日本にっぽん殉情じゅんじょうでん おかしなふたり ものくるほしきひとびとのぐん

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日本にっぽん殉情じゅんじょうでん おかしなふたり
ものくるほしきひとびとのぐん
監督かんとく 大林おおばやし宣彦のぶひこ
脚本きゃくほん 剣持けんもちわたる
小倉おぐら洋二ようじ
薩谷和夫かずお
大林おおばやし宣彦のぶひこ
原作げんさく やまさきじゅうさん
さだやすけい
(『おかしな2人ふたり』より)
製作せいさく 山本やまもと又一郎またいちろう
出演しゅつえんしゃ 竹内たけうちつとむ
三浦みうら友和ともかず
みなみ果歩かほ
永島ながしま敏行としゆき
音楽おんがく KAN
撮影さつえい 長野ながの重一しげかず
編集へんしゅう 大林おおばやし宣彦のぶひこ
製作せいさく会社かいしゃ フィルムリンク・インターナショナル
配給はいきゅう アートリンクス
公開こうかい 日本の旗 1988ねん3がつ29にち
上映じょうえい時間じかん 108ふん
製作せいさくこく 日本の旗 日本にっぽん
言語げんご 日本語にほんご
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日本にっぽん殉情じゅんじょうでん おかしなふたり ものくるほしきひとびとのぐん』(にほんじゅんじょうでん おかしなふたり ものくるおしきひとびとのむれ)は、1988ねん公開こうかい日本にっぽん映画えいが

あらすじ[編集へんしゅう]

借金しゃっきんである室田むろた三浦みうら友和ともかず)と、そのつま夕子ゆうこみなみ果歩かほ)のもとに、ながもの一発いっぱつである山倉やまくら竹内たけうちつとむ)がまよんでくる。そこに刑務所けいむしょがえりの成田なりた永島ながしま敏行としゆき)があらわれる。成田なりた室田むろたおさななじみであった…。

キャスト[編集へんしゅう]

スタッフ[編集へんしゅう]

製作せいさく[編集へんしゅう]

当初とうしょ中森なかもり明菜あきな主演しゅえん併映へいえいさくとして、東宝とうほう配給はいきゅうゴールデンウィーク公開こうかいされる予定よていであった[1][2]。しかし、中森なかもり降板こうばんによって中止ちゅうしとなり、この映画えいがクランクイン間近まぢか製作せいさく中止ちゅうし事態じたいまれることになる[1]。プロデューサーの山本やまもと又一またいちろうが「大林おおばやしさん、予算よさん半額はんがくならぼくポケットマネーあるから」とのもう[1]大林おおばやしも「映画えいが途中とちゅうでやめてしまうことは、ひとの人生じんせいえてしまうことだ」と中止ちゅうしにはせず、配給はいきゅう公開こうかい未定みていのまま予算よさんを3ぶんの2に縮小しゅくしょうして製作せいさくされた[3]

脚本きゃくほん[編集へんしゅう]

ほんさくは1952、3ねんごろだい流行りゅうこうした歌謡かようきょく上海しゃんはいがえりのリル』を大林おおばやし発見はっけんしたことによって成立せいりつした[3]どうきょくおなタイトル映画えいがもされたが、主演しゅえん水島みずしま道太郎みちたろうは「映画えいがかいでのわたし役目やくめわった」という名言めいげんのこして伊豆いず大島おおしま引退いんたいしていたが、さんねがいれいをもって出演しゅつえん依頼いらいした[3]

原作げんさくやまさきじゅうさんさだやすけい漫画まんがおかしな2人ふたり』で、原色げんしょく強調きょうちょうした衣装いしょうなどにコミックいろのこるが[4]映画えいがはストーリーが大幅おおはば変更へんこうされほとんどオリジナルである[4]映画えいがをめぐるすべてのエピソードは原作げんさくにはない。また、しげるちゃん・夕子ゆうこ山倉やまくら子供こども時代じだいのエピソードも原作げんさくになく、むろちゃんのそれもおおきく改変かいへんされている。原作げんさくマネーゲーム展開てんかいしたり、ヘリんだりするスケールのおおきなはなしであるが、前述ぜんじゅつのように予算よさんらされた関係かんけいから、ヒロイン夕子ゆうこだけをして"夕子ゆうこかなしむ"という副題ふくだいをつけ、夕子ゆうこかこ登場とうじょう人物じんぶつ感情かんじょうすことで、そのものくるほしき感情かんじょうりなされて、映画えいが全体ぜんたいつむいでいくきわめて小品しょうひんの、それだけにおもいのこもった映画えいがになった[5]脚本きゃくほん大林おおばやし高熱こうねつなか一気いっきげた[6]

キャスティング[編集へんしゅう]

三浦みうら友和ともかずとのダブル主演しゅえんである竹内たけうちつとむは、それまで大阪おおさか三和銀行さんわぎんこう社員しゃいんをしていたが[7]役者やくしゃになりたいと一念いちねん発起ほっきしてオートバイ東京とうきょうた。このはなしいた大林おおばやし監督かんとく竹内たけうちをすっかりって「この映画えいがるのはキミの運命うんめいだ」と主役しゅやく抜擢ばってきした[8][9]。「大林おおばやし名前なまえもらって、芸名げいめい大林おおばやしつとむに」というあんをあったが「一生いっしょう大林おおばやしきずってきるのはかわいそうだ」と大林おおばやしことわった。尾道おのみち関連かんれん映画えいがなか大林おおばやし分身ぶんしん尾美おみとしのりおおいが、ほんさくでは竹内たけうちがそれをえんじている[10]最初さいしょ竹内たけうちをスターにしようというプロジェクトで[11]こう青年せいねんスター時代じだい竹内たけうちることが出来できる。三浦みうらおな事務所じむしょテアトル・ド・ポッシュからデビューするたけないへのご祝儀しゅうぎとしての助演じょえんだった。しかし大林おおばやし脚本きゃくほんいているうちに、かたである竹内たけうちわきまわり、かたられる存在そんざいである三浦みうら主役しゅやくになってしまった[11]

撮影さつえい[編集へんしゅう]

そのため、通常つうじょうは1かげつ以上いじょうかかるところを、わずか20日はつかという短期間たんきかん撮影さつえいされている[12]。その山本やまもとの「半分はんぶんなら」のはなしに「すごいな」と感心かんしんしたところ、通常つうじょう秒速びょうそく24コマを「じゃ、いちびょう12コマでろう!」というアイデアをおもいつき、全編ぜんぺんコマをいじってっている[1][13]俳優はいゆうにはすこしゆっくりうごいてもらえば違和感いわかんはなくなるとおもったが、しかし「俳優はいゆうがゆっくりうごいたら使つかうフィルムのりょうおなじじゃないか」と恭子きょうこプロデューサーにわれた[13]自身じしんの凡ミスだったが、カメラテストでたラッシュフィルムはまるでサイレント映画えいが風情ふぜい俳優はいゆう滑稽こっけいうごきが面白おもしろく、映画えいがはとんでもないところからオリジナリティーがまれるものと気付きづいた[13]

ヒロイン室田むろた夕子ゆうこ(みなみ果歩かほ)はなんヌードになる[14]

商業しょうぎょう映画えいがとしてはめずらしく全編ぜんぺんドイツのアグファのフィルムで撮影さつえいされており、コダックともフジともちが独特どくとくあざやかな色彩しきさい色調しきちょう画面がめんからられる。

音楽おんがく[編集へんしゅう]

音楽おんがくのちに「あい」をだいヒットさせるKAN担当たんとう[15][16]山本やまもと又一またいちろう主宰しゅさいのフィルムリンク・インターナショナルの関連かんれん会社かいしゃに、当時とうじKANが所属しょぞくしていたことからはなしまれた[16]。レコードデビューする以前いぜん作曲さっきょく[16]、KANにとってはプロとしてのはつ仕事しごとであった[17]予算よさんがないため、すべシンセサイザーによる作曲さっきょくで、録音ろくおん無料むりょう使つかえたヤマハのスタジオでおこなった[16]。サントラは当初とうしょ発売はつばいされなかったが、大林おおばやし宣彦のぶひこサントラコレクションシリーズのなかでCDされている。(バップ、1998ねん発売はつばい

ロケ[編集へんしゅう]

ロケーションおも広島ひろしまけん尾道おのみち[18]しゅ舞台ぶたいである室田むろた事務所じむしょまどそと山陽本線さんようほんせんとお場所ばしょ[19]げきちゅうみぎからひだりから電車でんしゃかえ画面がめん横切よこぎる。その松永まつなが鞆のうら三原みはら岡山おかやまけん笠岡かさおかでもロケがおこなわれている。

興行こうぎょう[編集へんしゅう]

1986ねん6~7がつ撮影さつえいされて完成かんせいしていたが、配給はいきゅう会社かいしゃ躊躇ちゅうちょし1988ねん公開こうかいまで1ねん以上いじょうなが公開こうかいされず、またたんかんでの公開こうかいとなった[6]撮影さつえいである尾道おのみちでは、1987ねんなつおこなわれた尾道おのみち映画えいがさい先行せんこう上映じょうえいされている。

作品さくひん評価ひょうか[編集へんしゅう]

尾道おのみち大林おおばやし映画えいが集大成しゅうたいせいともいえる作品さくひんであるが[4]大林おおばやし自身じしんほんさくを「すくいようのないいた映画えいが、この映画えいがのことをおもうと、いつでもいたい、いたいというこえこえてくる」と表現ひょうげんしている[20]。「『転校生てんこうせい』からはじまったしん意味いみでの《A MOVIE》は、この映画えいが記憶きおくともに、スクリーンの彼方かなた消滅しょうめつした」などとべている[20]

くだりていくんほんさくを「敬愛けいあいしてやまない」とはなしており[13]新人しんじん監督かんとく時代じだいの1998ねんに「みちのく国際こくさいミステリー映画えいがさい」(げん・もりおか映画えいがさい)で、大林おおばやしこえをかけ、いかに大林おおばやし映画えいが影響えいきょう尾道おのみちをはじめとしたロケめぐったかをつたえると、大林おおばやしちかくのソファにすわろうとい、そこからやく2あいだくだりじょうみずか大林おおばやし映画えいがくわしく回顧かいこしてくれ、ゆめのような時間じかんごしたという[13]先述せんじゅつのフィルムを12コマでったはなしに、くだりじょうは「そんな瓢箪ひょうたんからこまたような奇跡きせき賜物たまものこそ大林おおばやし映画えいが本質ほんしつだったとおもう。わたしは、映画えいが自由じゆうさをおしえられた」とべている[13]

エピソード[編集へんしゅう]

正式せいしきタイトルは『日本にっぽん殉情じゅんじょうでん おかしなふたり ものくるほしきひとびとのぐん 夕子ゆうこかなしむ』である[2][3]映画えいがイラストポスターたのんだ和田わだまこと安西あんざいみずまる作風さくふうを「ざん」で都会とかいてき大林おおばやしひょうし、自分じぶん自身じしんは「ざん」の人間にんげんはなしていたといわれ、ほんさくはそのなが映画えいがのタイトルさいたるものである[21]

リリース履歴りれき[編集へんしゅう]

規格きかく 発売はつばい リリース 品番ひんばん 備考びこう
VHS 1988ねん7がつ21にち (1988-07-21) ポニーキャニオン V148F 1648
LD G98F 0249
DVD 2001ねん8がつ24にち (2001-08-24) パイオニアLDC PIBF-1032 大林おおばやし宣彦のぶひこDVDコレクション」の1まいとしてはつDVD
長野ながの重一しげかず監修かんしゅうによるテレシネ・スクイーズ・ニューマスターを使用しようしたデラックスばん
2008ねん1がつ25にち (2008-01-25) ジェネオンエンタテインメント GNBD-1167 大林おおばやし宣彦のぶひこDVDコレクションBOX だいしゅう青春せいしゅんそう≫」にて、『青春せいしゅんデンデケデケデケ』『はるか、ノスタルジィ』とともおさめられている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d #読本とくほん、453-454ぺーじ
  2. ^ a b #ワールド99ぺーじ
  3. ^ a b c d #むうびい、60−69ぺーじ
  4. ^ a b c #movie、155ぺーじ
  5. ^ #このゆび、214−219ぺーじ
  6. ^ a b #読本とくほん、578-579
  7. ^ 竹内たけうちつとむ銀行ぎんこういんだった過去かこかす「推薦すいせんれました」
  8. ^ #このゆび、41-429ぺーじ
  9. ^ だい1かい - 東京とうきょう国際こくさい映画えいがさい 森岡もりおか道夫みちおさんロングインタビュー だい1かい
  10. ^ 日本にっぽん殉情じゅんじょうでん おかしなふたり ものくるほしきひとびとのぐん - 映画えいが
  11. ^ a b #このゆび、41ぺーじ
  12. ^ #むうびい、82ぺーじ
  13. ^ a b c d e f くだりていくん (2020ねん4がつ16にち). 大林おおばやし監督かんとく最後さいごりたかった「悲恋ひれん」 巨匠きょしょうからの課題かだいとは”. 西日本にしにほん新聞しんぶんme (西日本新聞社にしにっぽんしんぶんしゃ). オリジナルの2020ねん4がつ16にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200416105657/https://www.nishinippon.co.jp/item/n/601116/ 2023–07–20閲覧えつらん 
  14. ^ #シネアルバム120「[カラー&モノクロ] ぜん作品さくひんアルバム 日本にっぽん殉情じゅんじょうでん おかしなふたり ものくるほしきひとびとのぐん」、30–31ぺーじ
  15. ^ #むうびい、91−93ぺーじ
  16. ^ a b c d #そう特集とくしゅう、108-110ぺーじ
  17. ^ KAN オフィシャルウェブサイト 【ヒストリー 1987-1989】 - www.kimuraKAN.com
  18. ^ 鉄路てつろ行間ぎょうかん」No.10/大林おおばやし宣彦のぶひこ『ふたり』で尾道おのみちまちをよぎった、民営みんえい直後ちょくごのJR西日本にしにほん
  19. ^ 千光寺せんこうじ公園こうえんがん
  20. ^ a b #読本とくほん、510ぺーじ
  21. ^ 恋人こいびとのおとうさんが大林おおばやし宣彦のぶひこ監督かんとくだった!いしかわじゅん過去かこ39『ぼくの大林おおばやし宣彦のぶひこクロニクル』偉大いだいなる義父ぎふとの日々ひび

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 大林おおばやし宣彦のぶひこ『むうびい・こんさあと』音楽之友社おんがくのともしゃ、1987ねんISBN 4-276-21121-2 
  • 石原いしはら良太りょうた野村のむらただしあきら へん「[カラー&モノクロ] ぜん作品さくひんアルバム 日本にっぽん殉情じゅんじょうでん おかしなふたり ものくるほしきひとびとのぐん」『シネアルバム(120) A movie・大林おおばやし宣彦のぶひこ ようこそ、ゆめ映画えいが共和きょうわこくへ』芳賀はが書店しょてん、1986ねん 
  • 大林おおばやし宣彦のぶひこ映画えいが、このゆびとまれ』徳間書店とくましょてんアニメージュ#アニメージュ文庫ぶんこ〉、1990ねんISBN -4-19-669627-9 
  • 大林おおばやし宣彦のぶひこのa movie book尾道おのみちたちばな出版しゅっぱん、2001ねんISBN 4-8133-1380-9 
  • 大林おおばやし宣彦のぶひこ大林おおばやし宣彦のぶひこ映画えいが談議だんぎ大全たいぜん転校生てんこうせい読本とくほん角川かどかわグループパブリッシング、2008ねんISBN 978-4-04-621169-9 
  • そう特集とくしゅう 大林おおばやし宣彦のぶひこ河出書房新社かわでしょぼうしんしゃKAWADEゆめムック 文藝ぶんげい別冊べっさつ〉、2017ねんISBN 978-4-309-97929-8https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309979298/ 

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]