーリスターンしゅう
言語げんご系統けいとうインド・ヨーロッパ語族ごぞく
下位かい言語げんご
Glottolognuri1243[1]

ヌーリスターンぐんNuristan)、またはカーフィルぐんKafir)とは、パキスタンからアフガニスタンにかけて分布ぶんぷする言語げんごのグループで、インド・ヨーロッパ語族ごぞくインド・イランぞくする。

概説がいせつ[編集へんしゅう]

ヌーリスターンぐん話者わしゃは、パキスタン北西ほくせいからアフガニスタン東部とうぶヒンドゥークシュ山脈さんみゃくおく孤立こりつして散在さんざいするむら々に分布ぶんぷしている。これら村落そんらく近代きんだい国家こっか中央ちゅうおう政府せいふからの統制とうせいをいまだけておらず、欧米おうべい言語げんご学者がくしゃ調査ちょうさおよんでいなかった。したがって文献ぶんけんはじめてあらわれたのは19世紀せいき比較的ひかくてきおそい。推定すいていによれば話者わしゃ人口じんこう非常ひじょうすくなく、危機きき言語げんごとしてあつかわれる。

比較ひかく言語げんごがくてき位置いちづけについては、近年きんねんではインド・イランない独立どくりつしたいちグループとする見解けんかい主流しゅりゅうであるが、一方いっぽう支持しじすくないながらも、インドぐんふくめるせつや、イランぐんぞくするがインドぐんぞくするダルドぐんから多大ただい影響えいきょうけて変容へんようしたとするせつもある。いずれにせよ、ヌーリスターンぐんしょ民族みんぞく現住げんじゅういたのは相当そうとう過去かこのことであり、またインドとはことなりパンジャーブ地方ちほうへははいらなかったというてんあらそいはない。

名称めいしょう[編集へんしゅう]

ヌーリスターンは1890年代ねんだいまでペルシアで「信仰しんこうしゃ」を意味いみするカーフィリスタン英語えいごばんばれていた。これは当地とうち住民じゅうみん独自どくじ多神教たしんきょうアニミズム)を信仰しんこうしていたためで、言語げんごもこれにならってカーフィルぐんとされていた。しかしアブドゥッラフマーン・ハーン征服せいふくされて強制きょうせいてき改宗かいしゅうさせられ、住民じゅうみん一部いちぶイスラーム受容じゅようすると、異教いきょうみんがイスラームのひかりらされたとしてヌーリスターン(ひかり)とばれるようになり、カーフィルぐん差別さべつてきだとしてヌーリスターンぐんあらためられた。

ヌーリスターンぐんぞくする言語げんご[編集へんしゅう]

ストランドは、ヌーリスタンぐんには大別たいべつして5言語げんご存在そんざいし、それぞれ数種類すうしゅるい方言ほうげんをもつとしている。おも方言ほうげんにはカタヴァリ英語えいごばんカンヴィリ英語えいごばんヴァイアラえい: Vai-ala)などがあり、パキスタンがわのヌーリスタンではカンヴィリ話者わしゃだい多数たすうである。これら方言ほうげんとはダルドとの関連かんれん指摘してきされているが、言語げんごがくてきというよりは地理ちりてき関連かんれんであろう。

言語げんご多様たようせい、チトラル[編集へんしゅう]

ノルウェーじん言語げんご学者がくしゃゲオルク・モルゲンスティールネによれば、チトラル言語げんご多様たようせいという意味いみ世界一せかいいちゆたかな地域ちいきである。主要しゅよう言語げんごコワールであるが、そのにカラーシャ(チトラルのカラシュぞくカラシュ、ヌーリスタンのカラシュぞくワイガリ)、パルーラダメーリーガワール・バティ英語えいごばん、ヌーリスターンぐんイドガブルシャスキーグジャールワヒキルギスペルシアパシュトーなどがはなされている。うえにあげた言語げんご表記ひょうきほう確立かくりつしていないため、手紙てがみなどにはウルドゥーやペルシアもちいられる。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Khowar English Dictionary (by Mohammad Ismail Sloan, 1981) (published in Pakistan)
  • Decker, Kendall D. (1992) Languages of Chitral http://www.ethnologue.com/show_work.asp?id=32850
  • Morgenstierne, Georg (1926) Report on a Linguistic Mission to Afghanistan. Instituttet for Sammenlignende Kulturforskning, Serie C I-2. Oslo.
  • Jettmar, Karl (1985) Religions of the Hindu Kush ISBN 0856681636
  • J. P. Mallory, In Search of the Indo-Europeans: Language, Archaeology and Myth, Thames and Hudson, 1989.
  • James P. Mallory & Douglas Q. Adams, "Indo-Iranian Languages", Encyclopedia of Indo-European Culture, Fitzroy Dearborn, 1997.
  • エスノローグ(すべ英語えいご

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Nuristani”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/nuri1243