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市民しみん

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市民しみんけんから転送てんそう
フランス革命かくめい公的こうてき場所ばしょかかげられたパネルのいちれい1799ねん)。 「Ici on s'honore du titre de citoyen.(ここに、我々われわれは(我々われわれ自身じしんを)市民しみんという称号しょうごうによって称揚しょうようする。)」(「我々われわれは、市民しみんという偉大いだいなる存在そんざいなのだ!」といったニュアンスのフランス語ふらんすごふう表現ひょうげん民衆みんしゅうくるしめつづけてきたおう王族おうぞく打倒うちたお処刑しょけいすることに成功せいこうし、自分じぶんたちの主体性しゅたいせい主権しゅけんをついにれた人々ひとびとよろこび・高揚こうようかんほこらしさがあらわれている。)

市民しみんしみん古代こだいギリシア: πολίτης[ちゅう 1]ふつ: citoyen[ちゅう 2]えい: citizen[ちゅう 3]どく: Bürger[ちゅう 4])とは、政治せいじてき共同きょうどうたい国政こくせいの(主権しゅけんてきな、主体しゅたいてきな)構成こうせいいん個々ここ人間にんげん場合ばあいと、人間にんげん集団しゅうだんをまとめて場合ばあいとがある。

構成こうせいいん全員ぜんいん主権しゅけんしゃであることが前提ぜんていとなっている議論ぎろんでは、構成こうせいいん主権しゅけんしゃとしてたものである(現代げんだい社会しゃかいの「市民しみん」についてべるときはこの意味合いみあいのことがおおい)。市民しみん語源ごげんは、都市としである(citizenとcityはどう語源ごげんである)。

市民しみん概念がいねんとして国民こくみんがあるが、両者りょうしゃちがいは、「市民しみん」がその理想りそうとするところの社会しゃかい共同きょうどうたい政治せいじてき主体しゅたいとしての構成こうせいいんあらわすのにたいして、「国民こくみん」は、たんにその「国家こっか」の国籍こくせき保持ほじする構成こうせいいんあらわすというてんにある。市民しみん国民こくみんは、たまたま相互そうご可能かのう場合ばあいもあるが、そうでない場合ばあいもある。たとえば、絶対ぜったい王政おうせい国家こっか場合ばあい国民こくみんすべ臣民しんみんであり、市民しみんではない(主権しゅけん主体性しゅたいせいうばわれてしまっているためである)[ちゅう 5]。また一方いっぽうで「欧州おうしゅう連合れんごう市民しみん」のように国家こっかとは直接ちょくせつむすびつかないようなかたち市民しみんけんもあり、この場合ばあいも「市民しみん」を「国民こくみん」といいかえるのは適切てきせつでない。

訳語やくごの「市民しみん」は、福沢ふくさわ諭吉ゆきちによる1867ねんの『西洋せいよう事情じじょう外編がいへん』や1875ねんの『文明ぶんめいろん概略がいりゃく』に登場とうじょうし、フランソワ・ギゾー『ヨーロッパ文明ぶんめい』(1828ねん)の英訳えいやくにでてくるburgessのわけだとられている[2]

市民しみん歴史れきし[編集へんしゅう]

古代こだい共和きょうわせい都市とし国家こっかにおける自由じゆう市民しみん
古代こだいギリシアのπόλις ポリスや、共和きょうわせい古代こだいローマにおける男性だんせい自由じゆう市民しみんは、政治せいじ参画さんかくするとともに、兵士へいしとして共同きょうどうたい防衛ぼうえい義務ぎむたした。かれらは都市とし国家こっか住民じゅうみんとして「市民しみん」とばれた。(ラテン語らてんごcivitas

ポリスはしばしば3しゅ住民じゅうみん分割ぶんかつされ、最高さいこう階級かいきゅうは、参政さんせいけん所持しょじしている市民しみんである。つぎに、参政さんせいけんのない市民しみん最後さいご市民しみんがいた。投票とうひょうけんっていたのはたとえば民主みんしゅせいアテナイでも、自由じゆう市民しみんのうち成人せいじん男性だんせいのみであった。またかくポリスはいくつかの部族ぶぞくデモス胞族最終さいしゅうてきには氏族しぞくじゅん構成こうせいされた)から構成こうせいされた。メトイコイ在留ざいりゅう外国がいこくじん)と奴隷どれいは、このような組織そしきにははいっていなかった。市民しみんけんまれにより通常つうじょう決定けっていされた。かくポリスは崇拝すうはいする守護神しゅごじん特有とくゆう祭儀さいぎおよ習慣しゅうかんっていた。

中世ちゅうせいヨーロッパ都市としにおける富裕ふゆう商工しょうこう業者ぎょうしゃとしての都市とし住民じゅうみん、ブルジョワ
市民しみんやくされるブルジョワは、城壁じょうへき(ブール)にかこまれた都市とし住民じゅうみん由来ゆらいしている。
フランス革命かくめい以後いご政治せいじてき主体しゅたいとしての市民しみんcitoyenシトワイヤン
シトワイヤンは階級かいきゅうせい排除はいじょした、抽象ちゅうしょうてき市民しみん概念がいねんである。

アンシャン・レジームきゅう体制たいせい)では、「だいいち身分みぶん聖職せいしょくしゃだい身分みぶん貴族きぞくだいさん身分みぶん市民しみん農民のうみん」とされ、人口じんこうだい多数たすうめる市民しみん農民のうみんが ないがしろにされ、くるしめられていた。 フランス革命かくめい革命かくめいであり、市民しみん農民のうみんが、おう打倒だとうするためにつどい、はるばるみなみフランスから首都しゅとパリへと行進こうしんするときにもうたわれ、現在げんざいフランス(フランス共和きょうわこく)の国歌こっかでもある『ラ・マルセイエーズ』のリフレインつぎのようなものである。

武器ぶき市民しみん
隊列たいれつ
すすもう すすもう!
よごれた
われらのはたけうねたすまで! 」

現代げんだいフランスじんも、子供こどものころからかえしこのうたほこらしげにうたって成長せいちょうする。こうして現代げんだいフランスじんが「シトワイヤン (市民しみん)」という言葉ことばいたときに、さきおも概念がいねんはこうした文脈ぶんみゃくの「市民しみん(=ちからわせ、横暴おうぼう残虐ざんぎゃくおう王族おうぞくたおし、主体性しゅたいせい主権しゅけんもどし、幸福こうふく共和きょうわこくつくり、まんにん人権じんけん尊重そんちょうする政治せいじおこない、世界中せかいじゅう人々ひとびと手本てほんとなるような社会しゃかいしめ存在そんざい)」である。 [ちゅう 6]

市民しみんけん[編集へんしゅう]

市民しみんけん (citizenship) は、市民しみん革命かくめい背景はいけいにしたくに民族みんぞく国家こっかでは国籍こくせき同義どうぎ使つかわれることもあるが[よう出典しゅってん]通常つうじょう参政さんせいけんなど法的ほうてき権利けんり義務ぎむとのかかわりをかたりである。公民こうみんけんばれることもある。

国籍こくせき区別くべつしてもちいられる場合ばあいは、その所属しょぞくする国家こっかうちにおける市民しみんたる資格しかく意味いみし、国籍こくせき他国たこくとの関係かんけい問題もんだいになるのにたいし、市民しみんけん国内こくない問題もんだいとしてあつかわれる。国内こくない市民しみんけんものたないもの区別くべつする場合ばあいは、参政さんせいけん完全かんぜんであるものかで区別くべつすることがおおい。日本にっぽん参政さんせいけん有無うむ国民こくみん市民しみん)をける法制ほうせいっていないが、憲法けんぽうだい10じょう国籍こくせきほうに「日本にっぽん国民こくみんたる要件ようけん」があるように、国籍こくせき国民こくみん市民しみん)であることは不可分ふかぶん関係かんけいにある。ただし、法律ほうりつ用語ようごとして市民しみんけんという言葉ことば定義ていぎされない。日本国にっぽんこく憲法けんぽうにおいて人権じんけん享有きょうゆう主体しゅたい日本にっぽん国民こくみんとされているが、マクリーン事件じけんなどの判例はんれいでは権利けんり性質せいしつじょう日本にっぽん国民こくみんのみを対象たいしょうとしているとほぐされる権利けんり以外いがいは、くに在留ざいりゅうする外国がいこくじんにもひとしく基本きほんてき人権じんけん保障ほしょうおよぶとほぐされている。

比喩ひゆ表現ひょうげんとして、世間せけんからの公認こうにん比喩ひゆてきに「市民しみんけん」とび、特殊とくしゅまたは希少きしょうものひろ容認ようにんされて一般いっぱんすることを「市民しみんけん」というように使用しようされる。

コスモポリタン(世界せかい市民しみん地球ちきゅう市民しみん[編集へんしゅう]

シノペのディオゲネスは、既存きそん国家こっか(ポリス)を超越ちょうえつした世界せかい政府せいふ構想こうそうした。その世界せかい政府せいふ国民こくみんコスモポリタンである。この思想しそうストアかいして近代きんだいにもがれた。イマヌエル・カント歴史れきし終極しゅうきょくとしての世界せかい政府せいふ理念りねんろんじ、その現実げんじつてき不可能ふかのうせいみとめはするものの、現実げんじつ有効ゆうこうほうとしての世界せかい市民しみんほう可能かのうせいろんじた。かれ世界せかい市民しみんほう具体ぐたいてき内容ないようは、世界せかい市民しみんとして現状げんじょう各国かっこく市民しみん国民こくみん)は相互そうご訪問ほうもんけんみとめられるべきであるといったものである。

名誉めいよ市民しみん[編集へんしゅう]

シティ・オブ・ロンドンかぎチャールズ・リンドバーグ贈呈ぞうていされたもの

共同きょうどうたいが、その共同きょうどうたいたい功績こうせきのある人物じんぶつや、出身しゅっしん著名ちょめいじんなどを、名誉めいよ市民しみんとすることがある。おおくの場合ばあいは、それ自体じたい市民しみんけん付随ふずいするわけではない名誉めいよ称号しょうごうである。

自治じち城郭じょうかく都市とし伝統でんとうから、城門じょうもんかぎになぞらえたイミテーションが友好ゆうこうしるしとして贈呈ぞうていされることも、欧米おうべいではよくおこなわれる。

共同きょうどうたいでない場合ばあいは、名誉めいよ町民ちょうみん名誉めいよ村民そんみん名誉めいよ区民くみん名誉めいよ都民とみん名誉めいよ道民どうみん名誉めいよ府民ふみん名誉めいよ県民けんみんなどとぶこともある。

市民しみん参加さんか[編集へんしゅう]

市民しみん参加さんか(しみんさんか)とは、市民しみん市町村しちょうそん行政ぎょうせい施策しさくかんして意見いけん提案ていあんすることにより、行政ぎょうせい施策しさく推進すいしんにかかわることをし、一般いっぱんには地方自治体ちほうじちたい政策せいさく決定けっていやNPO活動かつどうさい市民しみん参加さんかおこなわれているが、この場合ばあい市民しみん目的もくてきせいをもった市民しみん活動かつどう集団しゅうだん個人こじん総体そうたいとして、もちいられている。

地方自治体ちほうじちたい基本きほん構想こうそう環境かんきょう基本きほん計画けいかく都市とし計画けいかくマスタープランなどの重要じゅうよう施策しさく決定けっていするときに市民しみん意見いけんくことや、行政ぎょうせい施策しさくにおいて市政しせい提案ていあん公募こうぼ制度せいどパブリックコメントパブリックインボルブメントひとしにより合意ごうい形成けいせいをもって公共こうきょう事業じぎょう反映はんえいさせることを市民しみん参加さんか条例じょうれいなどで制度せいどしている自治体じちたい増加ぞうかしている。

言葉ことばのニュアンス[編集へんしゅう]

社会しゃかい政治せいじてき主権しゅけんしゃとしての「市民しみん」の定義ていぎ様々さまざまであるが、以下いかのようなニュアンスをふくんでいると解釈かいしゃくされることがおおい。

自立じりつせい
市民しみんは、匿名とくめいてき大衆たいしゅう一部いちぶとしてではなく、あらわした個々人ここじんとして自主じしゅ独立どくりつ気概きがいちつつ、自律じりつてき活動かつどうする。
公共こうきょうせい
市民しみんは、みずからが市民しみん社会しゃかいにおける主権しゅけんしゃであることを自覚じかくして、社会しゃかいてき権利けんり義務ぎむ遂行すいこうするとともに、一般いっぱん意思いし実現じつげんのために行動こうどうする。
能動のうどうせい
市民しみんは、受動じゅどうてきではなく能動のうどうてきに、みずか積極せっきょくてき社会しゃかいへとはたらきかけ、状況じょうきょう参加さんかする存在そんざいである。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ ポリーテース、IPA: /po.lǐː.tɛːs/
  2. ^ シトワイヤン、IPA: /si.twa.jɛ̃/
  3. ^ シティズン、IPA: /ˈsɪtɪzən/
  4. ^ ビュルガー、IPA: /ˈbʏʁɡɐ/
  5. ^ 臣民しんみん市民しみんでないわけではなく、British subjectは1949ねんまでイギリス帝国ていこく全体ぜんたい使つかわれた用語ようごだが[1]、イギリス国民こくみん一般いっぱん市民しみんであったとかんがえられている。
  6. ^ なお、はるか時代じだいの、そしてべつくに国民こくみんであるが、カール・マルクスは『共産党きょうさんとう宣言せんげん』などの著書ちょしょで、フランス革命かくめいのシトワイヤンの実態じったいとはブルジョワであり、プロレタリアート下層かそう労働ろうどうしゃ)ははいっていなかった、(とかれりゅう解釈かいしゃくをし)そういった主張しゅちょうすることで、みずからのあらたな理論りろん擁護ようごしつつ、持論じろん展開てんかいした。マルクスは、(フランス革命かくめいよりはるかにのち形成けいせいされた)ブルジョワが経済けいざい階級かいきゅう、あるいは身分みぶんとしての側面そくめんつよっている、ということに力点りきてんき、それによって(18世紀せいき政治せいじ状況じょうきょうとはことなった様相ようそうしめすようになった)20世紀せいき初頭しょとう政治せいじてき状況じょうきょう影響えいきょうあたえようとした。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Types of British nationality - British subject”. www.gov.uk. 2021ねん3がつ24にち閲覧えつらん
  2. ^ 野村のむら(中沢なかざわ)真理しんり<研究けんきゅうノート>歴史れきしてき用語ようごとしての「市民しみん」 : はやしなだめいちさんにささ」『金沢大学かなざわだいがく経済学部けいざいがくぶ論集ろんしゅうだい21かんだい1ごう金沢大学かなざわだいがく経済学部けいざいがくぶ、2001ねん1がつ、229-253ぺーじISSN 02854368NAID 1100001400892021ねん11月11にち閲覧えつらん 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]