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多項式の因数分解 - Wikipedia コンテンツにスキップ

多項式たこうしき因数いんすう分解ぶんかい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
テオドール・フォン・シューベルト

数学すうがくおよび計算けいさん代数だいすうにおける多項式たこうしき因数いんすう分解ぶんかい(いんすうぶんかい、えい: factorization of polynomial, polynomial factorization; 多項式たこうしき分解ぶんかい)は、あたえられたからだあるいは整数せいすう係数けいすうとする多項式たこうしきおな範囲はんい係数けいすうすんでやく因子いんしせきとしてあらわすことおよびその過程かていう。多項式たこうしき分解ぶんかい計算けいさん代数だいすうシステム基本きほんてきなツールのひとつである。

多項式たこうしき因数いんすう分解ぶんかい歴史れきしは、1793ねんテオドール・フォン・シューベルトドイツばん多項式たこうしき分解ぶんかいアルゴリズムを記述きじゅつしたこと[1]はじまり、それを1882ねんさい発見はっけんしたレオポルト・クロネッカー変数へんすう代数だいすうたい係数けいすう多項式たこうしきたいして拡張かくちょうしている。しかし、このトピックにおける知識ちしきだい部分ぶぶん計算けいさん代数だいすうシステム登場とうじょうする1965ねんごろよりもさかのぼらない。この主題しゅだいかんするサーベイとして Kaltofen (1990) は1982ねん文章ぶんしょう

When the long-known finite step algorithms were first put on computers, they turned out to be highly inefficient. The fact that almost any uni- or multivariate polynomial of degree up to 100 and with coefficients of a moderate size (up to 100 bits) can be factored by modern algorithms in a few minutes of computer time indicates how successfully this problem has been attacked during the past fifteen years.

ためしやく: ふるられた有限ゆうげんステップのアルゴリズムを計算けいさんせたとき、それらがきわめて効率こうりつなものであるとわかった。事実じじつとして、100までの適度てきどおおきさ (100ビット以下いか) の係数けいすうつほとんどのいち変数へんすうあるいは変数へんすう多項式たこうしきを、現代げんだいアルゴリズムはモノのすうぶん計算けいさん時間じかん分解ぶんかいできるということが、いかにこの問題もんだいがかかる15ねんあいだ成功裏せいこうり攻略こうりゃくしつくされたかをししている。)

しるしている。

今日きょうでは、現代げんだいアルゴリズムと計算けいさんにより、1000よりうえすうせんディジットの係数けいすう場合ばあいでもせい係数けいすういち変数へんすう多項式たこうしき素早すばや因数いんすう分解ぶんかいすることができる[2]

問題もんだい定式ていしきについて

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せい係数けいすうあるいはからだじょう多項式たこうしきたまきUFDである。その意味いみするところは、これらたまき任意にんいもと定数ていすうすんでやく多項式たこうしき定数ていすうでないふたつの多項式たこうしきせきくことのできない多項式たこうしき)のせきになっているということ、さらにはその分解ぶんかい可逆かぎゃく定数ていすうけるちがいをのぞいて一意いちいとなることである。

この因数いんすう分解ぶんかい係数けいすうたい種類しゅるい依存いぞんする。たとえば、代数だいすうがく基本きほん定理ていり複素ふくそ係数けいすう任意にんい多項式たこうしき複素ふくそつこと)から、任意にんいせい係数けいすう多項式たこうしき複素数ふくそすうたい うえいち因子いんしせき完全かんぜん分解ぶんかいすることができることがしたがう。同様どうように、実数じっすうからだ うえではすんでやく因子いんし次数じすう高々たかだか 2 であり、たいして有理数ゆうりすうからだ うえでは任意にんい次数じすうすんでやく多項式たこうしき存在そんざいする。

多項式たこうしき因数いんすう分解ぶんかい問題もんだいは、そのすべてのもと計算けいさん表現ひょうげんできる計算けいさん可能かのうすうからだ (computable field) を係数けいすうとし、算術さんじゅつてき演算えんざんもちいたアルゴリズムが存在そんざいする場合ばあいにのみ意味いみをなす。(Fröhlich & Shepherson 1955) はそのようなからだ因数いんすう分解ぶんかいアルゴリズムのいようなもののれいあたえている。

因数いんすう分解ぶんかいアルゴリズムのられている係数けいすうたいとして、もとたい有理数ゆうりすうからだまたはもとすうすう有限ゆうげんたい)およびそれらの有限ゆうげん生成せいせい拡大かくだいたいがある。せい係数けいすう場合ばあいあつかやすい。クロネッカーの古典こてんてき手法しゅほう歴史れきしてき観点かんてんからのみ意義いぎがある。現代げんだいてき手法しゅほうは、

  • 平方へいほう分解ぶんかい (square-free factorization)
  • 有限ゆうげんたいじょう分解ぶんかい (factorization over finite fields)

および

などをわせるかたちすすめられる。

内容ないよう原始げんし成分せいぶん分解ぶんかい

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本節ほんぶしでは、有理数ゆうりすうたい うえでの因数いんすう分解ぶんかい整数せいすうたまき うえでの因数いんすう分解ぶんかい本質ほんしつてきおな問題もんだいであることをしめす。[注釈ちゅうしゃく 1]

  • せい係数けいすう多項式たこうしき p[X]内容ないよう "cont(p)" は(符号ふごうちがいをのぞいてp のすべての係数けいすう最大公約数さいだいこうやくすうい、p原始げんし成分せいぶん prim-part(p) ≔ p/cont(p)せい係数けいすう原始げんし多項式たこうしきである。これらによって p原始げんし多項式たこうしき整数せいすうばいというかたちへの分解ぶんかい定義ていぎされ、内容ないよう符号ふごうちがいをのぞいて一意いちいさだまる。通常つうじょうは、内容ないよう符号ふごう原始げんし成分せいぶん最高さいこう係数けいすうせいとなるようにとる。
  • 任意にんい有理ゆうり係数けいすう多項式たこうしき qかたちなおせる(なんとなれば、c として q係数けいすう分母ぶんぼすべてかけわせたものをとれば(このとき pcqせい係数けいすうとなり)十分じゅうぶんである)。このとき q内容ないよう で、また q原始げんし成分せいぶんp のそれで、それぞれ定義ていぎする。せい係数けいすう多項式たこうしき場合ばあい同様どうように、この場合ばあいも、有理ゆうり係数けいすう多項式たこうしき有理数ゆうりすうせい係数けいすう原始げんし多項式たこうしきせきへの分解ぶんかいが、符号ふごうのとりかたのぞいて一意いちい定義ていぎされる。

カール・フリードリヒ・ガウスふたつの原始げんし多項式たこうしきせきがふたたび原始げんしてきであること(ガウスの補題ほだい英語えいごばん)をしめした。これにより「原始げんし多項式たこうしき有理数ゆうりすうたいじょうすんでやくであるための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんは、整数せいすうたまきじょうすんでやくであること」がしたがう。これはつまり、有理ゆうり係数けいすう多項式たこうしき有理数ゆうりすうたいじょうでの因数いんすう分解ぶんかいが、その原始げんし成分せいぶん整数せいすうたまきじょうでの因数いんすう分解ぶんかいおなじことであることをも意味いみする。他方たほうせい係数けいすう多項式たこうしき整数せいすうたまきじょうでの因数いんすう分解ぶんかいは、その原始げんし成分せいぶん分解ぶんかい内容ないよう素因数そいんすう分解ぶんかいとをけることであたえられる。

いかたえれば、整数せいすうのGCD計算けいさんによって有理ゆうり係数けいすう多項式たこうしき因数いんすう分解ぶんかいせい係数けいすう原始げんし多項式たこうしき因数いんすう分解ぶんかい帰着きちゃくされ、また整数せいすうたまきじょうでの因数いんすう分解ぶんかい整数せいすう因数いんすう分解ぶんかい原始げんし多項式たこうしき因数いんすう分解ぶんかい帰着きちゃくすることができるようになるということである。

さてここまでにべたことは、からだ F うえ多項式たこうしきたまきで、および F有理ゆうり函数かんすうからだでそれぞれえて(ただし両者りょうしゃ不定ふていもと共通きょうつうとする)、「符号ふごうちがいをのぞいて」というわりに「F単元たんげんけるちがいをのぞいて」とすれば、すべてそのままつ。この場合ばあいFじゅん超越ちょうえつ拡大かくだいからだじょうでの因数いんすう分解ぶんかいF うえ変数へんすう多項式たこうしき因数いんすう分解ぶんかい帰着きちゃくされる。

平方へいほう分解ぶんかい

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多項式たこうしきのふたつ以上いじょう因子いんしたがいに一致いっちする場合ばあいかんがえると、すなわちその多項式たこうしきはこの因子いんし平方へいほう平方へいほう因子いんし)でれるということになる。一変いっぺんすう多項式たこうしき場合ばあいだと、そのような因子いんし多重たじゅう因子いんし)をあたえる重根しこね定義ていぎされる。またこの場合ばあい、その多重たじゅう因子いんしはもとの多項式たこうしきしるべ多項式たこうしき変数へんすう場合ばあいは、どの変数へんすうかんする微分びぶんでも)の因子いんしになる。有理数ゆうりすうたい(あるいはより一般いっぱんしるべすう 0任意にんいからだじょう一変いっぺんすう多項式たこうしき場合ばあい、David Yun による平方へいほう分解ぶんかいアルゴリズム英語えいごばんもちいて、多項式たこうしき平方へいほう因子いんしふくまないかたちしかしてそれを平方へいほうう)に因数いんすう分解ぶんかいする方法ほうほう実証じっしょうされる。もとの多項式たこうしき分解ぶんかいするためには、このかく平方へいほう因子いんし分解ぶんかいあたえれば十分じゅうぶんである。したがって、平方へいほう分解ぶんかいはたいていの多項式たこうしき因数いんすう分解ぶんかいアルゴリズムのいとぐちだんとなる。

Yun のアルゴリズムは、変数へんすう多項式たこうしき多項式たこうしきたまきじょう一変いっぺんすう多項式たこうしきることにより、変数へんすう多項式たこうしき場合ばあいにも拡張かくちょうすることができる。

有限ゆうげんたいじょう多項式たこうしき場合ばあいには、Yun のアルゴリズムは多項式たこうしき次数じすう係数けいすうたいしるべすうよりちいさい場合ばあいにのみ適用てきよう可能かのうである(これは、そうでない場合ばあいにはれい多項式たこうしきしるべ多項式たこうしきれい多項式たこうしきとなる場合ばあいがあることによる。たとえば p-もとからだじょうべき函数かんすう xpしるべ多項式たこうしきつねれいである)。それでも、多項式たこうしきとそのしるべ多項式たこうしきあいだのGCD計算けいさんがあれば平方へいほう分解ぶんかいられる(有限ゆうげんたいじょう多項式たこうしき因数いんすう分解ぶんかい#平方へいほう分解ぶんかい英語えいごばんこうよ)。

古典こてんてき手法しゅほう

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本節ほんぶしでは計算けいさん便利べんり教科書きょうかしょてき方法ほうほうについてべる。それらは多項式たこうしき分解ぶんかいよりもきわめて複雑ふくざついちめん自然しぜんすう因数いんすう分解ぶんかい利用りようしているから、計算けいさんせるようなものではない。

いち因子いんしつけかた

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有理ゆうり係数けいすう範囲はんいでのいち因子いんしいずれも有理ゆうりテストによってつけることができる。すなわち、因数いんすう分解ぶんかいしたい多項式たこうしき であるとき、りうる任意にんいいち因子いんし は、b1an整数せいすう因子いんしかつ b0a0整数せいすう因子いんしでなければならない。そのような整数せいすう因子いんしすべてのわせについて有効ゆうこうたしかめて、有効ゆうこう因子いんしについては筆算ひっさん英語えいごばんなどして分解ぶんかいる。もとの多項式たこうしき次数じすう 2 以上いじょう因子いんしすくなくともふたふくせきであるならば、さきべた仕方しかたでは部分ぶぶんてき分解ぶんかいしかられないが、そうでなければ完全かんぜんいち因子いんしのみのせき分解ぶんかいできることになる。とくに、いち因子いんしがちょうどひとつである場合ばあいには、それはすべてのいち因子いんし分解ぶんかいくしたのこりの部分ぶぶん多項式たこうしきとしてせる。さん多項式たこうしき場合ばあいには、それが完全かんぜん因数いんすう分解ぶんかいできるならば有理ゆうりテストをもちいるだけでその分解ぶんかい決定けっていできる(それはひとつのいち因子いんしすんでやく因子いんしとのせきであるか、さもなくばみっつのいち因子いんしせきである)ことは注目ちゅうもくあたいする。

クロネッカーの方法ほうほう

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整数せいすう係数けいすう多項式たこうしきかく整数せいすう評価ひょうかした有限ゆうげんどおりの分解ぶんかいしかないので、十分じゅうぶんおおくの整数せいすうでのから因子いんし候補こうほとなる多項式たこうしきを(補間ほかん公式こうしきなどにより)構成こうせいすれば、因子いんしはこれらの有限ゆうげん多項式たこうしきからつけられる。

たとえば かんがえるとき、これが うえ分解ぶんかいするならば、その因子いんしすくなくともひとつは以下いかである。多項式たこうしき一意いちいめるにはさんてんでの必要ひつようであるが、ここでは f(0) = 2, f(1) = 6, f(−1) = 2利用りようすることにする。もしここで利用りようするのどれかでも 0ひとしくなっていたならば、それはすでにつかった(したがっていち因子いんしられた)ことになることに注意ちゅういせよ。0ひとしいものがいとすれば、それらの因数いんすう有限ゆうげんである。いまの場合ばあい 2因数いんすう分解ぶんかい1×2, 2×1, (−1)×(−2), (−2)×(−1)よんとおりだけであるから、もしせい係数けいすう因子いんしがあったならば、その x = 0 における1, 2, −1, −2いずれかでなければならない。x = −1 におけるどうじくである。また同様どうように、6因数いんすう分解ぶんかい8 とおりだから、これらの分解ぶんかいのとりかたわせは 4 × 4 × 8 = 128 とおりだが、半分はんぶん符号ふごうぎゃくになっただけなので、因子いんしとなる候補こうほとしてチェックすべきものは半分はんぶんの 64 とおりということになる。それ以外いがいのものが f(x)せい係数けいすう因子いんしあたえることはない。これらを精査せいさすれば p(0) = 1, p(1) = 3, p(−1) = 1たすものとしてられて、実際じっさいf(x)る。

fpわれれば、べつ因子いんしとして るから、因数いんすう分解ぶんかい f = pqる。さてさらに再帰さいきてき有理ゆうりテストをほどこして p, q をそれぞれ分解ぶんかいしようとこころみれば、これらが うえすんでやくであることがわかるから、これで fすんでやく因子いんし分解ぶんかい [3]

現代げんだいてき手法しゅほう

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有限ゆうげんたいじょう因数いんすう分解ぶんかい

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ハンス・ユリウス・ツァッセンハウス

せい係数けいすういち変数へんすう多項式たこうしき因数いんすう分解ぶんかい

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うえたことをまえれば、f(x)せい係数けいすう一変いっぺんすう多項式たこうしきのときには、一般いっぱんせいうしなうことなくそれが原始げんしてきかつ平方へいほう仮定かていしてよい。するとはじめにかんがえるべきは f任意にんい因子いんし g のすべての係数けいすう絶対ぜったいおさえるうえかい B計算けいさんすることである。そうして m2B よりおおきな整数せいすうとして、g(x)mほうとしてもとまったならば、そのほう mかんしてかっている g情報じょうほうから g復元ふくげんできる。

その方法ほうほうべるハンス・ユリウス・ツァッセンハウスドイツばんのアルゴリズムは以下いかのようなものである:

  1. まず素数そすう pf(x) mod p がやはり平方へいほうかつ次数じすうとさないようにえらんで、f(x) mod p因数いんすう分解ぶんかいする。これにより、せい係数けいすう多項式たこうしき f1, …, fr でそれらのせきpほうとして fひとしいものがられる。
  2. つぎに、ヘンゼル適用てきようして、fi たちがそれらのせきがこんどは paほうとして f一致いっちするようにできる(ただし、apa2B よりもおおきくなるようにえらぶものとする)。
    • この時点じてんほう paかんして f(x) は(単数たんすうけるちがいをのぞいて)2r 因子いんしつ— {f1, …, fr}任意にんい部分ぶぶん集合しゅうごう各々おのおのたいして、そのもとそうせきf(x) mod pa因子いんしあたえる—が、ほう paかんする因子いんしが「しん因子いんし」(すなわち、[x] における f(x)因子いんし)に対応たいおうするとはかぎらないことに注意ちゅういする。
  3. ほう paかんするかく因子いんしたいしてそれがしん因子いんし対応たいおうするものかどうかをテストして、対応たいおうするものとかれば(pa2B よりおおきいという仮定かていのもと)しん因子いんし計算けいさんすることになる。
    • この方法ほうほうでは、高々たかだか 2r とおりをチェックすればしんすんでやく因子いんしをすべてつけることができる(かく因子いんし因子いんしけて f(x) になるもう一方いっぽう因子いんし—についてのチェックはばせるから、実際じっさいには 2r−1 とおりでよい)。f(x)やくのときは、すでしん因子いんしであるとわかっている fi についてはチェックをばせるので、調しらべるべき場合ばあいかずはさらにらすことができる。

ツァッセンハウスのアルゴリズムはかく場合ばあいのチェックについては手早てばやくできるが、その場合ばあいかず最悪さいあく場合ばあいでは指数しすう函数かんすうてきおおきくなってしまう。

有理ゆうり係数けいすう多項式たこうしき因数いんすう分解ぶんかい多項式たこうしき時間じかん計算けいさんできる最初さいしょのアルゴリズムは Lenstra, Lenstra & Lovász (1982)格子こうし基底きてい縮小しゅくしょうアルゴリズム英語えいごばん("LLLアルゴリズム")の応用おうようとしてあたえた。簡易かんいばんのLLL因数いんすう分解ぶんかいアルゴリズムは以下いかのようなものである:

多項式たこうしき f複素ふくそ(あるいは p-すすむ αあるふぁこう精度せいど計算けいさんし、LLL格子こうし基底きてい縮小しゅくしょうアルゴリズムをもちいて 1, αあるふぁ, αあるふぁ2, …たすせい係数けいすう線型せんけい関係かんけいしき英語えいごばん(つまり αあるふぁたすせい係数けいすう多項式たこうしき関係かんけいしき)を近似きんじてきもとめると、それが(近似きんじでない)しん線型せんけい関係かんけいしきの、したがって f多項式たこうしき因子いんし候補こうほになる。

適切てきせつ近似きんじ精度せいど限界げんかいめることで、このアルゴリズムが多項式たこうしき因子いんしすんでやくせい証明しょうめいいずれかをあたえるものであることを保証ほしょうすることができる。この方法ほうほう多項式たこうしき時間じかんであるけれども、格子こうしこう次元じげんのもので、成分せいぶんすう膨大ぼうだいになり、計算けいさん時間じかんがとられることをかんがえれば、実用じつようきょうされるものではない。

さて、ツァッセンハウスのアルゴリズムの計算けいさんりょう指数しすう時間じかんとなるのは、(f1, …, frなかから目的もくてき部分ぶぶん集合しゅうごうえらすという)組合くみあわ問題もんだいからるものであった。ツァッセンハウスとおなじやりかたながら組合くみあわ爆発ばくはつ問題もんだい回避かいひする芸術げいじゅつてき因数いんすう分解ぶんかい実装じっそう状態じょうたいは、組合くみあわ問題もんだいをLLLで解決かいけつできる格子こうし問題もんだい翻訳ほんやくするてんにある[4]。このやりかた場合ばあい、LLL は因数いんすう係数けいすう計算けいさんするのではなくて、{0, 1}r 成分せいぶんをとるベクトル(しんすんでやく因子いんしあたえる f1, …, fr部分ぶぶん集合しゅうごうをエンコードするもの)の計算けいさんもちいる。

代数だいすうたい係数けいすう場合ばあい: Trager の方法ほうほう

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からだ K代数だいすうたい有限ゆうげん拡大かくだいたい)であるときの多項式たこうしき p(x) ∈ K[x]因数いんすう分解ぶんかいすることができる。平方へいほう分解ぶんかいして、多項式たこうしき平方へいほうであると仮定かていしてよい。 うえ線型せんけいたまきとして LK[x]/(p(x))いて、作為さくいαあるふぁL をとれば、原始げんしもと定理ていりにより、こうかくりつαあるふぁL うえ生成せいせいする。生成せいせいすることが確認かくにんできたならば、αあるふぁ うえ最小さいしょう多項式たこうしき q(y) ∈ [y]計算けいさんして、それを [y] うえ因数いんすう分解ぶんかいすることで、決定けっていできて(p平方へいほうであるから、Lやくたまきとなることに注意ちゅうい)、αあるふぁ右辺うへんもと (y, …, y)すべての成分せいぶんy)に対応たいおうする。これがからだ直積ちょくせきとしての L唯一ゆいいつ分解ぶんかいであることに注意ちゅういする。したがってこの分解ぶんかいおなじものである(ここに p = ∏m
i=1
pi
pK[x] におけるすんでやく分解ぶんかいとする)。xL および K生成せいせいもとαあるふぁ多項式たこうしきとしてけば、x および K[y]/(qi(y)) = K[x]/(pi(x))直積ちょくせき因子いんしなかへのみが決定けっていできる。このたまきにおける x最小さいしょう多項式たこうしきもとめることにより、pi計算けいさんできて、したがって pK うえすんでやく分解ぶんかいされる。

ちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ おなじことは、 および を、(U)FD R およびそのしょうたい Kえてより一般いっぱん考察こうさつできる

出典しゅってん

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  1. ^ FT Schubert: De Inventione Divisorum Nova Acta Academiae Scientiarum Petropolitanae v.11, p. 172-182(1793)
  2. ^ An example of degree 2401, taking 7.35 seconds, is found in Section 4 in: Hart, van Hoeij, Novocin: Practical Polynomial Factoring in Polynomial Time ISSAC'2011 Proceedings, p. 163-170 (2011).
  3. ^ van der Waerden 1970, §5.4, 5.6.
  4. ^ M. van Hoeij: Factoring polynomials and the knapsack problem. Journal of Number Theory, 95, 167-189, (2002).

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Fröhlich, A.; Shepherson, J. C. (1955), “On the factorisation of polynomials in a finite number of steps”, Mathematische Zeitschrift 62 (1): 331–334, doi:10.1007/BF01180640, ISSN 0025-5874 
  • Trager, B.M., “Algebraic Factoring and Rational Function Integration”, Proc. SYMSAC 76, http://dl.acm.org/citation.cfm?id=806338 
  • Bernard Beauzamy, Per Enflo, Paul Wang (October 1994). “Quantitative Estimates for Polynomials in One or Several Variables: From Analysis and Number Theory to Symbolic and Massively Parallel Computation”. Mathematics Magazine 67 (4): 243–257. doi:10.2307/2690843. JSTOR 2690843.  (accessible to readers with undergraduate mathematics)
  • Cohen, Henri (1993). A course in computational algebraic number theory. Graduate Texts in Mathematics. 138. Berlin, New York: Springer-Verlag. ISBN 978-3-540-55640-4. MR1228206 
  • Kaltofen, Erich (1982), “Factorization of polynomials”, in B. Buchberger; R. Loos; G. Collins, Computer Algebra, Springer Verlag, doi:10.1007/978-3-7091-3406-1_8, MR780381, Zbl 0519.68059 
  • Knuth, Donald E (1997). “4.6.2 Factorization of Polynomials”. Seminumerical Algorithms. The Art of Computer Programming. 2 (Third ed.). Reading, Massachusetts: Addison-Wesley. pp. 439–461, 678–691. ISBN 0-201-89684-2 
  • Lenstra, A. K.; Lenstra, H. W.; Lovász, László (1982). “Factoring polynomials with rational coefficients”. Mathematische Annalen 261 (4): 515–534. doi:10.1007/BF01457454. ISSN 0025-5831. MR682664 
  • van der Waerden, B. L. (1970), Algebra, trans. Blum and Schulenberger, Frederick Ungar 

関連かんれん文献ぶんけん

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外部がいぶリンク

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関連かんれん項目こうもく

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