ヒル (動物どうぶつ)

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ヒルつな
ヒルの一種
ヒルの一種いっしゅ Haemopis sanguisuga?
分類ぶんるい
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : たまきがた動物どうぶつもん Annelida
つな : たまきたいつな Clitellata
階級かいきゅうなし : オヨギミミズるい Lumbriculata
つな : ヒルつな Hirudinea
学名がくめい
Hirudinea
Lamarck1818
和名わみょう
ヒル(ひる
英名えいめい
leeches
下綱しもつな

ヒルひる)は、たまきがた動物どうぶつもんヒルつなまたはたまきたいつなヒルつな学名がくめい: Hirudinea)にぞくする生物せいぶつ総称そうしょうからだ前後ぜんごはし吸盤きゅうばんつのが特徴とくちょうである。

ヒルるい大型おおがた動物どうぶつうものがよくられているが、それ以外いがい生活せいかつをするものもある。共通きょうつう特徴とくちょうからだぜんはし後端こうたん吸盤きゅうばんつことであるが、その発達はったつ程度ていど様々さまざまである。

なお、細長ほそながいぬめぬめするもの、動物どうぶつうものといった印象いんしょう動物どうぶつに「ヒル」のをつけたもの(コウガイビルなど)や「ひる」の漢字かんじをつけたもの(かんひるなど)があるが、分類ぶんるいじょうまったことなるものである。たとえばほんこうのヒルはたまきがた動物どうぶつもんだが、コウガイビルはひらたがた動物どうぶつもんである[1]

ラテン語らてんごでヒルを意味いみ学名がくめい由来ゆらいにもなっている hirudo(ヒルド)と、日本語にほんごの「ヒル」は音韻おんいんるが、やと外国がいこくじん動物どうぶつ学者がくしゃチャールズ・オーティス・ホイットマンはこれを偶然ぐうぜん類似るいじだと考察こうさつしている[2]。ホイットマンはヒルの語源ごげんについて江戸えど時代じだい辞書じしょやまとくんしおり』を参照さんしょうし、どろふる「ひぢ」にいることからだという見解けんかい紹介しょうかいしている。

形態けいたい[編集へんしゅう]

たまきがた動物どうぶつ同様どうよう細長ほそながからだをしている。

ヒルの特徴とくちょうとして外部がいぶ形態けいたい退化たいか傾向けいこうげられる。口前くちまえはほとんど確認かくにんできない。いぼあしはなく、ひんるいにはある剛毛ごうもうすらほとんどがたない。わりに、くち周辺しゅうへん肛門こうもんしたがわ吸盤きゅうばんになっており、捕食ほしょく活動かつどうにも運動うんどうにもこれをもちいる。どちらか一方いっぽうだけをつものもある。一部いちぶそとえらつものがある。

からだ外見がいけんじょう非常ひじょうおおくのからだぶしつようにえるが、そのほとんどは表面ひょうめん環状かんじょうしわがあるだけである。実際じっさいからだぶしはよりすくなく、普通ふつうは34である。しわがあるためわかりにくいが、ミミズるいられるようなたまきたいからだ前方ぜんぽうにあり、そのはらめん雌雄しゆう生殖せいしょくあなひらく。雌雄しゆう同体どうたいである。

外見がいけんてきには感覚かんかくえないが、からだ前方ぜんぽう背面はいめんてんひかり強弱きょうじゃくかんじるセンサーで、電子でんし顕微鏡けんびきょうえる表面ひょうめんへこんだ器官きかん)があるものがおおい。

生息せいそく地域ちいきおよ生態せいたい[編集へんしゅう]

体長たいちょう0.2-40cmで、おおくは淡水たんすいむが、陸上りくじょう海水かいすい種類しゅるいもいる。肉食にくしょくせいで、おもしょう動物どうぶつべるもの、大型おおがた動物どうぶつっているものなどがある。なが大型おおがた動物どうぶつにたかってらすものは、寄生きせいせいなされる。ちいさいほうでは、たとえばカイビルなどは1cmにたないちいさいもので、水草みずくさうえなどをいながら、ちいさながいなどにあたまんでべている。また、とくおおきなものには、ヤツワクガビルがいる。全長ぜんちょうびると50cmをえ、全身ぜんしんあざやかな黄色おうしょく黒色こくしょくたてスジがある。湿しめった陸上りくじょうみ、これまた40cmにもたっするシーボルトミミズなどの大型おおがたミミズをまるみにする。

吸血きゅうけつせいヒルについて[編集へんしゅう]

哺乳類ほにゅうるいたいして吸血きゅうけつするたねがあり、ひと対象たいしょうとするものもすくなくない。かわはいっているときや沼地ぬまち湿度しつどたか森林しんりんなどをあるいているときにかれ、われることがある。水田すいでんにはチスイビルおおく、水田すいでんでの作業さぎょうちゅうわれることは普通ふつうであったが、農薬のうやくなどによって減少げんしょうしている。ヤマビルは、サルイノシシシカなどの増加ぞうかにつれて分布ぶんぷいきひろげているというはなしもある。2008ねんまでに、日本にっぽんでヤマビルによる被害ひがい確認かくにんされていないのは埼玉さいたまけん大阪おおさか福井ふくいけん石川いしかわけん青森あおもりけん北海道ほっかいどう山口やまぐちけん北部ほくぶ九州きゅうしゅう四国しこくである。ヤマビルはくつにつくとシャクトリムシのようにからだうえほうがってき、ふくくつすそ袖口そでぐちなどの隙間すきまからもぐりこんで皮膚ひふ到達とうたつする。かまれてもヒルの唾液だえき麻酔ますい成分せいぶんがあるためいたみをかんじないままわれ、吸血きゅうけつこんからの出血しゅっけつがつく場合ばあいがある。また、血液けつえき凝固ぎょうこ作用さようさまたげる成分せいぶんふくまれていて、流血りゅうけつひろがりやすいが、通常つうじょうきず数日すうじつなおる。ヒル自体じたいにはどくせいはないといわれる。吸血きゅうけつしゅおも種類しゅるいは、チスイビルやヌマビル、ヤマビルなどがある。日本にっぽんにも生息せいそくするハナビルのように、からだひょうから吸血きゅうけつするのでなく、体内たいないもぐんで吸血きゅうけつするものもあり、内部ないぶひるしょうばれる。

利害りがい[編集へんしゅう]

ヒルは不快ふかい生物せいぶつとされることがおおい。基本きほんてき人間にんげん吸血きゅうけつ生物せいぶつたいして嫌悪けんおかんうえアブなどのようなほか吸血きゅうけつせい動物どうぶつことなりヌメヌメした容姿ようしたいする嫌悪けんおかんや、まれた傷口きずぐちからなが出血しゅっけつすることへの不快ふかいかんくわわる。

他方たほう吸血きゅうけつせいヒルは医療いりょう薬用やくようとして利用りようされる。凝固ぎょうこふせちからがあることから、古来こらいより瀉血しゃけつなどの医療いりょうようとしてももちいられてきた(ヒルの医療いりょう利用りよう英語えいごばん)。漢方かんぽうでは乾燥かんそうしたヒルの生薬きぐすりみずひる(すいてつ)とぶ。滋養じよう強壮きょうそう効果こうかがあるとわれ、ヨーロッパでもふるくから薬用やくようとされてきた。1884ねんイギリス生理学せいりがくしゃジョン・ヘイクラフト英語えいごばんが、薬用やくようヒルの唾液腺だえきせんからペプチド構成こうせいされる血液けつえきこう凝固ぎょうこ成分せいぶんであるヒルディンという成分せいぶん発見はっけんした。日本にっぽんではみずひるやヒルディンを使用しようした製品せいひん薬効やっこううたうことは許可きょかされていないため、健康けんこう食品しょくひんとして販売はんばいされている。ヒルはわるすものとして、インドアーユルヴェーダなどでデキぶつなどにたからせてわせるなどの行為こういおこなわれた。また、ヒルの唾液だえきは、ひざ関節かんせつしょう効果こうかがあるという[3]。また法令ほうれいじょう、ヒルに人間にんげんわせる行為こうい医療いりょう行為こういとなる。

対策たいさく[編集へんしゅう]

帽子ぼうし長袖ながそでちょうズボン・厚手あつで靴下くつした長靴ながぐつ(あるいはしっかりした登山とざんくつ)を着用ちゃくようし、首筋くびすじタオルいたり、くつとズボンの隙間すきまガムテープくなどして極力きょくりょくはだ露出ろしゅつける。ただし、ズボンを着用ちゃくようしている状態じょうたいであっても、ズボンをがったのちに上着うわぎ隙間すきまからはいんで腹部ふくぶ吸着きゅうちゃくする場合ばあいがある。タオルや靴下くつしたにあらかじめしおをすりんでおくなどの処置しょち有効ゆうこうである。

市販しはんのヒル忌避きひやく使用しようすると効果こうかてきである。ヒル忌避きひやく主成分しゅせいぶんディートであるため、ディート含有がんゆうりつたか虫除むしよけスプレーでも代用だいようできる。ディート含有がんゆうりつひくいものであっても一時いちじてきながら効果こうかがある。最近さいきんでは、子供こども母親ははおやによるディートばなれの活動かつどうきていることから、ディート添加てんかのヒル忌避きひざい発売はつばいされている。

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

3つなける。そのうちのヒルミミズつなは、かつてまずしもうつなとしてあつかわれたもので、ヒルつなひんつなとのなかあいだてき性質せいしつられる。

分類ぶんるい

以下いか分類ぶんるいは、狭義きょうぎのヒルるい(吻蛭・吻無ひる)については中野なかの (2013) にしたが[4]高次こうじ分類ぶんるいぐんについては小林こばやし (2021)[5]国立こくりつ天文台てんもんだい (2021)[6]田中たなか佐藤さとう (2022) にもとづき、田中たなか佐藤さとう (2022) にしたがって下綱しもつななどの階級かいきゅうもちいず「るい」とした[7]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ ヤマビル対策たいさく情報じょうほうペーパー群馬ぐんまけん、2022ねん9がつ25にち閲覧えつらん
  2. ^ C. O. Whitman (1886). “The Leeches of Japan”. Quarterly Journal of Microscopical Science (J. and A. Churchill) 26: 317-416. doi:10.1242/jcs.s2-26.103.317. 
  3. ^ “Leeches To Treat Knee Osteoarthritis”. Annals of Internal Medicine (American College of Physicians) 139 (9): I-22. (2003). ISSN 0003-4819. http://www.annals.org/content/139/9/I-22.full. 
  4. ^ 中野なかの隆文たかふみひがしアジアさんきょしょくせいヒルるい多様たようせい研究けんきゅう」『タクサ:日本にっぽん動物どうぶつ分類ぶんるい学会がっかい』 No. 34、日本にっぽん動物どうぶつ分類ぶんるい学会がっかい、2013ねん、2-10ぺーじ
  5. ^ 小林こばやしもとたまきがた動物どうぶつもん高次こうじ系統けいとうかんする概説がいせつ」『Edaphologia』No. 109、日本にっぽん土壌どじょう動物どうぶつ学会がっかい、2021ねん、9–17ぺーじ
  6. ^ 国立こくりつ天文台てんもんだい へん動物どうぶつ分類ぶんるいひょう」『理科りか年表ねんぴょう 2022』丸善まるぜん出版しゅっぱん、2021ねん、908-918ぺーじ
  7. ^ 田中たなかただしあつし佐藤さとうただしてんたまきがた動物どうぶつもん」、岡山おかやまけん野生やせい動植物どうしょくぶつ調査ちょうさ検討けんとうかい へん岡山おかやまけん野生やせい生物せいぶつ目録もくろく2019』(ver.1.3)、岡山おかやまけん環境かんきょう文化ぶんか自然しぜん環境かんきょう、2022ねん6がつ14にち更新こうしん、2022ねん12月24にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]