忘却ぼうきゃく (曲きょく)

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「忘却ぼうきゃく」
宇多田うただヒカル featuring KOHHの楽曲がっきょく
収録しゅうろくアルバム	『Fantome』
リリース	2016年ねん9月がつ28日にち
録音ろくおん	RAK Studios 文化ぶんか村むらスタジオ
ジャンル	J-POP 前衛ぜんえい音楽おんがく オルタナティブ・ヒップホップ インダストリアル・ヒップホップ
時間じかん	5分ふん5秒びょう
レーベル	UNIVERSAL MUSIC・Virgin Music
作詞さくし者しゃ	宇多田うただヒカル 千葉ちば雄喜ゆうき
作曲さっきょく者しゃ	宇多田うただヒカル 千葉ちば雄喜ゆうき
『Fantome』 収録しゅうろく曲きょく 荒野あらのの狼おおかみ （8） 忘却ぼうきゃく featuring KOHH （9） 人生じんせい最高さいこうの日ひ （10）

「忘却ぼうきゃく」（ぼうきゃく）は、宇多田うただヒカルの楽曲がっきょくで、KOHHとのコラボレーション・ソングである。2016年ねん9月がつ28日にちにUNIVERSAL MUSICのVirgin Musicより発売はつばいされた宇多田うただの6枚まい目めのオリジナル・アルバム『Fantome』に収録しゅうろくされた。

背景はいけい

宇多田うただは2010年ねんより「人間にんげん活動かつどう」として音楽おんがく活動かつどうを休業きゅうぎょうしていたが、2016年ねん4月がつに「花束はなたばを君きみに」と「真夏まなつの通とおり雨あめ」をリリースして活動かつどうを再開さいかい。一方いっぽうのKOHHは2016年ねん2月がつに「SPACE SHOWER MUSIC AWARDS」で「BEST HIP HOP ARTIST」を受賞じゅしょうし、同年どうねん、Frank Oceanの楽曲がっきょく「Nikes」のCDマガジンバージョンに客演きゃくえんしていた。2016年ねん8月がつ9日にちに宇多田うただが復帰ふっき作さくとして9月にリリースするニューアルバム『Fantome』の収録しゅうろく曲きょくが発表はっぴょうされた。9月16日にちには『Fantome』に参加さんかするアーティストも発表はっぴょうされ、そこで初はじめてKOHHが「忘却ぼうきゃく」にフィーチャーされたことが明あきらかになった。

「忘却ぼうきゃく」は、元々もともとはインストで収録しゅうろくする予定よていだったが、スタッフからラップを入いれることを提案ていあんされ、宇多田うただが知人ちじんに教おそわってからファンだったというKOHHにオファーすることになった。なお、KOHHもまた宇多田うただのファンで、2012年ねんのストリートアルバム『YELLOW T△PE』で、宇多田うただの楽曲がっきょく「SAKURAドロップス」をサンプリングし、ミュージックビデオで同おなじく宇多田うただの楽曲がっきょくである「Goodbye Happiness」のミュージックビデオをオマージュしていた。また、宇多田うただからオファーが入はいる2週間しゅうかん前まえには、「いま日本にっぽんで誰だれとでもやれるならだれとやる？」と聞きかれ、「宇多田うただヒカルさんとTaka」と答こたえていたという。

宇多田うただはKOHHと初はじめて会あった瞬間しゅんかんから親和しんわ性せいを感かんじていたという。また、KOHHもNHKで放送ほうそうされたドキュメンタリー番組ばんぐみで、初はじめて宇多田うただと会あった時ときの印象いんしょうを聴きかれ、次つぎのように語かたった。

「なんか、普通ふつうでした。『あ、俺おれだ』みたいな。『あ、俺おれとおんなじだ』みたいな」

また、緊張きんちょうすることもなく気楽きらくでいられたという。

制作せいさく

「忘却ぼうきゃく」のトラック自体じたいは2010、11年ねんころから存在そんざいしていたという。

KOHHが客演きゃくえんすることが決きまると、制作せいさくに際さいして、まずKOHHがロンドンにある宇多田うただの自宅じたくにを訪おとずれた。初日しょにちは制作せいさくには取とり掛かからずに、食事しょくじに行いき、酒さけを交かわしながらお互たがいが最近さいきん聴きいていた音楽おんがくを聴きかせ合あったという。制作せいさく段階だんかいでは、まず宇多田うただは自分じぶんの歌うたうパートをKOHHに聴きかせた後のちに「忘却ぼうきゃく」というタイトルの意図いとや自分じぶんの死生しせい観かん、"忘却ぼうきゃく"と"記憶きおく"について自分じぶんの思おもうことを、KOHHに話はなした。そのあとに、KOHHが幼おさないころに父親ちちおやを亡なくしていることや、いろいろ生おい立たちや親おやとの関係かんけいを互たがいに話はなし合あったという。

宇多田うただは、長ながいラップパートが好すきだということでKOHHに曲きょくの冒頭ぼうとう1分ふん30秒びょうを丸まるごと任まかせていた。そして、3日にちほどしてKOHHが自分じぶんのヴァースの歌詞かしを完成かんせいさせ、その後ご2回かいほど修正しゅうせいを重かさね、完成かんせいした。曲きょくの最後さいごに登場とうじょうするオルガンは、KOHHからの提案ていあんだという。KOHHの歌うた入いれのレコーディングは宇多田うただ自身じしんが担当たんとうした。宇多田うただの楽曲がっきょくの歌詞かしに宇多田うただ以外いがいの誰だれかによる言葉ことばが入はいるのはこの曲きょくが初はじめてだった。このことに関かんして、宇多田うただは「他人たにんの言葉ことばが自分じぶんの曲きょくに混まざることも初はじめてでしたが、自然しぜんと真まん中なかで落おち合あえました。」と語かたっている。

音楽おんがく性せい

イントロはノイズに始はじまり、心臓しんぞうの音おとが重おもく鳴なる中なかで、アンビエント的てきなストリングスが楽曲がっきょく全体ぜんたいを覆おおい尽つくしている。ライターのimdkmは、著書ちょしょ「リズムから考かんがえるJ-POP史し」で、ほかの楽曲がっきょくでも見みられるKOHHの独特どくとくな譜ふ割わりが「忘却ぼうきゃく」でも現あらわれていると指摘してきしている。

歌詞かし

宇多田うただはインタビューで、「忘却ぼうきゃく」の歌詞かしについて、「生いき方かたを考かんがえることは死しに方かたを考かんがえることと同義どうぎ」「これまでの人生じんせいを振ふり返かえりながらこれから向むかうところに思おもいを馳はせた」とコメント。また、"記憶きおく"と"忘却ぼうきゃく"について、次つぎのように語かたった。

「記憶きおくって邪魔じゃまをするじゃないですか。経験けいけんしたことによってかなり湾曲わんきょくした解釈かいしゃくが残のこってしまったり、そこにとらわれたり。」

「私わたしがかっこいいと思おもう生いきざまは、そういうものにすがってたくさん大事だいじに鞄かばんを持もつことじゃなくて、死しぬときは手てぶらがベストというイメージなんです。」

評価ひょうか

「忘却ぼうきゃく」について、音楽おんがく評論ひょうろん家かの宗像むねかた明あきら将しょうは、「生いきていく中なかで抱いだく恐怖きょうふや、死しへの想像そうぞうを歌うたう楽曲がっきょくにふさわしい」「『Fantôme』というアルバムにおける最大さいだいの問題もんだい作さくである」とコメント。

ライターの泉いずみ智さとしは「ele-king」の記事きじにて、同どう曲きょくの、精神せいしんの闇やみを漂ただようようなトラックの上うえに乗のるKOHHのヴァースが、スピリチュアル・ミュージックとしてのラップであるという点てんで、日米にちべいのヒップホップにおいて非常ひじょうに特異とくい的てきであると指摘してきした。

音楽おんがくプロデューサーの蔦谷つたや好こう位置いちは、『関せきジャム 完全かんぜん燃もえSHOW』に出演しゅつえんした際さい、「忘却ぼうきゃく」について、「国民こくみん的てきスターのトップである宇多田うただヒカルがKOHHをフックアップしている」と指摘してき。また、「アルバム（『Fantome』）の中なかで一番いちばん好すきな曲きょく」と語かたり、KOHHについては、「立たってなくても佇たたずまいが見みえる」「人間にんげん力りょくの強つよさを音楽おんがくや声こえから感かんじる」とコメントした。

受賞じゅしょう

ミュージックビデオ

• MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN

  BEST COLLABORATION VIDEO

披露ひろう

2016年ねん12月9日にちに行おこなわれたネットイベント「30代だいはほどほど。」にKOHHも登場とうじょうし、宇多田うただとともに「忘却ぼうきゃく」を披露ひろうした。曲きょくのアウトロから、朝川あさかわ朋之ともゆきが奏かなでるハープの音色ねいろに合あわせ、そのままシームレスに「人魚にんぎょ」へと移行いこう。パフォーマンスの後のちには、宇多田うただのデビュー18年ねん目めを祝いわうサプライズのケーキが、KOHHの事務所じむしょから送おくられた。

ミュージックビデオ

宇多田うただが34歳さいの誕生たんじょう日びを迎むかえた2017年ねん1月がつ19日にち、「忘却ぼうきゃく featuring KOHH」のミュージックビデオがYouTubeにてフルサイズで公開こうかいされた。監督かんとくを務つとめたのは、yahyelのメンバーであり、Yogee New WavesやSuchmosのMVを手てがける山田やまだ健けん人じん。初はつのメジャーアーティスト作品さくひんへの参加さんかとなった。

山田やまだは、「忘却ぼうきゃく」の歌詞かしについて考かんがえた時とき、「この曲きょくはスゴすぎる、生いき方かただ、人生じんせいだ」と思おもったという。それゆえに、「シンプルな企画きかくに対たいする恐怖きょうふ」はなく、むしろ「『彼かれらと光ひかり』だけの表現ひょうげんしかない」と考かんがえたと語かたった。また、ミュージックビデオの公開こうかいに際さいして、「一番いちばん大切たいせつにしたことは、余計よけいなものがない純粋じゅんすいな“ミュージック”・ヴィデオであることにこだわるということ」とコメント。ミュージックビデオには、「生なまと死し、実体じったいと虚像きょぞうのようなもの」を表現ひょうげんするため、「ゴーストみたいなエフェクト」がアナログで入いれられているという。山田やまだは、宇多田うただとKOHHを別々べつべつのカットに分わけたことについて、「同おなじ曲きょくでコラボしていても、それぞれのストーリーがあって、この先さきもそれぞれのストーリーがある」「それぞれの生いき様ざまを撮とり分わけることを目指めざしました」とコメント。また、宇多田うただが登場とうじょうする瞬間しゅんかんは神々こうごうしいシーンに、KOHHのシーンはもがいている感かんじを出だしたと語かたった。また、「何なん度ども歌唱かしょうシーンをさせたくなかった」ということで、実際じっさいに歌唱かしょうシーンは2、3テイクしか撮とらなかった。これについて山田やまだは、「そこまで思おもったのはこの作品さくひんが初はじめてであり、今いまのところ最後さいごかもしれない」と語かたった。

後のちに山田やまだは、「ローリング・ストーン・ジャパン」でのインタビューで、同どう作さくを「個人こじん的てきにすごく思おもい入いれのある作品さくひん」であると語かたった。当時とうじの彼かれにとって、宇多田うただのミュージックビデオを撮とるという緊張きんちょう感かんはものすごくあったといい、現場げんばでは精神せいしん的てきに追おい詰つめられて嘔吐おうとしたという。また、「忘却ぼうきゃく」を撮とったことで、今いまはどんなビッグネームのアーティストを撮とるときもイヤな緊張きんちょう感かんを覚おぼえなくなったとも語かたった。

クレジット

• Written by Utada Hikaru and Chiba Yuki
• Recorded by Mike Horner at RAK Studios, Matsui Atsushi at Bunkamura Studio
• All Vocals Recorded by Utada Hikaru, edited by Komori Masahito
• Additional Engineering by Darren Heelis
• Mixed by Steve Fitzmaurice at Pierce Room
• Featured Artist: KOHH
• Vocals and Programming: Utada Hikaru
• Electric Bass: Yamaguchi Hiroo
• Drums: Sylvester Earl Harvin

外部がいぶリンク

作品さくひん紹介しょうかいページ Fantome