ヤマモモ

ヤマモモ
ヤマモモ （2004年ねん6月がつ27日にち、愛媛えひめ県けん広見ひろみ町まち）
分類ぶんるい（APG III）
界さかい : 植物しょくぶつ界かい Plantae 階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ angiosperms 階級かいきゅうなし : 真正しんしょう双そう子葉しよう類るい eudicots 階級かいきゅうなし : コア真正しんせい双そう子葉しよう類るい core eudicots 階級かいきゅうなし : バラ類るい rosids 階級かいきゅうなし : 真正しんしょうバラ類るいI eurosids I 目め : ブナ目め Fagales 科か : ヤマモモ科か Myricaceae 属ぞく : ヤマモモ属ぞく Morella 種たね : ヤマモモ M. rubra
学名がくめい
Morella rubra Lour. (1790)
シノニム
Myrica rubra Siebold et Zucc. (1846) Myrica rubra Siebold et Zucc. var. acuminata Nakai (1933)
和名わみょう
ヤマモモ
英名えいめい
red bayberry, wax myrtle
品種ひんしゅ
シロヤマモモ M. r. f. alba

ヤマモモ（山桃やまもも、学名がくめい: Morella rubra）は、ヤマモモ科かヤマモモ属ぞくの常緑樹じょうりょくじゅ。また、その果実かじつのこと。夏なつに実みのる赤あかい果実かじつは生食なましょくでき、甘酸あまずっぱい独特どくとくの風味ふうみがあり、ジャムや果実かじつ酒しゅにも加工かこうされる。

名称めいしょう

和名わみょうのヤマモモの名なについて、植物しょくぶつ学者がくしゃの辻井つじい達一たついちは「やはり山やまの桃ももということだろう」と述のべている。日本にっぽんに自生じせいするヤマモモは、「モモ」と呼よばれ、モモは果実かじつの総称そうしょうともしていて、渡来とらい種しゅの桃ももは初はじめ「ケモモ」と呼よばれていた。それが、時代じだいが立たって桃ももが生活せいかつに食くい込こんで「モモ」と呼よばれ、ヤマモモは山やまのモモで「ヤマモモ」と呼よばれるようになった。琉球りゅうきゅう方言ほうげんに残のこっている。琉球りゅうきゅう方言ほうげんは3母音ぼいん（O→U、E→I）で、ヤマモモを「ムム」モモを、「キームム」という。モモのモは実みを表あらわし、軟質なんしつな外側そとがわのモと内うちの硬かたい核かくのモでモモとして二に重じゅう性せいを表あらわしている。

漢かん名めいは楊梅やまもも（ようばい）、中国ちゅうごく名めいは楊梅やまもも（ヤンメイ、（拼音: yángméi）） で、その葉はの形かたちが楊（ヤナギ）に似にている様ように由来ゆらいするとされる。別名べつめいとして山桜桃ゆすらうめ、火ひ実みなどがあり、古代こだいから和歌わかなどにも詠よまれる。ベトナムでも漢かん名めいをそのまま用もちいて「dương mai」ズオンマイと呼よぶ。

分布ぶんぷ・生育せいいく環境かんきょう

中国ちゅうごく大陸たいりくや日本にっぽんを原産げんさんとし、山地さんちの暖地だんちを好このみ、暑あつさには強つよい。日本にっぽんでは関東かんとう以南いなん（房総半島ぼうそうはんとう南部なんぶ、福井ふくい県けん以西いせい）の本州ほんしゅう、四国しこく、九州きゅうしゅう、沖縄おきなわの低地ていちや山地さんちに自生じせいする。本州ほんしゅう南部なんぶ以南いなんでは、海岸かいがんや低てい山やまの乾燥かんそうした尾根おねなど、痩やせ地ちで森林しんりんを構成こうせいする重要じゅうよう樹じゅ種しゅである。

日本にっぽん国外こくがいでは、朝鮮半島ちょうせんはんとう南部なんぶ、中国ちゅうごく、台湾たいわん、フィリピンに分布ぶんぷする。中国ちゅうごくでは江蘇ちぁんすー省しょう、浙江せっこう省しょうが有名ゆうめいな産地さんちで、とりわけ寧やすし波なみ市しに属ぞくする余よ姚市や慈渓市し、あるいは温州うんしゅう市し甌海区くは古ふるくから知しられた産地さんちであり、千せん年ねんに及およぶとされる古木ふるきも多おおく残のこる。他たに福建ふっけん省しょう、広東かんとん省しょう、広西ひろせチワン族ぞく自治じち区く、台湾たいわんなども産地さんちである。

自然しぜん分布ぶんぷ以外いがいにも、人ひとの手てによって公園こうえん、庭園ていえん、都市としの街路がいろなどにも植うえられる。関東かんとう地方ちほうではほとんど実みがつかないで花はなだけを楽たのしむだけになり、これを花はな楊梅やまももという。

形態けいたい・生態せいたい

ヤマモモの樹き

常緑じょうりょく広葉樹こうようじゅの大だい高木たかぎで、成木なりきは樹き高だか20メートル (m) ほどになる。大おおきなものは、幹みき径みちは1 m以上いじょうになるものもある。樹冠じゅかんは、こんもりした円形えんけいとなる。生長せいちょうは遅おそく、幼よう木きは日陰ひかげを好このむが、成木なりきは日ひなたを好このむ。幹みきの樹皮じゅひは灰白色かいはくしょくで滑なめらか、一いち年ねん枝えだは灰はい褐色かっしょくで多数たすうの楕円だえん形がたの皮かわ目めを持もつ。古ふるくなると縦たての裂さけ目めが出でることが多おおい。

葉はは密みつに互生ごせいし、多おおくは枝えだ先さきに束たば生せいする。葉は身みは革かわ質しつ、つやのある深緑しんりょくで、長ながさ5 - 12センチメートル (cm) 、幅はば1 - 2 cmほどの倒たおせ披針形ひしんけいか長ちょう楕円だえん形がた、もしくは倒卵形とうらんけいをしており、成木なりきでは葉はは滑なめらかな縁えん（全ぜん縁えん）だが、若木わかぎでは粗あらく不規則ふきそくな鋸歯きょしが出でることが多おおい。葉はの裏側うらがわに芳香ほうこうを出だす油あぶら点てん（ゆてん）がある。葉柄ようへいは5 - 10ミリメートル (mm) 程度ていどと短みじかい。葉腋ようえきには円筒えんとう形がたの花芽かががつく。

花期かきは3 - 4月がつ。雌雄しゆう異い株かぶ。葉はの付つけ根ねから穂状すいじょうの花序かじょを伸のばして、数珠じゅずつなぎに小ちいさな桃色ももいろの花弁はなびら4枚まいの目立めだたない花はなをつける。

果はて期きは6 - 7月がつ。雌めす株かぶにつく果実かじつは直径ちょっけい1.5 - 2 cmのほぼ球形きゅうけいで、固かたまってたくさん実みのり、6月がつごろに黄き紅色こうしょくから鮮紅せんこう色しょくを経へて、暗くら赤色あかいろに熟じゅくし、生せいで食たべられる。表面ひょうめんに粒状りゅうじょう突起とっきを密生みっせいする。この突起とっきはつやがあるので、外見がいけん的てきには小粒こつぶの赤あかいビーズを一いち面めんに並ならべたように見みえる。ヤマモモの果実かじつは鳥とりなどに食たべられ、消化しょうかされた後のちに発芽はつがする性質せいしつがある。

枝えだ先さきには葉は芽めがつき、円錐えんすい形がたで黄色きいろい腺せん点てんに覆おおわれている。雌雄しゆう異い株かぶであることから、雌花めばな序じょの冬芽とうがと雌花めばな序じょの冬芽とうがは別々べつべつの株かぶにつき、雌花めばな序じょのほうがやや細ほそい。

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  樹皮じゅひ
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  葉は
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  花はな
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  果実かじつ

根粒こんりゅうに窒素ちっそ固定こていを行おこなう放線ほうせん菌きんの1種しゅであるフランキアを共生きょうせいさせており、比較的ひかくてき栄養えいようの乏とぼしい土壌どじょうでも生育せいいくできる。

ホルトノキとの区別くべつ

その姿すがたや形かたちはややホルトノキに似にており、本州ほんしゅう南部なんぶ以南いなんでは紛まぎらわしいことがある。ホルトノキは落葉らくようが赤あかくなり、常つねに少数しょうすうの葉はが赤あかく色いろづいているのがよい区別くべつ点てんになる。

栽培さいばい・生産せいさん

比較的ひかくてき日陰ひかげでも耐たえるが、雌めす株かぶに果実かじつを結むすばせるには日当ひあたりの良よいところに植うえる。土壌どじょうの質しつは乾燥かんそうした壌土じょうどに、根ねは深ふかく張はる。植うえ栽適期きは6 - 7月がつ上旬じょうじゅんか、9月がつ中旬ちゅうじゅん - 10月がつ中旬ちゅうじゅんとされる。剪定せんていは3 - 4月がつか6 - 7月がつに行おこない、伸のびすぎた枝えだを切きって樹き形がたが整ととのえられる。施肥せひを行おこなう時期じきは、2 - 3月と5月がつとされる。

病虫害びょうちゅうがいに、細菌さいきん（バクテリア）による病気びょうきである細菌さいきん性せいこぶ病びょうにかかることがあり、枝えだや幹みきにごつごつしたこぶが出でているもの見みられる。

野生やせい種しゅ以外いがいに大粒おおつぶで酸味さんみの強つよい瑞光ずいこう、大玉おおだまで酸味さんみの弱よわい森口もりぐちや秀光ひでみつ（秀峰しゅうほう、平井ひらい1号ごう）などの栽培さいばい品種ひんしゅがあり、農作物のうさくもつとして栽培さいばいされている。中国ちゅうごくでは浙江せっこう省しょうの「丁ちょう嶴梅」や広東かんとん省しょうの「烏がらす酥楊梅うめ」という品種ひんしゅが良質りょうしつで知しられている。日本にっぽんの改良かいりょう品種ひんしゅは少すくなくなく、本来ほんらいの赤あかい果実かじつだけではなく、白しろや紅色こうしょくの実みの種類しゅるいもつくられている。白しろい実みをつけるものは、シロモモという変種へんしゅから作出さくしゅつされた品種ひんしゅである。そのほか、阿波あわ錦にしき（あわにしき）、日ひの出で、甘露かんろ（かんろ）、白妙しろたえ（しろたえ）などの特産とくさん品種ひんしゅがある。

日本にっぽんでは四国しこくの徳島とくしま県けんが最もっとも栽培さいばい・生産せいさんが盛さかんで産地さんちの中心ちゅうしんといわれる。高知こうち県けんや和歌山わかやま県けんもヤマモモの産地さんちで知しられている。しかし、果実かじつ収穫しゅうかく後ごは鮮度せんどがすぐに落おちるので、市場いちばにはあまり出回でまわらない。

人間にんげんとの関かかわり

大気たいき汚染おせんに強つよく、緑化りょくかを目的もくてきとする植樹しょくじゅに用もちいられ、庭木にわきや公園こうえん樹じゅ、街路がいろ樹じゅとして植うえられる。葉はが密生みっせいしていることから、建物たてものの風かざよけや目隠めかくしに列れつ植うえされることもある。

殖ふやし方かたは接木つぎきのほか取とり木きがある。雌雄しゆう異い株かぶのため結実けつじつには雄お株かぶが必要ひつようであるが、都市とし部ぶでは街路がいろ樹じゅとして植うえ栽されている雄ゆう株かぶが随所ずいしょにあるため、雌めす株かぶの結実けつじつ性せいは比較的ひかくてき高たかい。

果実かじつは甘酸あまずっぱく生なまで食たべられる。また、ジャム、缶詰かんづめ、砂糖さとう漬づけ、リキュール等ひとしに加工かこうされる。中国ちゅうごくでは白酒しろざけに砂糖さとうを加くわえ、ヤマモモの果実かじつを漬つけ込こんだリキュールの「楊梅やまもも酒しゅ」が広ひろく作つくられている。ヤマモモの生せいの果実かじつは、日持ひもちが悪わるく輸送ゆそうがきかないといわれている。

樹皮じゅひは桃もも皮がわ、渋木しぶき、渋皮しぶかわと呼よばれ染料せんりょうにした。樹皮じゅひに含ふくまれるタンニンには防腐ぼうふ、防水ぼうすい、防虫ぼうちゅうの効果こうかがあり、むかしは漁網ぎょもうを染そめるのに用もちいた。また、樹皮じゅひは楊梅やまもも皮がわ（ようばいひ）という生薬きぐすりになって、タンニンに富とむので止とめ瀉作用ようがある。消炎しょうえん作用さようもあるので筋肉きんにく痛つうや腰痛ようつう用ようの膏薬こうやくに配合はいごうされることもある。

高知こうち県けんではシイラ漬づけ漁業ぎょぎょうに使つかうシイラ漬づけの下したに葉はが付ついたヤマモモの枝えだを垂たらし、隠かくれようとする小しょう魚さかなを誘おびき寄よせ、小しょう魚さかなを目当めあてに集あつまってくるシイラを巻まき網もうで捕とる漁法ぎょほうに使つかわれている。

高知こうち県けんの県けんの花はな、徳島とくしま県けんの県けんの木き、知多ちた市し、西都さいと市し、那珂川なかがわ市し、下松しもまつ市しの市しの木きに指定していされている。ヤマモモの花言葉はなことばは、「教訓きょうくん」「一途いっと」とされる。

ヤマモモ属ぞく

ヤマモモ属ぞく（ヤマモモぞく、学名がくめい: Morella）は、ヤマモモ科かの属ぞくの一ひとつ。

• コウシュンヤマモモ Morella adenophora
• シロコヤマモモ Morella cerifera
• ヤマモモ Morella rubra

参考さんこう文献ぶんけん

• 鈴木すずき庸夫みちお・高橋たかはし冬ふゆ・安やす延のべ尚文なおふみ『樹皮じゅひと冬芽とうが：四季しきを通つうじて樹木じゅもくを観察かんさつする 431種しゅ』誠まこと文ぶん堂どう新光しんこう社しゃ〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年ねん10月がつ10日とおか、137頁ぺーじ。ISBN 978-4-416-61438-9。 
• 田中たなか潔きよし『知しっておきたい100の木き：日本にっぽんの暮くらしを支ささえる樹木じゅもくたち』主婦しゅふの友社ともしゃ〈主婦しゅふの友ともベストBOOKS〉、2011年ねん7月がつ31日にち、92頁ぺーじ。ISBN 978-4-07-278497-6。 
• 辻井つじい達一たついち『続ぞく・日本にっぽんの樹木じゅもく』中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ〈中公新書ちゅうこうしんしょ〉、2006年ねん2月がつ25日にち、43 - 46頁ぺーじ。ISBN 4-12-101834-6。 
• 平野ひらの隆久たかひさ監修かんしゅう 永岡書店ながおかしょてん編へん『樹木じゅもくガイドブック』永岡書店ながおかしょてん、1997年ねん5月がつ10日とおか、99頁ぺーじ。ISBN 4-522-21557-6。 
• 正木まさき覚さとし『ナチュラルガーデン樹木じゅもく図鑑ずかん』講談社こうだんしゃ、2012年ねん4月がつ26日にち、109頁ぺーじ。ISBN 978-4-06-217528-9。 
• 山やま﨑誠子こ『植うえ栽大図鑑ずかん［改訂かいてい版ばん］』エクスナレッジ、2019年ねん6月がつ7日にち、92 - 93頁ぺーじ。ISBN 978-4-7678-2625-7。 
• 茂木もき透とおる 写真しゃしん『樹きに咲さく花はな 離はなれ弁べん花はな 1』高橋たかはし秀男ひでお・勝山かつやま輝男てるお 監修かんしゅう、山やまと溪谷社けいこくしゃ〈山やま溪けいハンディ図鑑ずかん〉、2000年ねん、16-17頁ぺーじ。ISBN 4-635-07003-4。 
• 林はやし将之まさゆき『樹木じゅもくの葉は : 実物じつぶつスキャンで見分みわける1100種類しゅるい : 画像がぞう検索けんさく』山やまと溪谷社けいこくしゃ〈山やま溪けいハンディ図鑑ずかん〉、2014年ねん、352頁ぺーじ。ISBN 978-4-635-07032-4。 
• 田中たなか芳男よしお『林産りんさん名彙めいい』大だい日本にっぽん山林さんりん会かい、1913年ねん、98頁ぺーじ。NDLJP:/951750/68。 

関連かんれん項目こうもく

• モモ
• スモモ
• 木きの一覧いちらん
• 蓮はちす着ぎ寺てらのヤマモモ（国くにの天然記念物てんねんきねんぶつ）
• 肥料ひりょう木き
• 季語きご一覧いちらん
• 生薬きぐすり一覧いちらん
• MBSグループ - 毎日放送まいにちほうそう（MBS）千里丘せんりおか放送ほうそうセンターの敷地しきち内ないにヤマモモの老樹ろうじゅがあったことから、その後身こうしんである千里丘せんりおかミリカセンターやミリカホール、ミリカ・ミュージック等ひとしと、過去かこも含ふくめて“ミリカ”を冠かんする企業きぎょうや施設しせつが多おおい。

外部がいぶリンク

• "Morella rubra Lour". Germplasm Resources Information Network (GRIN). Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA). 2014年ねん8月がつ9日にち閲覧えつらん。 （英語えいご）
• "Morella rubra Lour" (英語えいご). Integrated Taxonomic Information System. 2014年ねん8月がつ9日にち閲覧えつらん。 （英語えいご）
• "Morella rubra". National Center for Biotechnology Information（NCBI） (英語えいご). （英語えいご）
• "Morella rubra" - Encyclopedia of Life （英語えいご）
• 波田なみた善夫よしお. “ヤマモモ”. 植物しょくぶつ雑学ざつがく事典じてん. 岡山理科大学おかやまりかだいがく生物せいぶつ地球ちきゅう学部がくぶ. 2014年ねん8月がつ9日にち閲覧えつらん。