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ヤグノブ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヤグノブ
yaɣnobī́ zivók
яғнобӣ зивок
はなされるくに タジキスタンの旗 タジキスタン
地域ちいき ソグドしゅう
話者わしゃすう 1まん2000にん(2004ねん[1]
言語げんご系統けいとう
表記ひょうき体系たいけい キリル文字もじ
アラビア文字もじ
ラテン文字もじ
言語げんごコード
ISO 639-3 yai
消滅しょうめつ危険きけん評価ひょうか
Definitely endangered (Moseley 2010)
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ヤグノブ話者わしゃ分布ぶんぷ

ヤグノブ(ヤグノブご)はインド・ヨーロッパ語族ごぞくインド・イランイランぐんぞくする言語げんごである。ヤグノビともばれる。ヤグノブがわ英語えいごばん上流じょうりゅうタジキスタンザラフション英語えいごばん地域ちいきにあるヤグノブ渓谷けいこく英語えいごばんはなされている。ヤグノブソグド直系ちょっけい言語げんごかんがえられていて、学術がくじゅつてきには現代げんだいソグドともばれる[2]

ヤグノブ話者わしゃ共同きょうどうたいはいくつかにけられ、ヤグノブ渓谷けいこく英語えいごばん以外いがいにもザファロボド英語えいごばん地域ちいきやタジキスタンの首都しゅとドゥシャンベひとしでもはなされている。

大半たいはんのヤグノブ話者わしゃタジクはな言語げんご話者わしゃ家族かぞくとの日常にちじょう会話かいわのほとんどではヤグノブはなし、仕事しごとにおいてはタジクはなす。

ヤグノブには東部とうぶ方言ほうげん西部せいぶ方言ほうげんふたつの主要しゅよう方言ほうげんがある。さらに、中間ちゅうかん位置いちする方言ほうげん存在そんざいし、東西とうざいりょう方言ほうげん特徴とくちょうゆうする。

表記ひょうきほう

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ヤグノブは1990年代ねんだいまで言葉ことばとしてもちいられていない[3]とされているが、アンドレエフによると1928ねんまではヤグノブじんムッラーによりアラビア文字もじ表記ひょうきされていた。その目的もくてきおもに、タジクじんから情報じょうほうかくすことであった[4]

  • 学者がくしゃにより拡張かくちょうされたラテン文字もじ記述きじゅつされたもの

a (á), ā (ā́), b, č, d, e (é), f, g, ɣ, h, ḥ, i (í), ī (ī́), ǰ, k, q, l, m (m̃), n (ñ), o (ó), p, r, s, š, t, u (ú), ū (ū́), ʏ (ʏ́), v, w (u̯), x, x°, y, z, ž, ع

a (á), b, č, d, e (é), ĕ (ĕ́), ẹ (ẹ́), ẹ̆ (ẹ̆́), ə (ə́), f, g, ɣ, h, x̣, i (í), ĭ (ĭ́), ī (ī́), ǰ, k, q, l, m (m̃), n (ñ), o (ó), ọ (ọ́) p, r, s, š, t, u (ú), ŭ (ŭ́), ı̥ (í̥), v, u̯, x, x°, y, z, ž, ع

最近さいきん、タジク科学かがくいんのサイフィッディーン・ミールゾゾダは改変かいへんしたタジクのアルファベット英語えいごばんをヤグノブ表記ひょうきもちいた。しかし、長短ちょうたんやbとv、アクセントがしめされていないなどヤグノブ表記ひょうきにはてきしていない。下記かきはその表記ひょうきほうによるもので()ないはラテン文字もじとの対応たいおうである。

А а (a) Б б (b) В в (v) Ԝ ԝ (w) Г г (g) Ғ ғ (ɣ) Д д (d) Е е (e/ye) Ё ё (yo) Ж ж (ž) З з (z) И и (i, ī) Ӣ ӣ (ī) й (y) К к (k) Қ қ (q) Л л (l) М м (m) Н н (n) О о (o) П п (p) Р р (r) С с (s) Т т (t) У у (u, ū, ʏ) Ӯ ӯ (ū, ʏ) Ф ф (f) Х х (x) Хԝ хԝ (x°) Ҳ ҳ (h, ḥ) Ч ч (č) Ҷ ҷ (ǰ) Ш ш (š) Ъ ъ (ع) Э э (e) Ю ю (yu, yū, yʏ) Я я (ya)


キリル文字もじ

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А а Б б В в Ԝ ԝ Г г Ғ ғ
Д д Е е Ё ё Ж ж З з И и
Ӣ ӣ Й й К к Қ қ Л л М м
Н н О о П п Р р С с Т т
У у Ӯ ӯ Ф ф Х х Ҳ ҳ Ч ч
Ҷ ҷ Ш ш Ъ ъ Э э Ю ю Я я


音韻おんいん

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母音ぼいん

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たん母音ぼいん:  i [i-ɪ-e], a [(æ-)a(-ɑ)], u [(y-)u-ʊ-o] (アクセント音節おんせつ直前ちょくぜんですべての母音ぼいんは [ə] になりうる。)

ちょう母音ぼいん:  ī [i:], e [ɛ:-e:], ā [(a:)-ɑ:], o [(ɒ:-)ɔ:(-o:-u:)], ū [u:], ʏ [(u:-)y:(-i:)]

重母音じゅうぼいん: ay [ai̯] (ay固有こゆう単語たんごでは西部せいぶ方言ほうげんにしかあらわれない。東部とうぶ方言ほうげんでは借用しゃくようのぞいてeとなる。), oy [ɔ:i̯], uy [ʊi̯], ūy [u:i̯], ʏy [y:i̯], iy [ɪi̯]; ow [ɔ:u̯], aw [au̯]


子音しいん

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破裂はれつおん; /p/, /b/, /t/, /d/, /k/, /ɡ/, /q/ (語末ごまつぜんした母音ぼいん前後ぜんご/k//ɡ/はそれぞれ口蓋こうがいして[c][ɟ]になる。)

摩擦音まさつおん: /f/, /v/, /s/, /z/, //ʃʲ// š, //ʒʲ// ž, /χかい/ x, /ʁ/ ɣ, /ʷ/ , /h/ ([ɦ]母音ぼいんあるいはゆうこえ子音しいんあいだおととしてあらわれる。), /ħ/ , /ʕ/ ع

やぶおと: // č, // ǰ

鼻音びおん: /m/, /n/ (両方りょうほうともおととして/k, ɡ//f, v/まえでそれぞれ/ŋ//ɱ/となる。)

ふるえおん: /r/

側面そくめん接近せっきんおん: /l/

接近せっきんおん: /βべーた̞/ w, /j/ y

調音ちょうおん部位ぶい りょう唇音しんおん くちびる歯音しおん 歯茎はぐきおん 後部こうぶ歯茎はぐきおん
あるいはかた口蓋こうがいおん
軟口蓋なんこうがいおん 口蓋垂こうがいすいおんあるいは
唇音しんおんした口蓋垂こうがいすいおん
咽頭いんとうおん 声門せいもんおん
調音ちょうおん方法ほうほう
鼻音びおん    [m]        [n]          
破裂はれつおん [p] [b] [t] [d] [c] [ɟ] [k] [ɡ] [q]     
やぶおと [tʃ] [dʒ]
摩擦音まさつおん [f] [v] [s] [z] [ʃʲ] [ʒʲ] [χかい] [χかいʷ] [ʁ] [ħ] [ʕ] [h]
接近せっきんおん    [βべーた̞]    [j]
ふるえおん    [r]
側面そくめん接近せっきんおん    [l]  

無声むせい子音しいんゆうこえされたのち、すべてのゆうごえ子音しいん無声音むせいおん発音はつおんされる。また、同化どうかにより無声むせい子音しいんゆうこえされる。qゆうこえされるとɣとなり、[ɢ]とはならない。

b, g, h, , ǰ, q, l , عあらわれるのはほとんどが借用しゃくようであり、ヤグノブ固有こゆう単語たんごあらわれるのはまれで、大半たいはん擬声語ぎせいごあらわれる。

形態けいたいろん

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西部せいぶ方言ほうげん西にし東部とうぶ方言ほうげんひがし東西とうざい中間ちゅうかん位置いちする方言ほうげんなかりゃくす。

名詞めいし

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かく語尾ごび

かく 語幹ごかんまつ子音しいん 語幹ごかんまつa以外いがい母音ぼいん 語幹ごかんまつa
単数たんすうじきかく(主格しゅかく) -a
単数たんすうはすかく -i -y -ay (西にし), -e (ひがし)
複数ふくすうじきかく(主格しゅかく) -t -t -ot
複数ふくすうはすかく -ti -ti -oti

れい

  • kat : 単数たんすうはすかく káti, 複数ふくすう katt, 複数ふくすうはすかく kátti
  • mayn (西にし) / men (ひがし) : 単数たんすうはすかく máyni/méni, 複数ふくすう maynt/ment, 複数ふくすうはすかく máynti/ménti
  • póda : 単数たんすうはすかく póday/póde, 複数ふくすう pódot, 複数ふくすうはすかく pódoti
  • čalló : 単数たんすうはすかく čallóy, 複数ふくすう čallót, 複数ふくすうはすかく čallóti
  • zindagī́ : 単数たんすうはすかく zindagī́y, 複数ふくすう zindagī́t, 複数ふくすうはすかく zindagī́ti
  • mórti : 単数たんすうはすかく mórtiy, 複数ふくすう mórtit, 複数ふくすうはすかく mórtiti

タジク由来ゆらい言葉ことばにはイゾファ(エザーフェ)がみられる。

代名詞だいめいし

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人称にんしょう 単数たんすう主格しゅかく 単数たんすうはすかく 単数たんすうぜんせっ 複数ふくすう主格しゅかく 複数ふくすうはすかく 複数ふくすうぜんせっ
1人ひとりしょう man man -(i)m mox mox -(i)mox
2人ふたりしょう tu taw -(i)t šumóx šumóx -šint
3人称にんしょう ax, áwi, (aw), íti, (īd) -(i)š áxtit, íštit áwtiti, ítiti -šint

2人ふたりしょう複数ふくすうšumóx を2人称にんしょう単数たんすう敬称けいしょうとしてももちいられる。

数詞すうし

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東部とうぶ方言ほうげん 西部せいぶ方言ほうげん タジクからの借用しゃくよう
1 ī ī yak, yag, ya
2 du
3 saráy tⁱráy se, say
4 tafór tᵘfór, tⁱfór čor
5 panč panč panǰ
6 uxš uxš šiš, šaš
7 avd aft haft
8 ašt ašt hašt
9 nau̯ nau̯ nuʰ
10 das das daʰ
11 das ī das ī yozdáʰ
12 das dū das dʏ dᵘwozdáʰ
13 das saráy das tⁱráy senzdáʰ
14 das tafór das tᵘfór / tⁱfór čordáʰ
15 das panč das panč ponzdáʰ
16 das uxš das uxš šonzdáʰ
17 das avd das aft habdáʰ, havdáʰ
18 das ašt das ašt haždáʰ
19 das nau̯ das nau̯ nūzdáʰ
20 bīst
30 bī́st-at das bī́st-at das
40 dū bīst dʏ bīst čil
50 dū nī́ma bīst dʏ nī́ma bīst pinǰóʰ, panǰóʰ
60 saráy bīst tⁱráy bīst šast
70 saráy nī́ma bīst tⁱráy nī́ma bīst, tⁱráy bī́st-u das haftód
80 tafór bīst tᵘfór / tⁱfór bīst haštód
90 tafór nī́ma bīst tᵘfór / tⁱfór nī́ma bīst navád
100 sad
1000 hazór

動詞どうし

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現在げんざい人称にんしょう語尾ごび

人称にんしょう 単数たんすう 複数ふくすう
1人ひとりしょう -omišt -īmišt
2人ふたりしょう -īšt -tišt (西にしなか), -sišt (ひがし)
3人称にんしょう -tišt (西にし), -či (ひがしなか) -ošt

過去かこ人称にんしょう語尾ごび(動詞どうし冒頭ぼうとうaをつける)

人称にんしょう 単数たんすう 複数ふくすう
1人ひとりしょう a- -im a- -om (西にし), a- -īm (ひがしなか)
2人ふたりしょう a- a- -ti (西にしなか), a- -si (ひがし)
3人称にんしょう a- a- -or

過去かこ人称にんしょう語尾ごび-išt (母音ぼいんのちには-štける。 ただし -or+išt なら -ošt) をつけると継続けいぞくしょう形成けいせいする。

現在げんざい分詞ぶんし動詞どうし語幹ごかん-naける。過去かこ分詞ぶんし(あるいは完了かんりょう分詞ぶんし)は動詞どうし語幹ごかん-taをつける。

不定ふてい動詞どうし語幹ごかん-akをつけることにより形成けいせいされる。

否定ひてい接頭せっとうna-形成けいせいされ、 過去かこ時制じせいでは動詞どうし冒頭ぼうとうaむすびついて、nē-変化へんかする。

コピュラ

人称にんしょう 単数たんすう 複数ふくすう
1人ひとりしょう īm om
2人ふたりしょう išt ot (西にしなか), os (ひがし)
3人称にんしょう ast, -x, xast, ásti, xásti or
タジキスタンの学校がっこうかよ年齢ねんれいのヤグノブ話者わしゃ子供こどもたち

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Yaghnobi at Ethnologue (18th ed., 2015)
  2. ^ Bielmeier. R. Yaghnobi in Encyclopedia Iranica
  3. ^ The Cyrillic en:Tajik alphabet-based script was invented by Sayfiddīn Mīrzozoda in the 1990s.
  4. ^ М. С. Андреев, Материалы по этнографии Ягноба, Душанбе (Дониш) 1970, pp. 38–39

参考さんこう文献ぶんけん

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(M. S. Andrejev, Je. M. Peščereva, Jagnobskije teksty s priloženijem jagnobsko-russkogo slovarja, Moskva – Leningrad 1957) (in Russian)

  • М. Н. Боголюбов, Ягнобский (новосогдийский) язык. Исследование и материалы. Автореферат на соискание ученой степени доктора филологических наук, Ленинград 1956

(M. N.Bogoljubov, Jagnobskij /novosogdijskij/ jazyk. Issledovanija i materialy. Avtoreferat na soiskanije učenoj stepeni doktora filologičeskix nauk, Leningrad 1956) (in Russian)

(M. N. Bogoljubov: Jagnobskij jazyk. In: V. V. Vinogradov (ed.): Jazyki narodov SSSR. Tom pervyj: Indojevropejskije jazyki. Moskva, 1966, p. 342–361) (in Russian)

  • С. Мирзозода, Яғнобӣ зивок, Душанбе 1998.

(S. Mirzozoda, Yaɣnobī zivok, Dušanbe 1998) (in Tajik)

  • С. Мирзозода, Луғати яғнобӣ – тоҷикӣ, Душанбе 2002.

(S. Mirzozoda, Luɣat-i yaɣnobī – tojikī, Dušanbe 2002) (in Tajik)

  • Ľ. Novák: Jaghnóbsko-český slovník s přehledem jaghnóbské gramatiky. Яғнобӣ-чехӣ луғат яғнобӣ зивоки дастури феҳрастипӣ. Praha (: Filozofická fakulta Univerzity Karlovy v Praze), 2010. ISBN 978-80-7308-337-3

(Ľ. Novák: Yaghnobi-Czech Dictionary with an Outline of Yaghnobi Grammar. Praha 2010) (in Czech)

(A. L. Xromov, Jagnobskij jazyk, Moskva 1972) (in Russian)

(A. L. Xromov, Jagnobskij jazyk. In. V. S. Rastorgujeva (ed.): Osnovy iranskogo jazykoznanija. Novoiranskije jazyki II. – Vostočnaja gruppa. Moskva 1987, p. 644–701.) (in Russian)

外部がいぶリンク

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