ホーリネス和協わきょう分離ぶんり

ホーリネス和協わきょう分離ぶんりは、日本にっぽんホーリネス教会きょうかいの内紛ないふんの結果けっか、生しょうじた争あらそいに対たいして、和協わきょう委員いいんの仲介ちゅうかいによって成立せいりつした日本にっぽんホーリネス教会きょうかいの正式せいしきな分離ぶんり。和協わきょう分離ぶんりは交渉こうしょうの段階だんかいで検事けんじなどの法律ほうりつ家かを交まじえたゆえに使用しようした法律ほうりつ用語ようごである。

分裂ぶんれつ事件じけん

中田なかた重治しげはる監督かんとく

1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）9月がつ22日にちに日本にっぽんホーリネス教会きょうかい教会きょうかい監督かんとく中田なかた重治しげはるから、再臨さいりんとユダヤ人じん問題もんだいについての新しん指針ししんと、聖書せいしょ学院がくいんの五ご教授きょうじゅに、その方針ほうしんに従したがって講義こうぎするように書簡しょかんが送おくられた。

この問題もんだいの是非ぜひを問とうために、臨時りんじ総会そうかいが招集しょうしゅうされた。中田なかたは最初さいしょ召集しょうしゅうを認みとめたが、後のちに承認しょうにんを取とり消けし、臨時りんじ総会そうかいを非合法ひごうほうとみなした。

中田なかたと対立たいりつした監督かんとく委員いいん（左ひだりから、米田よねだ豊ゆたか、一宮いちのみや政吉まさきち、菅野かんの鋭するど、小原おはら十三じゅうざ司し、車田くるまだ秋あき次じ）

1933年ねん10月がつ25日にちの臨時りんじ総会そうかいで日本にっぽんホーリネス教会きょうかいの中田なかた監督かんとくの解職かいしょく案あんが信徒しんと代議員だいぎいんによって上程じょうていされて、ほぼ全会ぜんかい一致いっちで可決かけつされた。しかし、中田なかたを支持しじする者ものも半数はんすう近ちかくいた上うえ、中田なかた監督かんとくは臨時りんじ総会そうかいを監督かんとくの承認しょうにんを経へない非合法ひごうほうなものと見みなしたので、ここから分裂ぶんれつ事件じけんが始はじまった。後のちに、中田なかた側がわは全国ぜんこく教きょう役者やくしゃ会かいを召集しょうしゅうして逆ぎゃくに五ご教授きょうじゅを解任かいにんし、中田なかた監督かんとくは臨時りんじ総会そうかいを非合法ひごうほうとして、臨時りんじ総会そうかいの決定けっていを取とり消けすように民事みんじ訴訟そしょうを起おこした。

詳細しょうさいは「ホーリネス分裂ぶんれつ事件じけん」を参照さんしょう

両者りょうしゃの対立たいりつを象徴しょうちょうする出来事できごととして、日本にっぽんホーリネス教会きょうかいの神田かんだホーリネス教会きょうかいの所属しょぞくを巡めぐった争あらそいがある。この事件じけんは新聞しんぶんにも取とり上あげられ、キリスト教会きょうかい以外いがいにも話題わだいを呼よんだ。

詳細しょうさいは「神田かんだ事件じけん (ホーリネス)」を参照さんしょう

経緯けいい

和解わかいに尽力じんりょくした日ひ匹ひき信しんじ亮あきら

分裂ぶんれつ事件じけん勃発ぼっぱつ後ご間あいだもなく、中田なかたの依頼いらいを受うけた日ひ匹ひき信しんじ亮あきら、益えき富とみ政助まさすけ、加藤かとう三郎さぶろうの3名めいは、委員いいんたちの自宅じたくを何なん度どか訪問ほうもんし、和解わかいの説得せっとくを行おこなった。

益えき富とみは下村しもむら宗教しゅうきょう局長きょくちょうと知しり合あいであったので、案あんを練ねって日本にっぽんホーリネス教団きょうだんと東洋とうよう宣教せんきょう会かいの財団ざいだんを分割ぶんかつする調停ちょうてい案あんを作つくり、ほぼ双方そうほうの同意どういを得えるところまでこぎつけた。しかし、東洋とうよう宣教せんきょう会かい本部ほんぶのレテー・カウマンとアーネスト・キルボルンが来日らいにちした際さい、聖書せいしょ学院がくいんは本来ほんらい東洋とうよう宣教せんきょう会かいに属ぞくするものであったため、益えき富とみの案あんは保留ほりゅうされた。

自由じゆうメソジスト教会きょうかいの土山つちやま鉄次てつじと日本にっぽんナザレン教会きょうかいの喜き田川たがわ広ひろが調停ちょうていをしようとしたり、満州まんしゅうの福音ふくいん使しと信徒しんと一いち行ぎょうが、何なん日にちも泊とまりこんで祈祷きとうをもって解決かいけつしようとしたが、事件じけんの真相しんそうを知しって手てを引ひいた。

その頃ころ、民事みんじ法廷ほうていでは判事はんじが職権しょっけんをもって調停ちょうてい勧告かんこくをしたが、臨時りんじ総会そうかいの前まえの状態じょうたいに復帰ふっきするという中田なかたの案あんを委員いいん側がわが呑のまなかったので、判事はんじも和解わかい勧告かんこくを打うち切きった。

この事件じけんを憂うれえた渡辺わたなべ善よし太ふとし、阿部あべ義宗よしむね、吉崎よしざき俊雄としお、赤澤あかざわ元造もとぞうが中田なかた夫妻ふさいと委員いいん側がわと会食かいしょくをしたのをはじめ、何なん度どが会見かいけんしたが和解わかいは成功せいこうしなかった。

調停ちょうていを発起ほっきした田川たがわ大吉郎だいきちろう

1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）になり、田川たがわ太吉たきち郎ろうがこの事件じけんを憂うれえて調停ちょうていを発起ほっきし、日にち匹ひき信しんじ亮あきら、松山まつやま常次郎つねじろうを委員いいんとして2、3回かい会合かいごうしたが、中田なかたが調停ちょうてい打うち切きりを申もうし込こんだ。

1936年ねん9月がつ頃ごろ、委員いいん側がわは竹内たけうち検事けんじから和解わかいを勧告かんこくされた。その後ご検事けんじと数すう回かい謁見えっけんしたが、やはり臨時りんじ総会そうかい以前いぜんの形かたちに戻もどして中田なかたを監督かんとくにするということであったので、検事けんじからは相手あいてにされなかった。

竹内たけうち検事けんじは、委員いいん会かい側がわの小原おはら十三じゅうざ司し牧師ぼくしに、「双方そうほう互たがいに自己じこ地ち主張しゅちょうしないで、現状げんじょうの状態じょうたいに則そくして、和解わかいに同意どういすること」をいう原則げんそくの和解わかい案あんを作つくり、調停ちょうてい委員いいんの方ほうからお願ねがいするという形かたちで、和解わかい協議きょうぎを進すすめることを提案ていあんした。

これが元もとになり、和協わきょうの話はなし合あいが進すすめられることになった。中田なかたは阿部あべ義宗よしむねと松山まつやま常次郎つねじろうを仲介ちゅうかい者しゃに立たてて、委員いいん側がわは渡辺わたなべ善よし太ふとしと田川たがわ太吉たきち郎ろうと星ほし島しま二郎じろうを仲介ちゅうかい者しゃに立たてた。

成立せいりつ

第だい1回かいの会合かいごうには竹内たけうち検事けんじも出席しゅっせきして意見いけんを述のべたが、検事けんじが入はいると弱よわみがあったから和解わかいせねばならなくなったと言いわれるので、検事けんじの手てを離はなれて、和協わきょう委員いいんによって調停ちょうていが進すすめられた。

そして、1936年ねん10月がつ19日にちに、和協わきょう覚書おぼえがきが成立せいりつすることになる。ここで正式せいしきに中田なかた監督かんとく派はと委員いいん側がわは2つに分わかれることになった。信仰しんこう上じょうのことでどうしても妥協だきょうできないので、組織そしきを2つの団体だんたいにするという形かたちを取とる結果けっかになった。

和協わきょう午餐ごさん会かい

和協わきょう午餐ごさん会かいが開催かいさいされた鉄道てつどうホテル(東京とうきょうステーションホテル)の内部ないぶ

1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）11月28日にち正午しょうごに鉄道てつどうホテルで和協わきょう午餐ごさん会かいが開ひらかれた。

中田なかた側がわからは、中田なかた重治しげはる、木田きだ文治ぶんじ、中山なかやま量一りょういち、安藤あんどう仲なか市し、藤久ふじきゅう、そして、委員いいん側がわからは、車田くるまだ秋あき次じ、小原おはら十三じゅうざ司し、米田よねだ豊ゆたか、一宮いちのみや政吉まさきち、菅野かんの鋭するどが出席しゅっせきした。和協わきょう委員いいんからは、星ほし島しま二郎じろう、松山まつやま常次郎つねじろう、阿部あべ義宗よしむね、渡辺わたなべ善よし太ふとしが出席しゅっせきした。

来賓らいひんには、橋本はしもと文部省もんぶしょう総務そうむ課長かちょう、田川たがわ太吉たきち郎ろう、釘宮くぎみや辰生たつお、吉崎よしざき俊雄としお、松野まつの菊太郎きくたろう、日ひ匹ひき信しんじ亮あきら、益えき富とみ政助まさすけ、加藤かとう三郎さぶろう、野畑のばた新しん兵衛ひょうえ、青木あおき運うん之の助じょ、川端かわばた京五郎きょうごろうであった。竹内たけうち検事けんじは職務しょくむ上じょう招待しょうたいを辞退じたいし、土山つちやま鉄次てつじは遠路えんろの故ゆえに不参加ふさんかであった。

中田なかた重治しげはると委員いいん側がわは久ひさしぶりに会見かいけんすることになった。両者りょうしゃは握手あくしゅして食堂しょくどうに入はいった、食事しょくじ後ご別室べっしつで、星ほし島しま二郎じろうが司会しかいして挨拶あいさつした。星ほし島とうの指名しめいの元もとに中田なかたは挨拶あいさつし、迷惑めいわくをかけたことを詫わび、調停ちょうてい者しゃの労ろうを謝しゃし、今後こんご伝道でんどう活動かつどうに邁進まいしんしたい旨むねを述のべた。それに対たいして車田くるまだ委員いいん長ちょうもそれに応こたえて挨拶あいさつして、途中とちゅうで病没びょうぼつした赤澤あかざわ元造もとぞう監督かんとくの労ろうを感謝かんしゃした。

次つぎに松野まつの菊太郎きくたろうが指名しめいされた。松野まつのはアブラハムが死しんだ時ときに、イサクとイシュマエルが共ともに葬式そうしきを取とり行おこない仲直なかなおりし、イサクが死しんだ時ときはエサウとヤコブが共ともに葬式そうしきした例れいを引用いんようして、中田なかたが死しねばみんな一緒いっしょになるだろうと皮肉ひにくって語かたった。

釘宮くぎみや辰生たつおは、赤澤あかざわの代理だいりに招まねかれたことを感謝かんしゃした。橋本はしもと宗務しゅうむ課長かちょうは、星ほし島とうの関係かんけいで、和協わきょう委員いいんの会合かいごうが度々どど鉄道てつどう大臣だいじん邸やしきで開ひらかれたことから、鉄道てつどうのたとえ話はなしをして、将来しょうらいまた一ひとつになることを希望きぼうした。

松山まつやま常次郎つねじろうの祈祷きとう後ごに、中田なかたの発案はつあんで手てを打うって讃さん美歌みか「歌うたえど尽つきせぬ主あるじのほまれ」を合唱がっしょうした。そして、車田くるまだが中田なかたの前まえに行いって、握手あくしゅをした。その後ご、益えき富とみ政助まさすけも立たち上あがって、和協わきょう分家ぶんけだと言いうと、拍手はくしゅが起おこった。

和協わきょう報告ほうこく会かい

現在げんざいの青山学院あおやまがくいん

12月21日にち青山学院あおやまがくいん神学しんがく部ぶ講堂こうどうで、和協わきょう委員いいんの主催しゅさいの下したに和協わきょう報告ほうこく感謝かんしゃ会かいが開ひらかれた。両派りょうはの代表だいひょう各かく25名めいと、キリスト教きょう界かいの代表だいひょう者しゃと報道陣ほうどうじんを含ふくめ約やく100名めいが集あつまった。

和協わきょう成立せいりつに関かんする公式こうしきの挨拶あいさつや、両りょう団体だんたいの成立せいりつに対たいする祝辞しゅくじや奨励しょうれいが行おこなわれた。田川たがわ太吉たきち郎ろう、日にち匹ひき信しんじ亮あきら、千葉ちば勇五郎ゆうごろう、河合かわい禎三ていぞう、益えき富とみ政助まさすけ、矢吹やぶき幸太郎こうたろう、日高ひだか善一ぜんいち、鵜飼うかい猛たけしなども出席しゅっせきした。

阿部あべ義宗よしむねの司会しかいで、星ほし島しま二郎じろう、田川たがわ太吉たきち郎ろう、河合かわい禎三ていぞうが話はなした後のちに、1902年ねんに阿部あべは中田なかたが聖書せいしょ学校がっこうの福音ふくいん音楽おんがく隊たいを連つれて来きた時ときに入信にゅうしんした思おもい出でと、和協わきょうの斡旋あっせんに乗のり出だした顛末てんまつを話はなした。そして、車田くるまだ秋あき次じが挨拶あいさつをして、事情じじょうを説明せつめいした。中田なかたも続つづいて相撲すもうのたとえを用もちいて挨拶あいさつした。今回こんかいの分離ぶんりは、メソジストの分派ぶんぱの歴史れきしの一ひとつであると言いった。

渡辺わたなべ善よし太ふとしが最後さいごの挨拶あいさつを述のべた。自由じゆう主義しゅぎ神学しんがくに立たった合同ごうどうは不可ふかで、プリンストン神学校しんがっこうから別わかれたグレシャム・メイチェンのような、信仰しんこうのための分離ぶんりはやむをえないとした。そして、今回こんかいの分離ぶんりは、財産ざいさんや権力けんりょく闘争とうそうではなく信仰しんこうの問題もんだいであることを確認かくにんした。

千葉ちば勇五郎ゆうごろうの祈祷きとうをもって終おわり、別室べっしつでデザートコースが開ひらかれ、松山まつやま常次郎つねじろうが司会しかいをし、三谷みたに種たね吉きち、野辺地のへじ天馬てんま、星ほし島しま二郎じろう、日高ひだか善一ぜんいち、酒井さかい助作すけづくりのテーブルスピーチがあり矢吹やぶき大佐たいさの祝祷しゅくとうで閉会へいかいした。

ここで、中田なかた派はと委員いいん派ははそれぞれ、別べつの教団きょうだんになることになった。委員いいん側がわは11月3、4日にちに臨時りんじ総会そうかいを開ひらいて43名めいの代議員だいぎいんに和協わきょう分離ぶんりが報告ほうこくされ、日本にっぽん聖教せいきょう会かいの名称めいしょうが選えらばれていた。

中田なかた側がわは総会そうかいを開ひらかずに、中田なかたの意向いこうを受うけた会議かいぎで、きよめ教会きょうかいと名乗なのることが決定けっていされた。 12月1日にちより、3日にちまで大島おおしま観光かんこうホテルで新しん団体だんたい特別とくべつ祈いのり会かいが開あけれ、1936年ねん12月25日にちのクリスマスを期きして、きよめ教会きょうかいと日本にっぽん聖教せいきょう会かいが発足ほっそくした。

参考さんこう文献ぶんけん

• 米田よねだ勇いさむ『中田なかた重治しげはる伝でん』中田なかた重治しげはる伝でん刊行かんこう員いん会かい、1959年ねん
• 中村なかむら敏さとし『日本にっぽんにおける福音ふくいん派はの歴史れきし』2000年ねん
• 中村なかむら敏さとし『日本にっぽんキリスト教きりすときょう宣教せんきょう史し』2009年ねん