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こころざしかい小説しょうせつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

こころざしかい小説しょうせつ(しかいしょうせつ)は、おも六朝りくちょう時代じだい中国ちゅうごくかれたかいはなしのことで、どう時期じきこころざしじん小説しょうせつ(しじんしょうせつ)とともにのち小説しょうせつ原型げんけいとなり、作風さくふうとうだい伝奇でんき小説しょうせつがれた。「こころざし」は「」とおなじでこころざしかいは「かいしるす」の意味いみ[1][2]小説しょうせついちジャンルとして、六朝りくちょうからきよしにいたるまで、おびただしいかず奇談きだん怪談かいだんかれた[1]

発生はっせい伝承でんしょう

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中国ちゅうごくにおいて古代こだいから歴史れきししょ編纂へんさん重要じゅうよう仕事しごととされてさかんにおこなわれたが、市井しせいうわさばなし名人めいじん出来事できごと不思議ふしぎはなしなどはそこには記載きさいされることはまれで、それらは口伝くちづたえにつたえられるものとなっていた。はたかんなどの宮廷きゅうていでは、ゆう倡、俳優はいゆうといった娯楽ごらくのための職業しょくぎょうじんがおり、芸能げいのうとともに民間みんかん話題わだいをすることもあった。こうかんすえになると、曹丕かいはなしあつめた『れつつて』をへんしたとつたえられ、六朝りくちょうあずますすむではたからさがせかみ[3]』をあらわした。これらはこころざしかい小説しょうせつばれ、民間みんかん説話せつわ数多かずおおふくまれている。

一方いっぽうで、りゅうそうりゅうよしけい古今ここん人物じんぶつ逸話いつわあつめた『せつ[4]』をあらわし、20世紀せいきになってこのような作品さくひんこころざしじん小説しょうせつぶようになった。これらのあとろくあさ時代じだい以降いこう多数たすうこころざしかい小説しょうせつこころざしじん小説しょうせつかれた。

この発生はっせい背景はいけいには、たかしすすむ以後いごに「竹林ちくりんななけん[5]」に象徴しょうちょうされる知識ちしき階級かいきゅう人々ひとびとあつまって談論だんろんする清談せいだん風潮ふうちょうがあり、その哲学てつがくてき議論ぎろんなかでの、宇宙うちゅう神秘しんぴ人間にんげん存在そんざい根源こんげんといった話題わだいに、かい出来事できごと例証れいしょうとして提供ていきょうされた。またこの時代じだい当時とうじ政治せいじてき動乱どうらんを、流行りゅうこうしていたぎょうせつもとづいて解釈かいしゃくしたり、仏教ぶっきょう道教どうきょう思想しそう浸透しんとうともなって、輪廻りんね転生てんせい物語ものがたりや、仙人せんにん道士どうしじゅつ話題わだいひろめられており、仏教ぶっきょう道教どうきょう信者しんじゃこころざしかい小説しょうせつ形式けいしき書物しょもつつくした。六朝りくちょう末期まっきには、仏教ぶっきょう媒介ばいかいとしてつたわったインド説話せつわもとにしたとおもわれる作品さくひんもある。

これらのこころざしかい小説しょうせつこころざしじん小説しょうせつは、見聞みききしたはなしをそのままきとめたもので、素朴そぼく文体ぶんたいで、ながさもみじかかったが、とうだい伝奇でんき小説しょうせつでは著者ちょしゃ創作そうさく情景じょうけい描写びょうしゃおおきな位置いちめるようになった。

そうだいにも伝奇でんき小説しょうせつがれたが、過去かこ史料しりょう収集しゅうしゅうという観点かんてんこころざしかい回帰かいきてき作品さくひんまれ、ひろしえびすけんこころざし[6]』などがある。

六朝りくちょう時代じだい原本げんぽん現代げんだいにはまったくのこっていない。これらはそうだいふとしむねめいじて編纂へんさんした『太平たいへいこう』で収集しゅうしゅうされてのこった。またとうだいにかけてつくられた類書るいしょである『芸文げいぶん類聚るいじゅう』『きたどうしょ』『初学しょがく』などに、こころざしかい小説しょうせつこころざしじん小説しょうせつからの採録さいろくがある。『太平たいへいこう』とどう時期じき類書るいしょ太平たいへい御覧ごらん[7]』にもこころざしかいこころざしじん小説しょうせつからの部分ぶぶん転載てんさいおおい。みなみそう慥 『るいせつ』や、あきらとうそうただしせつ[8]でも収集しゅうしゅうされ、あきらきよしにはこころざしかい伝奇でんき叢書そうしょかたちで『あさ小説しょうせつ』『唐人とうじんせつ薈』『りゅうたけし秘書ひしょ』『秘書ひしょじゅういちしゅ』などが印刷いんさつ出版しゅっぱんされ、日本にっぽんでも江戸えど時代じだい以降いこうひろまれた。なかでもあかりの顧元けい中国語ちゅうごくごばん)『顧氏ぶんぼう小説しょうせつ』、もうすすむ逮秘しょ[9]きよしだいに『がく討原』に改訂かいてい)が後年こうねんにも刊行かんこうされている。ただしこれらのテキストは、原本げんぽんのままでなく後人こうじんくわえられている可能かのうせいたかい。

小説しょうせつでの位置付いちづ

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そう』では、つまらぬせつ、些末な議論ぎろんといったものを「小説しょうせつ」とび、こうかんはんかたは『漢書かんしょ』の「芸文げいぶんこころざし」で諸子しょしひゃくいえ分類ぶんるい思想しそうてきでない「街談がいだんちまたみち聴途せつ」(うわさばなしばなし程度ていど)の著作ちょさくしゃを「小説しょうせつ」とした。そのすうえ、雑多ざったになっていた小説しょうせつるいあかりえびすおう麟がろくるいけた。そのひとつにこころざしかいがあり、『さがせかみ[10]、『じゅつ』、『せんしつこころざし』、『とりざつまないた』などがげられている[11][12]。この後裔こうえいとして六朝りくちょう時代じだいこころざしじん小説しょうせつ小説しょうせつび、からそう時代じだいこころざしかいのことをこころざしかい小説しょうせつぶようになった。この経緯けいいから、『れつつて』は成立せいりつ不明ふめいてんもあるため、『さがせかみ』が現代げんだいてき意味いみでの中国ちゅうごく小説しょうせつとされる[13]

ただしそうはんかたの「小説しょうせつ」は議論ぎろんのあるものをしているが、こころざしかい小説しょうせつこころざしじん小説しょうせつは、面白おもしろはなしではあるが作者さくしゃ主張しゅちょうふくまれないことがおおい。こころざしかい小説しょうせつ伝奇でんき小説しょうせつ文語ぶんごかれた文言もんごん小説しょうせつ[14]であるが、そうからあかり時代じだいにかけてはこれらをもとにしたかたもの発展はってんし、やがて白話はくわ口語こうご)でかれた『みず滸伝』『金瓶かなかめうめ』などの通俗つうぞく小説しょうせつへとつづいていく。[15][16]

代表だいひょうてき作品さくひん

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ちゅう出典しゅってん 

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  1. ^ a b 中国ちゅうごく怪奇かいき小説しょうせつ (そのいち蔭山かげやま達弥たつや 、Gaidai bibliotheca : 図書館としょかんほう(177)中国ちゅうごくのほんのはなし(37)(京都外国語大学きょうとがいこくごだいがく 2007-07-09) p.13
  2. ^ 佐野さの誠子せいこかいこころざ六朝りくちょうこころざしかい誕生たんじょう展開てんかい』2020ねん 名古屋大学出版会なごやだいがくしゅっぱんかい 1ぺーじISBN 978-4815809836
  3. ^ 中国ちゅうごく古典こてん小説しょうせつせん. 明治めいじ書院しょいん. (2006ねん11月25にち) 
  4. ^ せつ』を改編かいへんした『せつ新語しんご』が残存ざんそんしている。
  5. ^ 魯迅ろじん評論ひょうろんしゅう. 岩波いわなみ文庫ぶんこ. (1981) 
  6. ^ 中国ちゅうごく古典こてん小説しょうせつせん. 明治めいじ書院しょいん. (2007ねん03がつ20日はつか) 
  7. ^ 太平たいへい御覧ごらん ぜん4. 中華ちゅうかしょきょく. (2016) 
  8. ^ 孫作まごさくあきら (1889). “滄螺しゅう”. あわしつ叢書そうしょ 6かん. 
  9. ^ あかり汲古かくほんじゅうさんけい注疏ちゅうそ ぜん40さつ. 文物ぶんぶつ出版しゅっぱんしゃ. (2015ねん02がつ) 
  10. ^ 日本語にほんごやくは、竹田たけだあきら わけさがせかみ』がある。 平凡社へいぼんしゃ東洋文庫とうようぶんこ、1964ねん ISBN 978-4256180105平凡社へいぼんしゃライブラリー、2000ねん ISBN 978-4582763225
  11. ^ 魯迅ろじん しる 中島なかじま長文ちょうぶん 訳注やくちゅう中国ちゅうごく小説しょうせつりゃく 1』東洋文庫とうようぶんこ 618 平凡社へいぼんしゃ 1997ねん p.25 。
  12. ^ 日本語にほんごやくは、前野まえのただしあきら へんやく中国ちゅうごく古典こてん文学ぶんがく大系たいけい24 ろくあさとうそう小説しょうせつせん』1968ねん 平凡社へいぼんしゃ ISBN 978-4582312249
  13. ^ 前野まえのただしあきら へんやく中国ちゅうごく古典こてん文学ぶんがく大系たいけい』 24、p.456 。
  14. ^ 文言もんごん小説しょうせつとは、そうだい以後いご中国ちゅうごく小説しょうせつうえで、おおきな比重ひじゅうめてはいなかったために、形態けいたいめいあたえられていなかったこの分野ぶんやたいし、前野まえのただしあきらかりけた呼称こしょうである。平凡社へいぼんしゃ 中国ちゅうごく古典こてん文学ぶんがく大系たいけい 42 『閲微草堂そうどう筆記ひっき ; かたり ; じゅつ ; あきとうくさむらばなし ; 諧鐸 ; みみしょくろく』 1971ねんISBN 978-4582312423解説かいせつ p.503 。
  15. ^ 中国ちゅうごく古典こてん文学ぶんがく大系たいけい40、41「やなぎひとしこころざしこと. 平凡社へいぼんしゃ. (1970-71ねん) 
  16. ^ 中国ちゅうごく古典こてん文学ぶんがく大系たいけい42「閲微草堂そうどう筆記ひっき. 平凡社へいぼんしゃ. (1971ねん) 
  17. ^ 前野まえのただしあきら へんやく中国ちゅうごく古典こてん文学ぶんがく大系たいけい 24、p.455 。
  18. ^ 前野まえのただしあきら へんやく中国ちゅうごく古典こてん文学ぶんがく大系たいけい 24、p.468-469 。同書どうしょ p.3-39 に日本語にほんごやく
  19. ^ 日本語にほんごやくは、前野まえのただしあきら へんやく中国ちゅうごく古典こてん文学ぶんがく大系たいけい 24 p.39-72 がある。ウィキソースのロゴ 中国語ちゅうごくごばんウィキソースほん記事きじ関連かんれんした原文げんぶんがあります:えん
  20. ^ 前野まえのただしあきら へんやく中国ちゅうごく古典こてん文学ぶんがく大系たいけい 24、p.469-470 。同書どうしょ p.72-85 に日本語にほんごやく
  21. ^ 前野まえのただしあきら へんやく中国ちゅうごく古典こてん文学ぶんがく大系たいけい 24、p.470 。同書どうしょ p.86-100 に日本語にほんごやくウィキソースのロゴ 中国語ちゅうごくごばんウィキソースほん記事きじ関連かんれんした原文げんぶんがあります:かんたけ故事こじ
  22. ^ 前野まえのただしあきら へんやく中国ちゅうごく古典こてん文学ぶんがく大系たいけい 24、p.462 。
  23. ^ a b c これらはしんだい作品さくひんであり、まさしくは「こころざしかい小説しょうせつ」ではなく、魯迅ろじんのいう「清之きよゆきなずらえすすむから小說しょうせつ及其支流しりゅう」である。(『中国ちゅうごく小説しょうせつりゃくだい22へん標題ひょうだい ウィキソースには、中國ちゅうごく小說しょうせつりゃく/だいじゅうへん原文げんぶんがあります。

関連かんれん項目こうもく

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