『椿 つばき 姫 ひめ 』初演 しょえん 当時 とうじ の台本 だいほん 。1852年 ねん 出版 しゅっぱん 。
『椿 つばき 姫 ひめ 』(つばきひめ)は、ジュゼッペ・ヴェルディ が1853年 ねん に発表 はっぴょう したオペラ である。原題 げんだい は『堕落 だらく した女 おんな (直訳 ちょくやく は「道 みち を踏 ふ み外 はず した女 おんな 」)』を意味 いみ するLa traviata (ラ・トラヴィアータ)。日本 にっぽん では原作 げんさく 小説 しょうせつ 『椿 つばき 姫 ひめ 』と同 どう じ『椿 つばき 姫 ひめ 』(仏 ふつ : La Dame aux camélias (椿 つばき の花 はな の貴婦人 きふじん )の意訳 いやく )のタイトルで上演 じょうえん されることが多 おお い。
作品 さくひん は全 ぜん 3幕 まく からなり、アレクサンドル・デュマ・フィスによる原作 げんさく 小説 しょうせつ に基 もと づきフランチェスコ・マリア・ピアーヴェ が台本 だいほん を書 か いた。長編 ちょうへん の原作 げんさく から、要領 ようりょう 良 よ く主要 しゅよう なエピソードを取 と り上 あ げて、聴 き きどころに富 と んだ構成 こうせい となっている。悲劇 ひげき でも音楽 おんがく 的 てき には明 あか るさ、華 はな やかさ、力強 ちからづよ さを失 うしな わないヴェルディの特質 とくしつ がもっとも良 よ く発揮 はっき されており、人気 にんき の源泉 げんせん となっている。
1852年 ねん 、パリ に滞在 たいざい したヴェルディはデュマ・フィスの戯曲 ぎきょく 版 はん 『椿 つばき 姫 ひめ 』の上演 じょうえん を見 み て感激 かんげき し、当時 とうじ 新作 しんさく の作曲 さっきょく 依頼 いらい を受 う けていたヴェネツィア のフェニーチェ劇場 げきじょう のために、翌 よく 1853年 ねん 初 はじ めに比較的 ひかくてき 短時間 たんじかん で作曲 さっきょく された。
初演 しょえん 当時 とうじ は娼婦 しょうふ を主役 しゅやく にした作品 さくひん ということで、イタリア の統治 とうち 国 こく 側 がわ の検閲 けんえつ により道徳 どうとく 的 てき な観点 かんてん から問題 もんだい 視 し されたが、ヒロインが最後 さいご に死 し ぬということで上演 じょうえん がゆるされたと言 い われる。初演 しょえん は1853年 ねん 3月6日 にち 、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場 げきじょう で行 おこな われた。しかし、準備 じゅんび 不足 ふそく (作品 さくひん の完成 かんせい から初演 しょえん まで数 すう 週間 しゅうかん しかなかった)などから、初演 しょえん では聴衆 ちょうしゅう からも批評 ひひょう 家 か からもブーイング を浴 あ び、歴史 れきし 的 てき 大 だい 失敗 しっぱい を喫 きっ した(蝶々夫人 ちょうちょうふじん 、カルメン と共 とも に有名 ゆうめい オペラの3大 だい 失敗 しっぱい ということがある)。しかし、翌年 よくねん の同地 どうち での再演 さいえん では入念 にゅうねん なリハーサルを重 かさ ねた結果 けっか 、聴衆 ちょうしゅう に受 う け入 い れられた。その後 ご も上演 じょうえん を重 かさ ねる毎 ごと に人気 にんき を呼 よ び、今日 きょう ではヴェルディの代表 だいひょう 作 さく とされるだけでなく、世界 せかい のオペラ劇場 げきじょう の中 なか でも最 もっと も上演 じょうえん 回数 かいすう が多 おお い作品 さくひん の一 ひと つに数 かぞ えられる。
『椿 つばき 姫 ひめ 』初演 しょえん 当時 とうじ の公演 こうえん 案内 あんない
『椿 つばき 姫 ひめ 』ヴォーカルスコア。1855年 ねん 頃 ごろ 出版 しゅっぱん 。
当時 とうじ 、先妻 せんさい マルゲリータ亡 な き後 あと のヴェルディは、歌手 かしゅ ジュゼッピーナ・ストレッポーニ と同棲 どうせい していた。ジュゼッピーナ自身 じしん も父親 ちちおや 違 ちが いの3児 じ の未婚 みこん の母 はは であった。敬虔 けいけん なカトリック 信者 しんじゃ であった彼 かれ としては、支援 しえん 者 しゃ でもあった先妻 せんさい の父 ちち への気遣 きづか いもあり、後 うし ろめたさはあったと思 おも われる。そのため、原作 げんさく がデュマ・フィスの実体験 じつたいけん を元 もと にしたように、ヴェルディ自身 じしん も自 みずか らの境遇 きょうぐう との暗合 あんごう を強 つよ く意識 いしき していたものと推察 すいさつ される。
原作 げんさく の『椿 つばき の花 はな の貴婦人 きふじん 』という名前 なまえ を用 もち いず、「道 みち を踏 ふ み外 はず した女 おんな 、堕落 だらく した女 おんな 」を意味 いみ する「トラヴィアータ」というタイトルをつけた。 またヒロインの名前 なまえ は、奇 く しくも先妻 せんさい と同名 どうめい のマルグリットから、「スミレ 」を意味 いみ するヴィオレッタに、恋人 こいびと の名前 なまえ はアルマン・デュヴァルからアルフレード・ジェルモンに変更 へんこう された。
原作 げんさく のヒロイン、マルグリットは娼婦 しょうふ であることを特 とく に恥 はじ であるとも罪 つみ であるとも思 おも ってはいないが、個人 こじん として誇 ほこ り高 たか く生 い きているよう描 えが かれている。純情 じゅんじょう な青年 せいねん アルマンの思 おも いを受 う け入 い れた後 のち でも、現実 げんじつ 世界 せかい の立場 たちば (貴族 きぞく の支援 しえん を受 う けているという立場 たちば )との折 お り合 あ いをつけようとする。彼 かれ は恋人 こいびと のそうした葛藤 かっとう を理解 りかい できず、嫉妬 しっと 心 しん と恋心 こいごころ の相克 そうこく に悩 なや み、衝動 しょうどう 的 てき に彼女 かのじょ を攻撃 こうげき してしまった結果 けっか 、彼女 かのじょ は酷 ひど く傷 きず つく。
オペラではヒロインの行動 こうどう について、原作 げんさく よりもアルフレードとの純愛 じゅんあい に比重 ひじゅう を置 お いて描 えが かれており、現実 げんじつ との葛藤 かっとう は第 だい 2幕 まく の父 ちち ジェルモンとの対決 たいけつ 場面 ばめん に集約 しゅうやく される感 かん がある。同 どう 場面 ばめん はこのオペラの重要 じゅうよう 場面 ばめん となっており、音楽 おんがく 的 まと にも聴 き き所 しょ となっている。ジェルモンは保守 ほしゅ 的 てき な良識 りょうしき の持 も ち主 ぬし かつ少々 しょうしょう 偽善 ぎぜん 的 てき ながらも、基本 きほん 的 てき に善人 ぜんにん として描 えが かれている。父 ちち に比 くら べるとアルフレードの役柄 やくがら は比較的 ひかくてき 単純 たんじゅん で、前 ぜん 2者 しゃ の精神 せいしん 的 てき 年齢 ねんれい に達 たっ していない青年 せいねん の行動 こうどう を示 しめ す。
史実 しじつ では一人 ひとり 寂 さび しく死 し を迎 むか えたデュマ・フィスの実際 じっさい の恋人 こいびと や、小説 しょうせつ のマルグリットの場合 ばあい とは異 こと なり、オペラ版 ばん では最後 さいご の幕 まく で恋人 こいびと たちは再会 さいかい し、ヴィオレッタはジェルモン親子 おやこ に看取 みと られて亡 な くなってゆく。このオペラオリジナルの場面 ばめん 設定 せってい については、見 み せ場 ば としての必要 ひつよう 性 せい という指摘 してき の他 ほか 、作曲 さっきょく 者 もの がジュゼッピーナに配慮 はいりょ したのだとも考 かんが えられる。おそらく同様 どうよう の理由 りゆう で、原作 げんさく で重要 じゅうよう な意味 いみ を持 も つ、アルマンがマルグリットの墓 はか を暴 あば く場面 ばめん や、「最後 さいご の一夜 いちや 」の場面 ばめん (バレエ (ノイマイヤー版 ばん )では最大 さいだい の見 み せ場 ば )は描 えが かれていない。
なお、今日 きょう の演出 えんしゅつ の中 なか に、二人 ふたり は実際 じっさい には再会 さいかい できず、第 だい 3幕 まく のジェルモン父子 ふし の登場 とうじょう は死 し に際 ぎわ のヴィオレッタの幻覚 げんかく であるという設定 せってい のものがある。日本 にっぽん の上演 じょうえん で、冒頭 ぼうとう アルフレードが「自分 じぶん は彼女 かのじょ の最期 さいご に間 ま に合 あ わなかった」と台詞 せりふ で語 かた るものもあったが、これは他 た の演出 えんしゅつ 上 じょう の表現 ひょうげん で語 かた るべき、という批判 ひはん があった。[要 よう 出典 しゅってん ]
フルート 2(第 だい 2奏者 そうしゃ はピッコロ 持 も ち替 か え)、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、トロンボーン 3、チンバッソ 、ティンパニ 、大 だい 太鼓 たいこ (慣例 かんれい 的 てき にシンバル を重 かさ ねて演奏 えんそう される)、トライアングル 、弦 つる 五 ご 部 ぶ
舞台 ぶたい 上 じょう
タンブリン (複数 ふくすう )、(闘牛 とうぎゅう 士 し の)槍 やり (複数 ふくすう )
舞台裏 ぶたいうら
シーンにより、次 つぎ のように異 こと なる楽器 がっき が要求 ようきゅう される。
第 だい 1幕 まく 、別室 べっしつ から聞 き こえてくるワルツの音楽 おんがく
バンダ (ヴェルディはピアノ譜 ふ を書 か いたのみで、具体 ぐたい 的 てき な編成 へんせい を指定 してい していない。)
第 だい 1幕 まく 、ヴィオレッタのアリア「花 はな から花 はな へ」
ハープ
第 だい 3幕 まく 、謝肉祭 しゃにくさい の合唱 がっしょう
ピッコロ2、クラリネット4、ホルン2、トロンボーン2、タンブリン(複数 ふくすう )、カスタネット (複数 ふくすう )
約 やく 2時 じ 間 あいだ 20分 ふん (カット無 な しで各 かく 30分 ふん 、70分 ふん (1場 じょう 50分 ふん 、2場 じょう 20分 ふん )、40分 ふん )。大幅 おおはば にカットして1時 じ 間 あいだ 50分 ふん 前後 ぜんこう で上演 じょうえん されることも多 おお い。
第 だい 3幕 まく 冒頭 ぼうとう の場面 ばめん の哀愁 あいしゅう をおびた旋律 せんりつ が奏 かな でられたのち、第 だい 2幕 まく でヴィオレッタがアルフレードに別 わか れを告 つ げる場面 ばめん の旋律 せんりつ が引 ひ き継 つ ぐ。華 はな やかに装飾 そうしょく しつつも、どこか物悲 ものがな しい気分 きぶん を作 つく り、静 しず かに終 お わる。
ヴィオレッタの住 す む屋敷 やしき 。今夜 こんや も賑 にぎ やかなパーティー が開 ひら かれており、女 おんな 主人 しゅじん は来客 らいきゃく をもてなしている。そこへアルフレードがガストーネ子爵 ししゃく の紹介 しょうかい でやってきてヴィオレッタに紹介 しょうかい される。歌 うた を1曲 きょく 歌 うた うよう勧 すす められた彼 かれ はいったん辞退 じたい するが皆 みな の再度 さいど の勧 すす めでグラスを片手 かたて に準備 じゅんび をする。一同 いちどう の沈黙 ちんもく と緊張 きんちょう のなかアルフレードは情熱 じょうねつ を込 こ めて歌 うた い、ヴィオレッタが加 くわ わってデュエットになる。さらに皆 みな が加 くわ わって華 はな やかに歌 うた い上 あ げる(乾杯 かんぱい の歌 うた )。
別室 べっしつ から、ヴィオレッタが用意 ようい した舞踏 ぶとう 会 かい の音楽 おんがく が聞 き こえてくる。皆 みな で行 い こうとすると、ヴィオレッタがめまいをおこして椅子 いす に座 すわ り込 こ む。何 なん でもないからと一人 ひとり 部屋 へや に残 のこ った彼女 かのじょ の所 ところ にアルフレードが来 く る。アルフレードはヴィオレッタに、こんな生活 せいかつ をしていてはいけないといい、1年 ねん 前 まえ からあなたを好 す きだったと告白 こくはく する(ある日 ひ 、幸運 こううん にも )。ヴィオレッタは最初 さいしょ は軽 かる くあしらうが、彼 かれ の真剣 しんけん さに少 すこ し心 しん を動 うご かされる。ヴィオレッタは椿 つばき の花 はな を渡 わた して再会 さいかい を約 やく し、「この花 はな がしおれるころに」という。有頂天 うちょうてん になるアルフレードに「もう一度 いちど 愛 あい しているといってくれますか」とヴィオレッタが尋 たず ねると、「はい、何 なん 度 ど でも!」と彼 かれ は応 おう ずる。
アルフレードに続 つづ き来客 らいきゃく が去 さ って一人 ひとり になったヴィオレッタは物 もの 想 おも いにふける。「不思議 ふしぎ だわ」(作品 さくひん を通 つう じ、彼女 かのじょ はこの言葉 ことば を各 かく 幕 まく で1回 かい 、計 けい 3回 かい 繰 く り返 かえ す)と純情 じゅんじょう な青年 せいねん の求愛 きゅうあい に心 しん ときめかせている自分 じぶん の心境 しんきょう をいぶかる。そして、彼 かれ こそ今 いま まで待 ま ち望 のぞ んできた真実 しんじつ の恋 こい の相手 あいて ではないかと考 かんが える(ああ、そは彼 かれ の人 ひと か )。しかし、現実 げんじつ に引 ひ き戻 もど された彼女 かのじょ は「そんな馬鹿 ばか なことをいってはいけない。自分 じぶん は今 いま の生活 せいかつ から抜 ぬ け出 だ せる訳 わけ が無 な い。享楽 きょうらく 的 てき な人生 じんせい を楽 たの しむのよ」と自分 じぶん にい聞 いき かせる。(花 はな から花 はな へ )彼女 かのじょ の中 なか でアルフレードとの恋愛 れんあい を肯定 こうてい するもう一人 ひとり の自分 じぶん との葛藤 かっとう に、千々 ちじ に乱 みだ れる心 しん を表 あらわ す、コロラトゥーラ 唱法を駆使 くし した華 はな やかな曲 きょく で幕切 まくぎ れとなる。
パリ 郊外 こうがい のヴィオレッタの屋敷 やしき
二人 ふたり の出会 であ いから数 すう か月 げつ が経 た った。ヴィオレッタは貴族 きぞく のパトロン との華 はな やかな生活 せいかつ を捨 す て、この家 いえ でアルフレードと静 しず かに暮 く らすことを選 えら んだのである。彼女 かのじょ との生活 せいかつ の幸福 こうふく を語 かた るアルフレード(燃 も える心 しん を )は、丁度 ちょうど 帰宅 きたく した召使 めしつか いから、この家 いえ での生活 せいかつ 費 ひ のためにヴィオレッタが彼女 かのじょ の財産 ざいさん を売却 ばいきゃく していたことを聞 き き、気付 きづ かなかった自分 じぶん を恥 は じるとともに売 う ったものを取 と り戻 もど そうとパリに向 む かう。
そこへヴィオレッタが登場 とうじょう し、彼 かれ のパリ行 い きを聞 き き(理由 りゆう は知 し らない)、いぶかる(2度目 どめ の「不思議 ふしぎ ね」)。そこにアルフレードの父親 ちちおや ジョルジョ・ジェルモンが突如 とつじょ 来訪 らいほう する。驚 おどろ きながらも礼儀 れいぎ 正 ただ しく迎 むか える彼女 かのじょ に、あたりを見回 みまわ し「息子 むすこ をたぶらかして、ずいぶんと贅沢 ぜいたく な暮 く らしをしていますな」といきなりなじったため、ヴィオレッタは「私 わたし の家 いえ で女 おんな の私 わたし に失礼 しつれい なことを言 い わないでください」と毅然 きぜん と応 おう じ、たじたじとなるジェルモンに秘密 ひみつ を打 う ち開 あ ける。彼女 かのじょ が自分 じぶん の財産 ざいさん を息子 むすこ との生活 せいかつ のために手放 てばな しつつあることを知 し ったジェルモンは非礼 ひれい を詫 わ びる。アルフレードをどんなにか愛 あい しているかと理由 りゆう を説明 せつめい する彼女 かのじょ に対 たい し、ジェルモンは本題 ほんだい を切 き り出 だ す。息子 むすこ と別 わか れてくれというのである。駄目 だめ ですと即座 そくざ に断 ことわ るヴィオレッタに、彼 かれ はアルフレードの妹 いもうと の縁談 えんだん に差 さ し支 つか えるから、助 たす けて欲 ほ しいと迫 せま る(天使 てんし のように清 きよ らかな娘 むすめ )。ついに要求 ようきゅう を受 う け入 い れ、彼女 かのじょ は身 み を引 ひ くことを決心 けっしん する(お嬢様 じょうさま にお伝 つた え下 くだ さい )。しかし単 たん に家 いえ を去 さ ってもアルフレードは追 お いかけてくるだろう。方法 ほうほう は任 まか せて下 くだ さいと請合 うけあ うヴィオレッタに礼 れい を言 い って、父 ちち ジェルモンはいったん去 さ る。
一人 ひとり になったヴィオレッタは一計 いっけい を案 あん じ、アルフレードに手紙 てがみ を書 か く。彼女 かのじょ はアルフレードと別 わか れて元 もと のパトロン との生活 せいかつ に戻 もど る、という偽 いつわ りのメッセージを送 おく ろうとしたのである。そこへアルフレードが帰宅 きたく する。彼 かれ は父 ちち が訪 たず ねていくという手紙 てがみ を見 み て、すでに父 ちち が来 き たとは知 し らずに、ヴィオレッタに大丈夫 だいじょうぶ だなどという。ヴィオレッタは、アルフレードの父 ちち が来 く るなら席 せき を外 はず して庭 にわ にいると言 い いその場 ば を去 さ る。別 わか れ際 ぎわ に彼女 かのじょ は「アルフレード、いつまでも愛 あい しているわ、あなたも私 わたし と同 おな じだけ愛 あい して。さようなら」と第 だい 1幕 まく の前奏 ぜんそう 曲 きょく の後半 こうはん の旋律 せんりつ で歌 うた う。アルフレードは彼女 かのじょ の様子 ようす を不審 ふしん に思 おも うが、父親 ちちおや が来 く ることに動揺 どうよう しているのだと思 おも い込 こ む。アンニーナが登場 とうじょう し、ヴィオレッタが急遽 きゅうきょ 出 で かけたこと、手紙 てがみ を預 あず かったことを告 つ げる。不安 ふあん にかられつつ手紙 てがみ を読 よ み、アルフレードは自分 じぶん が裏切 うらぎ られたと思 おも い込 こ んで激怒 げきど する。そこに父 ちち ジェルモンが再 さい 登場 とうじょう して、息子 むすこ を慰 なぐさ め、故郷 こきょう のプロヴァンス に帰 かえ ろうとなだめる(プロヴァンスの海 うみ と陸 りく )。しかし息子 むすこ は自分 じぶん の受 う けた恥辱 ちじょく を濯 すす ぐのだといい、パリに向 む かう。
パリ市内 しない のフローラの屋敷 やしき
相変 あいか わらず貴族 きぞく と愛人 あいじん たちが戯 じゃ れあう日々 ひび である。丁度 ちょうど 仮面 かめん 舞踏 ぶとう 会 かい が開 ひら かれている。フローラとドビニー侯爵 こうしゃく 、グランヴィル医師 いし らは、アルフレードとヴィオレッタが別 わか れたという噂 うわさ 話 ばなし をしている。ジプシーの占 うらな い師 し やマタドールなどの仮装 かそう の後 のち 、アルフレードが登場 とうじょう 、彼 かれ らはカード の賭 か けを始 はじ める。そこにドゥフォール男爵 だんしゃく にエスコートされたヴィオレッタが登場 とうじょう 、ドゥフォールはアルフレードを避 さ けるようヴィオレッタに指示 しじ する。アルフレードはつきまくり、ヴィオレッタへの皮肉 ひにく を言 い う。それに激高 げっこう したドゥフォールも賭 か けに参加 さんか するが、ドゥフォールはアルフレードに大 だい 負 ま けする。そこに夕食 ゆうしょく の準備 じゅんび ができ、一同 いちどう 退場 たいじょう する。アルフレードとドゥフォールも後 ご ほどの再戦 さいせん を約束 やくそく して退場 たいじょう する。アルフレードの身 み を案 あん じたヴィオレッタは彼 かれ を呼 よ び出 だ し、自分 じぶん のことなど忘 わす れ、逃 に げて欲 ほ しいと訴 うった える。それに対 たい してアルフレードは復縁 ふくえん を迫 せま るが、ジェルモンとの約束 やくそく で真意 しんい を言 い えないヴィオレッタはドゥフォールを愛 あい していると言 い ってしまう。それに激高 げっこう したアルフレードは皆 みな を呼 よ び出 だ し、これで借 か りは返 かえ したと叫 さけ んで先程 さきほど 賭 か けで得 え た札束 さつたば をヴィオレッタに投 な げ付 つ ける。自分 じぶん の真意 しんい が伝 つた わらず、皆 みな の面前 めんぜん で侮辱 ぶじょく された彼女 かのじょ は気 き を失 うしな う。一同 いちどう がアルフレードを非難 ひなん しているところに父 ちち ジェルモンが現 あらわ れ、息子 むすこ の行動 こうどう を諌 いさ める。自分 じぶん のやったことを恥 は じるアルフレードと、真相 しんそう を言 い えない父 ちち ジェルモンの独白 どくはく 、アルフレードを思 おも いやるヴィオレッタの独白 どくはく 、ヴィオレッタを思 おも いやる皆 みな の心境 しんきょう をうたい、ドゥフォールはアルフレードに決闘 けっとう を申 もう し込 こ んで第 だい 2幕 まく を終 お わる。
第 だい 1幕 まく 前奏 ぜんそう 曲 きょく と同 おな じ音楽 おんがく が、やはり弦楽 げんがく 合奏 がっそう で始 はじ まる。いっそう悲痛 ひつう な調子 ちょうし で演奏 えんそう され、アルフレードに愛 あい を告 つ げる音楽 おんがく はもはや登場 とうじょう しない。切 き れ切 ぎ れになったフレーズでひっそりと、弱々 よわよわ しく終 お わる。
パリのヴィオレッタの屋敷 やしき
数 すう か月 げつ が経 た った。アルフレードは男爵 だんしゃく と決闘 けっとう して勝 か ち、男爵 だんしゃく は傷 きず ついたが快方 かいほう に向 む かっている。国外 こくがい に出 で たアルフレードに父親 ちちおや は手紙 てがみ を書 か いてヴィオレッタとの約束 やくそく を告白 こくはく し、交際 こうさい を許 ゆる すことを伝 つた えてヴィオレッタの元 もと にもどるよう促 うなが しており、そのことをヴィオレッタにも手紙 てがみ を書 か いていた。しかし、皮肉 ひにく なことにヴィオレッタの生命 せいめい は尽 つ きかけていた。持病 じびょう の肺結核 はいけっかく が進行 しんこう していたのである。
幕 まく が上 あ がると、ヴィオレッタがベッドに寝 ね ている。彼女 かのじょ はアルフレードの帰 かえ りを今 こん か今 こん かと待 ま ちわびている。何 なん 度 ど となく読 よ んだジョルジョからの手紙 てがみ をもう一度 いちど 読 よ む(ここは歌 うた わずにほとんど朗読 ろうどく する)。読 よ み終 お わった彼女 かのじょ は一言 ひとこと 「もう遅 おそ いわ!」と叫 さけ び、過 す ぎた日 ひ を思 おも って歌 うた う(過 か ぎし日 び よ、さようなら )。「ああ、もう全 すべ ておしまい」と絶望 ぜつぼう 的 てき に歌 うた い終 お わると、外 そと でカーニバル の行進 こうしん の歌声 うたごえ が聴 き こえる。
医師 いし がやってきてヴィオレッタを診察 しんさつ し励 はげ ますが、アンニーナにはもう長 なが くないことを告 つ げる。そこにとうとうアルフレードが戻 もど ってくる。再会 さいかい を喜 よろこ ぶ二人 ふたり は、パリを出 で て田舎 いなか で二人 ふたり 楽 たの しく暮 く らそうと語 かた り会 あ う(パリを離 はな れて )。しかし、死期 しき の迫 せま ったヴィオレッタは倒 たお れ臥 ふ す。あなたに会 あ えた今 いま 、死 し にたくないとヴィオレッタは神 かみ に訴 うった える。そこに医師 いし や父 ちち ジェルモンが現 あらわ れるが、どうすることもできない。ヴィオレッタはアルフレードに自分 じぶん の肖像 しょうぞう を託 たく し、いつか良 よ い女性 じょせい が現 あらわ れてあなたに恋 こい したらこれを渡 わた して欲 ほ しいと頼 たの む。
彼女 かのじょ は「不思議 ふしぎ だわ、新 あたら しい力 ちから がわいてくるよう」といいながらこと切 き れ、一同 いちどう が泣 な き伏 ふ すなかで幕 まく となる。