スミレ

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スミレ
Viola mandshurica
Viola mandshurica(2006-4-23)
分類ぶんるいAPG III
さかい : 植物しょくぶつかい Plantae
階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ Angiosperms
階級かいきゅうなし : 真正しんしょうそう子葉しようるい Eudicots
階級かいきゅうなし : バラるい Rosids
階級かいきゅうなし : 真正しんしょうバラるいI Eurosids I
: キントラノオ Malpighiales
: スミレ Violaceae
ぞく : スミレぞく Viola
たね : スミレ V. mandshurica
学名がくめい
Viola mandshurica W.Becker (1917)[1]
シノニム
和名わみょう
スミレ
変種へんしゅ[3]
道路どうろえん群生ぐんせい

スミレすみれ[4])は、スミレスミレぞく植物しょくぶつ総称そうしょうであるが、狭義きょうぎには、Viola mandshurica というたね和名わみょうである。

ここではたねとしてのスミレをしるす。なお、類似るいじしゅきんえんしゅおおく、一般いっぱんにはそれらを区別くべつせずにスミレと総称そうしょうしていることがおおい。それらについても下記かき参照さんしょうされたい。「人間にんげんとのかかわり」「詩歌しかうたわれたスミレ」「象徴しょうちょう」「日本にっぽんのスミレ」については、スミレぞく参照さんしょうされたい。

名称めいしょう

「スミレ」のはそのはな形状けいじょうぼくれ(ぼくつぼ)をおもわせることによる、というせつ牧野まきの富太郎とみたろうとなえ、牧野まきの著名ちょめいさもあってひろ一般いっぱん流布るふしているが、定説ていせつとはえない。

学名がくめいたね小名しょうみょう mandshurica は「満州まんしゅうの」という意味いみである。和名わみょうである「スミレ」は、このままだとぞく、さらにはまぎらわしいので、スミレ愛好あいこうとくほんたね場合ばあい、この由来ゆらいするマンジュリカぶことがある。

別名べつめい、ケナシスミレ[1]、キンモンスミレ[1]、オオバナスミレ[1]、スモウトリバナ[4]ともよばれる。中国ちゅうごく植物しょくぶつめいは、東北とうほく堇菜[1]

分布ぶんぷ

北海道ほっかいどうから屋久島やくしままでの日本にっぽん列島れっとうひろられる[5]国外こくがいでは朝鮮ちょうせん中国ちゅうごくからウスリーおよぶ。日当ひあたりのよい土手どて野原のはら道路どうろ山道さんどう沿いなどに自生じせいする[4]平地ひらち普通ふつうで、山間さんかんみちばたから都会とかいまで、都会とかいではコンクリートのひびとうからもかおす。

特徴とくちょう

たねめいとしてのスミレViola mandshurica)は、みちばたはるはなかせる野草やそうである。日本にっぽんかずあるスミレのなかまの代表だいひょうかくとしてもられる[6]ふかむらさき菫色すみれいろ)のはなかせる。

多年草たねんそう[4]草丈くさたけは10センチメートル (cm) 前後ぜんこうになる[5]地下茎ちかけいふとくてみじかく、多数たすうじょうす。さいから直立ちょくりつし、すこながめの葉柄ようへいにはつばさがあり[6]すこやじりかたちっぽいさきまるをつける。スミレの仲間なかまには、地上ちじょうくきがるものと、地上ちじょうくきがなくてがすべて根元ねもとからるものがあるが、ほんしゅ後者こうしゃである[5]

花期かきはる[5]よりもたかはながらさきに、紫色むらさきいろはな1個いっこ[5]はなちょうがたをした独特どくとくかたちで、ラッパのようなかたちはな横向よこむきかややなな下向したむきにつける。5まいはなびらおおきさがおなじでなく、したがわの1まいおおきいので、はなかたち左右さゆう対称たいしょうになる。後方こうほう突起とっきぶつであるラッパのかんたる部分ぶぶんは、おおきい花弁はなびらおく隆起りゅうきしたもので(きょ)といい、そのなかはなみつめている[4][5]花茎かけい根際ねぎわからて、ややがり、てっぺんでしたいてはなのラッパのかん中程なかほど上側うわがわからく。はなには閉鎖へいさはなじり、むしたすけをりずに自家じか受粉じゅふんして果実かじつをつくる[5]果実かじつ蒴果で、はじめいているがじゅくすとうえいて3つにきれひらけして、30 - 50褐色かっしょく種子しゅし露出ろしゅつする[7]種子しゅしながさは1.8ミリメートル (mm) ほどの倒卵形とうらんけいで、へそがわとがしゅまくらがある[7]種子しゅしはしに、アリこの脂肪しぼうかたまりエライオソーム)をつけていて、種子しゅしごとアリがかえるので生育せいいくいきひろげることができる[5]

利用りよう

べられる野草やそうのひとつとしてられ、若芽わかめ若葉わかば、つぼみ、はな利用りようする。採取さいしゅ適期てっき暖地だんちが4 - 5月、寒冷かんれいでは5 - 6がつごろとされ、若芽わかめ若葉わかば葉柄ようへいごと[4]灰汁あくすくなく、かるでてみずにとってまし、おひたしものものこまかくきざんでぜごはんにした「スミレめし」にしたり、せいのままてんぷらしるサラダにする[4][5]はな部分ぶぶんはさっと熱湯ねっとうにくぐらせてすいまし、ものものわんダネ、せいのままサラダのいろどりや砂糖さとう寒天かんてんせ、はなしゅにする[4]食味しょくみはあくやクセがなく、こころよざわりがたのしめ、はな使つかうとうつくしい料理りょうりになるとひょうされている[4]

食用しょくよう利用りようできるのは、ほんたねスミレのほか、タチツボスミレオオバキスミレスミレサイシンノジスミレなどである[4]。ただしのスミレ植物しょくぶつたとえばパンジーニオイスミレなど有毒ゆうどくなものがあるため注意ちゅうい必要ひつようである。

薬効やっこうとして、利尿りにょう血圧けつあつ降下こうか作用さようがあるとされる[5]

毒性どくせい

変種へんしゅ

たねない変種へんしゅとしては、以下いかのようなものがある。

アツバスミレ Viola mandshurica var. triangularis Mizushima
本州ほんしゅう中部ちゅうぶ南岸なんがんから九州きゅうしゅうにわたる海岸かいがんられるもの。あつくてはばひろく、表面ひょうめん光沢こうたくがある。
アナマスミレ Viola mandshurica var. crassa Tatew.
北海道ほっかいどうから本州ほんしゅう中部ちゅうぶ日本海にほんかいがわ海岸かいがんがたほこがたほそく、あつくて光沢こうたくがある。

類似るいじしゅ

スミレぞくには種類しゅるいおおい。日本にっぽんさんでスミレに姿すがたたねとしては以下いかのようなものがある。いずれもくき地表ちひょうにあってふとくてごくみじかく、じょう。また、人里ひとざと周辺しゅうへんかおすものもおおい。

ヒメスミレ Viola confusa Champ. ex Bentham subsp. nagasakiensis (W. Becker) F. Maek. et Hashimoto
人家じんか周辺しゅうへんおおい。全体ぜんたいいちまわちいさく、三角形さんかっけい本州ほんしゅうから九州きゅうしゅう台湾たいわん分布ぶんぷ
ノジスミレ Viola yedoensis Makino
平地ひらち生育せいいく普通ふつう花茎かけいいちめんがある。はややなが楕円だえんかたちっぽい。本州ほんしゅうから九州きゅうしゅう朝鮮ちょうせん南部なんぶ中国ちゅうごく分布ぶんぷ
コスミレ Viola japonica Langsd.
たまごかたちっぽいハートがた北海道ほっかいどう南西なんせいから九州きゅうしゅう朝鮮ちょうせん南部なんぶ分布ぶんぷ
リュウキュウコスミレ Viola pseudo-japonica Nakai
コスミレにるが、はハートがたより三角さんかくちかい。南西諸島なんせいしょとう分布ぶんぷ
アカネスミレ Viola phalacrocarpa Maxim.
サクラスミレ Viola hirtipes S. Moore
はなおおきく、はハートがた北海道ほっかいどうから九州きゅうしゅう分布ぶんぷ
ヒカゲスミレ Viola yezoensis Maxim.

姿すがたていてしろはなをつけるものにつぎのようなたねがある。

アリアケスミレ Viola betonicifolia Smith var. albescens (Nakai) F. Maek. et
かたちはスミレにてんおおく、はなしろ本州ほんしゅうから九州きゅうしゅう朝鮮ちょうせん中国ちゅうごく分布ぶんぷ琉球りゅうきゅう列島れっとうには同種どうしゅながらリュウキュウシロスミレ Viola betonicifolia var. oblongo-sagittata (Nakai) F. Maek. et Hashimoto がある。はながよりながさきにつく。たねとしては東南とうなんアジア一帯いったいにまで分布ぶんぷする。
シロスミレ Viola patrinii DC

上記じょうきしゅ形態けいたいてきにスミレにちかいものであるが、むしろ、おなじスミレぞくタチツボスミレ Viola grypoceras var. grypoceras普通ふつうしゅで、スミレとも混在こんざいするため、これがスミレと認識にんしきされている場合ばあいおおい。こちらのほうは、くきがるためにっていれば区別くべつ簡単かんたんである。ただしこちらにも類似るいじしゅおおいので、たね同定どうていはやはり簡単かんたんではない。

外来がいらいしゅは、パンジービオラばれる園芸えんげいしゅおおい。たねとしてのスミレはひがしアジアにしか分布ぶんぷせず外国がいこく文学ぶんがくてくるスミレはべつたねす。ヨーロッパではニオイスミレ普通ふつう馴染なじまれている。


その

脚注きゃくちゅう

  1. ^ a b c d e 米倉よねくら浩司こうじ梶田かじたただし (2003-). “Viola mandshurica W.Becker スミレ(標準ひょうじゅん”. BG Plants 和名わみょう学名がくめいインデックス(YList). 2023ねん4がつ2にち閲覧えつらん
  2. ^ 米倉よねくら浩司こうじ梶田かじたただし (2003-). “Viola mandshurica W.Becker f. macrantha (Maxim.) Nakai ex Kitag. スミレ(シノニム)”. BG Plants 和名わみょう学名がくめいインデックス(YList). 2023ねん4がつ2にち閲覧えつらん
  3. ^ 米倉よねくら浩司こうじ; 梶田かじたただし (2003-). “「BG Plants 和名わみょう学名がくめいインデックス」(YList)”. 2011ねん4がつ30にち閲覧えつらん
  4. ^ a b c d e f g h i j 金田かねだ初代しょだい 2010, p. 34.
  5. ^ a b c d e f g h i j 川原かわはら勝征かつゆき 2015, p. 46.
  6. ^ a b 金田かねだ初代しょだい 2010, p. 35.
  7. ^ a b 鈴木すずき庸夫みちお高橋たかはしふゆやすのべ尚文なおふみ 2012, p. 188.

参考さんこう文献ぶんけん

  • 金田かねだ初代はつよ金田かねだ洋一郎よういちろう写真しゃしん)『ひとでわかる! おいしい「山菜さんさい野草やそう」の見分みわかたかたPHP研究所けんきゅうじょ、2010ねん9がつ24にち、34 - 35ぺーじISBN 978-4-569-79145-6 
  • 川原かわはら勝征かつゆきべる野草やそう薬草やくそう南方みなかたしんしゃ、2015ねん11がつ10日とおか、46ぺーじISBN 978-4-86124-327-1 
  • 鈴木すずき庸夫みちお高橋たかはしふゆやすのべ尚文なおふみ草木くさき種子しゅし果実かじつ形態けいたいおおきさが一目いちもくでわかる植物しょくぶつ種子しゅし果実かじつ 632しゅまことぶんどう新光しんこうしゃ〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2012ねん9がつ28にち、188ぺーじISBN 978-4-416-71219-1 

関連かんれん項目こうもく

外部がいぶリンク