ルッジェーロ1世 せい (Ruggero I, 1031年 ねん - 1101年 ねん 6月22日 にち )は、シチリア 伯 はく 。タンクレード・ド・オートヴィル の子 こ で、ロベルト・イル・グイスカルド の弟 おとうと 。初代 しょだい シチリア 王 おう ルッジェーロ2世 せい の父親 ちちおや 。
1055年 ねん 以後 いご 、南 みなみ イタリア に来 く る。兄 あに ロベルトに従 したが い、南 みなみ イタリア、シチリアを征服 せいふく する。1061年 ねん には兄弟 きょうだい はメッシーナ からレッジョ・ディ・カラブリア までを征服 せいふく するに到 いた った。1072年 ねん にパレルモ を落 お とした[1] 後 ご 、ロベルトからシチリア伯 はく に任 にん じられる。
1085年 ねん 、ロベルトの死後 しご オートヴィル家 か の首領 しゅりょう となり、シチリアの支配 しはい を固 かた め、半 なか ば自立 じりつ する。1101年 ねん に亡 な くなった頃 ころ には、シチリアの大 だい 伯爵 はくしゃく と呼 よ ばれた。
ルッジェーロの支配 しはい 下 か にはギリシア人 じん やアラブ人 じん も多 おお くおり、宗教 しゅうきょう についても寛容 かんよう だった。
ルッジェーロはノルマンディー公国 こうこく の小 しょう 貴族 きぞく タンクレード・ド・オートヴィル と彼 かれ の2番目 ばんめ の妻 つま フレデゼンドとの間 あいだ の末 すえ 息子 むすこ であった。ルッジェーロは1057年 ねん の夏 なつ ごろに南 みなみ イタリア に辿 たど り着 つ いた。ベネディクト会 かい の僧侶 そうりょ ゴッフレード・マラテッラ(en )はルッジェーロのことを下 した のように記 しる している。
彼 かれ は非常 ひじょう に美 うつく しく、背 せ が高 たか く、優雅 ゆうが な体型 たいけい をしており、言葉 ことば が最 もっと も雄弁 ゆうべん で、助言 じょげん においては冷静 れいせい な若者 わかもの であった。彼 かれ はすべての行動 こうどう を計画 けいかく する上 じょう で先見 せんけん の明 あかり があり、人付 ひとづ き合 あ いはすべて楽 たの しくて陽気 ようき であった。強 つよ くて勇敢 ゆうかん で、戦 たたか いにおいては激 はげ しかった。
1057年 ねん 、ルッジェーロは兄 あに ロベルト・イル・グイスカルド と共 とも にレッジョを除 のぞ くカラブリアの大半 たいはん を征服 せいふく した。この頃 ころ のルッジェーロはスカレーア 地方 ちほう のコゼンツァ 周辺 しゅうへん の城 しろ で山賊 さんぞく のような生活 せいかつ をしていたという。1062年 ねん 、ルッジェーロは兄 あに ロベルトと交渉 こうしょう し、征服 せいふく したカラブリアを折半 せっぱん して統治 とうち することとし、彼 かれ らはそれぞれがカラブリア内 ない の半分 はんぶん の城 しろ と半分 はんぶん の村 むら を支配 しはい した。ちょうどこの頃 ころ 、ルッジェーロはジュディット・デヴルー(en )と結婚 けっこん した。
チェラーミの戦 たたか い (英語 えいご 版 ばん ) でムスリムと戦 たたか うルッジェーロ1世 せい 。1063年 ねん 、ルッジェーロはシチリア島 とう の街 まち チェラーミで35,000人 にん のムスリム軍 ぐん と激突 げきとつ し、イスラム勢力 せいりょく を撃破 げきは した。
ルッジェーロ・ロベルト兄弟 きょうだい は、カラブリアを征服 せいふく し終 お えたこの頃 ころ に、当時 とうじ イスラム勢力 せいりょく によって支配 しはい されていたシチリア島 とう の征服 せいふく 計画 けいかく を考 かんが え始 はじ めたとされる。この時代 じだい のシチリア島 とう は、ムスリム が統治 とうち していたが島 しま の住民 じゅうみん の大半 たいはん はビザンツ系 けい ギリシャ人 じん のキリスト教徒 きりすときょうと であった。シチリア島 とう のアラブ人 じん 統治 とうち 者 しゃ たちはチュニス のスルタンからほぼ独立 どくりつ していた。1061年 ねん 、ルッジェーロ・ロベルト兄弟 きょうだい はレッジョ・ディ・カラブリア からシチリア島 とう に向 む けて出発 しゅっぱつ し、メッシーナ を征服 せいふく した。1063年 ねん 6月 がつ 、ルッジェーロはチェラーミの戦 たたか い (英語 えいご 版 ばん ) でムスリム勢力 せいりょく を打 う ち破 やぶ り、1068年 ねん にはメジルミーニの戦 たたか い (英語 えいご 版 ばん ) でムスリムを撃破 げきは した。1072年 ねん 、兄弟 きょうだい はパレルモ を獲得 かくとく したのち、ロベルト・イル・グイスカルドは弟 おとうと のルッジェーロに対 たい して、自身 じしん の配下 はいか の領主 りょうしゅ としてシチリア伯 はく に就任 しゅうにん させた。シチリア伯 はく 就任 しゅうにん 後 ご のルッジェーロは、パレルモとメッシーナの半分 はんぶん 、そしてシチリア島 とう の北東 ほくとう 部分 ぶぶん を領有 りょうゆう し続 つづ けた。ルッジェーロが組織 そしき 的 てき なシチリア侵攻 しんこう を行 おこな えたのは1085年 ねん 以降 いこう であった。
1086年 ねん 、シラクサ がルッジェーロに降伏 ごうぶく し、1091年 ねん 2月 がつ にはノート が降伏 ごうぶく 。これによりルッジェーロはシチリア島 とう を完全 かんぜん に征服 せいふく した。ルッジェーロの征服 せいふく 戦争 せんそう は兄 あに ロベルトの多大 ただい なる支援 しえん のおかげであった。ロベルトが亡 な くなった後 のち 、ルッジェーロ伯 はく はオートヴィル家 か の年長 ねんちょう 者 しゃ となった。そんなルッジェーロは、ターラント公 こう ボエモン やカプア公 こう ランド4世 せい (英語 えいご 版 ばん ) や他 た の反乱 はんらん 諸侯 しょこう たちと対立 たいりつ するルッジェーロ・ボルサ を支援 しえん した(ボルサもボエモンも共 とも にルッジェーロの甥 おい であった)。1085年 ねん 、ボルサはルッジェーロの支援 しえん と引 ひ き換 か えに、カラブリアの諸 しょ 城 しろ の城主 じょうしゅ の座 ざ をルッジェーロに引 ひ き渡 わた し、1091年 ねん にはパレルモにおける相続 そうぞく 財産 ざいさん をルッジェーロに譲 ゆず り渡 わた した。
ルッジェーロのシチリア島 とう 統治 とうち はロベルトの頃 ころ の統治 とうち より完璧 かんぺき なものであった。ロンバルド人 じん やノルマン人 じん たちが多数 たすう 移民 いみん としてシチリア伯 はく 国内 こくない に流入 りゅうにゅう したことで、ラテン文化 ぶんか が流入 りゅうにゅう し、それまでシチリア島 とう で繁栄 はんえい していたビザンチン・ギリシャ文化 ぶんか を淘汰 とうた していった。1072年 ねん と1091年 ねん に、シチリア伯 はく 国 こく では家臣 かしん の騎士 きし たちに対 たい して封土 ほうど の授与 じゅよ が行 おこな われ、細分 さいぶん 化 か されていない巨大 きょだい な領 りょう 邦 くに は国内 こくない に存在 そんざい しなくなった。国内 こくない の全 すべ ての諸侯 しょこう はルッジェーロに忠誠 ちゅうせい を誓 ちか い、この後 のち ルッジェーロ伯 はく に対 たい する大 だい 規模 きぼ な反乱 はんらん は勃発 ぼっぱつ しなかった。
1091年 ねん 、北 きた アフリカからのムスリムによるシチリア島 とう 攻撃 こうげき を防 ふせ ぐため、北 きた アフリカのシチリアとの間 あいだ に位置 いち するマルタ島 とう の征服 せいふく を試 こころ み、艦隊 かんたい と共 とも にルッジェーロ自 みずか ら親 おや 征 せい した。ルッジェーロの乗 の る船 ふね は艦隊 かんたい のどの船 ふね よりも先 さき にマルタ島 とう に上陸 じょうりく し、マルタを統治 とうち するムスリム勢力 せいりょく のわずかな抵抗 ていこう を打 う ち破 やぶ り、翌日 よくじつ にはマルタの首都 しゅと イムディーナ に入城 にゅうじょう した。そしてマルタ島 とう を統治 とうち していたムスリムのカーディー たちと協定 きょうてい 締結 ていけつ の協議 きょうぎ を行 おこな った。この協定 きょうてい によれば、マルタ島 とう はルッジェーロ伯 はく 自身 じしん の属国 ぞっこく となること、マルタ島 とう はそれまで通 とお りカーディーが統治 とうち することが取 と り決 き められた。またマルタ島 とう で捕 と 囚 しゅう されていた多 おお くのギリシャ人 じん やキリスト教徒 きりすときょうと たちが解放 かいほう された。彼 かれ らは自分 じぶん 達 たち を解放 かいほう したルッジェーロをキリエ・エレイソン で褒 ほ め称 とな え賛美 さんび した。マルタを征服 せいふく し終 お えたルッジェーロは、彼 かれ と共 とも にシチリアへ帰 かえ ろうとする多 おお くの人々 ひとびと と共 とも に船 ふね に乗 の り込 こ み帰国 きこく した。ゴッフレード・マラテッラによると、あまりに多 おお くの人々 ひとびと がルッジェーロの船 ふね に乗 の り込 こ んだため、彼 かれ の船団 せんだん は沈没 ちんぼつ しかけるほどであったという[9] 。ルッジェーロのマルタ島 とう 征服 せいふく は、のちの時代 じだい に大幅 おおはば に誇張 こちょう されて伝 つた えられ、マルタ島 とう の旗 はた はルッジェーロが自身 じしん の旗印 はたじるし の一部分 いちぶぶん (赤 あか と白 しろ のマダラ模様 もよう の部分 ぶぶん )をマルタ島民 とうみん に与 あた えたことに由来 ゆらい するという伝説 でんせつ が生 う まれた[10] 。マルタ島 とう では、年 とし に一 いち 度 ど 、マルタ島 とう のキリスト教徒 きりすときょうと をムスリム支配 しはい から解放 かいほう したルッジェーロ伯 はく の功績 こうせき を讃 たた えミサがエムディーナ大 だい 聖堂 せいどう で行 おこな われている[要 よう 出典 しゅってん ] 。
ルッジェーロが鋳造 ちゅうぞう したトリフォラロ硬貨 こうか (trifollaro )に描 えが かれているルッジェーロ1世 せい 。トリフォラロ硬貨 こうか はミレート て鋳造 ちゅうぞう されていた。
政治 せいじ 的 てき に優位 ゆうい な立場 たちば にあったルッジェーロ伯 はく は、シチリア島内 とうない の教会 きょうかい の支配 しはい 者 しゃ として君臨 くんりん した。シチリア島 とう をギリシャ人 じん やムスリム人 じん から奪還 だっかん したルッジェーロを良 よ く思 おも っていた教皇 きょうこう は、1098年 ねん にルッジェーロと彼 かれ の相続 そうぞく 人 じん をシチリア島 とう におけるローマ教皇 きょうこう の大使 たいし に任 にん じた。ルッジェーロはシラクサやアグリジェント などに新 あら たなラテン教会 きょうかい の司教 しきょう 座 ざ を設立 せつりつ し、司教 しきょう を個人 こじん 的 てき に任命 にんめい すると同時 どうじ に、パレルモの大 だい 主教 しゅきょう 座 ざ を司教 しきょう 座 ざ に変更 へんこう した。これらの司教 しきょう やその他 た の聖職 せいしょく 者 しゃ の中 なか で、フランス人 じん は少数 しょうすう 派 は であり、ノルマン人 じん はさらに少 すく なかった。またルッジェーロは、ムスリムやギリシャ人 じん に対 たい して宗教 しゅうきょう 的 てき に寛容 かんよう な政策 せいさく をとり、ヴァル・デモーネ地域 ちいき ではギリシャ正教 せいきょう の修道院 しゅうどういん の建設 けんせつ を支援 しえん するほどであった。これらの都市 とし では、シチリアに降伏 ごうぶく することを条件 じょうけん に、ムスリムたちはモスクを再建 さいけん したり、カーディーを再建 さいけん したり、自由 じゆう に交易 こうえき したりする権利 けんり を有 ゆう していた。しかし王国 おうこく 内 ない の地方 ちほう 部 ぶ に於 お いては、ムスリムたちは農奴 のうど と化 か していた。ルッジェーロは多 おお くのムスリムを歩兵 ほへい として軍隊 ぐんたい に雇 やと っていたことも知 し られている。当時 とうじ のカンタベリー大司教 だいしきょう であるアンセルムス によれば、1098年 ねん カプアを包囲 ほうい していたルッジェーロの軍営 ぐんえい に「数 かぞ えきれないほどのムスリム兵 へい の茶色 ちゃいろ のテントが設置 せっち されていた」という。とはいうものの、ルッジェーロのシチリア島 とう 征服 せいふく 後 ご 、多数 たすう のイタリア人 じん やロンバルド人 じん が島 しま に流入 りゅうにゅう したためにシチリアではラテン文化 ぶんか が広 ひろ く行 い き渡 わた り、シチリア征服 せいふく が地中海 ちちゅうかい におけるムスリム勢力 せいりょく やムスリム文化 ぶんか の後退 こうたい に徐々 じょじょ につながったことは確 たし かである[要 よう 出典 しゅってん ] 。
1061年 ねん 11月にエヴルー伯 はく ギヨームの娘 むすめ ジュディット(ノルマンディー家 か 、1076年 ねん 没 ぼつ )と結婚 けっこん し、以下 いか の娘 むすめ などをもうけた。
2度目 どめ はモルタン伯 はく ギヨームの娘 むすめ エランブルジュと結婚 けっこん し、以下 いか の娘 むすめ などをもうけた。
最後 さいご の妻 つま アデライデ・デル・ヴァスト(マンフレーディ・デル・ヴァスト娘 むすめ 、エンリコ・デル・ヴァスト姉妹 しまい )との間 あいだ の男子 だんし 2人 にん が、それぞれ連続 れんぞく してシチリア伯 はく を継 つ いだ。アデライデは、ルッジェーロ1世 せい の死後 しご にエルサレム王 おう ボードゥアン1世 せい と再婚 さいこん した(のち離婚 りこん )。
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