屋 嶋 城
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概要
[関連 の歴史
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天智天皇 2年 (663年 ):白村 江 の戦 いで、倭 (日本 )・百済 復興 軍 は朝鮮 半島 で唐 ・新 羅 連合 軍 に大敗 する。天智天皇 3年 (664年 ):対馬 島 ・壱岐 島 ・筑紫 国 などに防人 と烽(とぶひ)を配備 し、筑紫 国 に水城 を築 く。天智天皇 4年 (665年 ):長門 国 に城 を築 き、筑紫 国 に大野城 と基 肄城を築 く。天智天皇 6年 (667年 ):大和 国 に高安 城 ・讃岐 国 に屋 嶋 城 ・対馬 国 に金田 城 を築 く。この年 、中大兄皇子 は、大津 に遷都 し、翌年 の正月 に天智天皇 となる。
調査 ・研究
[浦 生 地区 の城跡 は、1917年 (大正 6年 )、関野 貞 が踏査 研究 で発見 した遺構 である[34]。1980年 (昭和 55年 )、浦 生 地区 の遺構 の発掘 調査 が行 われたが、遺構 の年代 を決定 できず、未 確定 遺構 とされた[35]。しかし、2009年 (平成 21年 )の発掘 調査 で、築城 年代 を示 す土器 (須恵 器 平 瓶 )が発掘 され、城跡 遺構 であることが判明 した[24]。屋島 の地形 から、浦 生 集落 と南方 の中筋 集落 の谷部 からの進攻 が考 えられる。塁壁 を設 けて防禦 線 を確保 するならば、この二 か所 に築 かれるべきだろうと推論 する[注 14][36]。- 「
讃 吉國 山田 郡 屋 嶋 城 」と、評 名 (郡 名 )を記載 しているのは、讃岐 国内 におけるもう一城 の存在 を暗示 している。もう一城 とは、讃岐 城山 城 であると論考 する[37]。 中国 桓仁県 五 女 山城 は日本 の屋島 を大 きくした形 であって、どちらも利用 した地形 がたまたま同 じような形 というだけで、前者 は高句麗 でも唯一 の、屋島 城 も日本 では唯一 の、それぞれ例外 的 なものであると論考 する[38]。南 嶺 山上 の北 斜面 土 塁 は、1984年 (昭和 59年 )、村田 修三 が踏査 研究 で発見 した遺構 である[39]。しかし、城門 遺構 の石 塁 が発見 されるまでは山上 に遺構 が見当 たらず[21]、考古学 の視点 では実体 の無 い幻 の城 の状況 であった[11]。1998年 (平成 10年 )、高松 市民 の平岡 岩夫 による南 嶺 山上 の石 塁 の発見 を契機 に[40][41]、城門 跡 と築城 年代 を示 す土器 が発掘 され、山上 の城 の存在 が明確 になった[15]。九州 管内 の城 も、瀬戸内海 沿岸 の城 も、その配置 ・構造 から一体 的 ・計画 的 に築 かれたもので、七 世紀 後半 の日本 が取 り組 んだ一大 国家 事業 である[42]。- 1898
年 (明治 31年 )、高良山 の列石 遺構 が学会 に紹介 され、「神 籠 石 」の名称 が定着 した[注 15]。そして、その後 の発掘 調査 で城郭 遺構 とされた。一方 、文献 に記載 のある屋 嶋 城 などは、「朝鮮 式 山城 」の名称 で分類 された。この二 分類 による論議 が長 く続 いてきた。しかし、近年 では、学 史 的 な用語 として扱 われ[注 16]、全 ての山城 を共通 の事項 で検討 することが定着 してきた。また、日本 の古代 山城 の築造 目的 は、対外 的 な防備 の軍事 機能 のみで語 られてきたが、地方 統治 の拠点 的 な役割 も認識 されるようになってきた[43]。
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南西 (春日 川 )で望 む -
南東 (龍王 台 )で望 む -
浦 生石 塁 を入口 で望 む -
浦 生石 塁 の断面 部 -
城内 で物見 台 を望 む -
発掘 、須恵 器 平 瓶
現地 情報
[山上 の遊歩道 の要所 に「瀬戸内海 国立 公園 屋島 案内 図 」の説明 板 や案内 標示 がある。山上 の駐車 場 から徒歩 15分 ほどの場所 に、城門 遺構 の見学 路 が整備 されている。終日 、無料 公開 であるが、夜間 の照明 は無 い。山上 の駐車 場 へは屋島 スカイウェイが通 じている。屋島 登山 を兼 ねる場合 は歩行 者 専用 の屋島 登山 道 (参道 ・遍路 道 ・四国 のみち・県道 )を登 ることになる。屋島 登山 道 の中腹 から城門 遺構 に通 じる道 が整備 されているが、急 勾配 で階段 の多 い狭 い山道 である。城門 遺構 は、コンピューターグラフィックスで復元 された城門 などを、スマートホンやタブレット端末 で見 ることができる機能 が付与 されている[28]。城門 遺構 以外 の山上 地区 ・浦 生 地区 の遺構 は未 整備 であるが、学術 調査 は継続 されている[10]。
ギャラリー
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甕 城 (城門 の城内 ) -
城門 より市街 を望 む -
入口 の高 さ2.5 m(懸 門 ) -
南側 より北側 を望 む -
高 さ6 mの城壁 正面
脚注
[注釈
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特別 史跡 「おおのじょう・きいじょう・かねだじょう」、史跡 「きくちじょう」に準 ずる。 - ^
南 嶺 城跡 説 の論者 も存在 する(向井 一雄 「外城 ラインに関 する一 考察 」『戦乱 の空間 』第 4号 、戦乱 の空間 編集 会 、2005年 、121頁 )。 - ^
朝鮮半島 の山城 をルーツとする様式 で、城門 の入口 に進入 しにくい段差 のある城壁 を設 け、普段 は梯子 ・木 段 などで出入 りし、戦闘 時 は撤去 する城門 で、防御 性能 を高 める構造 。鬼 ノ城 と大野城 に類例 がある。 - ^
韓国 、忠 北大 学 教授 のチャ・ヨンゴルは「階段 状 の城門 は懸 門 式 だった可能 性 が高 い」と評 する(山陽 新聞 、2002年 6月 25日 閲覧 )。 - ^
朝鮮半島 では雉城(ちじょう)と称 する。鬼 ノ城 と金田 城 に類例 がある。 - ^
朝鮮半島 の山城 をルーツとする様式 で、城門 の外側 または内側 で、城壁 を曲 げたり突出 させ、直進 できない袋小路 状 の空間 を設 けた城門 で、防御 性能 を高 める構造 。屋 嶋 城 の城門 は、正面 の奥 を岩盤 で遮 っている。 - ^
城壁 背面 の自然 地形 を活用 し、斜面 にもたせ掛 けて築 かれた城壁 構造 。 - ^
城 外側 と城内 側 の両面 を城壁 にした構造 。 - ^
香川 県 坂出 市 に所在 する国 指定 の史跡 「城山 」まで、約 21キロメートル。 - ^
岡山 県 総社 市 に所在 する国 指定 の史跡 「鬼 ノ城山 」まで、約 52キロメートル。 - ^ 5
世紀 初頭 の全長 45メートルの前方後円墳 で、石棺 は阿蘇 溶結凝灰岩 製 である。 - ^
屋島寺 の前身 の仏堂 跡 (礎石 建物 )で、基壇 から多 口 瓶 が3個体 出土 している。 - ^ 『
日本書紀 』の天智天皇 六 年 (667年 )十 一 月 の条 に、「是 月 、築 倭 (やまとの/大和 )國高 安城 讃 吉國 山田 郡 屋 嶋 城 (さぬきのくに やまだのこほりの やしまのき)対馬 國 金田 城 」と記載 する。 - ^
推論 の後 に、浦 生 集落 の南東 山上 で北 斜面 土 塁 、中筋 集落 の北東 山上 で城門 跡 石 塁 が発見 された。 - ^
歴史 学会 ・考古 学会 における大 論争 があった(宮小路 賀 宏 ・亀田 修一 「神 籠 石 論争 」『論争 ・学説 日本 の考古学 』第 6巻 、雄山閣 出版 、1987年 )。 - ^ 1995
年 (平成 7年 )、文化財 保護 法 の史跡 名勝 天然記念物 指定 基準 の改正 にともない「神 籠 石 」は削除 され、「城跡 」が追加 された。
出典
[- ^ a b
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参考 文献
[文化庁 文化財 部 監修 『月刊 文化財 』 631号 (古代 山城 の世界 )、第 一 法規 、2016年 。小田 富士雄 編 『季刊 考古学 』第 136号 (西日本 の「天智 紀 」山城 )、雄山閣 、2016年 。西谷 正 編 『東 アジア考古学 辞典 』、東京 堂 出版 、2007年 。ISBN 978-4-490-10712-8。小島 憲之 他 校 注 ・訳 『日本書紀 ③』、小学館 、1998年 。ISBN 4-09-658004-X。齋藤 慎一 ・向井 一雄 著 『日本 城郭 史 』、吉川弘文館 、2016年 。ISBN 978-4-642-08303-4。向井 一雄 著 『よみがえる古代 山城 』、吉川弘文館 、2017年 。ISBN 978-4-642-05840-7。
関連 項目
[外部 リンク
[屋 嶋 城 -高松 市 甦 る屋 嶋 城 -高松 市 公式 YouTubeチャンネル新 ・さぬき野 、NO.52、「特集 1幻 の城 に出合 う」(香川 県 )(2020年 6月 12日 アーカイブ) -国立 国会図書館 Web Archiving Project屋 嶋 城 『日本 の史跡 101選 』 -日本経済新聞社 - 「
屋 嶋 城 (やしまのき)に関 する資料 」(香川 県立 図書館 ) - レファレンス協同 データベース