脈拍みゃくはく

脈拍みゃくはく（みゃくはく、英えい: pulse）とは訓練くんれんされた指先ゆびさきによって動脈どうみゃくを触診しょくしんすることによって知しることのできる心拍しんぱくを表あらわす。脈拍みゃくはくは、頸部（頸動脈みゃく）、手首てくび（橈骨動脈どうみゃく）、鼠径そけい部ぶ（大腿だいたい動脈どうみゃく）、膝ひざ裏うら（膝ひざ窩動脈みゃく）、足あし関節かんせつ付近ふきん（後こう脛骨けいこつ動脈どうみゃく）、足あし（足あし背せ動脈どうみゃく）など、体からだ表ひょう付近ふきんの動脈どうみゃくを触ふれる場所ばしょであればどこでも触診しょくしんすることができる。脈拍みゃくはく数すう（1分ふんあたりの動脈どうみゃく拍はく動どう数かず、英えい: pulse rate: PR）は通常つうじょう、心拍しんぱく数すう（英えい: heart rate: HR）と等ひとしいが、不整脈ふせいみゃくでは両者りょうしゃは異ことなることがある。伝統でんとう的てきには心拍しんぱく数すうは、心臓しんぞうの拍はく動どうの聴診ちょうしん、すなわち聴診ちょうしん器きを使つかって1分間ふんかんカウントすることによっても測定そくていできる。橈骨動脈どうみゃくの脈拍みゃくはくは3本ほんの指ゆびを使つかって測定そくていするのが一般いっぱん的てきである。脈みゃくの研究けんきゅうは脈拍みゃくはく学がく（sphygmology）として知しられている。

生理学せいりがく

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  橈骨動脈どうみゃくで脈拍みゃくはくを触さわ知ちしている。
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  モニターに表示ひょうじされた心電図しんでんず（緑みどり）、動脈どうみゃくライン（赤あか）、パルスオキシメータ（青あお）、それぞれの波形はけい。
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  パルスオキシメータ。液晶えきしょうディスプレイに表示ひょうじされている青あおい数字すうじは酸素さんそ飽和ほうわ度ど、緑みどりの数字すうじは脈拍みゃくはく数すうである。緑みどりの波なみは脈拍みゃくはくの波形はけいである。

収縮しゅうしゅく期きに心臓しんぞうから発生はっせいする縦たて波はが動脈どうみゃく壁かべを動うごかす。脈拍みゃくはく数すうは動脈どうみゃくの外側そとがわの触覚しょっかく的てきまたは視覚しかく的てき手段しゅだんによって観察かんさつ・測定そくていされ、1分ふんあたりの拍はく動どう数かず（beats per minute: BPM）として記録きろくされる。

脈拍みゃくはく触さわ知ちから血圧けつあつを測定そくていする触診しょくしん法ほうは訓練くんれんされた観察かんさつ者しゃにとって収縮しゅうしゅく期き血圧けつあつを決定けっていする便利べんりな方法ほうほうである。しかし、拡張かくちょう期き血圧けつあつは触診しょくしん法ほうでは観察かんさつできない。

心拍しんぱく数すうは生理せいり的てき要求ようきゅうによって脈拍みゃくはく数すうより大おおきくなったり小ちいさくなったりする。この場合ばあい、心拍しんぱく数すうは心しん尖とんが部ぶの聴診ちょうしんまたは可聴かちょう音おんによって決定けっていされるが、その場合ばあいは脈拍みゃくはくではない。脈拍みゃくはく欠損けっそん（pulse deficit、心臓しんぞうの拍はく動どうと末梢まっしょうの脈拍みゃくはくの差さ）は、橈骨動脈どうみゃくの触診しょくしんと心こころ尖とんが部ぶ付近ふきんの聴診ちょうしんを同時どうじに行おこなうことによって、検出けんしゅつできる。心室しんしつ性せい期き外がい収縮しゅうしゅくや心房しんぼう細ほそ動どうがある場合ばあいにみられることがある。

「心拍しんぱく数すう」も参照さんしょう

トランスデューサーとオシロスコープに接続せつぞくされた動脈どうみゃくカテーテルを使用しようすることで、脈拍みゃくはくの速度そくど、脈拍みゃくはく欠損けっそん、その他た多おおくの生理学せいりがく的てきデータが容易たやすかつ簡便かんべんに可視かし化かされる。動脈どうみゃくカテーテルは全身ぜんしん麻酔ますいや集中しゅうちゅう治療ちりょう室しつで多用たようされている。

脈拍みゃくはくは、パルスオキシメトリーでも計測けいそく可能かのうである。これは、血液けつえき成分せいぶんであるヘモグロビンの、酸素さんそ化か条件下じょうけんかと脱だつ酸素さんそ化か条件下じょうけんかでの赤あか外がい光こうの吸光度どの変化へんか率りつから酸素さんそ飽和ほうわ度どを迅速じんそくかつ非ひ侵おかせ襲かさね的てきに測定そくていできるものであり、その時間じかん変化へんかから脈拍みゃくはく数すうが算出さんしゅつされる。

「動脈どうみゃくライン」および「パルスオキシメーター」も参照さんしょう

脈拍みゃくはくの性状せいじょう

脈拍みゃくはく数すう

安静あんせい時じの正常せいじょう脈拍みゃくはく数すう（単位たんい：拍はく/分ぶん（beats per minute: BPM））は以下いかの通とおりである。

新生児しんせいじ (0–3ヶ月かげつ)	乳児にゅうじ (3–6ヶ月かげつ)	乳児にゅうじ (6–12 ヶ月かげつ)	小児しょうに (1–10 才さい)	10才さい以上いじょうの小児しょうに、成人せいじん、老人ろうじん	成人せいじんのアスリート
99–149	89–119	79–119	69–129	59–99	39–59

脈拍みゃくはく数すうは、心臓しんぞうの全体ぜんたい的てきな健康けんこう状態じょうたいやフィットネスレベルをチェックするのに使つかえる。一般いっぱん的てきには低ひくい方ほうが良よいが、過度かどの徐じょ脈みゃくは危険きけんである。危険きけんなほど遅おそい脈拍みゃくはくの症状しょうじょうには、脱力だつりょく感かん、気力きりょくの喪失そうしつ、失神しっしんなどがある。

リズム

正常せいじょうな脈拍みゃくはくは規則正きそくただしいリズムがあり、強つよく触ふれる。不規則ふきそくな脈拍みゃくはくは、洞ほら性せい不整脈ふせいみゃく、異こと所しょ性せい拍はく動どう（ectopic beats）、心房しんぼう粗そ動どう、発作ほっさ性せい心房しんぼう頻しき拍はく、心房しんぼう粗そ動どう、房ぼう室しつブロックなどによるものである。脈拍みゃくはくが間欠かんけつ的てきに脱落だつらくすることを"intermittent pulse".「間欠かんけつ脈みゃく」と呼よぶ。規則きそく的てきな間欠かんけつ脈みゃく（規則きそく性せい不整脈ふせいみゃく）の例れいとしては、二に連れん脈みゃく（pulsus bigeminus）、2度ど房ぼう室しつブロックなどがある。不規則ふきそくな間欠かんけつ脈みゃくの例れいとしては、心房しんぼう細ほそ動どうがある。

大おおきさ

脈拍みゃくはくの大おおきさは、動脈どうみゃくの拍はく動どうの幅はば、すなわち、拡張かくちょう期きから収縮しゅうしゅく期きの間あいだ、触診しょくしんしている指ゆびを持もち上あげる高たかさと定義ていぎされる。脈みゃく圧あつ、すなわち収縮しゅうしゅく期き血圧けつあつと拡張かくちょう期き血圧けつあつの差さの指標しひょうである。大おおきい脈拍みゃくはくを大だい脈みゃく（pulsus magnus）、小ちいさいものを小しょう脈みゃく（pulsus parvus）という。

強弱きょうじゃく

脈みゃくの強つよさは以下いかのように分類ぶんるいされる。

• 0 = 脈みゃくを触ふれない。
• 1 = わずかに触ふれる。
• 2 = 容易よういに触ふれる。
• 3 = 完全かんぜんに触ふれる。
• 4 = 動脈どうみゃく瘤こぶまたは反はん跳とべ脈みゃく

脈みゃくが強つよい

反はん跳とべ脈みゃく（bounding pulse）とは脈みゃく圧あつが高たかいことを意味いみする。虚脱きょだつ脈みゃく（collapsing pulse）とも呼よばれる。末梢まっしょう血管けっかん抵抗ていこうの低下ていか（発熱はつねつ、貧血ひんけつ、甲状腺こうじょうせん機能きのう亢進こうしん症しょう、動静どうせい脈みゃく瘻にみられる）、大動脈だいどうみゃく弁べん閉鎖へいさ不全ふぜん症しょう などが原因げんいんである可能かのう性せいがある。

脈みゃくが弱よわい

脈みゃくが弱よわいということは脈みゃく圧あつが低ひくいということである。心拍しんぱく出で量りょうの低下ていか（ショック、うっ血けつ性せい心不全しんふぜんでみられる）、循環じゅんかん血液けつえき量りょう減少げんしょう（hypovolemia）、心臓しんぞう弁膜べんまく症しょう（大動脈だいどうみゃく弁べん狭窄きょうさく、僧そう帽ぼう弁べん狭窄きょうさく）、高安たかやす動脈どうみゃく炎えんなどが原因げんいんである可能かのう性せいがある。

緊張きんちょう

橈骨動脈どうみゃくにあてた示しめせ指ゆび以下いか3本ほんの指ゆびのうち、最もっとも中枢ちゅうすう側がわの指ゆびで動脈どうみゃくを圧迫あっぱくし、どれぐらい圧迫あっぱくすれば末梢まっしょう側がわの指ゆびで拍はく動どうが触ふれなくなるかを調しらべる。弱よわい力ちからで触ふれなくなれば軟脈（soft pulse）、強つよい力ちからで触ふれなくなれば硬かた脈みゃく（hard pulse）と呼よぶ。手て掌てのひらでは2本ほんの動脈どうみゃく（橈骨動脈どうみゃくと尺しゃく骨こつ動脈どうみゃく）が手て掌てのひら動脈どうみゃく弓ゆみ（浅あさ掌てのひらと深ふか掌てのひら）を介かいしてつながっている。軟脈か硬かた脈みゃくかは収縮しゅうしゅく期き血圧けつあつに関連かんれんする。

遅速ちそく

脈拍みゃくはくの大おおきさが変化へんかする速度そくどである。脈拍みゃくはくそのものの速はやさ、遅おそさである、頻しき脈みゃく・徐じょ脈みゃくとは異ことなる。急速きゅうそくに下降かこうする速はや脈みゃく（pulsus celer）は大動脈だいどうみゃく弁べん閉鎖へいさ不全ふぜん症しょうでみられる。ゆっくり上昇じょうしょうし、ゆっくり下降かこうする遅おそ脈みゃく（pulsus tardus）は大動脈だいどうみゃく弁べん狭窄きょうさく症しょうでみられる。

測定そくてい部位ぶいによる違ちがい

異ことなる部位ぶいの脈拍みゃくはくを比較ひかくすることにより、貴重きちょうな臨床りんしょう情報じょうほうが得えられる。

左右さゆうの橈骨動脈どうみゃくの脈拍みゃくはくが不一致ふいっちまたは不ふ均等きんとうであるのは、動脈どうみゃくの異常いじょうまたは異常いじょうな走行そうこう、大動脈だいどうみゃく縮ちぢみ窄、大動脈だいどうみゃく炎えん、解離かいり性せい大動脈だいどうみゃく瘤こぶ、末梢まっしょう塞ふさが栓せん症しょうなどで観察かんさつされる。上肢じょうしと下肢かしの間あいだで脈拍みゃくはくが異ことなるのは、大動脈だいどうみゃく縮ちぢみ窄、大動脈だいどうみゃく炎えん、大動脈だいどうみゃく分岐ぶんき部ぶの狭窄きょうさく・閉塞へいそく、大動脈だいどうみゃく解離かいり、医い原ばら性せい大だい血管けっかん損傷そんしょう、動脈どうみゃく硬化こうか性せい閉塞へいそくなどでみられる。

動脈どうみゃく壁かべの性状せいじょう

正常せいじょうの動脈どうみゃくは指ゆびで圧迫あっぱくし血けつ流りゅうを停止ていしさせると， それより末梢まっしょう側がわでは血管けっかんは触さわ知ちできなくなる.これに対たいし，動脈どうみゃく硬化こうかがあると、血ち流りゅうを停止ていしした状態じょうたいでも明あきらかに血管けっかんを触さわ知ちしうるようになる。

特徴とくちょう的てきな脈拍みゃくはく

いくつかの脈拍みゃくはくパターンは臨床りんしょう的てきに重要じゅうようである。以下いかのようなものがある：

• 重複じゅうふく脈みゃく（Dicrotic pulse）橈骨動脈どうみゃくの脈みゃく波はの下しも行脚あんぎゃに第だい二にの山やまを触さわ知ちできることがあり、重複じゅうふく脈みゃくという。心拍しんぱく出で量りょうが少すくなく全身ぜんしん血管けっかん抵抗ていこうが高たかい状態じょうたいでは、重複じゅうふく脈みゃくを生しょうじることがある。熱性ねっせい疾患しっかん、特とくに腸ちょうチフスのときに見みられるとされる。
• 交互こうご脈みゃく（Pulsus alternans）: 心こころ機能きのう低下ていか、うっ血けつ性せい心不全しんふぜん、心筋しんきん疾患しっかんなどで見みられる不吉ふきつな医学いがく的てき徴候ちょうこうである。熟練じゅくれん者しゃの指先ゆびさきでは、強つよい脈みゃくの後のちに弱よわい脈みゃくが交互こうごに繰くり返かえされるパターンが観察かんさつされる。坐すわ位くらいあるいは立だて位いで認みとめやすく、しばしば心音しんおん聴診ちょうしんでは奔馬ほんば調律ちょうりつ（gallop rhythm）を伴ともなう。
• 二に段だん脈みゃく（Pulsus bigeminus）: 脈拍みゃくはくが2つずつ対たいをなし、そのあとに休止きゅうし期きがある。期き外がい収縮しゅうしゅくや第だい2度ど房ぼう室しつブロックの際さいに生しょうじる。
• 二に峰みね性せい脈みゃく（Pulsus bisferiens）: 重複じゅうふく脈みゃくとは異ことなり、1心しん周期しゅうきに2回かいの拍はく動どうがあり、いずれも収縮しゅうしゅく期きである。大動脈だいどうみゃく弁べんが正常せいじょうに開閉かいへいしない場合ばあい、大動脈だいどうみゃく弁べん疾患しっかん患者かんじゃに典型てんけい的てきにみられる異常いじょうな身体しんたい所見しょけんである。訓練くんれんされた指先ゆびさきでは、各かく心拍しんぱくに1つではなく2つの脈みゃくが観察かんさつされる。
• 奇き脈みゃく（Pulsus paradoxus）: 吸気きゅうき時じに脈拍みゃくはくが小ちいさくなることをいう。時ときには触さわ知ち不能ふのうとなることもある。心こころ膜まく腔への液体えきたい貯留ちょりゅうが原因げんいんであり、心こころタンポナーデや収縮しゅうしゅく性せい心こころ膜まく炎えんの際さいに生しょうじる。正常せいじょう者しゃでは吸気きゅうきの極きょく期きに脈拍みゃくはくは最大さいだいとなる。

• 橈骨-大腿だいたい遅延ちえん: 大動脈だいどうみゃく縮ちぢみ窄症では、大腿だいたい動脈どうみゃくの脈拍みゃくはくは橈骨動脈どうみゃくの脈拍みゃくはくに比くらべて著いちじるしく遅おくれることがある（大動脈だいどうみゃく弁べん閉鎖へいさ不全ふぜん症しょうが併存へいそんしている場合ばあいを除のぞく）。これを橈骨-大腿だいたい遅延ちえん（radio-femoral delay）という。この遅おくれは大動脈だいどうみゃく弁べん上じょう狭窄きょうさく症しょうでも観察かんさつされる。

一般いっぱん的てきな触さわ知ち部位ぶい

脈拍みゃくはく触さわ知ちの推奨すいしょう部位ぶい

部位ぶいは末梢まっしょう脈みゃくと中枢ちゅうすう脈みゃくに分わけられる。中枢ちゅうすう脈みゃくには頸動脈みゃく、大腿だいたい動脈どうみゃく、上腕じょうわん動脈どうみゃくが含ふくまれる。

上肢じょうし

右みぎ上肢じょうしを前まえから見みた解剖かいぼう図ず

• 腋窩えきか: 腋窩えきか外がい側壁そくへきの下方かほうに位置いちする（腋窩えきか動脈どうみゃく）。
• 上腕じょうわん: 上腕じょうわんの内側うちがわ、肘ひじの近ちかくにあり、乳幼児にゅうようじでは頸動脈みゃくの代かわりによく使つかわれる（上腕じょうわん動脈どうみゃく）。
• 橈骨: 手首てくびの外側そとがわにある (橈骨動脈どうみゃく)。解剖かいぼう学的がくてき嗅かぎタバコ入いれでも触ふれることができる。
• 尺しゃく骨こつ: 手首てくびの内側うちがわにある (尺しゃく骨こつ動脈どうみゃく)。

下肢かし

• 大腿だいたい: 恥骨ちこつ結合けつごうと上前うわまえ腸ちょう骨こつ棘とげの中点ちゅうてんに 大腿だいたい動脈どうみゃくを触ふれる。
• 膝ひざ窩: 患者かんじゃに膝ひざを約やく124°に曲まげさせ、検けん者しゃは両手りょうてで膝ひざを持もち、膝ひざの後うしろのくぼみにある膝ひざ窩動脈みゃくを見出みいだすことができる。
• 足あし背せ: 足あしの甲かぶと、長ちょう趾伸筋すじのすぐ外側そとがわに足あし背せ動脈どうみゃくがある。
• 足首あしくび: 足あし関節かんせつの内側うちがわ、内うち果はてから2cm下方かほう、2cm後方こうほうに後こう脛骨けいこつ動脈どうみゃくを触ふれる。

頭あたま頚部けいぶ

首くびの動脈どうみゃく

• 頸部：頚動脈けいどうみゃくは、患者かんじゃが座すわっているか横よこになっている状態じょうたいで、やさしく触診しょくしんする。触診しょくしんで圧あつ受容じゅよう体たいを刺激しげきすると、軽度けいどの圧迫あっぱくでも、重度じゅうどの徐じょ脈みゃくを引ひき起おこしたり、敏感びんかんな人ひとでは心臓しんぞうが止とまってしまうことさえある。また、2本ほんの頸動脈みゃくを同時どうじに触診しょくしんしてはならない。そうすると頭部とうぶへの血液けつえきの流ながれが制限せいげんされ、失神しっしんや脳のう虚きょ血ちにつながる可能かのう性せいがある。胸むね鎖くさり乳ちち突筋の前ぜん縁えんの間あいだ、舌した骨こつの上うえ、甲状こうじょう軟骨なんこつの外側そとがわに拍はく動どうを触ふれる。
• 顔かお: 下しも顎あごにあり、口角こうかくと一直線いっちょくせん上じょうにある（顔面がんめん動脈どうみゃく）。
• 側がわ頭あたま: 耳みみのすぐ前まえのこめかみにある（浅あさ側がわ頭あたま動脈どうみゃく）。

脈拍みゃくはくは頭あたまの複数ふくすうの場所ばしょで感かんじることができるが、通常つうじょう、頭あたまの中なかで心臓しんぞうの鼓動こどうが聞きこえることはない。これは拍はく動どう性せい耳みみ鳴なと呼よばれ、血管けっかん異常いじょうの可能かのう性せいがある。

体からだ幹みき

• 心こころ尖とんが部ぶは通常つうじょう、第だい5肋間ろっかんに位置いちし、鎖骨さこつ中ちゅう線せんより1.25cm外側そとがわにある。他たの脈拍みゃくはく触さわ知ち部位ぶいとは対照たいしょう的てきに、心こころ尖とんが部ぶは片側かたがわ性せいである。
  「心こころ尖とんが拍はく動どう」も参照さんしょう

歴史れきし

脈拍みゃくはくを測定そくていした最初さいしょの人物じんぶつは、エジプトのアレクサンドリアのヘロフィロス（紀元前きげんぜん335～280年ねん頃ごろ）で、彼かれは脈拍みゃくはくを計はかるための水時計みずどけいを設計せっけいした。13世紀せいきのペルシアの詩人しじんジャラール・ウッディーン・ルーミーは詩しの中なかで「賢明けんめいな医師いしは患者かんじゃの脈拍みゃくはくを測定そくていし、彼かれの状態じょうたいを認識にんしきした」と述のべている。これは、この習慣しゅうかんがルーミーの時代じだいや地理ちり的てきに一般いっぱん的てきであったことを示しめしている。脈拍みゃくはく数すうを正確せいかくに測定そくていした最初さいしょの人物じんぶつは、後のちにガリレオ・ガリレイによって研究けんきゅうされた振ふり子この一種いっしゅであるパルシロギウム（pulsilogium）を発明はつめいしたサントーリオ・サントーリオ（イタリアの医師いし・生理学せいりがく者しゃ、1561-1636）である。その1世紀せいき後ご、別べつの医師いしフランソワ・ボアシエ・ド・ソヴァージュ・ド・ラクロワがパルシロギウムを使つかって心こころ機能きのうを検査けんさした。

参考さんこう文献ぶんけん

• 伊藤いとう隆たかし『解剖かいぼう学がく講義こうぎ』南山みなみやま堂どう、1994年ねん5月がつ30日にち。ISBN 4-525-10051-6。 
• 武内たけうち重しげる五郎ごろう『内科ないか診断しんだん学がく』（改訂かいてい第だい15版はん）南江堂なんこうどう、1997年ねん5月がつ1日にち。ISBN 4-524-20237-4。 

関連かんれん項目こうもく

• 心拍しんぱく計けい
• テンポ
• 脈みゃく診み – 脈拍みゃくはくから疾病しっぺいの状態じょうたいを知しる、古来こらいの診察しんさつ法ほう。

外部がいぶリンク

• Measure Pulse Online - 画面がめん上じょうのボタンをタップすることで心拍しんぱく数すうを知しることができる（英語えいご）。