この項目 こうもく では、植物 しょくぶつ について説明 せつめい しています。その他 た の用法 ようほう については「くわ 」をご覧 らん ください。
クワ属 ぞく
ログワ(Morus alba )
分類 ぶんるい
英名 えいめい
Mulberry
種 たね
クワ (桑 くわ )は、クワ科 か クワ属 ぞく の総称 そうしょう 。ヤマグワ、シマグワなど品種 ひんしゅ が多 おお い。カイコ の餌 えさ として古来 こらい 重要 じゅうよう な作物 さくもつ であり、また果樹 かじゅ としても利用 りよう される。土留 どどめ 色 しょく はこの植物 しょくぶつ の実 み の色 いろ を指 さ すこともある。
収穫 しゅうかく されたマグワの白 しろ い果実 かじつ (イラン ・ホラーサーン にて)
クワの名 な の由来 ゆらい は、カイコの「食 く う葉 は 」が縮 ちぢ まったとも、「蚕 かいこ 葉 ば (こは)」の読 よ みが転訛 てんか したともいわれている。山 やま に自生 じせい するヤマグワなどの種類 しゅるい があり、別名 べつめい カイバともよばれている。果実 かじつ は人気 にんき のベリーの仲間 なかま で、庭 にわ に植 う えられるマルベリー(英 えい : Mulberry)があるほか、クワの果実 かじつ は地方 ちほう により俗 ぞく にドドメともよばれている。
クワ科 か クワ属 ぞく は、北半球 きたはんきゅう の暖帯 だんたい もしくは温帯 おんたい 地域 ちいき に10数 すう 種 しゅ が分布 ぶんぷ する。中国 ちゅうごく 北部 ほくぶ から朝鮮半島 ちょうせんはんとう にかけての原産 げんさん といわれ、日本 にっぽん へは古代 こだい に渡来 とらい したと考 かんが えられている。日本 にっぽん には、北海道 ほっかいどう から九州 きゅうしゅう まで全国 ぜんこく に分布 ぶんぷ する。養蚕 ようさん のために広 ひろ く栽培 さいばい されるほか、かつて盛 さか んだった時期 じき の名残 なごり で、放置 ほうち されて野生 やせい 化 か したものが土手 どて や畑 はたけ のわきなどでも見 み られる。
落葉 らくよう 性 せい の高木 たかぎ または低木 ていぼく で、高 たか さは5メートル (m) から大 おお きいものは10メートル以上 いじょう に達 たっ するが、ほとんどは灌木 で、栽培 さいばい するものは低木 ていぼく 仕立 した てが多 おお い。幹 みき の目通 めどお り直径 ちょっけい は、約 やく 50センチメートル (cm) になり、樹皮 じゅひ は灰色 はいいろ を帯 お びる。葉 は は有 ゆう 柄 え で互生 ごせい し、葉 は 身 み は薄 うす く、表面 ひょうめん はつやのある濃 こ い緑色 みどりいろ でざらつく。葉 は 縁 えん にはあらい鋸歯 きょし がある。葉 は の形 かたち は変化 へんか が大 おお きく、切 き れ込 こ みのない葉 は や、切 き れ込 こ みがあるもの葉 は などさまざまである。大 おお きい木 き では葉 は の形 かたち はハート形 がた に近 ちか い楕円 だえん 形 がた だが、若 わか い木 き では葉 は に多 おお くの切 き れ込 こ みが入 はい る場合 ばあい が多 おお い。葉 は には直径 ちょっけい 25 - 100マイクロメートル (μ みゅー m) ほどのプラント・オパール が不 ふ 均一 きんいつ に分布 ぶんぷ する[ 8] 。
花期 かき は春 はる (4月 がつ ごろ)。雌雄 しゆう 異 い 株 かぶ または同 どう 株 かぶ 。花弁 はなびら のない淡 あわ 黄 き 緑色 みどりいろ の小 しょう 花 はな を穂状 すいじょう に下 さ げて開花 かいか する。花序 かじょ は新 しん 枝 えだ の下部 かぶ にあって、雄花 おばな は枝 えだ の先端 せんたん から房 ぼう 状 じょう に雄花 おばな 序 じょ が垂 た れ下 さ がり、雌花 めばな は枝 えだ の基部 きぶ (下部 かぶ )の方 ほう に集合 しゅうごう してつく。雌花 めばな の雌 め しべ の花 はな 柱 ばしら は長 なが さ2 - 2.5センチメートル (cm) で、先 さき が浅 あさ く2裂 きれ する。花 はな 柱 ばしら はヤマグワでは明 あき らかで、果実 かじつ になっても花 はな 柱 ばしら の残 のこ りがついている。
果実 かじつ は5 - 6月 がつ ごろ結実 けつじつ し、緑 みどり から黄 き 、赤 あか と変化 へんか し、初夏 しょか に黒 くろ 紫色 むらさきいろ に熟 じゅく す。果実 かじつ は多 おお くの花 はな が集 あつ まった集合 しゅうごう 果 はて で、キイチゴ のような、柔 やわ らかい粒 つぶ が集 あつ まった形 かたち で、やや長 なが くなる。粒 つぶ のひとつひとつは、萼 がく が肥厚 ひこう して種子 しゅし を包 つつ み込 こ んだ偽 にせ 果 はて である。熟 じゅく した赤黒 あかぐろ い果実 かじつ は、甘 あま くて生 なま でも食 た べられる。果実 かじつ は人間 にんげん はもとより、野鳥 やちょう にとっての重要 じゅうよう な飼料 しりょう になる。果実 かじつ には子 こ 嚢菌門 もん チャワンタケ亜 あ 門 もん ビョウタケ目 め キンカクキン科 か に属 ぞく するキツネノヤリタケ (Scleromitrula shiraiana )、キツネノワン (Ciboria shiraiana )が寄生 きせい することがあり(クワ菌 きん 核 かく 病 びょう )、感染 かんせん して落下 らっか した果実 かじつ から子 こ 実体 じったい が生 は える。
クワは変種 へんしゅ や、品種 ひんしゅ が多 おお い。
登録 とうろく 品種 ひんしゅ としてポップベリー、ララベリーがある。
日本 にっぽん 全土 ぜんど に自生 じせい するヤマグワは、養蚕 ようさん のために栽培 さいばい される種 しゅ であり、多数 たすう の栽培 さいばい 品種 ひんしゅ がある。中国 ちゅうごく から伝来 でんらい したマグワ との雑種 ざっしゅ もあり、種 たね はさまざまである。日本 にっぽん の養蚕 ようさん では一之瀬 いちのせ (一瀬 いちのせ 桑 くわ )という品種 ひんしゅ が普及 ふきゅう した。この品種 ひんしゅ は、明治 めいじ 31年 ねん ごろ山梨 やまなし 県 けん 西八代 にしやつしろ 郡 ぐん 上野 うえの 村 むら 川浦 かわうら (現在 げんざい の同 どう 県 けん 同 どう 郡 ぐん 市川 いちかわ 三郷 みさと 町 まち )で一瀬 いちのせ 益吉 ますきち が、中巨摩 なかこま 郡 ぐん 忍 しのぶ 村 むら (現在 げんざい の中央 ちゅうおう 市 し )の桑 くわ 苗 なえ 業者 ぎょうしゃ から購入 こうにゅう した桑 くわ 苗 なえ (品種 ひんしゅ 鼠 ねずみ 返 がえ し)のうちから、本来 ほんらい の鼠 ねずみ 返 がえ しとは異 ことな った性状 せいじょう 良好 りょうこう なる個体 こたい を発見 はっけん し、これを原 はら 苗 なえ としたものである。このほか日本 にっぽん では、ノグワ(野桑 のくわ )、オガサワラグワ(小笠原 おがさわら 桑 くわ )、シマグワ(島 しま 桑 くわ )など、南 みなみ 西日本 にしにほん の分布 ぶんぷ に由来 ゆらい することから名 な づけられた種 たね がある。シマグワは別名 べつめい をリュウキュウグワ(琉球 りゅうきゅう 桑 くわ )ともいい、台湾 たいわん の大 だい 部分 ぶぶん に分布 ぶんぷ する系統 けいとう に由来 ゆらい する。伊豆諸島 いずしょとう に生育 せいいく するクワ属 ぞく もシマグワとして珍重 ちんちょう される。
中国 ちゅうごく には原産 げんさん で栽培 さいばい 種 しゅ でもあるマグワ(真桑 まくわ )やロソウ(魯桑)があるほか、中国 ちゅうごく 北東 ほくとう 部 ぶ ・朝鮮 ちょうせん 北部 ほくぶ ・モンゴル にかけて分布 ぶんぷ するモウコグワ(蒙 こうむ 古 こ 桑 くわ )や、その変種 へんしゅ で葉 は の両面 りょうめん に著 いちじる しく毛 け が多 おお いオニグワ(鬼 おに 桑 くわ )とよばれる種 たね がある。
ヤマグワ
ヤマグワ (山桑 やまくわ 、学名 がくめい :Morus australis , Morus bombycis )は、クワ科 か クワ属 ぞく の落葉 らくよう 高木 たかぎ 。養蚕 ようさん に使 つか われるクワに対 たい する、山野 さんや に自生 じせい するクワという意味 いみ でよばれている。中国 ちゅうごく 植物 しょくぶつ 名 めい (漢 かん 名 めい )は鶏 にわとり 桑 くわ (けいそう)という。学名 がくめい の一 ひと つである Morus bombycis は、カイコ の学名 がくめい である Bombyx に由来 ゆらい する。日本 にっぽん 、南 みなみ 千島 ちしま 、樺太 からふと 、朝鮮半島 ちょうせんはんとう 、中国 ちゅうごく 、ベトナム 、ミャンマー 、ヒマラヤ に分布 ぶんぷ する。日本 にっぽん では北海道 ほっかいどう から九州 きゅうしゅう まで、各地 かくち の山野 さんや に自然 しぜん 分布 ぶんぷ する。
自然 しぜん の状態 じょうたい では樹 き 高 だか 10メートル (m) 、幹 みき 径 みち では60センチメートル (cm) まで生長 せいちょう する。枝振 えだぶ りはややまとまりがなく、横 よこ に広 ひろ がる傾向 けいこう がある[ 15] 。樹皮 じゅひ は茶褐色 ちゃかっしょく や灰 はい 褐色 かっしょく で、若 わか い木 き は滑 なめ らかだが後 のち に縦 たて 方向 ほうこう に不規則 ふきそく な筋 すじ が入 はい り裂 さ ける[ 15] 。一 いち 年 ねん 枝 えだ は褐色 かっしょく でほぼ無 む 毛 け である[ 15] 。葉 は は長 なが さ8 - 20 cm、葉 は 縁 えん に鋸歯 きょし がある卵 たまご 形 がた や広 こう 卵 たまご 形 がた であるが、1 - 3裂 きれ して不整 ふせい な裂 きれ 片 へん を持 も つものも多 おお くあり、基部 きぶ は円形 えんけい あるいは浅 あさ い心 しん 形 がた で、さまざまな形 かたち がある。
開花 かいか 期 き は4 - 5月[ 15] 。ほとんどが雌雄 しゆう 異 い 株 かぶ であるが、ときに雌雄 しゆう 同 どう 株 かぶ 。花 はな は小 ちい さくて目立 めだ たず、花 はな 後 ご (6 - 7月 がつ )につく果実 かじつ は1 cmほどの集合 しゅうごう 果 はて で「ドドメ」などとよばれており、はじめ赤色 あかいろ であるが夏 なつ に熟 じゅく すと黒 くろ 紫色 むらさきいろ になり、食用 しょくよう にされる。完熟 かんじゅく 果実 かじつ を食 た べると唇 くちびる や舌 した が紫色 むらさきいろ に染 そ まり、昔 むかし は子供 こども たちのおやつによく食 た べていた。
冬芽 とうが は卵 たまご 形 がた で褐色 かっしょく をしており、芽 め 鱗 うろこ の縁 えん は色 いろ が淡 あわ い[ 15] 。枝 えだ 先 さき の仮 かり 頂 いただき 芽 め と互生 ごせい する側 がわ 芽 め はほぼ同 おな じ大 おお きさである[ 15] 。葉 は 痕 こん は円形 えんけい や半円 はんえん 形 がた で、維管束 たば 痕 あと は多数 たすう が輪状 りんじょう に並 なら ぶ[ 15] 。冬芽 とうが や枝 えだ の樹皮 じゅひ はサル の冬 ふゆ の食糧 しょくりょう で、かじり取 と られた跡 あと が見 み られることがある[ 15] 。
養蚕 ようさん 用 よう に栽培 さいばい されることも多 おお い。日本 にっぽん では一般 いっぱん には養蚕 ようさん には用 もち いられていない種 しゅ であるが、栽培 さいばい 桑 くわ の生育 せいいく 不良 ふりょう で飼料 しりょう 不足 ふそく となるときに用 もち いられた。霜害 そうがい に強 つよ く、栽培 さいばい 桑 くわ が被害 ひがい を受 う けたときに備 そな えて養蚕 ようさん 地帯 ちたい では霜害 そうがい が割合 わりあい 的 てき に少 すく ない山地 さんち に植 う えて置 お き、栽培 さいばい 桑 くわ の緊急 きんきゅう 時 じ の予備 よび とした。しかし、ヤマグワの葉 は 質 しつ は栽培 さいばい 桑 くわ よりも硬 かた いため、カイコの成長 せいちょう が遅 おそ くなり、飼料 しりょう としては性質 せいしつ は劣 おと る。北海道 ほっかいどう では、栽培 さいばい 種 しゅ のクワの生育 せいいく が困難 こんなん だったため、開拓 かいたく 初期 しょき に各地 かくち でさまざまな試行錯誤 しこうさくご が行 おこな われ、ヤマグワを用 もち いて養蚕 ようさん が行 おこな われた時 とき もあった。
若芽 わかめ や若葉 わかば を採取 さいしゅ して、よく茹 ゆ でてから水 みず にさらして、おひたし、和 あ え物 もの 、煮物 にもの などにして食 た べられる。黒 くろ 紫色 むらさきいろ に熟 じゅく した「桑 くわ の実 み 」は、甘 あま くて美味 おい しいと評 ひょう されていて、一 いち 度 ど にたくさん採 と れるのでジャムをつくることもできる。焼酎 しょうちゅう を使 つか った果実 かじつ 酒 しゅ は、強壮 きょうそう 薬 やく としての作用 さよう があるといわれる。
日本 にっぽん では以下 いか が、天然記念物 てんねんきねんぶつ として国 くに の文化財 ぶんかざい の指定 してい を受 う けている。
マグワ (真桑 まくわ 、学名 がくめい : Morus alba )は養蚕 ようさん に使 つか われるクワで、名称 めいしょう はヤマグワに対 たい するものである。別名 べつめい をトウグワ (唐桑 からくわ )、カラヤマグワ、カラグワ、マルベリー(mulberry)ともいい[ 17] 、中国 ちゅうごく 東部 とうぶ から朝鮮 ちょうせん にかけての地域 ちいき が原産 げんさん である。中国 ちゅうごく 植物 しょくぶつ 名 めい (漢 かん 名 めい )は桑 くわ (そう)という[ 17] 。紀元前 きげんぜん にインド や日本 にっぽん に伝 つた わり、シルクロード を経 へ て12世紀 せいき にヨーロッパ へと伝 つた えられた。果実 かじつ はベージュ色 しょく から薄紫 うすむらさき 色 しょく で、甘 あま いが美味 おい しくはない。
カイコの食料 しょくりょう となり、その繭 まゆ から生糸 きいと を採 と る養蚕 ようさん のために利用 りよう される。中国 ちゅうごく では4500年 ねん 前 まえ からカイコの祖先 そせん にあたる野生 やせい のクワコ というガの飼育 しいく を始 はじ め、交配 こうはい を繰 く り返 かえ して家畜 かちく 化 か したカイコという種 たね をつくり、養蚕 ようさん 台 だい の上 うえ に置 お かれたクワの葉 は を食 た べさせて飼育 しいく している。生糸 きいと からつくった絹織物 きぬおりもの は、中国 ちゅうごく の重要 じゅうよう な輸出 ゆしゅつ 産業 さんぎょう となり、2000年 ねん 前 まえ の漢 かん の時代 じだい に、絹 きぬ を交易 こうえき するシルクロード が整備 せいび された。
クロミグワ (黒 くろ 実 じつ 桑 くわ 、学名 がくめい : Morus nigra )はアジア南西 なんせい 部 ぶ の原産 げんさん で、栽培 さいばい されたり、鳥 とり に種子 しゅし を運 はこ ばれてヨーロッパに広 ひろ まった。葉 は はハート形 がた でざらつく。果実 かじつ は甘 あま みと酸味 さんみ のバランスが良 よ く美味 びみ であるが、触 ふ れた途端 とたん に潰 つぶ れて傷 いた みやすい。
カイコ がクワの葉 は を食 た べて絹糸 けんし を作 つく るので、養蚕 ようさん などのため栽培 さいばい され、挿 さ し木 き で繁殖 はんしょく される。強 つよ い繊維 せんい 質 しつ を持 も つことから、製紙 せいし の原料 げんりょう にもなっている。クワの果実 かじつ はヤマグワやマルベリーなど、どの種類 しゅるい も食用 しょくよう に利用 りよう できる。
薬用 やくよう では、マグワ(漢 かん 名 めい :桑 くわ )、ヤマグワ(漢 かん 名 めい :鶏 にわとり 桑 くわ )が使 つか われる。根 ね 皮 がわ はソウハクヒ(桑 くわ 白 しろ 皮 がわ )とも呼 よ ばれ成分 せいぶん 本質 ほんしつ (原材料 げんざいりょう ) が専 もっぱ ら医薬品 いやくひん に指定 してい されている。葉 は ・花 はな ・実 み (集合 しゅうごう 果 はて )は「非 ひ 医 い 」扱 あつか い。有効 ゆうこう 成分 せいぶん として、葉 は にはペクチン 、干 ほ した葉 は には蛋白質 たんぱくしつ 、フラクトース 、グルコース 、ペントザン 、ガラクトン や、鉄 てつ 、マンガン などのミネラル 類 るい 、葉緑素 ようりょくそ などが含 ふく まれている。果実 かじつ には、転化 てんか 糖 とう 、リンゴ酸 さん 、コハク酸 さん 、色素 しきそ のシアニジン (アントシアニン の1種 しゅ )、ビタミンA ・B1 ・C 、イソクエルシトリン などを含 ふく む。また漢方 かんぽう で利用 りよう される根 ね 皮 がわ には、アデニン 、ベタイン 、アミリン 、シトステロール などを含 ふく んでいる。
クワの根 ね 皮 がわ は桑 くわ 白 しろ 皮 がわ (そうはくひ)、葉 は は桑 くわ 葉 は (そうよう)、枝 えだ は桑 くわ 枝 えだ (そうし)、果実 かじつ は椹 さわら (たん)または桑 くわ 椹 さわら (そうじん)、もしくは桑 くわ 椹 さわら 子 こ (そうしんし)という生薬 きぐすり である。桑 くわ 白 しろ 皮 がわ は、秋 あき から冬 ふゆ にかけて[ 注釈 ちゅうしゃく 1] 根 ね を掘 ほ り採 と って水洗 みずあら いし、外皮 がいひ を剥 へ いで白 しろ い部分 ぶぶん だけを刻 きざ み、天 てん 日干 ひぼ しをして調整 ちょうせい される。葉 は は晩秋 ばんしゅう の霜 しも が降 ふ った後 のち に、枝 えだ は初夏 しょか に採集 さいしゅう して天日 てんじつ 乾燥 かんそう させ調製 ちょうせい する。果実 かじつ と葉 は は乾燥 かんそう させて調製 ちょうせい されるが、生 せい も用 もち いられる。
利尿 りにょう 、鎮咳 、去痰 きょたん 、消炎 しょうえん 、強壮 きょうそう などの作用 さよう があり、漢方 かんぽう では桑 くわ 白 しろ 皮 がわ を鎮咳、去痰 きょたん に配剤 はいざい され、五 ご 虎 とら 湯 ゆ (ごことう)、清 きよし 肺 はい 湯 ゆ (せいはいとう)などの漢 かん 方方 かたがた 剤 ざい に使 つか われる。民間 みんかん では、根 ね 皮 がわ は咳 せき 、喘息 ぜんそく 、むくみ 、高血圧 こうけつあつ 予防 よぼう 目的 もくてき や強壮 きょうそう 。葉 は は咳 せき 、めまい 、ふらつき 、頭痛 ずつう 、病後 びょうご の体力 たいりょく 回復 かいふく 、滋養 じよう 強壮 きょうそう 、低 てい 血圧 けつあつ の補血 ほけつ 。枝 えだ は関節 かんせつ 痛 つう 、むくみ。果実 かじつ は倦怠 けんたい 疲労 ひろう 、不眠 ふみん 、かすみ目 め 、便秘 べんぴ に用 もち いられる。民間 みんかん 療法 りょうほう では、それぞれ1日 にち 量 りょう 5 - 20グラム を600 cc の水 みず で煎 せん じて3回 かい に分 わ けて服用 ふくよう する用法 ようほう が知 し られる。煎 せんじ 汁 じる の服用 ふくよう 法 ほう では、ほてりや熱 ねつ があるときなどに用 もち いられるが、胃腸 いちょう が冷 ひ えやすい人 ひと へは使用 しよう 禁忌 きんき とされている。
多少 たしょう 未熟 みじゅく で紅紫 こうし 色 しょく の果実 かじつ を桑 くわ 椹 さわら (そうじん)といって、35度 ど の焼酎 しょうちゅう 1リットル に桑 くわ 椹 さわら 300グラムを漬 つ け込 こ んで、冷暗所 れいあんしょ に3か月 げつ ほど保存 ほぞん して桑 くわ 椹 さわら 酒 しゅ を作 つく り、低 てい 血圧 けつあつ 、冷 ひ え症 しょう 、不眠症 ふみんしょう などの滋養 じよう 目的 もくてき に、就寝 しゅうしん 前 まえ に盃 さかずき 1 - 2杯 はい ほど飲 の まれる。同様 どうよう に、果実 かじつ と根 ね 皮 がわ を35度 ど の焼酎 しょうちゅう に漬 つ けたものが、1日 にち に盃 さかずき 1杯 はい ほど飲 の まれる。
民間 みんかん では、乾燥 かんそう 葉 は を茶 ちゃ の代 だい 用品 ようひん とする、いわゆる「桑 くわ 茶 ちゃ 」が飲 の まれていた地域 ちいき もあり、中風 ちゅうぶ の予防 よぼう にする。桑 くわ 茶 ちゃ にするクワの葉 は は、大 おお きく生長 せいちょう した葉 は を収穫 しゅうかく して天日 てんじつ で乾燥 かんそう し、揉 も み潰 つぶ して堅 かた い部分 ぶぶん を除 のぞ いてすり鉢 ばち などで細 こま かくすり潰 つぶ したものを、抹茶 まっちゃ のように湯 ゆ を注 そそ いで飲 の む。効能 こうのう として、便秘 べんぴ 改善 かいぜん 、肝 きも 機能 きのう 強化 きょうか 、脂肪 しぼう の抑制 よくせい 、糖尿 とうにょう 病 びょう 予防 よぼう などの研究 けんきゅう 報告 ほうこく もされている[ 19] [ 20] 。
桑 くわ 葉 は には1-デオキシノジリマイシン (1-deoxynojirimycin; DNJ)が含 ふく まれていることが近年 きんねん の研究 けんきゅう で明 あき らかになった。DNJ はブドウ糖 ぶどうとう の類似 るいじ 物質 ぶっしつ (アザ糖 とう 類 るい の一種 いっしゅ 、イミノ糖 とう )であり、小腸 しょうちょう において糖 とう 分解 ぶんかい 酵素 こうそ のα あるふぁ -グルコシダーゼ に結合 けつごう することでその活性 かっせい を阻害 そがい する。その結果 けっか 、スクロース やマルトース の分解 ぶんかい 効率 こうりつ が低下 ていか し、血糖 けっとう 値 ち の上昇 じょうしょう が抑制 よくせい される[ 21] などの効果 こうか がラットを対象 たいしょう にした動物 どうぶつ 実験 じっけん で報告 ほうこく されている[ 22] 。クワを食餌 しょくじ とする蚕 かいこ のフンを乾燥 かんそう させたもの(漢方薬 かんぽうやく である蚕 かいこ 砂 すな )も同様 どうよう の効果 こうか がある[ 23] 。
春 はる に枝 えだ 先 さき の開 ひら いたばかりの若芽 わかめ や、まだ緑色 みどりいろ が濃 こ くならないうちの若葉 わかば は、軟 やわ らかいうちに摘 つ み取 と って食 た べられる。摘 つ んだ若葉 わかば は生 なま で天 てん ぷら や掻 か き揚 あ げ にしたり、さっと茹 ゆ でて水 みず にさらし、おひたし や和 あ え物 もの 、汁 しる の実 み 、塩味 しおあじ をつけて炊 だ いた米飯 べいはん に混 ま ぜたクワ飯 めし などにして食 た べられる。食味 しょくみ は淡泊 たんぱく で美味 びみ と評 ひょう されている。乾燥 かんそう してお茶 ちゃ 代 か わりに飲 の むクワ茶 ちゃ にもできる。
キイチゴ の実 み を細長 ほそなが くしたような姿 すがた で、赤黒 あかぐろ く熟 じゅく した果実 かじつ は、「桑 くわ の実 み 」「どどめ」「マルベリー (Mulberry)」「クワグミ」とよばれ、生 せい のまま食用 しょくよう にしたり、桑 くわ 酒 しゅ として果実 かじつ 酒 しゅ の原料 げんりょう 、シロップ漬 づ け、ジュースの材料 ざいりょう となる。赤黒 あかぐろ く熟 じゅく した果実 かじつ は、ジャム にすると芳香 ほうこう と甘 あま みに優 すぐ れている。カフカス 地方 ちほう やアルメニア 産 さん のクロミノクワ や、アメリカ 産 さん のアカミノクワ は、いずれも生食 なましょく 用 よう にしたり加工 かこう してジャムなどに利用 りよう する。
その果実 かじつ は甘酸 あまず っぱく、美味 びみ であり、高 たか い抗 こう 酸化 さんか 作用 さよう で知 し られる色素 しきそ ・アントシアニン をはじめとする、ポリフェノール を多 おお く含有 がんゆう する。蛾 が の幼虫 ようちゅう が好 この み、その体毛 たいもう が抜 ぬ け落 お ちて付着 ふちゃく するので食 しょく する際 さい には十分 じゅうぶん な水洗 みずあら いを行 おこな う必要 ひつよう がある。また、非 ひ 常食 じょうしょく として桑 くわ の実 み を乾燥 かんそう させた粉末 ふんまつ を食 た べたり、水 みず に晒 さら した成熟 せいじゅく 前 まえ の実 み をご飯 はん に炊 た き込 こ むことも行 おこな われてきた。なお、クワの果実 かじつ は、キイチゴのような粒 つぶ の集 あつ まった形 かたち を表 あらわ す語 かたり としても用 もち いられる。発生 はっせい 学 がく では動物 どうぶつ の初期 しょき 胚 はい に桑 くわ 実 じつ 胚 はい 、藻類 そうるい にクワノミモ(パンドリナ )などの例 れい がある。
地図 ちず 記号 きごう 「桑畑 くわばたけ 」
養蚕 ようさん の歴史 れきし は古 ふる く、中国 ちゅうごく では紀元前 きげんぜん 3000年 ねん ごろ、日本 にっぽん では弥生 やよい 時代 じだい 中期 ちゅうき から始 はじ められたと考 かんが えられている。
桑 くわ を栽培 さいばい する桑畑 くわばたけ は地図 ちず 記号 きごう にもなり[ 25] 、日本 にっぽん 中 ちゅう で良 よ く見 み られる風景 ふうけい であった。養蚕 ようさん 業 ぎょう が最盛 さいせい 期 き であった昭和 しょうわ 初期 しょき には、桑畑 くわばたけ の面積 めんせき は全国 ぜんこく の畑地 はたち 面積 めんせき の4分 ぶん の1に当 あ たる71万 まん ヘクタール に達 たっ したという[ 26] 。しかし、生産 せいさん 者 しゃ の高齢 こうれい 化 か 、後継 こうけい 者 しゃ 難 なん により生糸 きいと 産業 さんぎょう が衰退 すいたい した。そのため、桑畑 くわばたけ も減少 げんしょう し、平成 へいせい 25年 ねん の2万 まん 5千 せん 分 ぶん の1地形 ちけい 図 ず 図式 ずしき において桑畑 くわばたけ の地図 ちず 記号 きごう は廃止 はいし となった。新版 しんぱん 地形 ちけい 図 ず やWeb地図 ちず の地理 ちり 院 いん 地図 ちず では、同時 どうじ に廃止 はいし された「その他 た の樹木 じゅもく 畑 はたけ 」[ 27] と同様 どうよう 、畑 はたけ の地図 ちず 記号 きごう [ 28] で表現 ひょうげん されている。
小笠原諸島 おがさわらしょとう ・母島 ははじま のロース記念 きねん 館 かん に陳列 ちんれつ された、オガサワラグワ製 せい の細工 ざいく
クワの木質 もくしつ はかなり硬 かた く、磨 みが くと深 ふか い黄色 おうしょく を呈 てい して美 うつく しいので、しばしば工芸 こうげい 用 よう に使 つか われる。しかし、銘木 めいぼく として使 つか われる良材 りょうざい は極 きわ めて少 すく ない。特 とく に良材 りょうざい とされるのが、伊豆諸島 いずしょとう の御蔵島 みくらじま や三宅島 みやけじま で産出 さんしゅつ される「島 しま 桑 くわ 」であり、緻密 ちみつ な年輪 ねんりん と美 うつく しい木目 もくめ と粘 ねば りのあることで知 し られる。江戸 えど 時代 じだい から江戸 えど 指物 さしもの に重用 じゅうよう され、老人 ろうじん に贈 おく る杖 つえ の素材 そざい として用 もち いられた。国産 こくさん 材 ざい の中 なか では最 さい 高級 こうきゅう 材 ざい に属 ぞく する。小笠原諸島 おがさわらしょとう の母島 ははじま には、島 しま の固有 こゆう 種 しゅ であるオガサワラグワの大木 たいぼく が点在 てんざい していた。だが銘木 めいぼく として乱伐 らんばつ され、現在 げんざい ではほとんど失 うしな われている。
また古 ふる くから弦楽器 げんがっき の材料 ざいりょう として珍重 ちんちょう された。正 せい 倉 くら 院 いん にはクワ製 せい の楽 らく 琵琶 びわ や阮咸 が保存 ほぞん されており、薩摩琵琶 さつまびわ や筑前 ちくぜん 琵琶 びわ もクワ製 せい のものが良 よ いとされる。三味線 しゃみせん もクワで作 つく られることがあり、特 とく に小唄 こうた では音色 ねいろ が柔 やわ らかいとして愛用 あいよう されたが、広 ひろ い会場 かいじょう には向 む かないとされる。
なお、幕末 ばくまつ には桑 くわ の樹皮 じゅひ より綿 めん を作 つく る製法 せいほう を江戸 えど 幕府 ばくふ に届 とど け出 で たものがおり、1861年 ねん (文久 ぶんきゅう 元年 がんねん )には幕府 ばくふ からこれを奨励 しょうれい する命令 めいれい が出 だ されているが、普及 ふきゅう しなかったようである。桑 くわ の樹皮 じゅひ から繊維 せんい (スフ )を得 え る取 と り組 く みは、第 だい 二 に 次 じ 世界 せかい 大戦 たいせん による民需 みんじゅ 物資 ぶっし の欠乏 けつぼう が顕著 けんちょ となり始 はじ める1942年 ねん (昭和 しょうわ 17年 ねん )ごろより戦時 せんじ 体制 たいせい の一環 いっかん として行 おこな われるようになり、学童 がくどう 疎開 そかい 中 なか の者 もの も含 ふく め全国 ぜんこく 各地 かくち の児童 じどう を動員 どういん しての桑 くわ の皮 かわ 集 あつ めが行 おこな われた。最初 さいしょ 民需 みんじゅ 被服 ひふく のみであった桑 くわ の皮 かわ 製 せい 衣服 いふく の普及 ふきゅう は、最終 さいしゅう 的 てき に1945年 ねん (昭和 しょうわ 20年 ねん )ごろには日本 にっぽん 兵 へい の軍服 ぐんぷく にまで及 およ んだが、肌触 はだざわ りに難 なん があったことから終戦 しゅうせん とともにその利用 りよう は廃 すた れた。
現在 げんざい の中国 ちゅうごく 新疆 しんきょう ウイグル自治 じち 区 く にあるホータン 周辺 しゅうへん の地域 ちいき では、ウイグル人 じん の手工業 しゅこうぎょう によって現在 げんざい も桑 くわ の皮 かわ を原料 げんりょう とした紙 かみ (桑 くわ 皮 かわ 紙 し )の製造 せいぞう が行 おこな われている[ 29] 。伝承 でんしょう では、蔡倫 よりも古 ふる く、2000年 ねん 以上 いじょう の製紙 せいし 歴史 れきし があると言 い われているが[ 30] 、すでに宋 そう の時代 じだい (12世紀 せいき ごろ)、和田 わだ の桑 くわ 皮 かわ 紙 し は西 にし 遼 りょう の公文 こうぶん 書 しょ などで使用 しよう されていた。新 しん 疆では、清 きよ 及 およ び民 みん 国 こく 期 き の近代 きんだい に至 いた るまで、紙幣 しへい や公文書 こうぶんしょ 、契約 けいやく 書 しょ などの重要 じゅうよう 書類 しょるい に桑 くわ 皮 かわ 紙 し が広 ひろ く使用 しよう されていた[ 31] 。
中国 ちゅうごく の元 もと 王朝 おうちょう では、紙幣 しへい である交鈔 の素材 そざい としてクワの樹皮 じゅひ が用 もち いられた[ 32] 。中国 ちゅうごく 広西 ひろせ チワン族 ぞく 自治 じち 区 く 来賓 らいひん 市 し などでは、養蚕 ようさん に使 つか うために切 き り落 お とすクワの枝 えだ を回収 かいしゅう して、製紙 せいし 原料 げんりょう にすることが実用 じつよう 化 か されている。新 あら たに年産 ねんさん 20万 まん トンの工場 こうじょう 建設 けんせつ も予定 よてい されている[ 33] 。
カイコガ とその祖先 そせん とされるクワコ 以外 いがい にもクワを食 しょく 草 そう とするガの幼虫 ようちゅう がおり、クワエダシャク 、クワノメイガ 、アメリカシロヒトリ 、セスジヒトリ などが代表 だいひょう 的 てき 。クワエダシャクの幼虫 ようちゅう はクワの枝 えだ に擬態 ぎたい し、枝 えだ と見 み 間違 まちが えて、土瓶 どびん を掛 か けようとすると落 お ちて割 わ れるため「土瓶 どびん 割 わ り」という俗称 ぞくしょう がある。クワシントメタマバエ もクワの木 き によく見 み られる。カミキリムシ には幼虫 ようちゅう がクワの生木 なまき を食害 しょくがい する種 たね が極 きわ めて多 おお く、クワカミキリ 、センノカミキリ 、トラフカミキリ 、キボシカミキリ 、ゴマダラカミキリ などが代表 だいひょう 的 てき である。これらのカミキリムシは農林 のうりん 業 ぎょう 害虫 がいちゅう として林業 りんぎょう 試験場 しけんじょう の研究 けんきゅう 対象 たいしょう となっており、実験 じっけん 用 よう の個体 こたい を大量 たいりょう 飼育 しいく するため、クワの葉 は や材 ざい を原料 げんりょう としソーセージ状 じょう に加工 かこう された人工 じんこう 飼料 しりょう も開発 かいはつ されている。なお、オニホソコバネカミキリ も幼虫 ようちゅう がクワの材 ざい を専 せん 食 しょく するカミキリムシであるが、摂食 せっしょく するのが農林 のうりん 業 ぎょう に利用 りよう されない巨大 きょだい な古木 ふるき の枯死 こし 腐朽 ふきゅう 部 ぶ であるため害虫 がいちゅう とは見 み なされていない。
養蚕 ようさん の普及 ふきゅう とともにクワの栽培 さいばい も広 ひろ がりを見 み せたが、春 はる 一 いち 番目 ばんめ に発芽 はつが した葉 は は遅 おそ 霜 しも の被害 ひがい に遭 あ いやすかった。長野 ながの 県 けん では1924年 ねん (大正 たいしょう 13年 ねん )には103万 まん 円 えん 、1927年 ねん (昭和 しょうわ 2年 ねん )には1000万 まん 円 えん とも見積 みつ もられる被害 ひがい を出 だ している。霜害 そうがい に遭 あ うと葉 は は黒 くろ く変色 へんしょく して養蚕 ようさん には使用 しよう できなくなるので二 に 番目 ばんめ の発芽 はつが を待 ま つしかなく、春蚕 しゅんさん の生産 せいさん に大 おお きな影響 えいきょう を与 あた えた[ 34] 。
古代 こだい バビロニア において、桑 くわ の実 じつ はもともとは白 しろ い実 み だけとされるが、赤 あか い実 み と紫 むらさき の実 み を付 つ けるのは、ギリシャ神話 しんわ の『ピュラモスとティスベ 』という悲恋 ひれん によるこの二人 ふたり の赤 あか い血 ち が、白 しろ いその実 み を染 そ め、ピュラモスの血 ち が直接 ちょくせつ かかり赤 あか となり、ティスベの血 ち を桑 くわ の木 き が大地 だいち から吸 す い上 あ げて紫 むらさき になったとされている。
桑 くわ の弓 ゆみ 、桑弓 くわゆみ (そうきゅう)ともいい、男 おとこ の子 こ が生 う まれた時 とき に前途 ぜんと の厄 やく を払 はら うため、家 いえ の四方 しほう に向 む かって桑 くわ の弓 ゆみ で蓬 よもぎ の矢 や を射 い た。起源 きげん は古代 こだい 中華 ちゅうか 文明 ぶんめい 圏 けん による男子 だんし の立身出世 りっしんしゅっせ を願 ねが った通過 つうか 儀礼 ぎれい で、日本 にっぽん に伝 つた わって男子 だんし の厄除 やくよ けの神事 しんじ となった。桑 くわ の弓 ゆみ は桑 くわ の木 き で作 つく った弓 ゆみ 、蓬 よもぎ の矢 や は蓬 よもぎ の葉 は で羽 はね を矧 は いだ(はいだ)矢 や 。
養蚕 ようさん 発祥 はっしょう の地 ち 、中国 ちゅうごく においてはクワは聖 せい なる木 き だった。地理 ちり 書 しょ 『山海 さんかい 経 けい 』において10個 こ の太陽 たいよう が昇 のぼ ってくる扶桑 ふそう という神木 しんぼく があったが、羿(げい)という射手 しゃしゅ が9個 こ を射抜 いぬ き昇 のぼ る太陽 たいよう の数 かず は1個 いっこ にしたため、天 てん が安 やす らぎ、地 ち も喜 よろこ んだと書 か き残 のこ されている。太陽 たいよう の運行 うんこう に関 かか わり、世界 せかい 樹 じゅ 的 てき な役目 やくめ を担 にな っていた。詩書 ししょ 『詩経 しきょう 』においてもクワはたびたび題材 だいざい となり、クワ摘 つま みにおいて男女 だんじょ のおおらかな恋 こい が歌 うた われた。小説 しょうせつ 『三国志 さんごくし 演義 えんぎ 』においては劉 りゅう 備 の生家 せいか の東南 とうなん に大 おお きな桑 くわ の木 き が枝葉 えだは を繁 しげ らせていたと描 えが かれている。
日本 にっぽん においてもクワは霊力 れいりょく があるとみなされ、特 とく に前述 ぜんじゅつ の薬効 やっこう を備 そな えていたことからカイコとともに普及 ふきゅう した。古代 こだい 日本 にっぽん ではクワは箸 はし や杖 つえ という形 かたち で中風 ちゅうぶ を防 ふせ ぐとされ、鎌倉 かまくら 時代 じだい 喫茶 きっさ 養生 ようじょう 記 き においては「桑 くわ は是 ぜ れ又 また 仙薬 せんやく の上 うえ 首 くび 」ともてはやされている。
クワの花言葉 はなことば は、「知恵 ちえ 」とされる。
雷 かみなり よけのまじないとして広 ひろ く使 つか われた言葉 ことば であるが、最 もっと も知 し られている由来 ゆらい は桑原 くわはら 村 むら の井戸 いど に雷 かみなり が落 お ち、蓋 ぶた をしたところ雷 かみなり が「もう桑原 くわばら に落 お ちないから逃 に がしてくれ」と約束 やくそく したためという説 せつ [ 注釈 ちゅうしゃく 2] があり、これにはクワ自体 じたい は関 かか わりがない。しかし、諸説 しょせつ の中 なか には宮崎 みやざき 県 けん 福島 ふくしま 村 むら でクワの上 うえ に雷 かみなり が落 お ち、雷 かみなり がけがをしたので落 お ちないようになったという説 せつ 、沖縄 おきなわ 県 けん では雷 かみなり がクワのまたに挟 はさ まれて消 ぎ えたため雷鳴 らいめい の折 おり には「桑木 くわき のまた」と唱 とな えるようになった[ 35] という説 せつ もある。
滄桑の変 へん - 桑田 くわた 滄海 そうかい ともいい、クワ畑 はたけ がいつのまにか海 うみ に変 か わるような天地 てんち の激 はげ しい流転 るてん の意 い 。神仙 しんせん 伝 でん が出典 しゅってん であり、仙女 せんにょ の麻 あさ 姑 しゅうと が500年間 ねんかん の変化 へんか として話 はな した内容 ないよう から生 う まれた。月日 つきひ の流 なが れの無常 むじょう を示 しめ す言葉 ことば として、唐 とう 代 だい の劉 りゅう 廷芝 の詩 し にも使 つか われている[ 36] 。
蓬 よもぎ 矢 や 桑弓 くわゆみ (ほうしそうきゅう) - もともとは上記 じょうき にある中華 ちゅうか ・日本 にっぽん においての男子 だんし の祭事 さいじ や神事 しんじ であるが、払 はら い清 きよ めをあらわす言葉 ことば の比喩 ひゆ として万葉集 まんようしゅう や古事記 こじき にも用 もち いられ、「蓬 よもぎ 矢 や 」・「桑弓 くわゆみ 」それぞれ単独 たんどく でも同 おな じ意味 いみ を持 も つ。
桑 くわ 中 ちゅう 之 の 喜 き (そうちゅうのき、そうちゅうのよろこび) - 畑 はたけ の中 なか で男女 だんじょ がひそかに会 あ う楽 たの しみのこと[ 37] 。中国 ちゅうごく では、桑畑 くわばたけ の中 なか や桑 くわ の木 き を目印 めじるし としてその下 した で逢引 あいびき をしていたと言 い われ、『詩経 しきょう 』鄘風(ヨウフウ)篇 へん には桑畑 くわばたけ で美女 びじょ を待 ま つ「桑 くわ 中 ちゅう 」という詩 し が記載 きさい されている[ 37] 。永井 ながい 荷風 かふう の随筆 ずいひつ にも、色事 いろごと について書 か いた「桑 くわ 中 ちゅう 喜 き 語 ご 」がある[ 38] 。
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