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注射ちゅうしゃざい

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注射ちゅうしゃざい(ちゅうしゃざい、Injections)とは、注射ちゅうしゃはりもちいてかわない皮下ひか組織そしきまたは血管けっかんうちなどに直接ちょくせつ投与とうよする液状えきじょうまたはよう溶解ようかいして液状えきじょうにしてもちいる医薬品いやくひん製剤せいざいである。

種類しゅるい

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物理ぶつりてき性状せいじょうにより以下いかのように分類ぶんるいされる

水性すいせい注射ちゅうしゃざい
みず溶媒ようばい使つかったもの。
水性すいせい注射ちゅうしゃざい
植物しょくぶつプロピレングリコール溶媒ようばい使つかったもの。有効ゆうこう成分せいぶんみずなん溶の場合ばあいや、持続じぞく目的もくてきとする場合ばあいなどにもちいられる。
かかにごせい注射ちゅうしゃざい
溶媒ようばい溶解ようかいしない成分せいぶん微細びさい粉砕ふんさいしてくわえたもので、ようぜて使用しようする。
固形こけい注射ちゅうしゃざい
使用しようするさい溶解ようかいまたはかかにごしてもちいるもの。薬剤やくざい凍結とうけつ乾燥かんそうさせたものがおおい。抗生こうせい物質ぶっしつペプチド製剤せいざいなどでよくもちいられる。

製造せいぞう

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添加てんかざい

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通例つうれい注射ちゅうしゃざいには、有効ゆうこう成分せいぶん溶媒ようばいほか以下いかのような添加てんかざいくわえられている。着色ちゃくしょくりょう使用しようみとめられていない。

溶解ようかい補助ほじょざい
有効ゆうこう成分せいぶん溶媒ようばいなん溶な場合ばあいもちいられる。テオフィリンたいしてエチレンジアミンオキシテトラサイクリンたいしプロピレングリコールなどがもちいられる。
緩衝かんしょうざい
pH一定いっていたもつためにくわえられる。リンさん塩類えんるいがよくもちいられる。
とうはりざい
浸透しんとうあつひく薬液やくえきくわえて、血清けっせい浸透しんとうあつちかづけるためにもちいる。塩化えんかナトリウムグリセリンなどがもちいられる。
安定あんていざい
こう酸化さんかざい亜硫酸ありゅうさんしおなどがもちいられる。容器ようきなか空気くうき窒素ちっそなどに置換ちかんしてあるものもある。
保存ほぞんざい
注射ちゅうしゃざい無菌むきんであるため本来ほんらい保存ほぞんざい不要ふようであるが、分割ぶんかつ使用しようするものなどにフェノールなどがもちいられる。輸液のような容量ようりょうおおきいものには保存ほぞんざい使つかえない。
無痛むつうざい
pHや浸透しんとうあつ調整ちょうせいいたみが軽減けいげんできない場合ばあいもちいられる。リドカインなどの局所きょくしょ麻酔ますいざいもちいられる。

工程こうてい

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一般いっぱんてきなアンプルりの水溶すいようせい注射ちゅうしゃざい製造せいぞう工程こうていについてしるす。

  1. 計量けいりょう
  2. 混合こんごう溶解ようかい
  3. 濾過ろか
  4. 充填じゅうてん
  5. 熔封
  6. 滅菌めっきん
  7. 異物いぶつ検査けんさ
  8. 包装ほうそう表示ひょうじ

バイアルりの場合ばあいは、『熔封』が『せん』になる。固形こけい注射ちゅうしゃざいは、一般いっぱんてき充填じゅうてんのち凍結とうけつ乾燥かんそう工程こうていはいる。プラスチック容器ようきりの生理せいりしょく塩水えんすいなどでは、充填じゅうてん同時どうじ容器ようき形成けいせいおこな場合ばあいもある。滅菌めっきん加圧かあつ加熱かねつ滅菌めっきん一般いっぱんてきである。ねつにより成分せいぶん変成へんせいしてしまい加熱かねつ滅菌めっきんできないものは、充填じゅうてんまえ濾過ろか滅菌めっきんおこなう。

容器ようき

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アンプルとバイアル

注射ちゅうしゃざい容器ようきは、薬剤やくざいたい安定あんていでかつ無菌むきんせい確保かくほできるものがもとめられる。ガラスせいのアンプルやバイアルが一般いっぱんてきだったが、近年きんねんプラスチック容器ようきえてきている。

アンプル (ampoule)
ガラスのつつ薬剤やくざいれたのち先端せんたんを熔封したもの。頭部とうぶって薬剤やくざいす。従来じゅうらいのものはアンプルカッターとばれるヤスリもちいてくびきずけてっていたが近年きんねんきずけなくても頭部とうぶれるよう加工かこうされたワンポイントカットアンプルが主流しゅりゅうである。頭部とうぶったときに微少びしょうなガラスへん発生はっせい注射ちゅうしゃざいなか混入こんにゅうすることがある。遮光しゃこうのため着色ちゃくしょくされたものもある。おもしょう容量ようりょう液剤えきざいもちいられる。
バイアル (vial)
ガラス瓶がらすびんゴムせんをしアルミニウムなどのキャップでまきめたもの。せんにはふくすうかいはりすことが可能かのうなので、薬剤やくざいけて使つかったり、固形こけい注射ちゅうしゃざい溶解ようかいえきくわえてかしたり、複数ふくすう薬剤やくざいをバイアルないわせたりすることができる。アンプルのようにガラスへん発生はっせいすることはないが、はりさいせん一部いちぶけずられて異物いぶつとなることがある。これをコアリングという。輸液に使つかわれる大型おおがたのボトルも基本きほんてきにはバイアルとおなじである。
プラスチック容器ようき (plastic bag)
容量ようりょうすくないものは硬質こうしつプラスチック、おおきなものは軟質なんしつプラスチックがおも使つかわれている。破損はそんしにくい、かるい、つぶせるので廃棄はいきぶつのかさがるなどの利点りてんがあり、とく容量ようりょうおおきなものでプラスチック容器ようきえている。ガラスせいの輸液ボトルの場合ばあい、エアーはりさないと薬液やくえきながてこないが、軟質なんしつプラスチック容器ようき容器ようき自体じたい変形へんけいするのでエアーはり必要ひつようとせず微生物びせいぶつ汚染おせんなどにたいする安全あんぜんせいたかい。
素材そざいによってはたい熱性ねっせいひく加熱かねつ滅菌めっきん条件じょうけん設定せっていむずかしくなる欠点けってんがある。またガラスとことなり酸素さんそ透過とうかするので注射ちゅうしゃざい安定あんていせい影響えいきょうることがある。透析とうせきもちいるえきなど、混合こんごうしておくと不安定ふあんていになる薬剤やくざいを、隔壁かくへき使用しようするさい片方かたがた部屋へやして隔壁かくへきやぶり、開通かいつう混合こんごうしてもちいるそうバッグといった特殊とくしゅ容器ようきもある。
その
あらかじめ注射ちゅうしゃ充填じゅうてんしたプレフィルド・シリンジや、インスリンなどの自己じこ注射ちゅうしゃようペンがた注射ちゅうしゃもちいるカートリッジがたのもの、トランスファー・ニードル付属ふぞく生理せいりしょく塩水えんすい・5%ブドウ糖ぶどうとうえきキット製剤せいざいなどがある。

品質ひんしつ

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注射ちゅうしゃざいはまず無菌むきんであることがもとめられる。このため製造せいぞう工程こうていちゅう滅菌めっきんしてあるが、原料げんりょう細菌さいきん汚染おせんされていた場合ばあいきん死滅しめつしてもきんさんした毒素どくそのこっている場合ばあいがあり、そういったものも注射ちゅうしゃざいとしては使つかえない。この毒素どくそは、発熱はつねつせい物質ぶっしつ(pyrogen)とばれるものの一種いっしゅで、発熱はつねつせい物質ぶっしつにはこのほかに容器ようきなどに由来ゆらいするものもある。また、不溶性ふようせい異物いぶつがないこと、浸透しんとうあつやpHが血清けっせいとほぼひとしいこと、組織そしき障害しょうがいせいがないことなどがもとめられる。

こんちゅう

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注射ちゅうしゃざいとくに輸液は複数ふくすう薬剤やくざい混合こんごうして使用しようすることがおおい。この注射ちゅうしゃざい混合こんごう調整ちょうせいすることを一般いっぱんこんちゅうという。

輸液の場合ばあいは、リンゲル液りんげるえきなどの基本きほんとなる製剤せいざいに、利尿りにょうざい抗生こうせい物質ぶっしつ栄養剤えいようざいなどがくわえられる。従来じゅうらい病棟びょうとう看護かんご調整ちょうせいすることがおおかったが、保険ほけん適用てきようになったことから調剤ちょうざいしつ薬剤師やくざいしおこなうことがえてきている。とくこうがんざいは、被曝ひばく危険きけんせい考慮こうりょして安全あんぜんキャビネットとばれる装置そうちない混合こんごうすることがのぞましい。

注射ちゅうしゃざい混合こんごうするときには、沈殿ちんでんしょうじたり有効ゆうこう成分せいぶん分解ぶんかいされてしまうなどの配合はいごう変化へんかしょうじることがある。

自己じこ注射ちゅうしゃ

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注射ちゅうしゃざい患者かんじゃ投与とうよできるのは原則げんそく医師いしおよび看護かんごかぎられる。ただし、近年きんねんインスリンなどのように毎日まいにち投与とうよ必要ひつようなものについては、患者かんじゃ自己じこ注射ちゅうしゃする注射ちゅうしゃざいがある。これは、ディスポーザブルの注射ちゅうしゃ出現しゅつげんにより可能かのうになった。

当初とうしょは、普通ふつう注射ちゅうしゃ使つかいバイアルから1かいごとに薬液やくえき使用しようしていたが、現在げんざいでは薬液やくえきはいったカートリッジを装填そうてんし、はり交換こうかんすることで連続れんぞくして使用しようできるペンがた注射ちゅうしゃ普及ふきゅうしている。ペンがた注射ちゅうしゃには、本体ほんたいさい利用りようできるものとディスポーザブルのものがある。自己じこ注射ちゅうしゃよう注射ちゅうしゃざいとしてはインスリン製剤せいざいのほかにヒト成長せいちょうホルモンざいやヒト血液けつえき凝固ぎょうこ因子いんし製剤せいざいなどがある。

長所ちょうしょ短所たんしょ

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消化しょうか器官きかんとおらないため効果こうか発現はつげんはやく、投与とうよりょうすくなくてすむ。消化しょうかかんから吸収きゅうしゅうされにくいものや消化しょうか代謝たいしゃけることで効果こうかくなるものも投与とうよすることができる。また、患者かんじゃ意識いしきくても投与とうよ可能かのうである。

欠点けってんとしては、投与とうよするのに器具きぐ必要ひつようなこと、一部いちぶのぞ患者かんじゃみずか使つかえないこと、いたみや注射ちゅうしゃ部位ぶい硬化こうかなどの苦痛くつうあたえること、副作用ふくさよう発現はつげんしやすいこと、感染かんせんがあることである。

注射ちゅうしゃざい感染かんせんしょう

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ヒトの血液けつえき由来ゆらい製剤せいざいには、感染かんせんしょうこす微生物びせいぶつ混入こんにゅうしていることがある。とく生活せいかつ困窮こんきゅうしているものうれ原料げんりょうとした場合ばあいに、病原びょうげん微生物びせいぶつ混入こんにゅう可能かのうせいたかくなる。タンパク質たんぱくしつペプチド製剤せいざい加熱かねつすると、変質へんしつしてしまうため滅菌めっきんすることも困難こんなんである。これらのことから薬害やくがいエイズ事件じけんなど注射ちゅうしゃざい由来ゆらいのウイルス感染かんせんしょう発生はっせいしている。そのため献血けんけつもの選択せんたくや、原料げんりょう検査けんさ低温ていおん加熱かねつによるウイルスのかつなどがおこなわれているが、感染かんせんのリスクを完全かんぜん払拭ふっしょくできるものではない。

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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