(Translated by https://www.hiragana.jp/)
伊上勝 - Wikipedia コンテンツにスキップ

伊上いがみまさる

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
いがみ まさる
伊上いがみまさる
本名ほんみょう 井上いのうえ 正喜まさよし(いのうえ まさき)
生年月日せいねんがっぴ (1931-07-14) 1931ねん7がつ14にち
ぼつ年月日ねんがっぴ (1991-11-16) 1991ねん11月16にち(60さいぼつ
出生しゅっしょう 日本の旗 日本にっぽん群馬ぐんまけん
職業しょくぎょう 脚本きゃくほん
活動かつどう期間きかん 1958ねん - 1988ねん
配偶はいぐうしゃ あり
著名ちょめい家族かぞく
テンプレートを表示ひょうじ

伊上いがみ まさる(いがみ まさる[1][2]本名ほんみょう井上いのうえ 正喜まさよしいのうえ まさき[1][3][2]1931ねん7がつ14にち - 1991ねん11月16にち[1][2])は、日本にっぽん脚本きゃくほん群馬ぐんまけん出身しゅっしん[1][2]に「井上いのうえ まさる[1][2]、「もり 利夫としお[4]などの筆名ひつめいがあった。

長男ちょうなん脚本きゃくほん井上いのうえ敏樹としき[5]まご脚本きゃくほん井上いのうえ亜樹あき

来歴らいれき[編集へんしゅう]

群馬ぐんま県立けんりつ高崎たかさき高等こうとう学校がっこう卒業そつぎょう明治大学めいじだいがく進学しんがく文学部ぶんがくぶでフランス文学ぶんがく専攻せんこうし、27さい卒業そつぎょう広告こうこく代理だいりてんせんひろしゃ入社にゅうしゃ[1][2]

東芝とうしば商事しょうじがテレビ・ラジオよう脚本きゃくほん募集ぼしゅうしているのをり『遊星ゆうせい王子おうじ』の脚本きゃくほんいちばんげて応募おうぼしたところ入選にゅうせん。テレビドラマとなったこの『遊星ゆうせい王子おうじ』(日本にほんテレビ)の原作げんさく脚本きゃくほんつとめてデビュー[3][2]

以後いごひょう』(TBS)・『かいすぐるハリマオ』(日本にほんテレビ)など、せんひろしゃのテレビ冒険ぼうけん活劇かつげきぶつ脚本きゃくほん執筆しっぴつした[1][2]

隠密おんみつ剣士けんし』(TBS)では「忍者にんじゃブーム」をこす[1]

この『隠密おんみつ剣士けんし』で伊上いがみせんひろしゃのプロデューサー西村にしむら俊一しゅんいちとも投入とうにゅうした様々さまざま忍術にんじゅつ小道具こどうぐ忍法にんぽうなどのアイディアは、時代じだいげきなかでの「忍者にんじゃぶつ」の基本きほんパターンとして今日きょうにまで踏襲とうしゅうされるものとなった。

1965ねん昭和しょうわ40ねん)、34さい。『しん隠密おんみつ剣士けんし』を執筆しっぴつせんひろしゃ退社たいしゃしてフリーとなる[1][2]

1966ねん昭和しょうわ41ねん)、35さいせんひろしゃで『隠密おんみつ剣士けんし』をがけた西村にしむら俊一しゅんいち船床ふなとこ定男さだおともに、東映とうえい京都きょうと特撮とくさつ時代じだい劇映画げきえいがだい忍術にんじゅつ映画えいが ワタリ』に参加さんか[1]公開こうかいだいヒットし、つづいておな東映とうえい京都きょうと特撮とくさつ時代じだいげきかいりゅうだい決戦けっせん』をがけた。

同年どうねん東映とうえいから依頼いらいけて東映とうえいテレビの『悪魔あくまくん』(東映とうえいNET)に参加さんか[1]以後いごちょうきにわたりコンビをむことになる東映とうえいプロデューサーの平山ひらやまとおるとのはつ仕事しごととなる。

1967ねん昭和しょうわ42ねん)、36さい。『仮面かめん忍者にんじゃ あかかげ』(東映とうえい京都きょうと関西かんさいテレビ)で、ぜん52ぶん脚本きゃくほん執筆しっぴつした。

同年どうねん、『ジャイアントロボ』(東映とうえい、NET)を担当たんとうどうさく怪獣かいじゅうのアイディアは、の『仮面かめんライダーシリーズ』に登場とうじょうする怪人かいじんたちもとになったとかたっている。あく組織そしきだい幹部かんぶ次々つぎつぎ交代こうたいするフォーマットもほんさく確立かくりつされた。『仮面かめん忍者にんじゃ あかかげ』は組織そしきごとチェンジする方式ほうしきであり、ともに『仮面かめんライダーシリーズ』で応用おうようされている。

1968ねん昭和しょうわ43ねん)、37さい。『サイボーグ009』(東映動画とうえいどうが、NET)でアニメ作品さくひん脚本きゃくほん執筆しっぴつする。

1971ねん昭和しょうわ46ねん)、40さい。『仮面かめんライダー』(東映とうえい毎日放送まいにちほうそう)では初期しょき企画きかく『クロスファイヤー』の段階だんかいから参加さんか平山ひらやま2人ふたり企画きかくり、メインライターをつとめる。どう作品さくひんは「変身へんしん」が「変身へんしんブーム」として社会しゃかい現象げんしょうとなるだいヒット作品さくひんになった。

同年どうねん、『かえってきたウルトラマン』(円谷つぶらやプロ、TBS)の脚本きゃくほん執筆しっぴつし、東映とうえい円谷つぶらやプロ両社りょうしゃにまたがる活躍かつやくせる。この作品さくひんでは、伊上いがみによるぼつ脚本きゃくほん登場とうじょうする怪獣かいじゅう「キングザウルス」の設定せっていが、げきちゅうのエピソードで「キングザウルスさんせい」の転用てんようされている。

以後いご仮面かめんライダーシリーズをはじめとする変身へんしんヒーロー番組ばんぐみ数多かずおおがけた[2]

1977ねん昭和しょうわ52ねん)、46さい長編ちょうへん映画えいが恐竜きょうりゅうかいとり伝説でんせつ』(東映とうえい京都きょうと)に参加さんか

1978ねん昭和しょうわ53ねん)、47さい。『宇宙うちゅうからのメッセージ小説しょうせつばん執筆しっぴつ

1981ねん昭和しょうわ56ねん)、50さい。『仮面かめんライダースーパー1』(東映とうえい毎日放送まいにちほうそう以降いこうは、単発たんぱつで『水戸黄門みとこうもん』(TBS / C.A.L)などを執筆しっぴつしたほかは、脚本きゃくほんからほぼ一線いっせん退しりぞいた。

1986ねん昭和しょうわ61ねん)、55さい。『仮面かめんライダーだい全集ぜんしゅう』(講談社こうだんしゃかん)にミニ・ストーリーを寄稿きこう。その内容ないようは、伊上いがみ平山ひらやま阿部あべ立花たちばなふじ兵衛ひょうえした本郷ほんごうたけしからメッセージ・テープがとどき「ショッカーがアフリカの地下ちかだい帝国ていこくきずいており、いま仲間なかまのライダーたちあつめ、決戦けっせん準備じゅんびちゅうである」と本郷ほんごうつたえる、という内容ないようだった。

1988ねん昭和しょうわ63ねん)、57さい。『水戸黄門みとこうもんだい17だい18』(TBS / C.A.L)の脚本きゃくほんすう執筆しっぴつし、脚本きゃくほん引退いんたいした。

1991ねん平成へいせい3ねん)11月16にち肝硬変かんこうへんのため死去しきょ。60さいぼつ

人物じんぶつ作風さくふう[編集へんしゅう]

特撮とくさつドラマを中心ちゅうしんすうおおくの作品さくひんがけ、現在げんざい特撮とくさつ番組ばんぐみのフォーマットをつくった人物じんぶつとしてられる[2]とくぜんはなし脚本きゃくほん執筆しっぴつした『仮面かめん忍者にんじゃあかかげ』、空前くうぜんだいヒットを記録きろくした『仮面かめんライダー』にはじまる仮面かめんライダーシリーズは、その代表だいひょうさくとしてげられる。また、かかわった番組ばんぐみ大半たいはん番組ばんぐみ主題歌しゅだいか挿入歌そうにゅうか作詞さくしがけている。

紙芝居かみしばいきで、中学生ちゅうがくせい時代じだいには教師きょうしたのまれて授業じゅぎょうちゅう自作じさく紙芝居かみしばいむこともあったという[5]長男ちょうなん井上いのうえ敏樹としきは、伊上いがみのシナリオはシーンのつながりを考慮こうりょせず美味おいしい場面ばめん羅列られつした「紙芝居かみしばいてき」な作風さくふうひょうしており「紙芝居かみしばいつくっていたとき手法しゅほうのまま執筆しっぴつしていたのではないか」と推測すいそくしている[5]

東映とうえいプロデューサーの阿部あべただしは『仮面かめんライダー』の初期しょきはやかったが、担当たんとう作品さくひんえたこともありりによくおくれたと証言しょうげんしている[5]一方いっぽうで、執筆しっぴつにあたってはプロットなしで全面ぜんめんてきまかせることもおおかったという[6]

大変たいへん酒豪しゅごうとして、また豪快ごうかいひととなりでもられた。きな料理りょうり中華ちゅうか料理りょうりで、さけなんでもめたが一番いちばんきだったのは紹興酒しょうこうしゅ小食しょうしょくであり料理りょうりさけのあてにべることがおおかった。ただしウイスキーわかころったはずみであやまってまどガラス怪我けがをしたことでそれ以降いこう敬遠けいえんしていたが、晩年ばんねん牛乳ぎゅうにゅうってんでいた。きらいなもの伊上いがみははだい好物こうぶつであったうなぎで、ヌメヌメとしたかわ気持きもわるいという理由りゆうからだい苦手にがてとしていた。

せんひろしゃ渡辺わたなべ邦彦くにひこ田村たむら正蔵しょうぞうは、伊上いがみせんひろしゃプロダクションにいると昼間ひるまからさけんでいたと証言しょうげんしており[7]渡辺わたなべは「ヒットメーカーゆえにストレスもあったのではないか」と推測すいそくしている[8]

一方いっぽう人間にんげん関係かんけい構築こうちくするのが苦手にがてであり、井上いのうえは「ちちだれかと一緒いっしょあそびにくようなこともなければ、だれかをいえまねくようなこともなかった」と生前せいぜん伊上いがみ様子ようすかたっている。

ふでると速筆そくひつで、東海道新幹線とうかいどうしんかんせん車内しゃない東京とうきょうから京都きょうとまでのあいだ脚本きゃくほん一本いっぽん仕上しあげたという伝説でんせつがある。しかし、その一方いっぽうでプロデューサーから脚本きゃくほん手直てなおしをめいじられることを『面倒臭めんどうくさいよ』という理由りゆうからえてりをまもろうとはせず、ギリギリになって提出ていしゅつしたりアイディアまると姿すがたくらます悪癖あくへきがあるなど、なみはげしくプロデューサーかせな脚本きゃくほんでもあった。平山ひらやまとおる阿部あべただしプロデューサーによる原稿げんこう催促さいそくると「おやんだから」「兄弟きょうだいんだから」といいのがれ、おわりいには「ころ親戚しんせきがいなくなった」などといった逸話いつわもある。

面倒めんどう人物じんぶつでもあり、伊上いがみには「お世話せわになった」とかた後輩こうはい脚本きゃくほんおおい。長坂ながさか秀佳ひでかいちりはまもっちゃ駄目だめだよ。ギリギリまでばしたほうなおしがないからね」とわれたといい、これは長坂ながさか信念しんねんとはせい反対はんたい言葉ことばだったのだが「すごくわらってしまった。あのひとにしか出来できないだいらかなひとだった」と述懐じゅっかいしている[5]平山ひらやまとおる著書ちょしょにて、伊上いがみ問題児もんだいじぶりに言及げんきゅうしている。

作風さくふうについては、倉田くらたじゅん平山ひらやまとおる関係かんけいしゃのみならず、伊上いがみみずからが「忍者にんじゃ世界せかい根底こんていにある」とべている。本人ほんにんが「忍者にんじゃぶつにもともと興味きょうみがあった」とかたっており、実際じっさいに「子供こども忍者にんじゃ教室きょうしつ」・「脅迫きょうはくされてきにまわるにん」・「くノいち裏切うらぎり・改心かいしん」・「じゅつ最後さいごけて開放かいほうされる人々ひとびと」など、伊上いがみ案出あんしゅつした「忍者にんじゃぶつ」のパターンは、そののさまざまな作品さくひんでバリエーションをえてかええがかれ、伊上いがみ以後いご脚本きゃくほんにもがれている。また伊上いがみ現代げんだいげきであっても「時代じだいげきだとおもっていている」とべており、平山ひらやま時代じだいげき調ちょう内容ないよう現代げんだいげきでやるから面白おもしろかったとべている[5]

とく得意とくいとしたのは「門外不出もんがいふしゅつ秘術ひじゅつめぐっての争奪そうだつせん」であり、この「秘術ひじゅつ」はたいていの場合ばあいてんにん」などのかたち分割ぶんかつされ、この秘術ひじゅつ忍法にんぽうしゃたちがちからきそ虚虚実実きょきょじつじつきでうばうというものである[3][6]。この得意とくい展開てんかいは、まさに伊上いがみ脚本きゃくほん真骨頂しんこっちょうとして数々かずかず作品さくひんかされている[注釈ちゅうしゃく 1]。また、てき組織そしき首領しゅりょう毎回まいかいゲストの実行じっこうやく怪人かいじんなど)とのあいだに、個性こせいゆたかな中堅ちゅうけん幹部かんぶをレギュラーとして配置はいちし、定期ていきてき戦死せんし左遷させんなどのかたち交代こうたいしたり確執かくしつえんじさせたりするフォーマットも伊上いがみ確立かくりつしたものであり、アニメもふくめたのち番組ばんぐみおおきな影響えいきょうあたえている[3]

1970年代ねんだい東映とうえい変身へんしんヒーロー番組ばんぐみでは導入どうにゅうでの起用きようおおいが、平山ひらやまいわく「なんといっても伊上いがみさんが一番いちばんくのがはやかった」との理由りゆうあわせ、そのストーリーの「かりやすさ」がしん番組ばんぐみのフォーマット確立かくりつにおいてはもっと有用ゆうようだったことがあるだろう。またテレビ番組ばんぐみ脚本きゃくほん現場げんば状況じょうきょうわせて手直てなおしされることもおおく、これをきら脚本きゃくほんすくなくないが、伊上いがみ拘泥こうでいすることもなかったと平山ひらやまべている。『仮面かめんライダー』の脚本きゃくほんでも怪人かいじん最期さいご武器ぶきにも工夫くふうらしたものがおおく、映像えいぞうされたものとはまたちがったおもむきをっている。

伊上いがみとコンビのながかった平山ひらやまは、その作風さくふうもっと理解りかいして活用かつよう出来できたプロデューサーといえる。『仮面かめんライダー』では「時代じだいげきいからね」と伊上いがみやスタッフをり、伊上いがみ得意とくいとした「ひとしのんで活躍かつやくする主人公しゅじんこう」や「人知ひとしれず暗躍あんやくするあく組織そしき」といった忍者にんじゃぶつ時代じだいげき図式ずしきをそのまま現代げんだいげき応用おうようさせ、それは先述せんじゅつとおり、以後いご東映とうえいヒーロー番組ばんぐみ定番ていばんフォーマットとなった。ちなみに伊上いがみ自身じしんもっとっている作品さくひんは『妖術ようじゅつ武芸ぶげいちょう』で、いていて一番いちばんたのしかった作品さくひんは『仮面かめんライダーV3』だったとべている。

台詞回せりふまわしの軽妙けいみょうさで、いのような会話かいわ面白おもしろさは『仮面かめんライダー』や『忍者にんじゃキャプター』などでも遺憾いかんなく発揮はっきされている。平山ひらやまは「多忙たぼう時期じきには時代じだいげき現代げんだいげき混同こんどうしてしまって、現代げんだいげき脚本きゃくほんなのに『この小倅こせがれが!』などという台詞せりふてくるのが面白おもしろかった」とかたっている。

平山ひらやまは、1960年代ねんだいごろ主流しゅりゅうであった野田のだ高梧こうごの『シナリオ構造こうぞうろん』にもとづく脚本きゃくほんじゅつとはまったことなるものであったとひょうしている[5]野田のだ影響えいきょうけてそだった東映とうえい監督かんとくらは伊上いがみ脚本きゃくほんを「手抜てぬき」や「いい加減かげん」とってけなしたが[注釈ちゅうしゃく 2]平山ひらやまはそのことが伊上いがみ脚本きゃくほん異色いしょくであったことの証明しょうめいであるとしている[5]

あかかげ』で監督かんとくつとめた倉田くらたじゅんは、伊上いがみ脚本きゃくほんには「あいだ」があるためそれに触発しょくはつされてアイデアがかぶとべている[5]平山ひらやま伊上いがみ作品さくひんは「フィルムが出来上できあがったとき最高さいこうのものになる[5]」「監督かんとくのやるちからっている[9]」ともひょうしている。

仮面かめんライダー』から、人物じんぶつ事象じしょう説明せつめいにそれまでの作品さくひんよりもリアリティをかんじさせる形容けいようもちいるようになった[注釈ちゅうしゃく 3]。これについてライターの赤星あかほしまさしなおは、『妖術ようじゅつ武芸ぶげいちょう』の失敗しっぱいと『仮面かめんライダー』原作げんさくしゃ石ノ森いしのもり章太郎しょうたろう存在そんざい影響えいきょうしたものと考察こうさつしている[5]

仮面かめんライダー (スカイライダー)』での降板こうばんについて途中とちゅう参加さんかした阿部あべただしは、伊上いがみまっているとかんじたためはずしたとべている[5]資料しりょうによっては長期ちょうき入院にゅういんによる降板こうばんであったと記述きじゅつしているものもある[10]

キャラクター造形ぞうけい
昭和しょうわの『仮面かめんライダーシリーズ』で主要しゅようキャラクターである「立花たちばなふじ兵衛ひょうえ」を造形ぞうけいしたのも、伊上いがみである。主人公しゅじんこうたいするふじ兵衛ひょうえ叱咤しった激励げきれいは、小林こばやし昭二しょうじ演技えんぎもあって作品さくひん熱血ねっけつかんあふれるものにして印象深いんしょうぶかい。
立花たちばなふじ兵衛ひょうえはじめ、主人公しゅじんこうささえるサブキャラクターをえがくと、ときに主人公しゅじんこううほどの印象いんしょうのこすものがおおい。主人公しゅじんこう一本気いっぽんぎこう青年せいねんえがかれるのに相対あいたいして、『隠密おんみつ剣士けんし』の「きりの遁兵まもる」、『仮面かめん忍者にんじゃあかかげ』の「しろかげあおかげ」、『超人ちょうじんバロム・1』の「松五郎まつごろう」、『イナズマン』の「まるごうさく」、『忍者にんじゃキャプター』の「ふくろ三郎兵衛さぶろべえ」などなど、えんじた俳優はいゆうあいまって、一癖ひとくせへきもあるようなあじわいぶか個性こせい発揮はっきして、枚挙まいきょひまがない。『人造じんぞう人間にんげんキカイダー』の、てもいてもえない「ハンペン」のキャラクターぞうは、伊上いがみ造形ぞうけいによるところがおおきい。
晩年ばんねん
伊上いがみもっと仕事しごと依頼いらい殺到さっとうしたのは1974ねんごろだった。1970年代ねんだいまつになるとスランプとなり、ふで極端きょくたんおそくなってほとんどまってしまった。しかしこのあいだ制作せいさくしゃがわとして伊上いがみさくげき依然いぜん需要じゅようたか仕事しごと依頼いらい自体じたい途切とぎれなかったといい、伊上いがみ自身じしんが「けなくなった」というのが実際じっさいのところだったという。当時とうじ脚本きゃくほんにはさい放送ほうそう印税いんぜいなどく、次第しだい仕事しごと依頼いらい収入しゅうにゅうってしまい晩年ばんねんけないくるしさからさけおぼれる日々ひびだったそうである。これについて、伊上いがみ凋落ちょうらくした経過けいかかんして長男ちょうなん井上いのうえ敏樹としきは「紙芝居かみしばいつちかったおさなころからの感性かんせいたよぎていた」ことと「脚本きゃくほんにとっての武器ぶきである持駒もちごまかずすくなかった」こと原因げんいん解析かいせきしている。
執筆しっぴつ作品さくひん膨大ぼうだいなうえに『仮面かめんライダー』『あかかげ』などの社会しゃかい現象げんしょうこすようなメガヒットをおおふくみ、東映とうえい円谷つぶらやプロの本格ほんかくてき参入さんにゅう以前いぜんからこの分野ぶんやかかわって昭和しょうわのテレビ特撮とくさつ象徴しょうちょうする脚本きゃくほんであったが、実際じっさいわかくしてだい一線いっせん退しりぞき、早世そうせいでもあった。そのため活動かつどう期間きかん意外いがいながくはない。長男ちょうなん井上いのうえ敏樹としきは「花火はなびのようなライターであったともおもう」とべている[5]

交友こうゆう関係かんけい[編集へんしゅう]

伊上いがみ実子じっし井上いのうえ敏樹としきは、アニメばんあかかげ』のシリーズ構成こうせいや『平成へいせい仮面かめんライダーシリーズ』のメインライターをがけており、親子おやこ2だいおな主題しゅだい作品さくひん主要しゅようスタッフとしてかかわっている[5]井上いのうえ子供こども時代じだい伊上いがみへの脚本きゃくほん催促さいそくたいして居留守いるすたのまれることが度々たびたびあったという[5]

おおくの作品さくひん伊上いがみ起用きようした東映とうえいプロデューサーの平山ひらやまとおるは、東映とうえい京都きょうと助監督じょかんとくつとめていた時代じだい他社たしゃ作品さくひんの『隠密おんみつ剣士けんし』を伊上いがみ興味きょうみち、『悪魔あくまくん』でプロデューサーをつとめたさい朝日あさひソノラマ編集へんしゅうちょう坂本さかもと一郎いちろう伊上いがみ紹介しょうかい要望ようぼう起用きようした[5][9]平山ひらやま自身じしんのプロデュース作品さくひんのほとんどで伊上いがみだい1脚本きゃくほん起用きようし、事実じじつじょうのメインライターをまかせていた[5]東映とうえいプロデューサーの阿部あべただしは「平山ひらやま具体ぐたい出来できていないアイデアをぶつけても、伊上いがみ躊躇ちゅうちょなくけていた」と証言しょうげんしており、平山ひらやま伊上いがみ依存いぞんしていた部分ぶぶんもあるとべている[5]

平山ひらやまともおおくの作品さくひん担当たんとうし、伊上いがみ直接ちょくせつ脚本きゃくほんのやりりをしていた阿部あべただしは、伊上いがみ遅筆ちひつなやまされることがおおく、喫茶店きっさてん執筆しっぴつする伊上いがみをずっと見守みまもっていたこともあったという[5]阿部あべ伊上いがみ自宅じたく電話でんわをかけてもつかまらなかったことから、伊上いがみつまに「馬鹿ばかつたえてくれ」と伝言でんごんし、伊上いがみつまには初対面しょたいめんまでこわ人物じんぶつだとおもわれていた[5]

作詞さくし阿久あくゆうせんひろしゃ時代じだい部下ぶか伊上いがみ課長かちょうをつとめる企画きかく所属しょぞく)で、伊上いがみたく下宿げしゅくしていたこともあった[1][11]阿久あく伊上いがみからドラマの企画きかくしょかたおそわり、わりに麻雀まーじゃんおしえたとべている[11]明治大学めいじだいがくの5ねん先輩せんぱいでもあった。

せんひろしゃプロダクションで監督かんとくつとめた田村たむら正蔵しょうぞう伊上いがみのおまもり自身じしん仕事しごとであったといい、しゅうに2にちほど伊上いがみからされてパチンコ・麻雀まーじゃん喫茶店きっさてんでのはな相手あいてなどをつとめたとべている[12]

おも作品さくひん[編集へんしゅう]

テレビドラマ脚本きゃくほん[編集へんしゅう]

太字ふとじはメインライターとしての参加さんか作品さくひん

テレビアニメ脚本きゃくほん[編集へんしゅう]

映画えいが脚本きゃくほん[編集へんしゅう]

小説しょうせつ[編集へんしゅう]

  • 宇宙うちゅうからのメッセージ(1978ねん

その[編集へんしゅう]

  • 担当たんとう作品さくひん各種かくしゅソノシート絵本えほん」の台本だいほん執筆しっぴつ

伝記でんき[編集へんしゅう]

  • 井上いのうえ敏樹としき竹中たけなかきよし仮面かめんライダー・仮面かめん忍者にんじゃあかかげ隠密おんみつ剣士けんし』(徳間書店とくましょてん、2011ねん

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 仮面かめんライダー』だい91からだい94のアンチショッカーへん[6]など。
  2. ^ 仮面かめんライダー』での毎日放送まいにちほうそうとの会議かいぎでも度々たびたび指摘してきされていたという[9]
  3. ^ たとえば『ジャイアントロボ』ではてき組織そしきBFだん明確めいかく目的もくてきかたられることはなかったが、『仮面かめんライダー』ではだい1ショッカー目的もくてきが「改造かいぞう人間にんげんによる世界せかい支配しはい」であることがかたられている[5]
  4. ^ プロデューサー西村にしむら俊一しゅんいち筆名ひつめいである俊治しゅんじ名義めいぎ[12]
  5. ^ 主題歌しゅだいか作詞さくし担当たんとう
  6. ^ 主題歌しゅだいか作詞さくし担当たんとう
  7. ^ 西村にしむら俊一しゅんいち共同きょうどう執筆しっぴつ
  8. ^ 高田たかだ宏治こうじ共同きょうどう執筆しっぴつ
  9. ^ 松本まつもといさお大津おおつ一郎いちろう共同きょうどう執筆しっぴつ
  10. ^ かり脚本きゃくほん惑星わくせいだい要塞ようさい」を執筆しっぴつ

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l OFM仮面かめんライダー5 2004, p. 27, 「伊上いがみまさるProfile」
  2. ^ a b c d e f g h i j k 仮面かめんライダー怪人かいじんだいほう 2016, p. 177, 「仮面かめんライダースタッフ・キャスト人名じんめいろく2016年版ねんばん
  3. ^ a b c d 石橋いしばし春海しゅんかい 2014, p. 25, 「せんひろしゃ作品さくひんつくった職人しょくにんたち1 評伝ひょうでん 脚本きゃくほん伊上いがみまさる仕事しごと
  4. ^ 石橋いしばし春海しゅんかい 2014, p. 24, 「せんひろしゃ伝説でんせつんだおとこ2 プロデューサー・脚本きゃくほん西村にしむら俊一しゅんいち」.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u OFM仮面かめんライダー5 2004, pp. 27–29, 赤星あかほしまさしなお特集とくしゅう てしなきたたかいのドラマ 『仮面かめんライダー』脚本きゃくほん列伝れつでん
  6. ^ a b c 仮面かめんライダー怪人かいじんだいほう 2016, pp. 168–171, 「仮面かめんライダーをそだてたさん賢人けんじんII 運営うんえい賢者けんじゃ 阿部あべただし
  7. ^ せんひろしゃフォトニクル 2015, pp. 5、19.
  8. ^ せんひろしゃフォトニクル 2015, p. 5, 「プロローグ」.
  9. ^ a b c 仮面かめんライダー怪人かいじんだいほう 2016, pp. 62–66, 「仮面かめんライダーをそだてたさん賢人けんじんI 平山ひらやまとおる
  10. ^ 仮面かめんライダー1971-1984 2014, pp. 380–381, 「だい1だい13シノプシス」.
  11. ^ a b せんひろしゃフォトニクル 2015, p. 7, 「インタビュー 阿久あくゆう
  12. ^ a b せんひろしゃフォトニクル 2015, p. 19
  13. ^ サイボーグ009”. 東映とうえいアニメーション. 2016ねん6がつ2にち閲覧えつらん

関連かんれん人物じんぶつ[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 『タウンムック増刊ぞうかん仮面かめんライダー』(徳間書店とくましょてん
  • 仮面かめんライダーだい全集ぜんしゅう』(講談社こうだんしゃ
  • 仮面かめんライダー名人めいじん列伝れつでん』(風塵ふうじんしゃ
  • 『ウルトラマンたい仮面かめんライダー』(文春ぶんしゅん文庫ぶんこPLUS)
  • 『KODANSHA Official File Magazine 仮面かめんライダー』 Vol.5《仮面かめんライダーX》、講談社こうだんしゃ、2004ねん11がつ10日とおかISBN 4-06-367094-5 
  • 月光げっこう仮面かめんつくったおとこたち』(平凡社へいぼんしゃ新書しんしょ
  • 仮面かめんライダー・仮面かめん忍者にんじゃあかかげ隠密おんみつ剣士けんし伊上いがみまさる評伝ひょうでん 昭和しょうわヒーローぞうつくったおとこ』(徳間書店とくましょてん
  • 石橋いしばし春海しゅんかい伝説でんせつ昭和しょうわ特撮とくさつヒーロー せんひろしゃぜん仕事しごと』コスミック出版しゅっぱん〈COSMIC MOOK〉、2014ねん7がつ9にちISBN 978-4-7747-5934-0 
  • 講談社こうだんしゃ へん仮面かめんライダー1971-1984 秘蔵ひぞう写真しゃしんはつ公開こうかい資料しりょうよみがえ昭和しょうわライダー10にん講談社こうだんしゃ、2014ねん11月20にちISBN 978-4-06-218566-0 
  • DVD『せんひろしゃフォトニクル』 2015ねん9がつ18にち発売はつばい 発売はつばいもと-デジタルウルトラプロジェクト DUPJ-133
  • 宇宙船うちゅうせん別冊べっさつ 仮面かめんライダー怪人かいじんだいほう2016』ホビージャパン〈ホビージャパンMOOK〉、2016ねん3がつ28にちISBN 978-4-7986-1202-7