(Translated by https://www.hiragana.jp/)
製剤 - Wikipedia コンテンツにスキップ

製剤せいざい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

製剤せいざい(せいざい、えい: formulation)とは、医薬品いやくひん農薬のうやくなどの有効ゆうこう成分せいぶんにさまざまな化学かがく物質ぶっしつくわえて、使用しようするのに適当てきとうかたちせいしたもの、またはその工程こうていをいう。製剤せいざいは、使用しよう方法ほうほう有効ゆうこう成分せいぶん吸収きゅうしゅう安定あんていせいなどを考慮こうりょしてデザインされる。製剤せいざいという言葉ことばは、しばしばざいがたえい: dosage form)をふく意味いみ使つかわれる。医薬品いやくひん場合ばあい医薬いやく製剤せいざいえい: pharmaceutical formulation)ともばれる。以下いかおも医薬品いやくひん製剤せいざいについてべる。

目的もくてき

[編集へんしゅう]
リタリン製剤せいざい

薬剤やくざい生体せいたい作用さようする場合ばあいその薬剤やくざい濃度のうどおうじて薬理やくり作用さよう発現はつげんするが、有効ゆうこう作用さようするには一定いってい時間じかん期間きかんにその薬剤やくざい濃度のうど上限じょうげんおよび下限かげんあいだ維持いじされる必要ひつようがある。上限じょうげん薬剤やくざい副作用ふくさよう関連かんれんして設定せっていされる濃度のうどであり、下限かげんin vitro実験じっけん実際じっさい作用さよう確認かくにんすることで決定けっていされる。生体せいたい投与とうよされた化学かがく物質ぶっしつADME生体せいたい吸収きゅうしゅう分布ぶんぷ代謝たいしゃ排泄はいせつ)にしたがって移動いどうしてゆくので、ある目的もくてき臓器ぞうき組織そしきにおける薬剤やくざい濃度のうど刻一刻こくいっこく変化へんかする。

医薬品いやくひんであれ農薬のうやくであれ薬剤やくざい実際じっさい利用りようするさいは、薬剤やくざい物理ぶつりてき形状けいじょう化学かがくてき性質せいしつ修飾しゅうしょくして薬剤やくざい生体せいたいない十分じゅうぶん効果こうか発現はつげんする技術ぎじゅつてき工夫くふう必要ひつようとなる。そのよう技術ぎじゅつのことを製剤せいざいび、その方法ほうほう探究たんきゅうおよび理論りろん体系たいけい構築こうちくする学問がくもん製剤せいざいがく(せいざいがく、えい: pharmaceutics)である。

一般いっぱん薬品やくひんには生体せいたいない濃度のうど薬効やっこう作用さようとの関係かんけいにおいて、てい用量ようりょうがわ無効むこういきこう用量ようりょうがわ危険きけんいきという閾値が存在そんざいする。濃度のうど無効むこういきえなければまった薬効やっこう発現はつげんしないし、危険きけんいきえれば副作用ふくさよう発現はつげんし、薬剤やくざいがいおよぼすことになる。製剤せいざいだいいち目的もくてき生体せいたい投与とうよした場合ばあいに、生体せいたいない濃度のうど無効むこういき危険きけんいきにはさまれたやす全域ぜんいき薬剤やくざい濃度のうど一定いってい時間じかん以上いじょう持続じぞくさせることにある。

また、薬効やっこう成分せいぶんによっては物理ぶつりてきあるいは化学かがくてき環境かんきょう変化へんか薬効やっこううしなわれるものもあるため、薬剤やくざい安定あんていせい目的もくてきとした技術ぎじゅつ製剤せいざい要素ようそひとつである。前者ぜんしゃ具体ぐたいれいとしてはPPTラミネート包装ほうそうによる遮光しゃこう防湿ぼうしつであったり、後者こうしゃれいとしてはちょう製剤せいざいや、薬剤やくざい吸収きゅうしゅう分布ぶんぷ代謝たいしゃ排泄はいせつなど体内たいない動態どうたい制御せいぎょする製剤せいざい設計せっけいであるドラッグデリバリーシステムであったりする。したがって製剤せいざい関与かんよする領域りょういき薬剤やくざい形状けいじょうだけにとどまらず包装ほうそう物流ぶつりゅう環境かんきょうまで関係かんけいすることになる。

したがって、医薬品いやくひん薬効やっこう成分せいぶんはらまつをそのまま医療いりょう使つかうことはなく、以上いじょう目的もくてき達成たっせいするために様々さまざま添加てんかぶつくわえられたり、特別とくべつ形状けいじょう加工かこうされたり目的もくてき適合てきごうした形態けいたい調製ちょうせいされてから使用しようされる。つまり、そのための技術ぎじゅつ全般ぜんぱんが「製剤せいざい」である。製剤せいざいがくてき加工かこうすべえるかたち反映はんえいされるわけではないので、一見いっけんたようなざいがたであっても種々しゅじゅ工夫くふうほどこされており、どういち成分せいぶんであってもまったく同一どういつ効果こうかしめすわけではない。それゆえ医薬品いやくひん開発かいはつにおいて製剤せいざい重要じゅうよう位置いちひとつをめる。

つまり製剤せいざい技術ぎじゅつ特許とっきょ企業きぎょう秘密ひみつにより保護ほごされるため、はしてきにいうなれば先発せんぱつ医薬品いやくひん後発こうはつ医薬品いやくひんちがいは製剤せいざい技術ぎじゅつ質的しつてきちがいであるともいえる。

歴史れきし

[編集へんしゅう]

製剤せいざいかんする最古さいこ記録きろくまえ3000ねんころからまえ2400ねん古代こだいメソポタミアシュメール文明ぶんめい楔形文字くさびがたもじばん生薬きぐすりかんする記録きろくで、えきひたせんじ塗布とふすわざい軟膏なんこう硬膏こうこうともえぬの罨法あんぽう浣腸かんちょう、ローション、燻蒸くんじょうなどの存在そんざいられていた。ぜん1500ねんころの古代こだいエジプト文明ぶんめいのエーベルス・パピルスの生薬きぐすりではそれらにくわえて香料こうりょう化粧けしょう吸入きゅうにゅうざい、かぎやくうがいやく丸薬がんやく、トローチなどの種別しゅべつしるされている[1]

近代きんだいになり薬効やっこう成分せいぶん化学かがく合成ごうせいないしは天然てんねんぶつから精製せいせいされた医薬品いやくひんおもになると、錠剤じょうざい注射ちゅうしゃざい、カプセルざい、インプラントなどのざいがたくわわることになる。

すなわち19世紀せいきはいるとフランスのプラバ(Charles Gabriel Pravaz)が注射ちゅうしゃ発明はつめいし、1853ねんイギリスのウッド(Alexander Wood)が皮下ひか注射ちゅうしゃ皮下ひか投与とうよ)で医療いりょうよう実用じつようした。静脈じょうみゃく注射ちゅうしゃなどの注射ちゅうしゃざい広範囲こうはんい利用りようされるのは消毒しょうどく滅菌めっきんほう確立かくりつされる1980年代ねんだい以降いこうである[2]

20世紀せいき以降いこう医薬品いやくひんでは錠剤じょうざい、カプセルざい注射ちゅうしゃざい主流しゅりゅうであり、ざいがた特定とくてい薬剤やくざいがくてき効果こうか目的もくてき利用りようされる。

機能きのう

[編集へんしゅう]

取扱とりあつかせい向上こうじょう

[編集へんしゅう]

医薬品いやくひんには、すうmgというきわめて微小びしょうりょう効果こうか発揮はっきするものもおおく、また服用ふくようしすぎると副作用ふくさようしょうじるものも多数たすう存在そんざいする。しかし、訓練くんれんけていない使用しようしゃが、1かいごとに薬品やくひん粉末ふんまつすうmgずつ正確せいかくはかって服用ふくようすることは現実げんじつてき不可能ふかのうである。したがって、市販しはん薬剤やくざい有効ゆうこう成分せいぶん以外いがい無害むがい添加てんかざい(カルメロースカルシウムなど)をくわえ、1かいあたりの服用ふくようりょう調節ちょうせつした粒状りゅうじょうにして流通りゅうつうしていることがおおい。

また、製剤せいざいすることによって、くすりいろかたちなど、外観がいかん自由じゆうえることができ、一般人いっぱんじんでも一目いちもくくすり種類しゅるい見分みわけることができるようになる。これは、くすりあやまいんふせという意味いみできわめて重要じゅうようはたらきである。

薬剤やくざいには独特どくとくあじにおいをつものもすくなくない。そのような場合ばあい甘味あまみりょうくわえたり、糖衣とういでコーティングしたりすることで、子供こどもであっても服用ふくようしやすくすることができる。

代謝たいしゃ抑制よくせい

[編集へんしゅう]

現代げんだい医薬品いやくひん開発かいはつは、まず試験管しけんかんなかで(in vitro)細胞さいぼうレベルで研究けんきゅうおこなわれる。この段階だんかいなんらかの薬効やっこうがみられるものだけが実際じっさい生物せいぶつ実験じっけんきょうされるが、細胞さいぼうレベルでは効果こうかしめ薬剤やくざいであっても、生体せいたいないでは有効ゆうこうはたらかないことがおおい。これは、生体せいたいない吸収きゅうしゅう分布ぶんぷ代謝たいしゃ排泄はいせつのいずれかのひと以上いじょう生理せいり作用さようのため、組織そしき臓器ぞうきでの薬剤やくざい濃度のうどおよび経時きょうじ変化へんか薬理やくり作用さよう発現はつげんするのに十分じゅうぶんではなくなることに起因きいんする。

このように、経口けいこう投与とうよでは初回しょかい通過つうか効果こうかけない(肝臓かんぞう代謝たいしゃけて効果こうか発揮はっきできない)ものは、注射ちゅうしゃざいすわざいなどにして投与とうよすることで吸収きゅうしゅう分布ぶんぷ要素ようそえることですみやかに、また効果こうかてき作用さようさせることができる。また、胃酸いさん分解ぶんかいしてしまう薬剤やくざいであれば、ちょうでのみ溶解ようかいするカプセルに封入ふうにゅうすることで経口けいこうざいとして使用しようすることもできる。

投与とうよりょう調節ちょうせつ

[編集へんしゅう]

薬剤やくざいは、いち大量たいりょう投与とうよすると、だい部分ぶぶん排泄はいせつされてしまううえ場合ばあいによっては副作用ふくさようこす。したがって、頭痛ずつうやくのようにできるだけ効果こうか持続じぞくすることが期待きたいされる薬剤やくざいは、有効ゆうこう成分せいぶん時間じかんをかけて徐々じょじょ放出ほうしゅつするように製剤せいざいする必要ひつようがある。有効ゆうこう成分せいぶんをしみこませた貼付ちょうふざい使つかって、皮膚ひふからすこしずつ薬剤やくざい投与とうよするのも長時間ちょうじかんゆっくりと投与とうよするのに有効ゆうこう手法しゅほうである。

反対はんたいに、胃薬いぐすりなどはんですぐに薬効やっこうることがのぞましい。このような場合ばあいですぐに溶解ようかい分散ぶんさんするように製剤せいざいしたり、あるいはあらかじ液体えきたい流通りゅうつうさせるという手法しゅほうがとられる。

場合ばあいによっては複数ふくすう有効ゆうこう成分せいぶんわせ、ひとつの製剤せいざいとするものもある。

有効ゆうこう成分せいぶん保護ほご

[編集へんしゅう]

最新さいしんのRNAワクチン技術ぎじゅつもちいたCOVID-19ワクチンなかには、こわれやすいmRNAくさりPEGした脂質ししつナノ粒子りゅうし封入ふうにゅうしてドラッグデリバリー送達そうたつ手段しゅだん)としたものがある。この脂質ししつナノ粒子りゅうしは、液体えきたい製剤せいざいとしてバイアルに充填じゅうてんされ、冷凍れいとうまたは冷蔵れいぞう保管ほかん流通りゅうつうされる[3]

研究けんきゅうステージとタイムライン

[編集へんしゅう]

製剤せいざい研究けんきゅうでは、安定あんていせいたかく、患者かんじゃれられる薬剤やくざい開発かいはつおこなう。経口けいこう投与とうよされる薬剤やくざい場合ばあいは、通常つうじょう錠剤じょうざいカプセル薬剤やくざい封入ふうにゅうする。錠剤じょうざいには、薬物やくぶつ以外いがいにもさまざまな活性かっせい物質ぶっしつふくまれており、カプセルされた薬物やくぶつがこれらの物質ぶっしつ直接ちょくせつまたは間接かんせつてきがいおよぼさないように適合てきごうするかどうかを検討けんとうしなければならないというてん重要じゅうようである。

プレフォーミュレーションえい: preformulation事前じぜん製剤せいざい)では、製剤せいざい使用しようするほか成分せいぶんがたざい、ふけいざい)を選択せんたくするために、薬物やくぶつ物理ぶつりてき化学かがくてき機械きかいてき特性とくせい評価ひょうかする。タンパク質たんぱくしつ事前じぜん製剤せいざいおこなうえ重要じゅうようなことは、凍結とうけつ/解凍かいとう温度おんど、せんだん応力おうりょくなどのさまざまなストレス条件下じょうけんかでのタンパク質たんぱくしつ溶液ようえき挙動きょどう理解りかいして、分解ぶんかいのメカニズムを特定とくていして、その影響えいきょう軽減けいげんすることである[4]

製剤せいざい研究けんきゅうでは、粒子りゅうしみちかたちせいpH溶解ようかいせいなどの要素ようそ考慮こうりょする。これらの要素ようそはすべて、バイオアベイラビリティ、すなわち薬物やくぶつ活性かっせい影響えいきょうあたえるからである。その薬物やくぶつは、存在そんざいする薬物やくぶつりょうかく投与とうよ単位たんいれいかく錠剤じょうざい)で一貫いっかんしていることを保証ほしょうする方法ほうほうによって、活性かっせい成分せいぶんわせる必要ひつようがある。そのざいがたは、外観がいかん均一きんいつで、あじ錠剤じょうざいかたさ、カプセルの分解ぶんかいせい許容きょようできるものでなければならない。

臨床りんしょう試験しけん開始かいしされるまでに製剤せいざい研究けんきゅう完了かんりょうする可能かのうせいひくい。つまり、最初さいしょだいIあい臨床りんしょう試験しけん使用しようするための簡単かんたん製剤せいざい開発かいはつされることを意味いみする。これらは一般いっぱんてきに、少量しょうりょう薬剤やくざい希釈きしゃくざいはいったカプセルを手作業てさぎょう充填じゅうてんして構成こうせいする。こうした製剤せいざい数日すうじつ使用しよう(テスト)されるため、長期ちょうき安定あんていせい証明しょうめい必要ひつようない。いわゆる薬物やくぶつ負荷ふかえい: drug loading)としてられるもの、つまり用量ようりょうそう含有がんゆうりょうたいする活性かっせい薬物やくぶつ比率ひりつ考慮こうりょする必要ひつようがある。薬物やくぶつ負荷ふかひくいと、均質きんしつせい問題もんだいしょうじる場合ばあいがある。薬物やくぶつ負荷ふかたかいとなが英語えいごばんわるくなったり、調合ちょうごうぶつ容積ようせき密度みつどひくいとおおきなカプセルが必要ひつようになることがある。

だいIIIしょう臨床りんしょう試験しけんいたるまでには、最終さいしゅうてき市場いちば使用しようされる製剤せいざいちかかたち製剤せいざい開発かいはつされていなければならない。この段階だんかいでは、安定あんていせいかんする知識ちしき不可欠ふかけつであり、薬物やくぶつ製剤せいざいちゅう安定あんていしていることを保証ほしょうするための条件じょうけん開発かいはつされていなくてはならない。薬剤やくざい不安定ふあんていであることが判明はんめいした場合ばあい実際じっさい投与とうよされた用量ようりょうがわからなくなるため、臨床りんしょう試験しけん結果けっか無効むこうになる。安定あんていせい試験しけんでは、温度おんど湿度しつど酸化さんかひかり分解ぶんかい紫外線しがいせん可視かし光線こうせん)などの影響えいきょうがないかどうかを調しらべ、分解ぶんかい生成せいせいぶつ形成けいせいされているかどうかを確認かくにんするために調製ちょうせいぶつ分析ぶんせきする。

医薬品いやくひん包装ほうそう

[編集へんしゅう]

製剤せいざいされた医薬品いやくひんは、容器ようきせんシステム(えい: container closure system容器ようき閉鎖へいさシステムとも)で長期間ちょうきかん保存ほぞんされる。これには、ブリスターボトルバイアルアンプルシリンジ、カートリッジなどがもちいられる。容器ようき素材そざいは、ガラス、プラスチック、金属きんぞくなどさまざまである。薬剤やくざいは、固体こたい液体えきたい、または気体きたいとして保存ほぞんされる。

製剤せいざい容器ようきあいだのぞましくない相互そうご作用さようがあるかどうかを確認かくにんすることが重要じゅうようである。たとえば、プラスチック容器ようき英語えいごばん使用しようした場合ばあい成分せいぶんのいずれかがプラスチックに吸着きゅうちゃくしていないか、および可塑かそざい潤滑じゅんかつざい顔料がんりょう安定あんていざいなどがプラスチックから製剤せいざいちゅう侵出しんしゅつしていないかなどを確認かくにんする。容器ようきラベル使つかわれている接着せっちゃくざいも、プラスチック容器ようきから製剤せいざい侵出しんしゅつしないことを確認かくにんする必要ひつようがある。

製剤せいざい種類しゅるい

[編集へんしゅう]

製剤せいざい形態けいたいは、投与とうよ経路けいろによって、カプセル、錠剤じょうざい丸薬がんやくなどのようにことなる。

経口けいこう製剤せいざい

[編集へんしゅう]

経口けいこう製剤せいざいえい: enteral formulation)は通常つうじょう錠剤じょうざいまたはカプセルとして服用ふくようされる。

薬物やくぶつ活性かっせい物質ぶっしつ自体じたいが、制御せいぎょされた速度そくど水溶液すいようえき溶解ようかいする必要ひつようがある。粒子りゅうしみち結晶けっしょうかたちなどの要因よういんは、溶解ようかいおおきく影響えいきょうする。はや溶解ようかいかならずしも理想りそうてきではない。たとえば、溶解ようかい速度そくどおそくすることで、作用さよう持続じぞく時間じかんながくしたり、初期しょきたか血漿けっしょうちゅう濃度のうどけることができる。球状きゅうじょうあきら析化[5]などの特殊とくしゅ方法ほうほうによる有効ゆうこう成分せいぶん処理しょりは、医薬品いやくひん製剤せいざいにいくつかの利点りてんをもたらす。

錠剤じょうざい

[編集へんしゅう]

錠剤じょうざいえい: tablet)は通常つうじょう圧縮あっしゅくされた製剤せいざいであり、以下いかのものをふくむ。

溶解ようかい時間じかん変更へんこうすることで、迅速じんそく効果こうかじょせい英語えいごばんることができる。

錠剤じょうざい特殊とくしゅなコーティングをほどこすことで、胃酸いさんたいするたいせいたかめ、十二指腸じゅうにしちょうそらちょう大腸だいちょう酵素こうそはたらきやアルカリせいのpHによってのみ崩壊ほうかいするようにすることができる。

錠剤じょうざいは、味覚みかく誤魔化ごまかすために砂糖さとうワニスワックスなどでコーティングすることができる。

カプセル

[編集へんしゅう]

カプセル(えい: capsule)とは、活性かっせい物質ぶっしつ封入ふうにゅうするゼラチンじょう外皮がいひである。カプセルは、吸収きゅうしゅうおくらせるために、摂取せっしゅこう数時間すうじかんはそのままの状態じょうたいであるように設計せっけいすることができる。それらはまた、同一どういつ用量ようりょう英語えいごばん迅速じんそくかつ持続じぞくてき吸収きゅうしゅうをもたらすために、じょせい粒子りゅうしはやせい粒子りゅうし混合こんごうしたものもある。

じょせい製剤せいざい

[編集へんしゅう]

錠剤じょうざいやカプセルざいでは、消化しょうかかん通過つうかするさい活性かっせい物質ぶっしつ持続じぞくてき放出ほうしゅつされるように改良かいりょうする方法ほうほうがいくつかある。もっと一般いっぱんてき方法ほうほうひとつは、不溶性ふようせい多孔たこうしつマトリックスに有効ゆうこう成分せいぶんみ、溶解ようかいした薬物やくぶつ吸収きゅうしゅうされるまえにマトリックスからくようにすることである。じょせい製剤せいざいでは、マトリックスが膨潤してゲルを形成けいせいし、そこから薬物やくぶつ排出はいしゅつされる。

持続じぞくてき放出ほうしゅつ実現じつげんするもうひとつの方法ほうほうは、浸透しんとうあつ制御せいぎょ放出ほうしゅつがた経口けいこうデリバリーシステム英語えいごばんであり、活性かっせい化合かごうぶつはレーザーであなけた透水とうすいせいまく封入ふうにゅうされる。みずまく通過つうかすると、くすりあなからされ、消化しょうかかん吸収きゅうしゅうされる。

経口けいこう製剤せいざい

[編集へんしゅう]

経口けいこう製剤せいざいえい: parenteral formulation)は、注入ちゅうにゅう可能かのう製剤せいざいえい: injectable formulation)ともばれ、静脈じょうみゃくない皮下ひか筋肉きんにくない、および関節かんせつないへの投与とうよ使用しようされる。薬剤やくざい液体えきたい保存ほぞんされるか、不安定ふあんてい場合ばあい凍結とうけつ乾燥かんそうした状態じょうたい保存ほぞんされる。

経口けいこう製剤せいざいおおくは高温こうおんでは不安定ふあんていであり、冷蔵れいぞうまたはときには冷凍れいとう状態じょうたいでの保存ほぞん必要ひつようとなる。これらの薬剤やくざい患者かんじゃとどける物流ぶつりゅうプロセスをコールドチェーンぶ。コールドチェーンは、電力でんりょく予測よそくできない、あるいは存在そんざいしない地域ちいきへの医薬品いやくひんとくにワクチンの配送はいそうさまたげる可能かのうせいがある。ゲイツ財団ざいだんのようなNGOは、解決かいけつさくつけるために積極せっきょくてき活動かつどうしている。これには、室温しつおんでの安定あんてい容易ようい凍結とうけつ乾燥かんそう製剤せいざいふくまれる。

タンパク質たんぱくしつ製剤せいざいおおくは分子ぶんしこわれやすい性質せいしつち、腸管ちょうかん投与とうよでは破壊はかいされてしまうため、経口けいこう投与とうよされる。タンパク質たんぱくしつは、常温じょうおんでは分解ぶんかいまたは凝集ぎょうしゅうこすような立体りったい構造こうぞう3構造こうぞうおよび4構造こうぞう)をっている。これは、くすり安全あんぜんせい有効ゆうこうせい影響えいきょうあたえる可能かのうせいがある[6]

液体えきたい製剤せいざい

[編集へんしゅう]

液体えきたい製剤せいざいえい: liquid drug)は、バイアル、輸液バッグ、アンプル、カートリッジ、プレフィルドシリンジなどに保存ほぞんされる。

固体こたい製剤せいざい同様どうように、液体えきたい製剤せいざい製剤せいざいをさまざまな化合かごうぶつわせて、保存ほぞんでも安定あんていした有効ゆうこうせいのある製剤せいざいであることを確実かくじつにする。これらには、溶化ざい安定あんていざい緩衝かんしょうざいちょうせい調整ちょうせいざい増量ぞうりょうざいぞうねばざい/げんねばざい界面かいめん活性かっせいざいキレートざいアジュバントなどがある。

蒸発じょうはつして濃縮のうしゅくされた場合ばあい薬剤やくざい投与とうよまえ希釈きしゃくされる場合ばあいがある。けい静脈じょうみゃく療法りょうほう英語えいごばん場合ばあいは、薬剤やくざいをバイアルから輸液バッグにうつし、材料ざいりょうぜて使用しようすることができる。

凍結とうけつ乾燥かんそう製剤せいざい

[編集へんしゅう]

凍結とうけつ乾燥かんそう薬剤やくざいえい: lyophilized drug)は、バイアル、カートリッジ、デュアルチャンバーシリンジ、および混合こんごうがたプレフィルドシステムなどに保存ほぞんされる。

凍結とうけつ乾燥かんそうまたはフリーズドライは、液体えきたい薬剤やくざいから水分すいぶんのぞき、固体こたい粉末ふんまつまたはケーキをつくるプロセスである。凍結とうけつ乾燥かんそう製剤せいざい長期間ちょうきかん安定あんていしており、より高温こうおんでの保存ほぞん可能かのうになる。タンパク質たんぱくしつ製剤せいざいでは、水分すいぶんえて分子ぶんし構造こうぞう維持いじするために安定あんていざい添加てんかされる[7]

凍結とうけつ乾燥かんそうされた薬剤やくざいは、投与とうよするまえ液体えきたいとしてさい構成こうせいする。これは、液体えきたい希釈きしゃくざい凍結とうけつ乾燥かんそうした粉末ふんまつわせて、混合こんごうしたのち注入ちゅうにゅうすることでおこなわれる。さい構成こうせいには通常つうじょう薬剤やくざいただしく混合こんごう投与とうよすることを確実かくじつにするためのさい構成こうせいおよび送達そうたつシステムが必要ひつようである。

局所きょくしょ製剤せいざい

[編集へんしゅう]

けいがわ

[編集へんしゅう]

局所きょくしょ製剤せいざいえい: topical formulation外用がいようざいとも)としての選択肢せんたくしつぎのとおりである[8]

  • クリーム (薬学やくがく)英語えいごばん - あぶらみずがほぼおな割合わりあいざったエマルション(乳液にゅうえき)。はだ外側そとがわ角質かくしつそうによく浸透しんとうする。
  • 軟膏なんこう - あぶら(80%)とみず(20%)のわせ。水分すいぶん損失そんしつふせ効果こうかがある。
  • ゲル - はだれると液化えきかする。
  • ペースト - あぶらみず粉末ふんまつの3つの薬剤やくざいわせたもの。粉末ふんまつかかにごさせた軟膏なんこう
  • 粉末ふんまつ - こまかく分割ぶんかつされた固体こたい物質ぶっしつ

ざいがた

[編集へんしゅう]

具体ぐたいてき薬剤やくざい形体けいたいざいがた)は各国かっこく公定こうていしょである薬局方やっきょくほう規定きていされている。以下いか日本にっぽんこくだいじゅう改正かいせい日本にっぽん薬局方やっきょくほう収載しゅうさいされている製剤せいざいしめす。

まるざい
すわざい
点眼てんがんざい
軟膏なんこうざい
  • エアゾールざい(Aerosols):スプレーざい
  • 液剤えきざい(Liquids and Solutions)
  • エキスざい(Extracts):生薬きぐすり浸出液しんしゅつえき濃縮のうしゅくしたもの
  • エリキシルざい(Elixirs):甘味あまみ芳香ほうこうのあるエタノールふく澄明ちょうめい内用ないよう液剤えきざい
  • カプセルざい(Capsules)
  • 顆粒かりゅうざい(Granules):医薬品いやくひん粒状りゅうじょうにしたものでおおむねつぶみち355 - 1,400μみゅーmのもの。
  • まるざい(Pills):医薬品いやくひん球状きゅうじょうにしたもの。
  • 軟膏なんこうざい(Ophthalmic Ointments):眼科がんかよう軟膏なんこうざい
  • けいがわ吸収きゅうしゅうがた製剤せいざい(Transdermal Systems)
  • かかにござい乳剤にゅうざい(Suspensions and Emulsions):有効ゆうこう成分せいぶんかかにごまた乳化にゅうかさせたみずざいかかにごえき
  • すわざい(Suppositories)
  • 散剤さんざい(Powders):医薬品いやくひん粉末ふんまつにしたものでおおむねつぶみち500μみゅーm以下いかのもの。
  • 酒精しゅせいざい(Spirits):揮発きはつせい医薬品いやくひんをエタノールやエタノールとみずこんえきかしたもの。
  • 錠剤じょうざい(Tablets)
  • シロップざい(Syrups):甘味あまみりょうふく稠な内用ないよう液剤えきざいまたかかにござい
  • 浸剤しんざい煎剤せんざい(Infusions and Decoctions):生薬きぐすりみず浸出しんしゅつしたもの。
  • 注射ちゅうしゃざい(Injections)
  • 貼付ちょうふざい(Plasters and Pressure Sensitive Adhesives):いわゆるやく
  • チンキざい(Tinctures):生薬きぐすりをエタノールまたはエタノールとみず浸出しんしゅつしたもの。
  • 点眼てんがんざい(Ophthalmic Solutions)
  • トローチざい(Troches):口腔こうくううち徐々じょじょかし口腔こうくう咽頭いんとうなどに適用てきようするもの。
  • 軟膏なんこうざい(Ointments)
  • パップざい(Cataplasms):医薬品いやくひん精油せいゆ成分せいぶんどろじょうせいシップもちいる外用がいようざい
  • 芳香ほうこうすいざい(Aromatic Waters):精油せいゆまた揮発きはつせい成分せいぶん飽和ほうわさせた澄明ちょうめい液剤えきざい
  • リニメントざい(Liniments):液状えきじょうまたどろじょう皮膚ひふにすりんで使つか製剤せいざい
  • リモナーデざい(Lemonades):甘味あまみ酸味さんみがある澄明ちょうめい内用ないよう液剤えきざい
  • ながれエキスざい(Fluidextracts):生薬きぐすり浸出液しんしゅつえきで1mLちゅう生薬きぐすり1gの可溶性かようせい成分せいぶんふくむようにせいした液状えきじょう製剤せいざい
  • ローションざい(Lotions):皮膚ひふ塗布とふする外用がいよう液剤えきざい

参照さんしょう項目こうもく

[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ 新田にった あや、「生薬きぐすり」、『世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん』、だいはんCD-ROMばん平凡社へいぼんしゃ、1998ねん
  2. ^ 佐藤さとう 祥之よしゆき杉原すぎはら ただしたい、「注射ちゅうしゃ」、『世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん』、だいはんCD-ROMばん平凡社へいぼんしゃ、1998ねん
  3. ^ Pardi, Norbert; Hogan, Michael J.; Porter, Frederick W.; Weissman, Drew (April 2018). “mRNA vaccines — a new era in vaccinology”. Nature Reviews Drug Discovery 17 (4): 261–279. doi:10.1038/nrd.2017.243. PMC 5906799. PMID 29326426. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5906799/. 
  4. ^ Simler, R., Walsh, G., Mattaliano, R.J., Guziewicz, N., and Perez-Ramirez, B. (2008). Maximizing Data Collection and Analysis During Preformulation of Biotherapeutic Proteins. BioProcess International 6(10), 38-45.
  5. ^ M. Nocent, L. Bertocchi, F. Espitalier, M. Baron and G. Couarraze. (2001). Definition of a solvent system for spherical crystallization of salbutamol sulfate by quasi-emulsion solvent diffusion (QESD) method. Journal of Pharmaceutical Sciences 90 (10), 1620-1627.
  6. ^ Chang, B.S. and Hershenson, S. 2002. Practical approaches to protein formulation development. in "Rationale Design of stable protein formulations-theory and practice" (J.F. Carpenter and M.C. Manning eds.) Kluwer Academic/Plenum publishers, New York, pp. 1-25
  7. ^ Rationale Design of Stable Lyophilized Protein Formulations: Some Practical Advice, Carpenter et al, Pharmaceutical Research, Vol 14, No.8, 1977
  8. ^ Doctor, why are you prescribing an ointment?”. American Academy of Dermatology. 2021ねん3がつ14にち閲覧えつらん

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]