定府じょうふ

定府じょうふ（じょうふ）は、江戸えど時代じだいにおいて参勤交代さんきんこうたいを行おこなわずに江戸えどに定住ていじゅうする将軍しょうぐんや藩主はんしゅおよびそれに仕つかえる者ものの状態じょうたいを示しめす。

幕臣ばくしんおよび定府じょうふ大名だいみょう[編集へんしゅう]

参勤交代さんきんこうたいを行おこなう交代こうたい寄合よりあい^[1]を除のぞく旗本はたもと・御家人ごけにんは、江戸えどに定住ていじゅうして将軍しょうぐんに仕つかえたため、もちろん定府じょうふである。

諸しょ大名だいみょうにあっては、徳川とくがわ家康いえやすによって江戸えど定住ていじゅうが定さだめられていた水戸みと徳川とくがわ家か（水戸みと藩はん）と、老中ろうじゅう・若年寄わかどしより・寺社じしゃ奉行ぶぎょうなど幕府ばくふの公職こうしょく（幕まく閣かくなど）にあって江戸城えどじょうに詰つめている藩主はんしゅ（主おもに譜代ふだい大名だいみょう）は、江戸えどに定住ていじゅうする必要ひつよう性せいがあったので、当然とうぜんに定府じょうふとなる。

なお、江戸えど中期ちゅうき以降いこうに内分ないぶん分ぶん知ちや新田にった分ぶん知ちで成立せいりつした藩はんの藩主はんしゅは定府じょうふになることが多おおかった。

諸しょ藩はんの藩士はんしの場合ばあい[編集へんしゅう]

諸しょ藩はんの藩士はんし（将軍しょうぐんの陪臣ばいしん）は、その江戸えど屋敷やしきに常勤じょうきんしている者もの（あるいは江戸えど常勤じょうきんの家柄いえがらの者もの）を定府じょうふと呼よんだ。定府じょうふの藩士はんしの多おおくは、江戸えどに家族かぞくと菩提寺ぼだいじ・檀那寺だんなでらを持もち、江戸えどで亡なくなっても遺骸いがいや遺骨いこつなどを在所ざいしょに持もち帰かえらない。

これに対たいして、藩主はんしゅの参勤交代さんきんこうたいと共ともに在所ざいしょに帰還きかんする者ものは江戸詰えどづめと呼よばれ、定府じょうふとは分わけて考かんがえられた。

異例いれいとして、仙台せんだい藩はんでは江戸えど常勤じょうきんを「江戸えど定詰じょうづめめ」といい、逆ぎゃくに国元くにもとの仙台せんだいに常つねに在住ざいじゅうすることを「定府じょうふ」と呼よんだ。

おもな定府じょうふ大名だいみょう[編集へんしゅう]

御三家ごさんけ・親藩しんぱん[編集へんしゅう]

水戸みと藩はん徳川とくがわ家か（御三家ごさんけ）
- 守山もりやま藩はん松平まつだいら家か（連枝れんし）
- 府中ふちゅう藩はん松平まつだいら家か（連枝れんし）
- 宍戸ししど藩はん松平まつだいら家か（連枝れんし）
高須たかす藩はん松平まつだいら家か（名古屋なごや藩はん分家ぶんけ）
西条さいじょう藩はん松平まつだいら家か（和歌山わかやま藩はん分家ぶんけ）
吉井よしい藩はん松平まつだいら家か（和歌山わかやま藩はん分家ぶんけ）
糸魚川いといがわ藩はん松平まつだいら家か
母里もり藩はん松平まつだいら家か

御ご附ふ家老がろう[編集へんしゅう]

水野みずの家か（紀伊きい新宮しんぐう藩はん、和歌山わかやま藩はん御ご附ふ家老がろう）
中山なかやま家か（常陸ひたち松岡まつおか藩はん、水戸みと藩はん御ご附ふ家老がろう）

譜代ふだい大名だいみょう[編集へんしゅう]

外様とざま大名だいみょう[編集へんしゅう]

かつて江戸えど定府じょうふであった大名だいみょうおよび大名だいみょうに準じゅんずる家いえ[編集へんしゅう]

甲府こうふ徳川とくがわ家か
館林たてばやし徳川とくがわ家か
糸魚川いといがわ松平まつへい家か（松平まつだいら直ただし堅けん・直ちょく知ち・直之なおゆき。俸禄1万まん俵ひょう→糸魚川いといがわ藩はん立たて藩はん）
柳原やなぎはら松平まつへい家か^[2]（元もと・越後えちご高田たかだ藩はん。俸禄3万まん俵ひょう。後のちに津山つやま藩はん）
川田かわた窪くぼ松平まつへい家か^[3]（正式せいしきには立だて藩はんしていない。1万まん石せき→2代目だいめに他家たけ相続そうぞく消滅しょうめつ）

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

^ 『寛政かんせい譜ふ』では「代々だいだい采さい地ちへの暇ひまを賜たまう」と記しるされる。
^ 元もと・高田たかだ藩はん主おもの松平まつだいら光長みつながが越後えちご騒動そうどうによる配流はいるからの赦免しゃめん後ご、江戸えど・柳原やなぎはらに屋敷やしきを与あたえられ、ここに住じゅうした。
^ 市ヶ谷いちがや川田かわた窪くぼに江戸えど屋敷やしきを構かまえ住じゅうした。