御ご成敗せいばい式目しきもく

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御ご成敗せいばい式目しきもく（ごせいばいしきもく）は、鎌倉かまくら時代ときよに、源みなもと頼朝よりとも以来いらいの先例せんれいや、道理どうりと呼よばれた武家ぶけ社会しゃかいでの慣習かんしゅうや道徳どうとくをもとに制定せいていされた、武家ぶけ政権せいけんのための法令ほうれい（式目しきもく）である。貞さだ永ひさし元年がんねん8月がつ10日とおか（1232年ねん8月がつ27日にち:『吾妻あづま鏡きょう』）制定せいてい。貞永式目じょうえいしきもく（じょうえいしきもく）ともいう[1]。ただし貞永式目じょうえいしきもくという名称めいしょうは後世こうせいに付つけられた呼称こしょうで、御ご成敗せいばい式目しきもくの名称めいしょうが正式せいしきである。また、関東かんとう御ご成敗せいばい式目しきもく、関東かんとう武家ぶけ式目しきもくなどの異称いしょうもある。

1185年ねんに鎌倉かまくら幕府ばくふが実質じっしつ的てきに成立せいりつして以降いこう、東国とうごくを勢力せいりょく下かにおく鎌倉かまくら幕府ばくふと、西国さいごくを勢力せいりょく下かにおく朝廷ちょうていによる二に頭とう政治せいじが続つづいていた。1221年ねん（承うけたまわ久ひさし3年ねん）に発生はっせいした承久じょうきゅうの乱らんで、鎌倉かまくら幕府ばくふ執権しっけんの北条ほうじょう義よし時ときが朝廷ちょうていを武力ぶりょくで倒たおし、朝廷ちょうていの権力けんりょくは制限せいげんされ、幕府ばくふの権力けんりょくが全国ぜんこくに及およんでいったが、日本にっぽんを統治とうちする上じょうで指標しひょうとなる道徳どうとくや倫理りんり観かん、そして慣習かんしゅうが各地かくちで異ことなるため、武家ぶけ社会しゃかい、武家ぶけ政権せいけんの裁判さいばん規範きはんとして制定せいていされた。

沿革えんかく[編集へんしゅう]

鎌倉かまくら幕府ばくふ成立せいりつ時じには成文法せいぶんほうが存在そんざいしておらず、律令りつりょう法ほう・公家くげ法ほうには拠よらず、武士ぶしの成立せいりつ以来いらいの武士ぶしの実践じっせん道徳どうとくを「道理どうり」として道理どうり・先例せんれいに基もとづく裁判さいばんをしてきたとされる。もっとも、鎌倉かまくら幕府ばくふ初期しょきの政所まんどころや問とい注ちゅう所しょを運営うんえいしていたのは、京都きょうと出身しゅっしんの明あかり法ほう道どうや公家くげ法ほうに通つうじた中級ちゅうきゅう貴族きぞく出身しゅっしん者しゃであったために、鎌倉かまくら幕府ばくふが蓄積ちくせきしてきた法ほう慣習かんしゅうが律令りつりょう法ほう・公家くげ法ほうと全まったく無関係むかんけいに成立せいりつしていた訳わけではなかった。

承久じょうきゅうの乱らん以後いご、幕府ばくふの勢力せいりょくが西国さいこくにまで広ひろがっていくと、地頭じとうとして派遣はけんされた御家人ごけにん・公家くげなどの荘園しょうえん領主りょうしゅ・現地げんち住民じゅうみんとの法的ほうてきな揉もめごとが増加ぞうかするようになった。また、幕府ばくふ成立せいりつから半はん世紀せいき近ちかくたったことで、膨大ぼうだいな先例せんれい・法ほう慣習かんしゅうが形成けいせいされ、煩雑はんざつ化かしてきた点てんも挙あげられる。

また数すう年ねん前まえから天候てんこう不順ふじゅんによって国くに中ちゅうが疲弊ひへいしていたが、寛ひろし喜き3年ねん（1232年ねん）には寛ひろし喜きの飢饉ききんが最悪さいあくの猛威もういとなり、社会しゃかい不安ふあんな世情せじょうであった。

そこで執権しっけんであった北条ほうじょう泰やすし時ときが中心ちゅうしんになり、一門いちもんの長老ちょうろう北条ほうじょう時じ房ぼう（泰やすし時じの叔父おじにあたる）を連署れんしょとし太田おおた康やすし連れん、斎藤さいとう浄きよし円えんらの評定ひょうじょう衆しゅの一部いちぶとの協議きょうぎによって制定せいていされた。

制定せいていに関かんして、執権しっけん泰たい時じは六ろく波は羅ら探題たんだいとして京都きょうとにいた弟おとうとの北条ほうじょう重しげる時ときに宛あてた2通つう[2]の書状しょじょう（泰やすし時じ消息しょうそく文ぶん）で、式目しきもくの精神せいしん・目的もくてきを述のべている。

制定せいてい当時とうじ、公家くげには、政治せいじ制度せいどを明記めいきした律令りつりょうが存在そんざいしていたが、武家ぶけを対象たいしょうとした明確めいかくな法令ほうれいがなかった。そこで、源みなもと頼朝よりとも以来いらいの御家人ごけにんに関かかわる慣習かんしゅうや明文化めいぶんかされていなかった取とり決きめを基もとに、土地とちなどの財産ざいさんや守護しゅご・地頭じとうなどの職務しょくむ権限けんげんを明文化めいぶんかした。「泰やすし時じ消息しょうそく文ぶん」によれば、公家くげ法ほうは漢文かんぶんで記しるされており難解なんかいであるので、武士ぶしに分わかりやすい文体ぶんたいの法律ほうりつを作つくったとある。そのため、鎌倉かまくら幕府ばくふが強権きょうけんをもって法律ほうりつを制定せいていしたというよりも、むしろ御家人ごけにんの支持しじを得えるために制定せいていした法律ほうりつという性格せいかくを持もつ。また、鎌倉かまくら幕府ばくふ制定せいていの法ほうと言いっても、それがただちに御家人ごけにんに有利ゆうりになるという訳わけではなく、訴訟そしょう当事とうじ者しゃが誰だれであっても公正こうせいに機能きのうするものとした。それにより、武家ぶけではない荘園しょうえん領主りょうしゅ側がわである公家くげや寺社じしゃにも御ご成敗せいばい式目しきもくによる訴訟そしょうが受うけ入いれられてその一部いちぶが公家くげ法ほうなどにも取とり入いれられた。

鎌倉かまくら幕府ばくふ滅亡めつぼう後ごにおいても法令ほうれいとしては有効ゆうこうであった。足利尊氏あしかがたかうじも御ご成敗せいばい式目しきもくの規定きてい遵守じゅんしゅを命令めいれいしており、室町むろまち幕府ばくふにおいて発布はっぷされた法令ほうれい、戦国せんごく時代じだいに戦国せんごく大名だいみょうが制定せいていした分ぶん国法こくほうも、御ご成敗せいばい式目しきもくを改廃かいはいするものではなく、追加ついか法令ほうれいという位置いちづけであった。御ご成敗せいばい式目しきもくは女性じょせいが御家人ごけにんとなることを認みとめており、この規定きていによって戦国せんごく時代じだいには女性じょせいの城主じょうしゅが存在そんざいし、井伊谷いいのや城じょう主おもの井伊いい直ただし虎とら、岩村いわむら城しろ主おものおつやの方ほう、立花りっか城じょう主おもの立花たちばな誾千せん代だい、淀よどみ城じょう主おもの淀殿よどどのなどが知しられる。江戸えど幕府ばくふによる武家ぶけ諸しょ法度はっとの施行しこうに至いたって武士ぶしの基本きほん法ほうとしての位置いちづけを譲ゆずることになるが、法令ほうれいとしての有効ゆうこう性せいには変かわりなく、明治めいじ時代じだい以降いこうに近代きんだい法ほうが成立せいりつするまで続つづいた。後述こうじゅつの通とおり、現代げんだいの民法みんぽうに影響えいきょうを与あたえているという説せつもある。

広ひろく武家ぶけ法ほうの基本きほんとなっただけでなく、優すぐれた法ほう先例せんれいとして公家くげ・武家ぶけを問とわずに有職故実ゆうそくこじつの研究けんきゅう対象たいしょうとされた。公家くげの間あいだでの式目しきもく研究けんきゅうは式目しきもく学がく・式目しきもく解釈かいしゃく学がくと呼よばれ、外そと記きをつとめた清原きよはら氏しは特とくに力ちからを入いれていた。清原きよはら業ぎょう忠ただしは『貞永式目じょうえいしきもく聞書ききがき』を著あらわし、その孫まごの清原きよはら宣せん賢けんは『式目しきもく抄しょう』を著あらわした。大だい永ひさし4年ねん(1524年ねん）と享とおる禄ろく2年ねん(1529年ねん）には清原きよはら氏しの縁者えんじゃであった官かん務つとむ大宮おおみや伊い治ちによって御ご成敗せいばい式目しきもくの刊本かんぽんが出版しゅっぱんされている[3]。その後ご、江戸えど時代じだいには庶民しょみんの習字しゅうじ手本てほんとして民間みんかんにも普及ふきゅうしている。

なお、貞さだ永なが元年がんねん9月がつ11日にち付づけの「泰やすし時じ消息しょうそく文ぶん」には、はじめ「式しき条じょう」と呼よばせたが、律令りつりょうにはばかって「式目しきもく」と改あらためたことが記しるされている。式しき条じょうとは"式しきの条文じょうぶん"の意味いみであり、泰たい時じは幕府ばくふを諸しょ司つかさに準じゅんじる存在そんざいと位置いちづけて命名めいめいしようとしたと考かんがえられているが、朝廷ちょうてい側がわからみれば天皇てんのうの大権たいけん（勅旨ちょくしによってのみ許ゆるされた権限けんげん）である法令ほうれいの制定せいていを幕府ばくふが主張しゅちょうすることは許容きょようできなかったとみられている（幕府ばくふは幕府ばくふ内ないの内部ないぶ規範きはんの枠わくを超こえた法令ほうれいの施行しこうをする際さいには必かならず朝廷ちょうていに奏請そうせいして天皇てんのうの宣旨せんじを仰あおいでおり、例たとえば貞さだ応おう2年ねん（1223年ねん）幕府ばくふが制定せいていした新しん補ほ地頭じとうに関かんする所ところ務つとむ法ほうを武士ぶし以外いがいの荘園しょうえん領主りょうしゅにも適用てきようするために天皇てんのうの宣旨せんじを仰あおいでいる）。朝廷ちょうていの反発はんぱつを受うけた泰やすし時じは朝廷ちょうていの理解りかいを得えるために「式目しきもく」と名前なまえを改あらためたと考かんがえられている。もっとも泰やすし時じが使用しようを断念だんねんした「式しき条じょう」という言葉ことばはその後ごも幕府ばくふ内ないにおいては御ご成敗せいばい式目しきもくを指さす言葉ことばとして用もちいられ、民間みんかんでも「式目しきもく」と「式しき条じょう」を区別くべつすることなく用もちいていたことが当時とうじの荘園しょうえん文書ぶんしょから確認かくにんできる[4]。

条文じょうぶん[編集へんしゅう]

全ぜん51条じょうである。この数かずは17の3倍ばいであり、17は十じゅう七なな条じょう憲法けんぽうに由来ゆらいする。

  • 第だい一いち条じょう - 可か修理しゅうり神社じんじゃ専せん祭祀さいし事ごと
  • 第だい二に条じょう - 可か修造しゅうぞう寺てら塔とう勤行ごんぎょう仏事ぶつじ等とう事ごと
  • 第だい三さん条じょう - 諸国しょこく守護しゅご人じん奉行ぶぎょう事ごと
  • 第だい四よん条じょう - 同どう守護しゅご人じん不ふ申さる事由じゆう、沒收ぼっしゅう罪科つみとが跡あと事ごと
  • 第だい五ご条じょう - 諸國しょこく地頭じとう令れい抑留よくりゅう年貢ねんぐ所しょ當事とうじ
  • 第だい六ろく条じょう - 國司こくし領家りょうけ成敗せいばい不ふ及關東かんとう御ご口くち入いれ事ごと
  • 第だい七なな条じょう - 所領しょりょう之の事こと
  • 第だい八はち条じょう - 土地とち占有せんゆう之の事こと
  • 第だい九きゅう条じょう - 謀反むほん人事じんじ
  • 第だい十じゅう条じょう - 殺害さつがい刃傷にんじょう罪科つみとが事ごと
  • 第だい十じゅう一いち条じょう - 依よ夫おっと罪過ざいか、妻女さいじょ所領しょりょう沒收ぼっしゅう否ひ事ごと
  • 第だい十じゅう二に条じょう - 悪口わるぐち咎とがめ事ごと
  • 第だい十じゅう三さん条じょう - 殴なぐ人ひと咎とがめ事ごと
  • 第だい十じゅう四よん条じょう - 代官だいかん罪過ざいか懸かか主人しゅじん否ひ事ごと
  • 第だい十じゅう五ご条じょう - 謀はかりごと書しょ罪科つみとが事ごと
  • 第だい十じゅう六ろく条じょう - 承うけたまわ久ひさし兵亂へいらん時じ沒收ぼっしゅう地ち事ごと
  • 第だい十じゅう七なな条じょう - 同時どうじ合戰かっせん罪過ざいか父子ふし各かく別べつ事ごと
  • 第だい十じゅう八はち条じょう - 讓與じょうよ所領しょりょう於女子じょし後ご、依よ有ゆう不和ふわ儀ぎ、其親悔還否ひ事ごと
  • 第だい十じゅう九きゅう条じょう - 不ふ論ろん親疎しんそ被ひ眷養輩やから、違背いはい本ほん主しゅ子孫しそん事ごと
  • 第だい二に十じゅう条じょう - 得とく讓状ゆずりじょう後ご、其子先さき于父母ちちはは令れい死去しきょ跡あと事ごと
  • 第だい二に十じゅう一いち条じょう - 妻妾さいしょう得夫とくお讓ゆずる、被ひ離別りべつ後ご、領りょう知ち彼かれ所領しょりょう否ひ事ごと
  • 第だい二に十じゅう二に条じょう - 父母ちちはは所領しょりょう配分はいぶん時じ、雖非義絶ぎぜつ、不ふ讓與じょうよ成人せいじん子息しそく事ごと
  • 第だい二に十じゅう三さん条じょう - 女人にょにん養子ようし事ごと
  • 第だい二に十じゅう四よん条じょう - 讓ゆずる得夫とくお所領しょりょう後家ごけ、令れい改あらため嫁よめ事ごと
  • 第だい二に十じゅう五ご条じょう - 關東かんとう御家人ごけにん以月卿雲客げっけいうんかく爲ため婿むこ君くん、依よ讓ゆずる所領しょりょう、公事こうじ足あし減少げんしょう事ごと
  • 第だい二に十じゅう六ろく条じょう - 讓ゆずる所領しょりょう於子息いき、給きゅう安堵あんど御下おしも文ぶん之これ後ご、悔還其領、讓與じょうよ他た子息しそく事ごと
  • 第だい二に十じゅう七なな条じょう - 未み處分しょぶん跡あと事ごと
  • 第だい二に十じゅう八はち条じょう - 搆虚言きょげん致讒訴ざんそ事ごと
  • 第だい二に十じゅう九きゅう条じょう - 閣かく本ほん奉行ぶぎょう人じん、付づけ別人べつじん企くわだて訴訟そしょう事ごと
  • 第だい三さん十じゅう条じょう - 遂とげ問とい註輩、不ふ相あい待まち御ご成敗せいばい、執と進すすむ權門けんもん書状しょじょう事ごと
  • 第だい三さん十じゅう一いち条じょう - 依よ無む道理どうり不ふ蒙こうむ御ご裁許さいきょ輩やから、爲ため奉行ぶぎょう人じん偏頗へんぱ由よし訴申事ごと
  • 第だい三さん十じゅう二に条じょう - 隱かくれ置おけ盜賊とうぞく惡黨あくとう於所領内りょうない事ごと
  • 第だい三さん十じゅう三さん条じょう - 強つよし竊二に盜とう罪科つみとが事ごと付づけ放火ほうか人事じんじ
  • 第だい三さん十じゅう四よん条じょう - 密みつ懷ふところ他人たにん妻つま罪科つみとが事ごと
  • 第だい三さん十じゅう五ご条じょう - 雖給度々どど召文不ふ參上さんじょう科か事ごと
  • 第だい三さん十じゅう六ろく条じょう - 改あらため舊きゅう境さかい、致相論ろん事ごと
  • 第だい三さん十じゅう七なな条じょう - 關東かんとう御家人ごけにん申さる京都きょうと、望もち補ほ傍はた官かん所領しょりょう上司じょうし事ごと
  • 第だい三さん十じゅう八はち条じょう - 惣地そうち頭あたま押妨所領しょりょう内ない名主なぬし職しょく事ごと
  • 第だい三さん十じゅう九きゅう条じょう - 官爵かんしゃく所望しょもう輩やから、申請しんせい關東かんとう御ご一いち行事ぎょうじ
  • 第だい四よん十じゅう条じょう - 鎌倉かまくら中ちゅう僧徒そうと、恣ほしいまま諍いさかい官位かんい事ごと
  • 第だい四よん十じゅう一いち条じょう - 奴婢ぬひ雜ざつ人事じんじ
  • 第だい四よん十じゅう二に条じょう - 百姓ひゃくしょう迯散時じ、稱しょう逃毀令れい損亡そんもう事ごと
  • 第だい四よん十じゅう三さん条じょう - 稱たたえ當とう知行ちぎょう掠かすめ給きゅう他人たにん所領しょりょう、貪むさぼ取ど所出しょしゅつ物事ものごと
  • 第だい四よん十じゅう四よん条じょう - 傍輩ほうばい罪過ざいか未み斷だん以前いぜん、競きおい望もち彼かれ所帶じょたい事ごと
  • 第だい四よん十じゅう五ご条じょう - 罪過ざいか由よし披露ひろう時じ、不ふ被ひ糺ただす決けつ改あらため替がえ所しょ職しょく事ごと
  • 第だい四よん十じゅう六ろく条じょう - 所領しょりょう得とく替がえ時じ、前ぜん司つかさ新司しんじ沙汰さた事ごと
  • 第だい四よん十じゅう七なな条じょう - 以不知行ちぎょう所領しょりょう文書ぶんしょ、寄附きふ他人事たにんごと＜付づけ、以名主なぬし職しょく不ふ相あい觸さわ本所ほんじょ、寄進きしん權門けんもん事ごと＞
  • 第だい四よん十じゅう八はち条じょう - 賣買ばいばい所しょ領事りょうじ
  • 第だい四よん十じゅう九きゅう条じょう - 兩方りょうほう證文しょうもん理非りひ顯然けんぜん時じ、擬なずらえ遂とげ對決たいけつ事ごと
  • 第だい五ご十じゅう条じょう - 狼藉ろうぜき時じ、不知ふち子細しさい出向しゅっこう其庭輩やから事ごと
  • 第だい五ご十じゅう一いち条じょう - 帶おび問とい状じょう御敎書みぎょうしょ、致狼藉事
  • 「起請きしょう」
  • 「北条ほうじょう泰やすし時じ消息しょうそく」

不備ふびの補充ほじゅうや新しん事態じたいに対応たいおうするため、折おりに触ふれて追加ついか法ほうが制定せいていされ、これを「式目しきもく追加ついか」または単たんに「追加ついか」などと称しょうした。泰たい時じ消息しょうそく文ぶんには「これにもれたる事こと候こうはゞ、追おうて記しるし加かへらるべきにて候こう」[5]として、元もとより追加ついか法ほうの必要ひつよう性せいを示唆しさしている。鎌倉かまくら・室町むろまち時代じだいの奉行ぶぎょう人じんは必要ひつような追加ついか法ほうを蒐集しゅうしゅうし、『新編しんぺん追加ついか』をはじめ、何なん本ほんもの追加ついか法ほうの編纂へんさんがなされて現在げんざいに伝つたわっている。これら諸しょ本ほんが佐藤さとう進一しんいち・池内いけうち義よし資し編へん『中世ちゅうせい法制ほうせい史料しりょう集しゅう』第だい1巻かんで具つぶさに対校たいこうされている。

内容ないよう[編集へんしゅう]

鎌倉かまくら幕府ばくふの基本きほん法ほうで、日本にっぽん最初さいしょの武家ぶけ法ほうである。頼朝よりとも以来いらいの先例せんれい（「右みぎ大将たいしょう家かの例れい」）や武家ぶけ社会しゃかいの道理どうりを基準きじゅんとし、御家人ごけにんの権利けんり義務ぎむや所領しょりょう相続そうぞくの規定きていが多おおい。「悔返権けん」・「年紀としのり法ほう」の規定きていは武家ぶけ独自どくじの規定きていとされている（異説いせつもある）。ただし、式目しきもくの適用てきようは武家ぶけ社会しゃかいに限かぎられ、朝廷ちょうていの支配しはい下かでは公家くげ法ほう、荘園しょうえん領主りょうしゅの下したでは本所ほんじょ法ほうが効力こうりょくを持もった。反対はんたいに幕府ばくふの支配しはい下かでは公家くげ法ほう・本所ほんじょ法ほうは適用てきようされないものとして拒絶きょぜつしている。また、頼朝よりとも以来いらいの先例せんれい・武家ぶけ社会しゃかいの道理どうりを盾たてにして律令りつりょう法ほう・公家くげ法ほうと異ことなる規定きてい、時ときにはこれと反はんする規定きていを積極せっきょく的てき・かつ自立じりつ的てきに制定せいていしている点てんを評価ひょうかして、御ご成敗せいばい式目しきもくを幕府ばくふ法ほうの独立どくりつを宣言せんげんしたものとする解釈かいしゃくが通説つうせつとなっている。

ただし、こうした考かんがえ方かたに対たいして批判ひはんもある。新田にった一郎いちろうは頼朝よりとも以来いらいの先例せんれいや武家ぶけ社会しゃかいの道理どうりを記しるした部分ぶぶん、特とくに律令りつりょう法ほう・公家くげ法ほうと相違そうい・対立たいりつする部分ぶぶんの多おおくは直接ちょくせつ条文じょうぶんとしては盛もり込こまれず、細目さいもくや例外れいがい事項じこうなどの形式けいしきによって触ふれられており、一方いっぽうで条文じょうぶん本文ほんぶんに記しるされている幕府ばくふ関係かんけい以外いがいの事項じこうの多おおくは鎌倉かまくら時代じだい初期しょきの公家くげ法ほうに依拠いきょする部分ぶぶんが多おおいとする。また編纂へんさんに加くわわったのは六ろく波は羅ら探題たんだいを務つとめた泰やすし時じ・時じ房ぼうや公家くげ法ほうに通つうじた中級ちゅうきゅう貴族きぞくやその子孫しそんである御家人ごけにんであった点てんも指摘してきしている。これは、当時とうじの武士ぶし（特とくに御家人ごけにん）が巻まき込こまれやすかったのは、地頭じとうとして治おさめる荘園しょうえんにおける荘園しょうえん領主りょうしゅである公家くげとの揉もめごとであり、こうした揉もめごとから武士ぶしを救すくうには公家くげ法ほうを中心ちゅうしんに動うごいていた当時とうじの法ほう秩序ちつじょの概要がいようを平易へいいに説といて理解りかいさせ、武家ぶけ社会しゃかいとの調和ちょうわを図はかるために御ご成敗せいばい式目しきもくは制定せいていされたもので、武家ぶけ法ほうの体系たいけい化かや武家ぶけ法ほうに基もとづく新しん秩序ちつじょ形成けいせいを目的もくてきとしたわけではなく、少すくなくても公家くげ法ほうの存在そんざいを前提ぜんていとし、かつ形式けいしき的てきな模範もはん・素材そざいであったとしている。また、鎌倉かまくら時代じだい後期こうき以後いごに公家くげ社会しゃかいにも受容じゅようされた背景はいけいには幕府ばくふ・朝廷ちょうていともに徳政とくせいを通つうじた徳治とくじ主義しゅぎの実現じつげんという共通きょうつうした政治せいじ目標もくひょうが存在そんざいしたことも指摘してきしている。

長又ながまた高だか夫おっとは各かく条文じょうぶんを検討けんとうして、一部いちぶの条文じょうぶんには明あきらかに律令りつりょう法ほうや公家くげ法ほうとは解釈かいしゃくが異ことなるあるいは相反あいはんする条文じょうぶんがあり、それについては儒教じゅきょう倫理りんりや右みぎ大将たいしょう家か（源みなもと頼朝よりとも）の先例せんれい、当時とうじの社会しゃかいで広ひろく知しられていた判例はんれいや慣習かんしゅう法ほうなどを根拠こんきょとして掲かかげて、なるべく朝廷ちょうていの反発はんぱつや異論いろんを収おさめることに努つとめている[6]。

所有しょゆうの規定きていが多おおいのが特徴とくちょうである。民法みんぽう162条じょうの「20年ねん占有せんゆう」規定きてい（取得しゅとく時効じこう）の源みなもとを御ご成敗せいばい式目しきもくに求もとめる見解けんかいを佐藤さとう進一しんいちは示しめしている[7]。ただし、民法みんぽう典てんの起草きそう委員いいんの一人ひとりである梅うめ謙次郎けんじろうによれば、この規定きていはボアソナード起草きそうの旧きゅう民法みんぽうでは当時とうじの立法りっぽう例れいに則そくして30年ねんとなっていたものを、交通こうつうの便びんが開あけたことにより遠とおくにある財産ざいさんの把握はあくが容易よういになったこと、取引とりひきが頻繁ひんぱんにされることにより権利けんりの確定かくていを早期そうきに行おこなう必要ひつようがあることから20年ねんに短縮たんしゅくしたものと説明せつめいされており、日本にっぽんの旧来きゅうらいの法ほうを参考さんこうにしたとは述のべていない。

泰たい時じ消息しょうそく文ぶんにおいて、武家ぶけや庶民しょみんは律令りつりょうを知しらない者ものが多おおいため、内容ないようを熟知じゅくちした役人やくにんが恣意しい的てきに運用うんようしていることから、漢字かんじが読よめる者ものが少すくない武家ぶけに配慮はいりょした内容ないようであると記しるしている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ “御ご成敗せいばい式目しきもく（ごせいばいしきもく） の意味いみ”. goo国語こくご辞書じしょ. 2020年ねん7月がつ2日にち閲覧えつらん。
  2. ^ 貞さだ永なが元年がんねん8月がつ8日にち付づけと同年どうねん9月がつ11日にち付づけ
  3. ^ 久保くぼ尾お俊郎としお、KubooToshiro「『御ご成敗せいばい式目しきもく』の出版しゅっぱんと小槻おおづく伊い治ち」『早稲田大学わせだだいがく図書館としょかん紀要きよう』第だい38巻かん、早稲田大学わせだだいがく図書館としょかん、1993年ねん、ISSN 0289-2502。 
  4. ^ 長又ながまた、2017年ねん、P36-37・140-149
  5. ^ 石井いしい進すすむ他た編へん『中世ちゅうせい政治せいじ社会しゃかい思想しそう上じょう』（日本にっぽん思想しそう大系たいけい21、岩波書店いわなみしょてん）40頁ぺーじ。
  6. ^ 長又ながまた、2017年ねん、P33-35・120-132
  7. ^ 『南北なんぼく朝あさの動乱どうらん』　中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ、1965年ねん、p.20

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 佐藤さとう進一しんいち、池内いけうち義よし資し編へん 『中世ちゅうせい法制ほうせい史料しりょう集しゅう』 岩波書店いわなみしょてん
  • 上うえ横手よこて雅まさ敬たかし「御ご成敗せいばい式目しきもく」『国史こくし大だい辞典じてん 5』 吉川弘文館よしかわこうぶんかん
  • 上うえ横手よこて雅まさ敬たかし「新編しんぺん追加ついか」『国史こくし大だい辞典じてん 7』 吉川弘文館よしかわこうぶんかん
  • 笠松かさまつ宏ひろし至いたり「御ご成敗せいばい式目しきもく」『日本にっぽん史し大だい事典じてん 3』 平凡社へいぼんしゃ
  • 高橋たかはし典幸のりゆき「御ご成敗せいばい式目しきもく」/新田にった一郎いちろう「式目しきもく」（『歴史れきし学がく事典じてん 9 法ほうと秩序ちつじょ』） 弘文こうぶん堂どう
  • 河内かわうち祥さち輔「御ご成敗せいばい式目しきもく」『日本にっぽん歴史れきし大だい事典じてん 2』 小学館しょうがくかん
  • 長又ながまた高だか夫おっと『御ご成敗せいばい式目しきもく編纂へんさんの基礎きそ的てき研究けんきゅう』（汲古書院しょいん、2017年ねん）ISBN 978-4-7629-4218-1
  • 山本やまもと七なな平たいら『日本にっぽん的てき革命かくめいの哲学てつがく―日本人にっぽんじんを動うごかす原理げんり 』(PHP文庫ぶんこ) ISBN 978-4569564630
  • 佐藤さとう雄基ゆうき『御ご成敗せいばい式目しきもく―鎌倉かまくら武士ぶしの法ほうと生活せいかつ』（中公新書ちゅうこうしんしょ、2023年ねん）

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

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