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リゴレット

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リゴレット
Rigoletto
リゴレットの初演しょえんポスター。
作曲さっきょく ジュゼッペ・ヴェルディ
原作げんさく ヴィクトル・ユーゴー戯曲ぎきょくおうたのしむフランス語ふらんすごばん英語えいごばんLe Roi s'amuse
台本だいほん フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ
言語げんご イタリア
演奏えんそう時間じかん やく2あいだ
初演しょえん 1851ねん3月11にちヴェネツィアフェニーチェにて、作曲さっきょくしゃ自身じしん指揮しきによる。

リゴレット』(原語げんご曲名きょくめいRigoletto)は、ジュゼッペ・ヴェルディ作曲さっきょくしたぜん3まくからなるオペラである。1851ねんヴェネツィアフェニーチェ初演しょえんされた。ヴェルディ中期ちゅうき傑作けっさくとされる。

作曲さっきょく経緯けいい

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ヴェルディヴェネツィアフェニーチェのために新作しんさくオペラを作曲さっきょくするという契約けいやく1850ねん4がつどう劇場げきじょうむすんだ。初演しょえん翌年よくねん1851ねんカーニヴァル時季じきとされたので、のこされた期日きじつはほぼ10かげつ当時とうじ一般いっぱんてきなオペラ作曲さっきょくシステムにしたがい、かれのパートナーとなるのは依頼いらいぬしフェニーチェ座付ざつき台本だいほん作家さっかフランチェスコ・マリア・ピアーヴェである。

当初とうしょ、ヴェルディもピアーヴェも新作しんさく題材だいざいかんして特定とくてい目論見もくろみがあったわけではなく、だいデュマの『キーン』Kean1836ねん)なども候補こうほとして真剣しんけん検討けんとうがなされたようだが、同月どうげつ28にちのヴェルディはつピアーヴェあて書簡しょかんで、かれはじめてヴィクトル・ユーゴーさくおうたのしむフランス語ふらんすごばん英語えいごばんLe Roi s'amuse言及げんきゅうし、ピアーヴェに即座そくざ戯曲ぎきょく入手にゅうしゅし、同時どうじ当局とうきょく有力ゆうりょくしゃにオペラ問題もんだいがないかどうか打診だしんするように指令しれいしている。ヴェルディは、どう戯曲ぎきょく主人公しゅじんこうである道化師どうけしトリブレ(Triboulet)を「すべての劇場げきじょうすべての時代じだいのぞみうる最高さいこう登場とうじょう人物じんぶつ」とまでたか評価ひょうかしていた。

ヴェルディが『おうたのしむ』に問題もんだいがないかどうかの感触かんしょくさぐれ、とピアーヴェに命令めいれいしたのには理由りゆうがあった。この戯曲ぎきょく1832ねん11月22にちパリのフランセ初演しょえんされたのだが、好悪こうおひょう渦巻うずまなかはやくも翌日よくじつには上演じょうえん禁止きんしとなった。フランス国王こくおうフランソワ1せいくした享楽きょうらくと、それにたいする貴族きぞくサン=ヴァリエのまじない、そしてそののろいは不具ふぐ毒舌どくぜつ道化師どうけしトリブレとそのむすめりかかる、という内容ないよう7がつ王政おうせいしたのフランスにとってあまりに衝撃しょうげきてきぎたのだった(パリでの再演さいえんは1882ねんになりようやく可能かのうとなる)。当時とうじフランスでは出版しゅっぱん自由じゆう保障ほしょうされていたからユーゴーのこの戯曲ぎきょくも(上演じょうえん禁止きんし経緯けいいと、それにたいする抗議こうぎぶんを「前文ぜんぶん」として挿入そうにゅうして)出版しゅっぱんはなされ、オーストリア帝国ていこく統治とうちヴェネツィアでもそれは入手にゅうしゅ可能かのうだったが、げん段階だんかい上演じょうえん禁止きんしリストにっている戯曲ぎきょくがオペラにできるだろうか、とのヴェルディの懸念けねんはもっともなものだった。

この段階だんかいではピアーヴェは有力ゆうりょくしゃだれかからなんらかのこう感触かんしょくたものとみえ、1850ねん6がつには2人ふたり戯曲ぎきょくをどのようにオペラしていくかの相談そうだんおこなっている。ヴェルディの希望きぼうはユーゴーの原作げんさくにできるだけ忠実ちゅうじつしたがうというもので、ピアーヴェはそのとおりに作業さぎょうすすめている。ただしかれらも『おうたのしむ』という刺激しげきてき題名だいめい許可きょかされないだろうとかんがえていたようで、タイトルは『サン=ヴァリエののろい』La Maledizione di Saint-Vallierあるいはもっと単純たんじゅんに『のろい』が有力ゆうりょく候補こうほとなり、主人公しゅじんこう道化師どうけし原作げんさくでのトリブレのイタリアトゥリボレット(Triboletto)となっていた。

ところが8がつになり、ちょうどヴェルディがピアーヴェをブッセート自宅じたくまねいて集中しゅうちゅう作業さぎょうおこなっているころ前途ぜんと暗雲あんうんめてきた。フェニーチェ支配人しはいにんマルザーリが、『のろい』にかんする懸念けねんらせてきたのだ。このときヴェルディはピアーヴェをすぐにヴェネツィアにかえし、政治せいじ工作こうさくつづけるよう指示しじしている。11月にはいよいよ公安こうあん当局とうきょくが、台本だいほんのコピーを提出ていしゅつすべし、との公式こうしき要請ようせいおこなってきた。10月にほぼ完成かんせいしていた台本だいほんのコピーはすぐに当局とうきょく送付そうふされたが、上演じょうえん許可きょかしょう発行はっこうされなかった。それどころか12月にはヴェネツィア総督そうとく公式こうしき上演じょうえん禁止きんし通達つうたつ発行はっこう、『のろい』のこのままのかたちでの上演じょうえん可能かのうせい完全かんぜんついえた。

ピアーヴェは、国王こくおうフランソワ1せいをその時代じだいたんなるいち貴族きぞく変更へんこうする、トゥリボレットを不具ふぐしゃとしない、などいくつかの改変かいへんほどこしたべつ稿こう『ヴァンドーム公爵こうしゃくIl Duca di Vendome作成さくせい、それがヴェネツィアの検閲けんえつ当局とうきょく満足まんぞくさせることを確認かくにんうえブッセートのヴェルディに送付そうふした。しかし今度こんどはヴェルディが納得なっとくしなかった。かれは、好色こうしょく君主くんしゅ放恣ほうしかぎりをくすこと、道化師どうけし醜悪しゅうあく外見がいけんほこたか内面ないめんめんせいがあること、に価値かち見出みいだしていたからである。ヴェルディの返答へんとうけて、ピアーヴェ、マルザーリらはあらためて精力せいりょくてき当局とうきょく折衝せっしょうし、「物語ものがたり場所ばしょ時代じだい変更へんこうすること」を唯一ゆいいつ許可きょか条件じょうけんとするまでの譲歩じょうほした。

このようにして、1850ねん12月30にち、ヴェルディ、ピアーヴェとフェニーチェは「改変かいへんについての覚書おぼえがき」に署名しょめいした。その内容ないよう以下いかの6項目こうもくである;

  1. 物語ものがたり設定せっていは、王政おうせいのフランスでなく、独立どくりつ領主りょうしゅ支配しはいのブルゴーニュあるいはノルマンディー、さもなければイタリアの適切てきせつ独立どくりつ領主りょうしゅ小国しょうこくとすること
  2. ユーゴー原作げんさくおうたのしむ』の主要しゅよう登場とうじょう人物じんぶつ外見がいけん性格せいかく維持いじされるが、名前なまえ変更へんこうする
  3. 貞操ていそうまもろうと部屋へやんだむすめブランシュをうフランソワおうが、部屋へや合鍵あいかぎをポケットからしてわらう、という場面ばめん削除さくじょする
  4. おう(ないしは、1で改変かいへんされた場所ばしょ次第しだいでは領主りょうしゅ)は、娼婦しょうふさそいにおうじて居酒屋いざかやはいるのではなく、おびきされるとする
  5. ころからふくろ死体したい場面ばめんはそのままもちいてよろしい
  6. これらの改変かいへん日時にちじようすることを考慮こうりょして、作品さくひん初演しょえんは1851ねん2がつ28にち以降いこう延期えんきする

ヴェルディはこの覚書おぼえがき条件じょうけんしたがって必要ひつよう改変かいへんすすめた。作曲さっきょくがかなり進捗しんちょくしていたこともあり、主人公しゅじんこうトゥリボレットは、それとよく語感ごかんリゴレット(Rigoletto)に変更へんこうされた(この名前なまえ初出しょしゅつは1851ねん1がつ14にちのヴェルディの書簡しょかんである)。

ヴェルディは1851ねん2がつ19にち、ブッセートの自宅じたくからヴェネツィアに到着とうちゃく稽古けいこ合間あいまっていくつかのオーケストレーションの仕上しあげがなされ、3月11にち初演しょえんむかえた。そしてそれは、すくなくとも20かい再演さいえんともなだい成功せいこうだった。

舞台ぶたい構成こうせい

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ぜん3まく演出えんしゅつによっては場所ばしょことなる2じょうかれているだい1まくをそれぞれ独立どくりつしたまくけ、4まく仕立したてで上演じょうえんされる場合ばあいもある。アルトゥーロ・トスカニーニなどのライヴばんで『歌劇かげき「リゴレット」だい4まく』などと表記ひょうきしてあるのは、それに由来ゆらいする表記ひょうきであり、本来ほんらいは3まく仕立したてのオペラとはいえ間違まちがいとはれない。

  • 前奏ぜんそうきょく
  • だい1まく
    • だい1じょう マントヴァ公爵こうしゃくてい大広間おおひろま
    • だい2じょう がいはずれの物寂ものさびしい一角いっかく
  • だい2まく 公爵こうしゃくてい広間ひろま
  • だい3まく ミンチョ河畔かはん

編成へんせい

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おも登場とうじょう人物じんぶつ

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エンリコ・カルーソーふんするマントヴァ公爵こうしゃく
  • マントヴァ公爵こうしゃくテノール) - Mantovaのつづりは、イタリアの都市としマントヴァおなじ。(後述こうじゅつ#備考びこうらん参照さんしょう
  • リゴレット - 公爵こうしゃくつかえるせむしの道化師どうけしバリトン)。Rigolettoは「になったおどり」、「群衆ぐんしゅう」などの意味いみ[1]
  • ジルダ - リゴレットのむすめ、16さいソプラノ)。GildaのつづりはギルドGilda)におなじ。人名じんめいとしてはHermenegild女性じょせいがた:Hermenegila)や[2]古高ふるたかドイツ gelt起源きげんがある[3]
  • スパラフチーレ - ブルゴーニュまれのころバス)。その名前なまえSparafucileの意味いみは、「じゅうて」(Spara = 動詞どうしつ / て」、fucile = 名詞めいしじゅう」)[ちゅう 1]
  • マッダレーナ - スパラフチーレのいもうとメゾソプラノ / アルト)。Maddalenaは、マグダラのマリアおなじくMagdala(マグダラ)の語形ごけい変化へんか売春ばいしゅんよそお[4]あにによる公爵こうしゃくごろしの手助てだすけにくわわり公爵こうしゃくわなにはめる[5]
  • チェプラーノ伯爵はくしゃく(バリトン)
  • チェプラーノ伯爵はくしゃく夫人ふじん(メゾソプラノ)
  • モンテローネ伯爵はくしゃく(バス)
  • マルッロ、公爵こうしゃく廷臣ていしん(バリトン)
  • マッテオ・ボルサ、公爵こうしゃく廷臣ていしん(テノール)
  • マントヴァ公爵こうしゃく夫人ふじん小姓こしょう(メゾソプラノ)
  • 合唱がっしょう

楽器がっき構成こうせい

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あらすじ

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とき場所ばしょ 16世紀せいきマントヴァ

前奏ぜんそうきょく

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音楽おんがく音声おんせい外部がいぶリンク
前奏ぜんそうきょくのみ試聴しちょうする
G.Verdi - Rigoletto, Preludio - Leonardo Catalanotto指揮しきORCHESTRA, CORO E TECNICI DEL TEATRO MASSIMO BELLINIによる演奏えんそう当該とうがい指揮しきしゃ自身じしん公式こうしきYouTube。

2ふん程度ていどみじかきょくだが、冒頭ぼうとう調しらべはげんなな和音わおんとも執拗しつようかえされる。オペラが進行しんこうするにつれ、このモティーフはモンテローネ伯爵はくしゃくのろいをあらわすことがあきらかになってくる。

だい1まく

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だい1じょうまくひらくと公爵こうしゃくてい大広間おおひろま舞踏ぶとうかいもよおされ、舞台裏ぶたいうらのバンドがにぎやかに音楽おんがくかなでている。マントヴァ公爵こうしゃく最近さいきん日曜日にちようびたび教会きょうかいかけるうつくしくわかむすめのことがになっているが、まずはチェプラーノ伯爵はくしゃく夫人ふじん今夜こんや獲物えものさだめ、つぎからつぎへと女性じょせい手玉てだまたのしみを軽快けいかいなバッラータ『あれかこれか』Questa o quellaうたう。やがて伯爵はくしゃく夫人ふじんあらわれ、公爵こうしゃく言葉ことばたくみに口説くどとし別室べっしつへとれてく。夫人ふじん行方ゆくえさがあるくチェプラーノ伯爵はくしゃくはリゴレットによってわらいものにされる。一方いっぽう、リゴレットのむすめジルダの存在そんざいけ、それがせむしおとこリゴレットの情婦じょうふだと勘違かんちがいした廷臣ていしんたちはうわさばなしつづけている。そこへ老人ろうじんモンテローネ伯爵はくしゃくむすめ名誉めいよきずつけられたとして抗議こうぎあらわれる。リゴレットはかれもまた嘲笑ちょうしょうまとにしようとするが、モンテローネは公爵こうしゃくとリゴレットに痛烈つうれつのろいの言葉ことばをかけ、リゴレットは内心ないしん恐怖きょうふふるえる。

だい2じょう家路いえじいそぐリゴレットだが、モンテローネののろいはその念頭ねんとうらない。ころスパラフチーレがあらわれ、「うつくしいいもうと相手あいてさそし、自分じぶんころす。半分はんぶん前金まえきんいただき、残金ざんきんころしてから」と自分じぶんころ稼業かぎょう説明せつめいするが、リゴレットは「いまようはない」とかれらせる。リゴレットは「おれはこのしたひところし、やつ短剣たんけんころす」と、モノローグ『二人ふたりおなじ』Pari siamoうたう。帰宅きたくしたリゴレットをうつくしいむすめジルダがむかえる。彼女かのじょ父親ちちおや素性すじょうくなったとかされている母親ははおやはどんな女性じょせいだったか、などを矢継やつばやにリゴレットにたずねるが、ジルダにだけは世間せけんみにくさをせたくないとかんがえるリゴレットは、教会きょうかい以外いがい外出がいしゅつするなと厳命げんめいしてる。リゴレットとわりに公爵こうしゃくあらわれる。教会きょうかいかけたむすめはこのジルダだったのだ。かれは「自分じぶんまずしい学生がくせい」と名乗なの熱烈ねつれつ愛情あいじょう告白こくはくする。はじめはおどろくジルダだったが、うぶな彼女かのじょ百戦錬磨ひゃくせんれんま公爵こうしゃく術策じゅっさくまえには無力むりょくまれてはじめての恋愛れんあい感情かんじょう陶然とうぜんとする。愛情あいじょうたしかめう2重唱じゅうしょうのち公爵こうしゃくる。ひとのこるジルダは公爵こうしゃくのこしらえた偽名ぎめい「グヮルティエル・マルデ」をいとおしみ、アリア『したわしき御名ぎょめいCaro nomeうたう。このときリゴレットたくまわりには廷臣ていしんたちが集結しゅうけつしていた。かれらはジルダをリゴレットの情婦じょうふおもんでおり、彼女かのじょ誘拐ゆうかいして公爵こうしゃく献呈けんていすればリゴレットに恰好かっこう復讐ふくしゅうになるとかんがえていた。リゴレットもそこにもどってくるが、廷臣ていしんたちは「いまからチェプラーノ伯爵はくしゃく夫人ふじん誘拐ゆうかいする」とリゴレットをだまし、言葉ことばたくみにリゴレットに目隠めかくしをしてしまう。かれ目隠めかくしをとったときはすでおそく、ジルダは誘拐ゆうかいされてしまう。リゴレットは、自分じぶんにモンテローネののろいがりかかった、とおそれおののく。

だい2まく

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ジルダが行方ゆくえ不明ふめいになったとのほう公爵こうしゃくにもつたわり、いつもはたん好色こうしょくかれも、めずらしく殊勝しゅしょうにもそのあんじるアリア『あのむすめなみだえるようだ』Parmi veder le lagrimeうたう。しかし廷臣ていしんたちが、わかむすめ誘拐ゆうかいし、殿下でんか寝室しんしつたせております、と自慢じまんばなしはじめると、それがジルダであるとさときと寝室しんしつる。わりにリゴレット登場とうじょう道化どうけばなし態度たいどつくろいながらむすめ所在しょざいさがまわる。公爵こうしゃく夫人ふじん小姓こしょう廷臣ていしんたちの会話かいわ小耳こみみにはさみ、ジルダが公爵こうしゃくとも寝室しんしつにいると確信かくしんしたリゴレットは、むすめ返還へんかんうったえる劇的げきてきなアリア『悪魔あくまめ、おにめ』Cortigiani, vil razza dannataうたう。ジルダが寝室しんしつしてきてリゴレットと再会さいかいする。彼女かのじょは、まずしい学生がくせい名乗なのおとこには教会きょうかいはじめて出会であったこと、裏切うらぎられたとったいまでも、かれへの愛情あいじょうわらないことを父親ちちおや切々せつせつうったえる。一方いっぽうリゴレットは、モンテローネにわって自分じぶんこそが公爵こうしゃく復讐ふくしゅうするのだとてんちかう。

だい3まく

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ミンチョ河畔かはんのいかがわしい居酒屋いざかやけんたびそうなかにはスパラフチーレと、騎兵きへい士官しかんなりをした公爵こうしゃくそとにはリゴレットとジルダ。公爵こうしゃくたいする未練みれんれないジルダに、リゴレットは「では真実しんじつるのだ」とかべあなからなかのぞかせる。公爵こうしゃくは、おんなはみなまぐれ、と、有名ゆうめいなカンツォーネ『おんなまぐれ(女心おんなごころうた)』La donna è mobileうたう。スパラフチーレのいもうとマッダレーナがあらわれ、公爵こうしゃくく。マッダレーナを口説くど公爵こうしゃく色目いろめってそのにさせるマッダレーナ、そとからのぞいてなげかなしむジルダ、むすめ名誉めいよのためあらためて復讐ふくしゅうちかうリゴレットの4にんが、これも有名ゆうめいな4重唱じゅうしょううつくしいあいらしいむすめよ』Bella figlia dell'amoreひろげる。リゴレットはむすめに、このまちりヴェローナにけて出発しゅっぱつせよと命令めいれいする。

のこったリゴレットはスパラフチーレに、公爵こうしゃくころ死体したい自分じぶんわたすことを依頼いらいし、前金まえきん金貨きんか10まいわたる。った公爵こうしゃく鼻歌はなうたうたいつつ居酒屋いざかやの2かい寝込ねこんでしまう。そとあらし公爵こうしゃくれたマッダレーナはあにいのちだけはたすけてやってくれとねがう。それはころしょう道徳どうとくはんすると反対はんたいしていたあにいもうとねがいに不承不承ふしょうぶしょうしたがい、真夜中まよなかかねるまでに他人たにんがこの居酒屋いざかやおとずれたら、そのもの身代みがわりにころすことに決定けっていする。ヴェローナきの旅装りょそうつつんだジルダは公爵こうしゃくあきられずふたた登場とうじょう2人ふたり会話かいわき、自分じぶんがその身代みがわりとなることを決断けつだんする。あらし一段いちだんはげしくなるなか、ジルダはついけっして居酒屋いざかやのドアをはたき、なかまねれられる。

あらし次第しだいしずまるころリゴレットがもどってきて、残金ざんきん引換ひきかえに死体したいりの布袋ほている。ミンチョがわれようとするとき、マッダレーナとのたのしい一夜いちやえた公爵こうしゃくが(舞台裏ぶたいうらで)あの『おんなまぐれ(女心おんなごころうた)』をうたいながらるのをきリゴレットはおどろく。あわててふくろけるとそこにはむしいきのジルダ。彼女かのじょは、ちちいつけにそむいたことをびつつ、あいするおとこ身代みがわりになりてんされる幸福こうふくうたっていきえる。のこされたリゴレットは「ああ、あののろいだ!」とさけんで、まく

有名ゆうめいなアリア・重唱じゅうしょうとう

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  • 『あれかこれか』Questa o quella、マントヴァ公爵こうしゃくのバッラータ(だい1まくだい1じょう
  • 二人ふたりおなじ』Pari siamo、リゴレットのモノローグ(だい1まくだい2じょう
  • 2重唱じゅうしょう『それはしん太陽たいようÈ il sol dell'anima、マントヴァ公爵こうしゃく・ジルダ(だい1まくだい2じょう
  • したわしき御名ぎょめいCaro nome、ジルダのアリア(だい1まくだい2じょう
  • 『あのむすめなみだえるようだ』Parmi veder le lagrime、マントヴァ公爵こうしゃくのシェーナとアリア(だい2まく
  • 悪魔あくまめ、おにめ』Cortigiani, vil razza dannata、リゴレットのアリア(だい2まく
  • おんなまぐれ(女心おんなごころうた)』La donna è mobile、マントヴァ公爵こうしゃくのカンツォーネ(だい3まく
  • 4重唱じゅうしょううつくしいあいらしいむすめよ』Bella figlia dell'amore、マントヴァ公爵こうしゃく・マッダレーナ・リゴレット・ジルダ(だい3まく

おんなまぐれ

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マントヴァ公爵こうしゃくのカンツォーネ
おんなまぐれ(La donna è mobile)』
Verdi's La donna è mobile - ジョセフ・カレヤ(Joseph Calleja)のT独唱どくしょう、シャン・ジャン(ちょうつる指揮しきミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響こうきょう楽団がくだんによる演奏えんそう
BBC Radio3公式こうしきYouTube。

La donna è mobile

La donna è mobile
Qual piuma al vento,
Muta d'accento - e di pensiero.


Sempre un amabile,
Leggiadro viso,
In pianto o in riso, - è menzognero.


È sempre misero
Chi a lei s'affida,
Chi le confida - mal cauto il core!


Pur mai non sentesi
Felice appieno
Chi su quel seno - non liba amore!

おんなまぐれ

おんなまぐれ
まるで羽根はね ふうなか
声色こわいろわる そしてしん


いつもあいらしい
可憐かれんなおかお
いたりわらったり うそ出来できてる


いつもあわれだ
おんなしんじたり
けたり 不注意ふちゅうい不用心ぶようじん


なのにづかない
しあわせいっぱいを
あのおちちの あい乾杯かんぱいせねば!

うつくしいあいらしいむすめ

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4重唱じゅうしょう
うつくしいあいらしいむすめよ(Bella figlia dell'amore)』
"Bella Figlia dell'amore" - 吉田よしだ裕史ゆうじ指揮しきボローニャ歌劇かげきじょう管弦楽かんげんがくだんによる演奏えんそう(4ふん39びょうから)。
中央ちゅうおう:マントヴァ公爵こうしゃくうた:ヴァルター・ボリン)とマッダレーナ、ひだり:リゴレットとジルダ、みぎ:スパラフチーレ。
吉田よしだ裕史ゆうじ公式こうしきYouTube。

Bella figlia dell'amore

DUCA a Maddalena:

Bella figlia dell'amore,
Schiavo son dei vezzi tuoi;
Con un detto sol tu puoi
Le mie pene consolar.
Vieni e senti del mio core
Il frequente palpitar.


MADDALENA rispondendo al duca:

Ah! ah! rido ben di core,
Che tai baie costan poco
Quanto valga il vostro gioco,
Mel credete, so apprezzar.
Son avvezza, bel signore,
Ad un simile scherzar.


GILDA a sé stessa:

Ah, così parlar d'amore
A me pur l'infame ho udito!
Infelice cor tradito,
Per angoscia non scoppiar.


RIGOLETTO a Gilda:

Taci, il piangere non vale...
Ch'ei mentiva sei sicura.
Taci, e mia sarà la cura
La vendetta d'affrettar.
Sì, pronta fia, sarà fatale,
Io saprollo fulminar.

うつくしいあいらしいむすめ

公爵こうしゃくからマッダレーナ:

べっぴんな あい乙女おとめ
素敵すてきな 貴君きくんの とりこに
ただ貴君きくんの たった一言ひとこと
ぼくちこんだしんいやすんだ
ちかくへり れてみよしん
むね ふるくるいて はる


マッダレーナから公爵こうしゃくへの返答へんとう

は!は! 本当ほんとう可笑おかしいひと
からかいは簡単かんたんなこと
おいくらかしら あなたの劣情れつじょう
しんめてさ おれいをしたら
もうれたの 色男いろおとこ
ありふれた言葉ことば


ジルダの独白どくはく

ああ、このようにあいうずもれ
わたしにもった 最低さいていひと
裏切うらぎりに しあわせよ
平安へいあんうしない むね りやるなかれ


リゴレットからジルダ:

だまれ いても仕方しかたがないね・・・
欺瞞ぎまんおとこだ おまえかるな
だまれ で、ワシがやることは、
だ、 とっとと かたきちだ
そうだ 用意よういは いいな さあたれ
威力いりょくは 電撃でんげきてき

備考びこう

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  • マントヴァ公爵こうしゃく役名やくめいはイタリア台本だいほんでもIl Duca di Mantovaとのみしるされているが、この時代じだい設定せっていからすると、作曲さっきょくモンテヴェルディ画家がかルーベンスなどの庇護ひごしゃとしてられたヴィンチェンツォ1せい・ゴンザーガのはずである。当初とうしょはその本名ほんみょう言及げんきゅうする台本だいほん作成さくせいされていたが、最終さいしゅうてきには1851ねん2がつ24にち前後ぜんこう検閲けんえつたんに「マントヴァ公爵こうしゃく」とさせられた。もっとも台本だいほん作家さっかピアーヴェによれば「これはたいしたことではない。この時代じだいだれがマントヴァを統治とうちしていたかはみなっているのだから」。たしかにヴィンチェンツォに金銭きんせんてきには浪費ろうひいちめんはあったが、ヴェネツィア検閲けんえつ当局とうきょくによってかれ不当ふとうにも好色こうしょく放蕩ほうとう汚名おめいをもせられることとなった。
  • だい3まく公爵こうしゃくのカンツォーネ『おんなまぐれ(女心おんなごころうた)』はヴェルディ自身じしん自信じしんさくかんがえていたらしく、その秘匿ひとくつとめた。リハーサルへの一般人いっぱんじん出入でいりやぬすきをきんじたとも、初演しょえん公爵こうしゃくやくテノール、ラファエッレ・ミラーテに個人こじんレッスンでのみこのきょくおしえたとも、あるいはオーケストラ演奏えんそうしゃ共演きょうえん声楽せいがくには初演しょえん数時間すうじかんまえになってはじめて公開こうかいしたなどともつたえられ、諸説しょせつ紛々ふんぷんとしている。また、こういった秘匿ひとく努力どりょくにもかかわらず初演しょえん終演しゅうえんにはヴェネツィアまち通行人つうこうにんゴンドラしゅだい多数たすうがこのうたくちずさんでいた、ともいう。これらイタリアじんにありがちなおおげさな逸話いつわ真偽しんぎはさておき、『おんなまぐれ(女心おんなごころうた)』は現在げんざいでもテノール歌手かしゅちゅうもっと有名ゆうめいなショー・ピースのひとつであることはうたがいようがない。
  • このオペラちゅう、リサイタルでたびたび演奏えんそうされるアリアは上記じょうきのようにことけっかないが、その魅力みりょくはむしろ次々つぎつぎつむされる重唱じゅうしょう数々かずかずにあるとかんがえられている。だい規模きぼ合唱がっしょう場面ばめんいているてんでヴェルディのさくおおきな対照たいしょうをなしているのも興味深きょうみぶかい。ヴェルディ自身じしんは、ジルダのためにもういちきょく魅力みりょくてきなアリアを補作ほさくしてほしいという要請ようせいことわ書簡しょかん(1852ねん)において、作曲さっきょくしゃ意図いとでは『リゴレット』は途切とぎれることのない一連いちれんの2重唱じゅうしょうであるべきで、アリアは仕方しかたなくそこにかれているにぎず、これ以上いじょうなにくわえようはない、というむねかんがえをべている。
  • このオペラでは検閲けんえつによる変更へんこう余儀よぎなくされた地名ちめい固有名詞こゆうめいしなどをのぞけばかなりの程度ていどヴィクトル・ユーゴー原作げんさく戯曲ぎきょく忠実ちゅうじつにイタリアしている。それにもかかわらず、ユーゴーには著作ちょさくけんりょう相当そうとうする金銭きんせん受取うけとり一切いっさいなかったためかれ立腹りっぷくフランス訴訟そしょうまで提起ていきした(結果けっか敗訴はいそ)。このためどうオペラのパリ初演しょえん世界せかいしょ都市としおおきくおくれて1857ねん1がつ19にち(イタリア)、世界せかい初演しょえんのほぼ6ねんであった。
  • ヴィクトル・ユーゴー自身じしん、ヴェルディの効果こうかてき重唱じゅうしょうもちかたには驚嘆きょうたんせざるをなかった。どうオペラのパリ初演しょえん観客かんきゃくとして(不承ふしょう不承ぶしょうまねかれたユーゴーはだい3まくの4重唱じゅうしょういて「4にん同時どうじ舞台ぶたい台詞せりふわせて、個々ここ台詞せりふ意味いみ観客かんきゃく理解りかいさせるのは芝居しばいでは不可能ふかのうだ」とべたとつたえられている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ イタリアの芸術げいじゅつ作品さくひんではフェリーニ映画えいがみち』(1954ねん)においても fucile はストーリーのポイントである。『みち』のしゅたる登場とうじょう人物じんぶつである道化師どうけしザンパノは喜劇きげきでそれを ciufile というふうに間違まちがえて観客かんきゃくわらわせる。かれ同業どうぎょう道化師どうけしから ciufile をあだにされ、のちにこのどう業者ぎょうしゃころす。
  2. ^ 公爵こうしゃく台詞せりふ le mie penela mia penaわたしいたみ)の複数ふくすうがたであり、公爵こうしゃく生殖せいしょくわたし生殖せいしょく il mio pene)ではない。モーツァルトのアリア『Cara, se le mie pene いとしいひと、もしもわたしいたみが』(1769ねん)と同様どうようである。Le mie pene男性だんせい意味いみする場合ばあいは、たとえばある特定とくてい男性だんせい生殖せいしょく写真しゃしんふくすうまいあるような状態じょうたいである。
  3. ^ マッダレーナと公爵こうしゃくがらみは上演じょうえん団体だんたいによって演出えんしゅつ様々さまざまであり、性的せいてき過激かげき場合ばあいもある。
  4. ^ マントヴァ公爵こうしゃくとマッダレーナの性的せいてき描写びょうしゃながれのなかでジルダは scoppiar という言葉ことばはっするが、これはむねけるという意味合いみあいである。おと類似るいじする scopare性交せいこう意味いみする俗語ぞくご)と誤認ごにんしないように区別くべつする必要ひつようがある。
  5. ^ リゴレットの台詞せりふ mentiva とは、「かれ(Mantova公爵こうしゃく)はうそをついた」 という意味いみ動詞どうし

出典しゅってん

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  1. ^ rigoletto 伊和いわちゅう辞典じてん 2はん解説かいせつ”. コトバンク
  2. ^ Josep M. Albaigès i Olivart, Diccionario de nombres de personas, Edicions Universitat Barcelona, 1993, pp. 126, 268.
  3. ^ The meaning, origin and history of the given name Gilda”. Behind the Name
  4. ^ Oxford Reference: Sparafucile”. オックスフォおっくすふぉド大学どだいがく出版しゅっぱんきょく. 参照さんしょうもと: Joyce Bourne, A Dictionary of Opera Characters (2 ed.), Oxford University Press, 2008
  5. ^ Oxford Reference: Maddalena”. オックスフォおっくすふぉド大学どだいがく出版しゅっぱんきょく. 参照さんしょうもと: Joyce Bourne, A Dictionary of Opera Characters (2 ed.), Oxford University Press, 2008
  6. ^ Bella figlia dell'amore, Op.61 (Krüger, Wilhelm)”. IMSLP

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Julian Budden, "The Operas of Verdi (Volume 1)", Cassell, (ISBN 0-3043-1058-1)
  • Charles Osbone, "The Complete Operas of Verdi", Indigo, (ISBN 0-575-40118-4)
  • アッティラ・チャンパイ+ディートマル・ホラント(へん)『リゴレット』(名作めいさくオペラブックス10)音楽之友社おんがくのともしゃ (ISBN 4-276-37510-X)
  • えいちく由幸よしゆき「ヴェルディのオペラ―ぜん作品さくひん魅力みりょくさぐる」音楽之友社おんがくのともしゃ (ISBN 4-2762-1046-1)

外部がいぶリンク

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