この項目 こうもく では、武具 ぶぐ ・狩猟 しゅりょう 具 ぐ について説明 せつめい しています。
矢 や (や)は、武具 ぶぐ (狩猟 しゅりょう 具 ぐ )の一種 いっしゅ 。木 き や竹 たけ 、金属 きんぞく などで作 つく った棒 ぼう の端 はし に軌道 きどう を安定 あんてい させる羽根 はね を取 と り付 つ け、反対 はんたい 側 がわ の端 はし をとがらせた、あるいはとがったものや用途 ようと に応 おう じた物 もの を取 と り付 つ けたもので、主 おも に弓 ゆみ の弾力 だんりょく を利用 りよう して発射 はっしゃ されるが、投擲 とうてき する物 もの (投 な げ矢 や )や呼気 こき など空気 くうき を利用 りよう する物 もの (吹 ふ き矢 や )もある。箭 や の字 じ も用 もち いられる。
矢 や (一手 いって )
和 かず 弓 ゆみ に用 もち いられている矢 や は、現在 げんざい でも矢 や 竹 ちく の端 はし に鏃を、反対 はんたい の端 はし に矢 や 羽 わ や筈 はず をつけて作 つく られている。
矢 や の長 なが さは、自分 じぶん の矢束 やつか (やづか。首 くび の中心 ちゅうしん から横 よこ にまっすぐ伸 の ばした腕 うで の指先 ゆびさき まで)より手 て の指数 しすう 本分 ほんぶん 長 なが いものが安全 あんぜん 上 じょう 好 この ましいとされている。
平家 ひらか 物語 ものがたり には十 じゅう 二 に 束 たば 三 さん 伏 ふく (拳 こぶし の幅 はば 12個 こ 分 ぶん に加 くわ え指 ゆび 3本 ほん 分 ぶん の幅 はば )という表記 ひょうき もある。
矢 や を作 つく る職人 しょくにん を矢 や 師 し (ちなみに、ゆがけ を作 つく る職人 しょくにん は『かけ師 し 』、弓 ゆみ は『弓 ゆみ 師 し 』)という。弓矢 ゆみや は鉄砲 てっぽう と比 くら べ、科学 かがく 技術 ぎじゅつ 的 てき にはより原始 げんし 的 てき なものではあるが、消耗 しょうもう 品 ひん である矢 や を含 ふく め全 すべ ての製造 せいぞう を職人 しょくにん 技 わざ に頼 たよ らなければならなかった。この点 てん 、弾 たま 火薬 かやく の製造 せいぞう は知識 ちしき さえあれば誰 だれ でもできる労働 ろうどう 集約 しゅうやく 型 がた 産業 さんぎょう でまかなえたことが、銃器 じゅうき の普及 ふきゅう が推進 すいしん された一因 いちいん でもある。
現代 げんだい の弓道 きゅうどう で用 もち いられる鏃。上 うえ から鉄製 てつせい の鏃(打 だ 根 ね )、真鍮 しんちゅう 製 せい の鏃(打 だ 根 ね )、巻藁 まきわら 矢 や の鏃(丸根 まるね )
縄文 じょうもん 時代 じだい までは黒曜石 こくようせき 等 ひとし の石鏃 せきぞく のほか、鮫 さめ の歯 は 、動物 どうぶつ の骨 ほね や角 かく などで作 つく られていたが、弥生 やよい 後期 こうき には急速 きゅうそく に鉄製 てつせい (鉄 てつ 鏃 )に替 か わっている(鏃 (英語 えいご 版 ばん ) も参照 さんしょう )。使用 しよう 目的 もくてき により、様々 さまざま な形 かたち の鏃が発達 はったつ した。現在 げんざい では鉄 てつ 製 せい のものが用 もち いられている。また稀 まれ に真鍮 しんちゅう 製 せい の鏃を用 もち いる人 ひと もいる。箆 へら に挿 さ し込 こ むものと被 かぶ せるものの二 に 種類 しゅるい があるが、もっぱら「かぶせ」が使用 しよう されている。
長 なが く使用 しよう していると磨 す り減 へ るので、そのときは交換 こうかん しなければならない。
矢 や を持 も つとき、日置 ひおき 流 りゅう などではここを持 も つ。
流派 りゅうは によって、「板付 いたづけ (いたつき)」「矢 や の根 ね (あるいは単 たん に「根 ね 」とも)」などと呼 よ ぶこともある。
戦闘 せんとう においては一般 いっぱん 的 てき に小 ちい さく軽 かる い物 もの は遠距離 えんきょり 用 よう 、逆 ぎゃく に大 おお きく重 おも い物 もの は近距離 きんきょり 用 よう で、刃 は の部分 ぶぶん が広 ひろ く大 おお きめの鏃は鎧 よろい を付 つ けていない敵 てき に対 たい して、細身 ほそみ で返 かえ しもない様 よう な鏃は鎧 よろい 、特 とく に鎖帷子 くさりかたびら の敵 てき に対 たい して、刃 は はないがやや太 ふと く重 おも めの鏃は板金 ばんきん の鎧 よろい を着 き た相手 あいて に対 たい して使用 しよう した。また、火矢 ひや 用 よう に燃 も やすためのボロ布 ぬの を絡 から めやすくなった鏃もあった。素材 そざい も丈夫 じょうぶ な鉄 てつ だけでなく、緑 みどり 錆 さび のついた銅 どう や着弾 ちゃくだん すると砕 くだ け散 ち る石 いし の鏃をあえて使 つか うこともあった。
木製 もくせい の鏃、木 き 鏃(もくぞく)については捕 と 具 ぐ #矢 や ・鏃 の項 こう を参照 さんしょう 。
矢 や の、棒 ぼう の部分 ぶぶん 。竹 たけ (矢 や 竹 ちく と呼 よ ばれる)で作 つく られ、矢柄 やがら (やがら)、矢 や 箆 へら 竹 ちく (やのちく)、矢 や 竹 ちく (やだけ)などと呼 よ ばれることもある。現代 げんだい ではジュラルミン や炭素 たんそ 繊維 せんい 強化 きょうか プラスチック製 せい のものも学生 がくせい を中心 ちゅうしん に用 もち いられるようになっており、これらはアーチェリー に倣 なら ってシャフト と呼 よ ぶこともある。
箆 へら の形 かたち は、以下 いか の三種 さんしゅ がある。
一文字 ひともじ
文字通 もじどお り端 はし から端 はし まで太 ふと さが変 か わらないもの。現在 げんざい はこれが主流 しゅりゅう になっている。
杉 すぎ 成 しげる (すぎなり)
径 みち が杉 すぎ の木 き のように根 ね (矢尻 やじり 部 ぶ )から徐々 じょじょ に細 ほそ くなっている様子 ようす から名 な が付 つ いた。竹 たけ の生育 せいいく に適 かな っていて、工作 こうさく が少 すく ないために丈夫 じょうぶ といわれる。
麦 むぎ 粒 つぶ (むぎつぶ)
中央 ちゅうおう が最 もっと も太 ふと く、両 りょう 端 はし にいくにつれてだんだん細 ほそ くなるもの。空気 くうき 抵抗 ていこう を受 う けた際 さい の振動 しんどう 率 りつ がよく、遠 とお くまで威力 いりょく を弱 よわ めにくく飛 と んでゆくので遠矢 とおや や鏑矢 かぶらや などに用 もち いられた。
一 いち 組 くみ の矢 や では節 ふし の位置 いち をそろえてあり、一本 いっぽん の矢 や には節 ふし は四 よっ つある。
射 い 付 づけ 節 ぶし (いつけぶし)
鏃 から5cm位 い のところにある節 ふし 。矢 や を持 も つとき、小笠原 おがさわら 流 りゅう などではここを持 も つ。
箆 へら 中 ちゅう 節 ぶし (のなかぶし)
矢 や の中央 ちゅうおう よりやや鏃側にある節 ふし 。
袖 そで 摺 すり 節 ぶし (そですりぶし)
矢 や の中央 ちゅうおう よりやや筈 はず 側 がわ にある節 ふし 。着物 きもの を着 き ていると、矢 や を番 つが えるときに袖 そで が摺 す るのでこう呼 よ ばれる。押取節 ぶし (おっとりぶし)ともいう。
羽中 はなか 節 ぶし (はなかぶし)
矢 や 羽 わ の中 なか にある節 ふし 。
甲 きのえ 矢 や と乙矢 おとや
矢 や 羽 わ (鷲 わし )。下 した が甲 かぶと 矢 や 、上 うえ が乙矢 おとや
矢 や に取 と り付 つ けられている羽 はね 。単 たん に羽 はね (は)と呼 よ ばれることもある。鷲 わし 、鷹 たか 、白鳥 しらとり 、七面鳥 しちめんちょう 、鶏 にわとり 、鴨 かも など様々 さまざま な種類 しゅるい の鳥 とり の羽 はね が使用 しよう されるが、特 とく に鷲 わし や鷹 たか といった猛禽 もうきん 類 るい の羽 はね は最 さい 上品 じょうひん とされ、中 ちゅう 近世 きんせい には武士 ぶし 間 あいだ の贈答 ぞうとう 品 ひん にもなっている。使用 しよう される部位 ぶい も手羽 てば から尾羽 おは まで幅広 はばひろ いが、尾羽 おは の一番 いちばん 外側 そとがわ の部位 ぶい である「石打 いしうち 」が最 もっと も丈夫 じょうぶ で、希少 きしょう 価値 かち も高 たか く珍重 ちんちょう される。
鳥 とり の羽 はね は反 そ りの向 む きで表裏 ひょうり があり、半分 はんぶん に割 さ いて使用 しよう する。1本 ほん の矢 や に使 つか う羽 はね は裏表 うらおもて を同 おな じ向 む きに揃 そろ えるので、矢 や には2種類 しゅるい ができる。矢 や が前進 ぜんしん したときに(後 うし ろから見 み て)時計 とけい 回 まわ りに回転 かいてん するのが甲 きのえ 矢 や (はや、早 さ 矢 や ・兄 あに 矢 や とも書 か く)であり、逆 ぎゃく が乙矢 おとや (おとや、弟 おとうと 矢 や とも書 か く)である。甲 かぶと 矢 や と乙矢 おとや とを合 あ わせて1対 つい で「一 いち 手 て (ひとて)」といい、射 い るときは甲 かぶと 矢 や から射 い る。
矢 や 羽 わ は、矧 はぎ (はぎ)と呼 よ ばれる糸 いと で箆 へら に固定 こてい されている。このうち鏃側の矧 はぎ を本 ほん 矧 はぎ (もとはぎ)、筈 はず 側 がわ の矧 はぎ を末 すえ 矧 はぎ (うらはぎ)という。ここから矢 や を作 つく ることを「(矢 や を)矧 は ぐ」という。
矢 や 羽 わ の数 かず によっていくつか種類 しゅるい があり、二 に 枚 まい 羽 わ は原始 げんし 的 てき な羽 はね 数 すう で軌道 きどう が安定 あんてい しにくいが、儀式 ぎしき 用 よう として儀仗 ぎじょう に用 もち いられることとなった[ 1] 。飛 と ぶ軌道 きどう の安定 あんてい 性 せい を得 え るため四 よん 枚 まい 羽 わ となったが矢 や が回転 かいてん せず、三枚 さんまい 羽 わ として矢 や を回転 かいてん させ鏃で的 てき となる対象 たいしょう 物 ぶつ をえぐり取 と り殺傷 さっしょう 力 りょく が強化 きょうか された[ 2] 。
現在 げんざい 競技 きょうぎ で用 もち いられている矢 や は、すべて三 さん 枚 まい 羽 わ のものである。羽 はね にもすべて名前 なまえ が付 つ けられている。
走 はし 羽 はね (はしりば)
矢 や を弦 つる に番 つが えたとき、上側 うわがわ で垂直 すいちょく になる羽 はね 。
頬 ほお 摺 すり 羽 わ (ほおずりば)
矢 や を弦 つる に番 つが えたとき、手前 てまえ 下 か 側 がわ にくる羽 はね 。矢 や を引 ひ いてきたとき、頬 ほお に触 ふ れるためこう呼 よ ぶ。また、弓 ゆみ 摺 すり 羽 わ (ゆずりば)ともいわれる。
外 そと 掛 かけ 羽 わ (とかけば)
矢 や を弦 つる に番 つが えたとき、向 む こう側 がわ の下 した にくる羽 はね 。
矢 や の末端 まったん の弦 つる に番 つが える部分 ぶぶん 。古 ふる くは箆 へら に切込 きりこ みを入 い れるだけだったが、弓 ゆみ が強力 きょうりょく になると引 ひ いた際 さい に箆 へら が裂 さ けてしまうため、弦 つる がはまる溝 みぞ が頭 あたま についたキャップ状 じょう の筈 はず という部品 ぶひん をつける。筈 はず は金属 きんぞく や、現在 げんざい では角 かく やプラスチックで作 つく られ、箆 へら を挿 さ し込 こ んだ後 のち に筈巻 はずまき (はずまき)という糸 いと を巻 ま きつけて固定 こてい する。
鏃と同 おな じく、長 なが く使用 しよう していると抜 ぬ け落 お ちたり、欠 か けたりするのでその時 とき は交換 こうかん しなければならない。
筈 はず が弦 つる にはまるのは当然 とうぜん のことであるから、当然 とうぜん のことを「筈 はず 」というようになった。これは今 いま でも「きっとその筈 はず だ」「そんな筈 はず はない」といったい回 いまわ しに残 のこ っている。
ちなみに、同 おな じ「はず」でも「弭」と書 か いた場合 ばあい 、弓 ゆみ の上下 じょうげ の弦 つる を掛 か ける部分 ぶぶん を指 さ す。この混同 こんどう を避 さ けるため、筈 はず を矢筈 やはず 、弭を弓 ゆみ 弭 (ゆはず)ということもある。
アーチェリーでは、矢 や をアロー (arrow)と呼 よ ぶ。使用 しよう 者 しゃ の体格 たいかく 及 およ び使用 しよう 弓 ゆみ の引 び き重量 じゅうりょう に応 おう じ、シャフトの固 かた さ、長 なが さ、ポイント重量 じゅうりょう を調整 ちょうせい して作成 さくせい される。
先端 せんたん に取 と り付 つ ける金具 かなぐ (鏃)のこと。シャフトに挿 さ し込 こ み、ホットメルト接着 せっちゃく 剤 ざい を用 もち いて固定 こてい する。アローヘッドともいう。使用 しよう 弓 ゆみ の引 び き重量 じゅうりょう に応 おう じて重量 じゅうりょう を調整 ちょうせい する。ボドキンポイント (英語 えいご 版 ばん )
矢 や の胴体 どうたい の部分 ぶぶん 。素材 そざい は繊維 せんい 強化 きょうか プラスチック (FRP) やジュラルミン などが使 つか われる。なかでも、炭素 たんそ 繊維 せんい 強化 きょうか プラスチック (CFRP9)が主流 しゅりゅう となりつつある。形状 けいじょう は樽 たる 状 じょう シャフト とストレートシャフト などがある。アメリカのイーストン社 しゃ が世界 せかい 最大 さいだい のシャフトメーカーである。ボウガンや弩 いしゆみ などに使 つか う物 もの は比較的 ひかくてき 短 みじか い。
アローに取 と り付 つ けられている羽 はね のこと。鳥 とり 羽根 ばね 、ビニール製 せい 、プラスティック製 せい 、フイルム製 せい などがある。小 ちい さいものはグルーピング(矢 や の集中 しゅうちゅう 力 りょく )が良 よ いが、ミスしたときの被害 ひがい が大 おお きい。それに対 たい して大 おお きいものはグルーピングが多少 たしょう 悪 わる くなるが、ミスしても被害 ひがい が最小限 さいしょうげん にとどまる。そのため一般 いっぱん 的 てき に初心者 しょしんしゃ は大 おお きいものを、上級 じょうきゅう 者 しゃ は小 ちい さいものを用 もち いる。クロスボウや弩 いしゆみ に使 つか う物 もの は枚数 まいすう を減 へ らしていたり場合 ばあい によっては矢 や 羽 わ 自体 じたい がなかったりする。
一本 いっぽん の矢 や に対 たい し、120度 ど 間隔 かんかく で3枚 まい のヴェインを貼 は るのが一般 いっぱん 的 てき 。
コックフェザー
ノックの溝 みぞ (弓 ゆみ やストリング)に対 たい して直角 ちょっかく な羽根 はね 。ヘンフェザーとは異 こと なる色 いろ のものを使 つか うことがある。
ヘンフェザー
コックフェザーに対 たい して、120度 ど 間隔 かんかく でついている羽根 はね 。
ストリング(弦 つる )につがえるための部分 ぶぶん 。矢筈 やはず 。プラスチック 製 せい 。
鋭 するど 器 き 損傷 そんしょう の切 せつな 創 そう と刺 とげ 創 そう (英語 えいご 版 ばん ) の組 く み合 あ わせからなる[ 3] 。
創傷 そうしょう 弾 だん 道学 どうがく (ドイツ語 ご 版 ばん ) での矢 や 傷 きず の実験 じっけん では、弾道 だんどう ゼラチン(英語 えいご 版 ばん ) と石鹸 せっけん の組 く み合 あ わせを使 つか った実験 じっけん はバラツキが多 おお く不向 ふむ きという意見 いけん がある[ 3] 。豚 ぶた の死骸 しがい を使 つか った実験 じっけん では、8m先 さき からロングボウを平均 へいきん 45 m/s、コンパウンドボウを67 m/sで射抜 いぬ いた際 さい 、矢尻 やじり によって異 こと なるが骨 ほね のない場所 ばしょ では17-60 cm 突 つ き刺 さ さり、どの矢尻 やじり でも肋骨 あばらぼね などの骨 ほね を貫通 かんつう する威力 いりょく と致命傷 ちめいしょう となる傷 きず の深 ふか さが確認 かくにん された[ 3] 。西武 せいぶ 時代 じだい の医師 いし の記録 きろく では、アメリカ先住民 せんじゅうみん の矢 や では、接近 せっきん 戦 せん での直撃 ちょくげき でなければ頭 あたま の骨 ほね を貫通 かんつう することはなく、弓 ゆみ 兵 へい も熟知 じゅくち していて致命傷 ちめいしょう となりやすい胴体 どうたい を狙 ねら うことが多 おお いと記 しる している[ 4] 。
日本 にっぽん の戦国 せんごく 時代 じだい では、金 きむ 創 はじめ 医 い が治療 ちりょう を行 おこな った。江戸 えど 時代 じだい の絵師 えし 、歌川 うたがわ 国芳 くによし による『華 はな 佗骨刮関羽 わ 箭 や 療治 りょうじ 図 ず 』には、『通俗 つうぞく 三国志 さんごくし 演義 えんぎ 』中 ちゅう で述 の べられる医者 いしゃ の華 はな 佗 が関 せき 羽 わ 将軍 しょうぐん から毒矢 どくや を取 と り除 のぞ く手術 しゅじゅつ を行 おこな っている様子 ようす を描 えが いている[ 5] [ 6] 。
古 ふる い記録 きろく でまとまった記述 きじゅつ を書 か いている人間 にんげん として、古代 こだい ギリシアの学者 がくしゃ ケルスス がいる。著書 ちょしょ の1章 しょう を矢 や 傷 きず 治療 ちりょう について割 さ いている。この中 なか で、抜 ぬ き取 と るのではなく貫通 かんつう させて出 だ すことの重要 じゅうよう 性 せい とSpoon of Diocles (英語 えいご 版 ばん ) という外科 げか 器具 きぐ について記述 きじゅつ している。抜 ぬ き取 と らずに貫通 かんつう させる意図 いと は、抜 ぬ き取 と ると矢尻 やじり が抜 ぬ けて体内 たいない に残 のこ ってしまう弊害 へいがい を起 お こすことが、矢 や 傷 きず が少 すく なくなった現代 げんだい で起 お きた事故 じこ でも指摘 してき されている[ 7] 。
イギリスでは、矢柄 やがら の外 はず れた矢尻 やじり が頬 ほお に刺 さ さったままとなったヘンリー5世 せい を救 すく うために貨幣 かへい 偽造 ぎぞう の罪 つみ から釈放 しゃくほう されたジョン・ブラッドモア (英語 えいご 版 ばん ) が、金属 きんぞく 加工 かこう 技術 ぎじゅつ により作 つく ったポイントを抜 ぬ く道具 どうぐ と治療 ちりょう 技術 ぎじゅつ により宮廷 きゅうてい 外科 げか 医 い となった[ 8] 。
アメリカの西部 せいぶ 開拓 かいたく 時代 じだい にアメリカ先住民 せんじゅうみん と戦 たたか った際 さい に治療 ちりょう を行 おこな った医師 いし Joseph Howland Bill による記録 きろく 『Notes on Arrow Wounds』では、「他 た の武器 ぶき より致命 ちめい 的 てき な傷 きず を負 お わせる。治療 ちりょう が受 う けれらない場合 ばあい は特 とく にそうである。」と記 しる している。様々 さまざま な素材 そざい から矢尻 やじり が作 つく られるが、アメリカ先住民 せんじゅうみん が最 もっと も用 もち いたのは金属 きんぞく から削 けず りだしたもので矢柄 やがら はミズキ属 ぞく (dogwood)の枝 えだ であった。また、連射 れんしゃ 速度 そくど も熟練 じゅくれん していると1分間 ふんかん に6発 はつ が放 はな たれ、3人 にん の兵士 へいし に42発 はつ の傷 きず を負 お わせ、1本 ほん だけの矢 や 傷 きず は見 み たことがなく、銃 じゅう のように貫通 かんつう することなく矢尻 やじり が大量 たいりょう に体内 たいない に残 のこ ってしまい治療 ちりょう が難 むずか しいとしている[ 4] 。
その時代 じだい の治療 ちりょう 法 ほう として、矢 や を引 ひ き抜 ぬ くのは愚策 ぐさく であると記 しる している。腱 けん を使 つか って矢尻 やじり が固定 こてい されるが、血 ち や体液 たいえき で緩 ゆる み簡単 かんたん に外 はず れ、抜 ぬ いてしまうと矢尻 やじり を探 さが すのが難 むずか しくなる。矢柄 やがら が残 のこ っていれば、それに沿 そ って切開 せっかい して取 と り除 の けるため予 よ 後 ご も自然 しぜん に治 なお るとしている。また矢尻 やじり が貫通 かんつう して体外 たいがい に出 で ていれば逆 ぎゃく に治療 ちりょう がしやすい。骨 ほね を貫通 かんつう していると治療 ちりょう の難 なん 度 ど が上 あ がる。矢柄 やがら を回 まわ して動 うご かなければ骨 ほね を貫通 かんつう していると判断 はんだん できる。骨 ほね を貫通 かんつう した場合 ばあい は、矢尻 やじり を特別 とくべつ な傷口 きずぐち に侵入 しんにゅう しやすい細 ほそ い鉗子 で掴 つか み、渾身 こんしん の力 ちから を使 つか って引 ひ き抜 ぬ く作業 さぎょう が求 もと められた。骨 ほね 近 ちか くの筋肉 きんにく が痛 いた みに反応 はんのう して収縮 しゅうしゅく して矢尻 やじり がフック状 じょう になることもしばしばだったので、一度 いちど 矢尻 やじり を押 お し込 こ む方法 ほうほう も有効 ゆうこう であった。そのほか、失 しつ 血 ち 、神経 しんけい への損傷 そんしょう などの合併症 がっぺいしょう も見 み られた[ 4] 。
もちろん、矢 や でも死者 ししゃ は出 で る[ 3] 。また、致命傷 ちめいしょう とならない矢 や 傷 きず や銃創 じゅうそう は半 はん 矢 や と呼 よ ばれる。
ミームとして、膝 ひざ に矢 や を受 う けてしまってな が知 し られる。
『古事記 こじき 』の国 くに 譲 ゆず り神話 しんわ は次 つぎ のように始 はじ まっている。
高木 たかぎ 神 かみ と天照大御神 あまてらすおおみかみ は、中 なか つ国 くに の荒 すさ ぶる国 くに つ神 しん を服従 ふくじゅう させるように天 てん 菩比神 しん に命 めい じるが、天 てん 菩比神 しん は復命 ふくめい しなかった。次 つぎ に天若 あまわか 日子 にっし に命 めい じるが、天若 あまわか 日子 にっし も中 なか つ国 くに に住 す みついてしまう。そこで今度 こんど は鳴 な 女 おんな という雉に様子 ようす を見 み に行 い かせた。ところが天若 あまわか 日子 にっし は天 てん 佐 さ 具 ぐ 売 うり にそそのかされ、鳴 な 女 おんな を高 こう 御産 おさん 巣 す 日 び 神 しん (高木 たかぎ 神 かみ )より授 さず かった矢 や で射殺 しゃさつ してしまう。その矢 や は鳴 な 女 おんな の体 からだ を突 つ き抜 ぬ け、高木 たかぎ 神 かみ の許 もと に届 とど いた。不審 ふしん に思 おも った高木 たかぎ 神 かみ は、「天若 あまわか 日子 にっし が悪 あ しき神 かみ を討 う ったのならば、この矢 や は天若 あまわか 日子 にっし にあたらない。しかし邪心 じゃしん を持 も っていたならば、この矢 や は天若 あまわか 日子 にっし にあたる」と誓約 せいやく (うけい)をしてその矢 や を投 な げ返 がえ したところ、その矢 や は天若 あまわか 日子 にっし に当 あ たり、天若 あまわか 日子 にっし は死 し んでしまった。これを「返 かえ し矢 や 」(天 てん 之 の 返 かえ し矢 や )という。
さまざまな古文 こぶん や句 く などで使 つか われており、俳句 はいく の季語 きご と同 おな じように、間接 かんせつ 的 てき な比喩 ひゆ として、穢 けが れ・邪気 じゃき ・魔 ま ・厄 やく などを、祓 はら い清 きよ めることを表 あらわ している言葉 ことば でもある。
葦 あし 矢 や
葦 あし 矢 や (あしや)とは桃 もも 弓 ゆみ (ももゆみ)といわれる弓 ゆみ と一対 いっつい をなすものであり、葦 あし の矢 や ・桃 もも の弓 ゆみ ともいい、大晦日 おおみそか に朝廷 ちょうてい で行 おこな われた追 つい 儺 (ついな)の式 しき で、鬼 おに を祓 はら う為 ため に使 つか われた弓矢 ゆみや のことで、それぞれ葦 あし (アシ )の茎 くき と桃 もも の木 き で出来 でき ていた。
破魔矢 はまや
破魔矢 はまや (はまや)とはもともとは破魔弓 はまゆみ (はまゆみ)と一対 いっつい をなすものであり、はじまりは正月 しょうがつ に行 おこな われたその年 とし の吉凶 きっきょう 占 うらな いに使 つか う弓矢 ゆみや 。後 のち に、家内 かない 安全 あんぜん を祈願 きがん する幣 ぬさ 串 くし と同 おな じように、家 いえ の鬼 おに を祓 はら う魔除 まよけ けとして上棟 じょうとう 式 しき に小屋 こや 組 ぐみ に奉納 ほうのう される神祭 しんさい 具 ぐ のことで、近年 きんねん では破魔矢 はまや ・破魔弓 はまゆみ ともに神社 じんじゃ などの厄除 やくよ けの縁起物 えんぎもの として知 し られる。
蓬 よもぎ 矢 や
蓬 よもぎ 矢 や (ほうし)とは桑弓 くわゆみ (そうきゅう)と一対 いっつい をなすものであり、それぞれ蓬 よもぎ の矢 や (よもぎのや)・桑 くわ の弓 ゆみ (くわのゆみ)ともいい、男 おとこ の子 こ が生 う まれた時 とき に前途 ぜんと の厄 やく を払 はら うため、家 いえ の四方 しほう に向 む かって桑 くわ の弓 ゆみ で蓬 よもぎ の矢 や を射 い た。桑 くわ の弓 ゆみ は桑 くわ の木 き で作 つく った弓 ゆみ 、蓬 よもぎ の矢 や は蓬 よもぎ の葉 は で羽 はね を矧 は いだ(はいだ)矢 や 。
儀 ぎ 矢 や
神社 じんじゃ の神事 しんじ 用 よう として、神宝 しんぽう 、威儀 いぎ 物 ぶつ 、神幸 しんこう 等 とう に使 つか う矢 や を「儀 ぎ 矢 や 」(ぎや)という。征矢 そや (そや)、雁股 かりまた 矢 や (かりまたや)、鏑矢 かぶらや (かぶらや)の三種 さんしゅ がある。やがらは黒 くろ 漆 うるし 塗 ぬり 、矢筈 やはず は水晶 すいしょう 、筈巻 はずまき ・下作 げさく 共 ども に紅 べに 、羽根 はね は白羽根 しらはね 二 に 片 へん とし、平 ひら やなぐいまたは、壷 つぼ やなぐいに盛 も るとこになっている[ 9] 。
単語 たんご
矢面 やおもて (やおもて) - 騒動 そうどう や説明 せつめい が必要 ひつよう な場面 ばめん での最前 さいぜん の当事 とうじ 者 しゃ や立場 たちば のこと。
矢 や 返 がえ し(やがえし) - 報復 ほうふく 、仕返 しかえ しを意味 いみ する言葉 ことば 。
矢 や 数 すう (やかず) - 射 い た矢 や の数 かず 、的 まと にあった矢 や の数 かず 、通 とお し矢 や の成 な した矢 や の数 かず 。
矢倉 やくら - 矢 や を収蔵 しゅうぞう しておく倉 くら 、武器 ぶき 庫 こ 、兵庫 ひょうご 。櫓 ろ の意 い 、櫓 ろ の意 い から戦 せん のときの展望 てんぼう 台 だい 。
矢先 やさき (やさき) - 矢 や の先 さき 、鏃、矢 や の飛 と んで行 い く、来 く る場所 ばしょ 。矢面 やおもて と同意 どうい 。
矢 や 開 びら き (やびらき)/矢口 やぐち (やぐち)
矢文 やぶみ 矢 や 紋 もん の一 ひと つ。並 なら び矢 や
矢 や 紋 もん
鏑矢 かぶらや /嚆矢 こうし - 「鳴 な り矢 や 」ともいわれ魔除 まよけ けや、騎射 きしゃ 三 さん 物 ぶつ と合戦 かっせん の合図 あいず に使用 しよう された鏑 かぶら により、唸 うな る矢 や をさす。
幸 こう 矢 や /猟 りょう 矢 や (さちや・さつや) - 狩 かり に用 もち いる矢 や をさし、矢 や や弓矢 ゆみや は運 うん 分 ぶん 天分 てんぶん による幸福 こうふく をもたらすものとして「幸 みゆき ・箭 や 霊 れい 」と記述 きじゅつ し「サチ」と読 よ んだ。この名残 なごり として、狩 かり や矢 や 開 びら き に使 つか われる矢 や を「幸 こう 矢 や ・猟 りょう 矢 や 」と記述 きじゅつ し「サチヤ・サツヤ」と読 よ むようになった。
征矢 そや /征 せい 箭 や (そや) - 攻撃 こうげき 力 りょく の高 たか い鏃を付 つ けた矢 や のこと。
遠矢 とおや (とおや) - 遠 とお くへ矢 や を飛 と ばすこと、遠方 えんぽう のものを射 い ること。
火矢 ひや /焙烙 ほうろく 火矢 ひや
毒矢 どくや
慣用 かんよう 句 く
矢継 やつ ぎ早 ばや (やつぎばや)
矢 や でも鉄砲 てっぽう でも持 も って来 こ い
矢庭 やにわ に(やにわに)
矢 や の催促 さいそく (やのさいそく)
矢 や も楯 だて もたまらず(やもたてもたまらず)
矢場 やば い(やばい )
一 いち 箭 や 双 そう 雕(いっせんそうちょう) - 一石二鳥 いっせきにちょう と同義語 どうぎご で一矢 いっし (ひとや)で二 に 羽 わ の鳥 とり を射止 いと めることをいう。
一矢 いっし 報 むく いる
光陰 こういん 矢 や のごとし
白羽 しらは の矢 や が立 た つ
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