パルスオキシメーター

パルスオキシメーター (英えい: pulse oximeter) とは、皮膚ひふを通とおして動脈どうみゃく血ち酸素さんそ飽和ほうわ度ど（SpO2）と脈拍みゃくはく数かずを測定そくていするための装置そうち。赤あかい光ひかりの出でる装置そうち（プローブ）で指ゆびをはさむことで測定そくていする。

検知けんち器き（プローブ）を指先ゆびさき（や耳みみたぶなど）に装着そうちゃくし、非ひ侵おかせ襲かさね的てきな方法ほうほうで（簡単かんたんに言いうと、切きったり刺さしたりせずに）、脈拍みゃくはく数すうと経けい皮がわ的てき動脈血どうみゃくけつの酸素さんそ飽和ほうわ度ど (SpO₂) をリアルタイムでモニター（計測けいそく・表示ひょうじ）するための医療いりょう機器ききである。モニター結果けっかを内蔵ないぞうメモリーに記録きろくできるタイプもある。

概要がいよう

体からだに針はりを刺さしたり切きったりすることなく動脈血どうみゃくけつの酸素さんそ飽和ほうわ度どを簡便かんべんに計測けいそくできる装置そうちである。麻酔ますい管理かんり、手術しゅじゅつ時じ、ICUなどで患者かんじゃの状態じょうたいをモニタするために用もちいられるほか、在宅ざいたく酸素さんそ療法りょうほうの患者かんじゃ指導しどうなどにも用もちいられている。体からだに針はりを刺さしたり切きったりすることなくSpO₂の測定そくていして心肺しんぱい機能きのうが常時じょうじ正常せいじょうであるかを知しる事ことができるため、予備よび的てきな健康けんこう診断しんだん手法しゅほうとして利用りようすることも可能かのうである。 睡眠すいみん時じを通とおしてデータを記録きろくできるタイプのものは、就寝しゅうしん中ちゅうに呼吸こきゅうが停止ていししてSpO₂が低下ていかしてしまう睡眠すいみん時じ無む呼吸こきゅう症候群しょうこうぐんのスクリーニング診断しんだんにも利用りようされる。2020年ねん以降いこうのコロナ禍かで新型しんがたコロナウイルスに感染かんせんし自宅じたく療養りょうようとなった人々ひとびとに対たいし、療養りょうよう中ちゅうの健康けんこう状態じょうたいを確認かくにんするためにパルスオキシメーターの貸与たいよを行おこなっている自治体じちたいも多おおい（本人ほんにんがこの装置そうちをつかい自分じぶんで数値すうちを確認かくにんし、もし担当たんとう者しゃから電話でんわがあれば伝つたえたり、あるいは危機きき的てきな数値すうちが表示ひょうじされたら自身じしんで自発じはつ的てきに救急きゅうきゅう車しゃを呼よぶためなどの目的もくてきで使つかわれている）。

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  パルスオキシメーター
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  パルスオキシメーター
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  プローブの赤あかい光ひかり
• パルスオキシメーターの使用しよう（動画どうが）

スポーツのトレーニングの現場げんばなどでは、運動うんどう（身体しんたい活動かつどう）が妥当だとうな範囲はんいにあるか過度かどになっているか、を判断はんだんするのに小型こがた・腕時計うでどけい型がたのものが利用りようされることもある。近年きんねんでは登山とざん者もの（クライマー）が高山こうざんで活動かつどうする場合ばあいに、高度こうど順化じゅんかがうまくいっているかどうかの目安めやすとして携帯けいたい型がたパルスオキシメータを利用りようする例れいもある。

国際こくさい標準ひょうじゅん化か機構きこう (ISO) では、パルスオキシメータの標準ひょうじゅん規格きかくとして、ISO 80601-2-61:2011「Medical electrical equipment -- Part 2-61: Particular requirements for basic safety and essential performance of pulse oximeter equipment 医用いよう電気でんき機器きき - パート2-61：パルスオキシメータ機器ききの基礎きそ安全あんぜんおよび基本きほん性能せいのうの個別こべつ要求ようきゅう事項じこう」を規定きていしている。

発明はつめい者しゃ

日本光電工業にほんこうでんこうぎょう株式会社かぶしきがいしゃの青柳あおやぎ卓雄たくお、岸きし道男みちお、田貫たぬき甚之助じんのすけによって昭和しょうわ49年ねん（1974年ねん）に発明はつめいされたものである。1974年ねん3月がつ29日にち、日本光電工業にほんこうでんこうぎょう株式会社かぶしきがいしゃの青柳あおやぎ卓雄たくおらにより、パルスオキシメーターの原理げんりに関かんする特許とっきょ「光学こうがく式しき血液けつえき測定そくてい装置そうち」が出願しゅつがんされ、それに遅おくれること1ヶ月かげつ弱じゃくの1974年ねん4月がつ24日にち、パルスオキシメーターの開発かいはつを独自どくじに進すすめていたミノルタカメラ（現げんコニカミノルタ）より、「オキシメーター」の特許とっきょ出願しゅつがんがなされた。これらの発明はつめいは、後のちに全ぜん世界せかいの患者かんじゃの安全あんぜんに計はかり知しれないほど大おおきな進歩しんぽをもたらした。

原理げんり

メカニズム。発光はっこう部ぶ（上うえ）、指先ゆびさきを透過とうかする赤あかい光ひかり（波線はせん）、光ひかりセンサー（下方かほう）。低ていSpO₂状態じょうたい（左ひだり）と高こうSpO₂状態じょうたい（右みぎ）の比較ひかく。

プローブは発光はっこう部ぶと受光じゅこう部ぶ（センサー）で構成こうせいされている。発光はっこう部ぶは赤色あかいろ光こう（波長はちょう約やく660ナノメートル (nm)）と赤あか外がい光こう（波長はちょう約やく940nm）を発はっし、これらの光ひかりが指先ゆびさき等とうを透過とうかしたもの（または反射はんしゃしたもの）を受光じゅこう部ぶ（センサー）で測定そくていする。

赤あか-赤外線せきがいせん波長はちょうにおける酸素さんそ化かヘモグロビン（HbO2）と脱だつ酸素さんそ化かヘモグロビン（Hb）の吸収きゅうしゅうスペクトル

血液けつえき中ちゅうのヘモグロビンは酸素さんそとの結合けつごうの有無うむにより赤色あかいろ光こう（脱だつ酸素さんそ化かヘモグロビン(RHb)がよく吸収きゅうしゅうする）と赤あか外がい光こう（酸素さんそ化かヘモグロビン(O₂Hb)がよく吸収きゅうしゅうする）の吸光度どが異ことなるため、センサーで透過とうか光こうや反射はんしゃ光こうを測定そくていして分析ぶんせきすることによりSpO₂を測定そくていすることができる。透過とうか光こう･反射はんしゃ光こう全体ぜんたいのうち動脈血どうみゃくけつを透過とうかしたものと静脈じょうみゃく血ちや軟部組織そしきを透過とうかしたものの区別くべつは、拍はく動どうのある成分せいぶんが動脈血どうみゃくけつによるものであることを利用りようする。このため、動脈どうみゃくの拍はく動どうが検知けんちできない状態じょうたいにおいては測定そくていができない。

また、拍はく動どうのある脈みゃく波は成分せいぶんより脈拍みゃくはく数すうを計数けいすうしている。なお、以上いじょうの原理げんりより明あきらかなように、これらがパルスオキシメーターで検知けんちできているということは、パルスオキシメーターのプローブが取とり付つけられている位置いち（指先ゆびさきのような末梢まっしょう）において血行けっこうが保たもたれていることも意味いみする。

歴史れきしと種類しゅるい

1977年ねんにミノルタカメラ（現げん：コニカミノルタセンシング）の山西さんせい昭夫あきおらによって、世界せかい初はつの指先ゆびさき測定そくていタイプのパルスオキシメータが商品しょうひん化かされた。ミノルタカメラがアメリカにパルスオキシメーターを持もち込こみ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのバイオクス社しゃ・ネルコア社しゃがその技術ぎじゅつを改良かいりょうし、麻酔ますい中ちゅうのモニターとして、パルスオキシメーターがまずアメリカで1980年代ねんだいに定着ていちゃくした。

初期しょきのパルスオキシメーターは、据すえ置おき型がた（スタンドアローン）で、患者かんじゃのベッドサイドでモニタリングできるものが主流しゅりゅうであった。1990年代ねんだいになって、ヨーロッパで小型こがたでハンドヘルドタイプのものが開発かいはつされた。

日本にっぽんでは、ミノルタカメラが1992年ねんのハンドヘルドタイプのPULSOX-5を発売はつばいしている。1993年ねんに、久保田くぼた博ひろし南みなみにより小型こがた化か・ポータブルタイプの必要ひつよう性せいが提唱ていしょうされた。1997年ねんに、コニカミノルタセンシングで腕時計うでどけいタイプのものが商品しょうひん化かされ、同どう時期じき以降いこう、センサと本体ほんたいを一体化いったいかして、手指しゅしにつけられる超ちょう小型こがたの装置そうちが主流しゅりゅうとなった。

利用りよう

同どう機器ききでは、プローブの取とり付つけも簡単かんたんで、また無む侵おかせ襲かさねであるため、近年きんねんではコンビニエンスストア等ひとしに、診断しんだんと同どう機器ききの貸かし出だしを求もとめる申込もうしこみ書しょが置おかれ、自宅じたくに機器ききを宅配たくはい便びんにて配達はいたつしてもらい、同封どうふうの説明せつめい書しょに従したがって機器ききを取とり付つけて測定そくてい、これを所定しょていの医院いいんに宅配たくはい便びんで返送へんそうする事ことで診断しんだんを行おこなう有料ゆうりょうサービスも一部いちぶ地域ちいきで始はじまっている。2000年ねん頃ころより、睡眠すいみん時じ無む呼吸こきゅう症候群しょうこうぐんによる電車でんしゃの操作そうさミス事故じこや交通こうつう事故じこの報道ほうどうにより、同どう症状しょうじょうが社会しゃかい的てきに認知にんちされるにつれ、気きにはなっているが検査けんさ入院にゅういんをしている暇ひまがない人ひとに利用りようされている模様もようである。また、酸素さんその少すくない高地こうちや航空機こうくうき内ないでの有用ゆうよう性せいが認識にんしきされつつあり、高山病こうざんびょう予防よぼうなどに役立やくだつ機器ききとして期待きたいを集あつめている。また、他たの病状びょうじょうに対たいする検査けんさキットも開発かいはつ・提供ていきょうされている。

数値すうちの意味いみ

一般いっぱん的てきにSpO_2は96～99%が標準ひょうじゅん値ちとされ、安静あんせい時じでは95%以上いじょうである。

特とくに90％以下いかの場合ばあいは十分じゅうぶんな酸素さんそを全身ぜんしんの臓器ぞうきに送おくれなくなった状態じょうたい（呼吸こきゅう不全ふぜん）になっている可能かのう性せいがあるため、適切てきせつな対応たいおうが必要ひつようである（適切てきせつな対応たいおうをしないと命いのちにかかわる）。

コロナ禍かで日本にっぽんの厚生こうせい労働省ろうどうしょうの研究けんきゅう班はんが策定さくていした「新型しんがたコロナウイルス感染かんせん症しょう（COVID-19）診療しんりょうの手引てびき」では、新型しんがたコロナウイルス感染かんせん症しょう患者かんじゃの血ち中ちゅう酸素さんそ飽和ほうわ度どが「96%以上いじょう」は「軽症けいしょう」、「93%超ちょう〜96%未満みまん」は「中等ちゅうとう症しょうⅠ（呼吸こきゅう不全ふぜんなし）」、「93%以下いか」は「中等ちゅうとう症しょうⅡ（呼吸こきゅう不全ふぜんあり）」とする便宜べんぎ上じょう的てきな分類ぶんるい法ほうを提示ていじした。

ただし生命せいめい維持いじに必要ひつような酸素さんその各かく臓器ぞうきへの供給きょうきゅうは、酸素さんそ飽和ほうわ度どのほか、ヘモグロビン濃度のうど、心拍しんぱく出で量りょうが関与かんよしている。必要ひつようとされる酸素さんそ量りょうは酸素さんそ消費しょうひ量りょうと供給きょうきゅう量りょうのバランスであり、症例しょうれいによっては、上うえで挙あげた数値すうちよりも高たかいSpO₂が求もとめられることもある。

注意ちゅうい点てん

拍はく動どうを感知かんちすることで、飽和ほうわ度どを測定そくていする動脈血どうみゃくけつとそうでないものを判別はんべつするため、拍はく動どうの検知けんちができない極度きょくどの低てい血圧けつあつ、極度きょくどの末梢まっしょうの血ち流りゅう低下ていか、無む拍はく動どう型がたの人工じんこう心肺しんぱい装置そうち使用しよう時じには、正確せいかくな測定そくていができない。

通常つうじょう、光ひかりの透過とうか率りつで飽和ほうわ度どを測定そくていする装置そうちの原理げんり上じょう、一酸化いっさんか炭素たんそ中毒ちゅうどく、メトヘモグロビン血ち症しょうなどの場合ばあいも、SpO₂を正確せいかくに測定そくていできない。近年きんねん、一酸化いっさんか炭素たんそ結合けつごうヘモグロビンやメトヘモグロビンの吸光度こうどを分離ぶんりして測定そくていし、これらの比率ひりつを連続れんぞく的てきに表示ひょうじできる製品せいひんが、販売はんばいされている。

他ほかにも、マニキュア、色素しきそ（メチレンブルーやインドシアニングリーンなど）の投与とうよ、電気でんきメスによる電気でんき的てき干渉かんしょう、体からだ動どう、周囲しゅうい光こう（アルミホイルによるプローブの遮光しゃこうが有効ゆうこう）により、測定そくてい不能ふのうとなることがある。

使用しよう自体じたいは簡単かんたんであるが、測定そくてい値ちの解釈かいしゃくには、本人ほんにんの持病じびょうや体調たいちょうが関かかわるため、医師いしの診断しんだんを仰あおぐことが推奨すいしょうされる。

主おもなメーカー

• コニカミノルタセンシング（日本にっぽん）
• 株式会社かぶしきがいしゃドリテック（日本にっぽん）
• オムロン ヘルスケア（日本にっぽん）
• 株式会社かぶしきがいしゃエスエヌディ（日本にっぽん）
• 日本精密測器にほんせいみつそっき（日本にっぽん）
• 株式会社かぶしきがいしゃ星ぼし医療いりょう酸さん器き（日本にっぽん）
• 小池こいけメディカル（日本にっぽん）
• ユビックス株式会社かぶしきがいしゃ（日本にっぽん）
• 日本光電工業にほんこうでんこうぎょう（日本にっぽん）
• マシモ（アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく）
• コヴィディエン（ネルコア、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく）
• ノーニン（アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく）
• 株式会社かぶしきがいしゃトライアンドイー（日本にっぽん）
• eastsidemed（日本にっぽん）
• ダイキン工業だいきんこうぎょう株式会社かぶしきがいしゃ（日本にっぽん）

参考さんこう文献ぶんけん

• 久保田くぼた博ひろし南みなみ『いのちを救すくう先端せんたん技術ぎじゅつ : 医療いりょう機器ききはどこまで進化しんかしたのか』PHP研究所けんきゅうじょ〈PHP新書しんしょ〉。ISBN 4-569-70115-9。ISBN 978-4-569-70115-8。 
• 諏訪すわ邦夫くにお『パルスオキシメーター』中外ちゅうがい医学いがく社しゃ。ISBN 4-498-05505-5。ISBN 978-4-498-05505-6。 
• 東京とうきょう新聞しんぶん2022年ねん3月がつ3日にち夕刊ゆうかん5面めん「血ち中ちゅうの酸素さんそを光ひかりで測定そくてい」

関連かんれん項目こうもく

• フォトプレチスモグラム - パルスオキシメーターで測定そくていできる血液けつえき量りょう変化へんかをグラフとしたもの。
• アプノモニター
• ポリグラフ
• 在宅ざいたく健康けんこう診断しんだん
• ジョギング
• 高山病こうざんびょう
• 葉緑素ようりょくそ計けい - 同一どういつの波長はちょう領域りょういきを使用しようしている。
• 溶存ようぞん酸素さんそ量りょう

外部がいぶリンク

• “パルスオキシメーター知恵袋ちえぶくろ”. コニカミノルタ ヘルスケア. 2020年ねん4月がつ24日にち閲覧えつらん。
• 鎗田やりた, 勝かち (2009年ねん1月がつ). “パルスオキシメータ信号しんごうの雑音ざつおん除去じょきょに関かんする研究けんきゅう” (PDF). 千葉大学ちばだいがく. 2014年ねん8月がつ11日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2014年ねん8月がつ3日にち閲覧えつらん。
• 『パルスオキシメーター』 - コトバンク
• 「よくわかるパルスオキシメータ」患者かんじゃ向むけ - 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽん呼吸こきゅう器き学会がっかい
• 「Q&Aパルスオキシメータハンドブック」一般いっぱん医療いりょう者しゃ向むけ - 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽん呼吸こきゅう器き学会がっかい
• “高地こうちの呼吸こきゅう生理せいり：睡眠すいみんと呼吸こきゅう停止ていしの関係かんけい”. 諏訪すわ先生せんせいの血液けつえきガス博物館はくぶつかん. ラジオメーター株式会社かぶしきがいしゃ. 2014年ねん8月がつ8日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2014年ねん8月がつ3日にち閲覧えつらん。