出典 しゅってん : フリー百科 ひゃっか 事典 じてん 『ウィキペディア(Wikipedia)』
ADME とは、薬物 やくぶつ 動態 どうたい 学 がく および薬理 やくり 学 がく で用 もち いられる、吸収 きゅうしゅう (英 えい : A bsorption )、分布 ぶんぷ (英 えい : D istribution )、代謝 たいしゃ (英 えい : M etabolism )、排泄 はいせつ (英 えい : E xcretion )の英語 えいご 表記 ひょうき の頭文字 かしらもじ からなる略語 りゃくご であり、生体 せいたい において薬物 やくぶつ が処理 しょり される過程 かてい を示 しめ す用語 ようご である。これら4項目 こうもく は薬物 やくぶつ の血 ち 中 ちゅう 濃度 のうど と、組織 そしき への暴露 ばくろ の経時 きょうじ 変化 へんか に影響 えいきょう する。したがって、ADMEは投与 とうよ された化学 かがく 物質 ぶっしつ の薬理 やくり 活性 かっせい と効用 こうよう に関係 かんけい する重要 じゅうよう な項目 こうもく である。
組織 そしき において薬理 やくり 学 がく 的 てき 作用 さよう を発揮 はっき する以前 いぜん に薬物 やくぶつ は血液 けつえき またはリンパ循環 じゅんかん 系 けい に入 はい らなければならない。吸収 きゅうしゅう は通常 つうじょう 、消化 しょうか 器 き などの粘膜 ねんまく を通 とお して行 おこな われる(腸管 ちょうかん 吸収 きゅうしゅう )。また標的 ひょうてき 器官 きかん や細胞 さいぼう に確実 かくじつ に吸収 きゅうしゅう されなければならない。血液 けつえき 脳 のう 関門 かんもん のような自然 しぜん の障壁 しょうへき が関連 かんれん する場合 ばあい 、吸収 きゅうしゅう の問題 もんだい は深刻 しんこく である。溶解 ようかい 性 せい 、胃 い での化学 かがく 的 てき 安定 あんてい 性 せい 、腸 ちょう 壁 かべ への浸透 しんとう 性 せい などの要因 よういん のいずれが不足 ふそく しても経口 けいこう 投与 とうよ での吸収 きゅうしゅう 量 りょう は減少 げんしょう する。吸収 きゅうしゅう は生物 せいぶつ 学 がく 的 てき 利用 りよう 能 のう に対 たい し重大 じゅうだい に影響 えいきょう を及 およ ぼす。経口 けいこう 投与 とうよ で吸収 きゅうしゅう が不足 ふそく する場合 ばあい 、静脈 じょうみゃく 注射 ちゅうしゃ や吸入 きゅうにゅう による非 ひ 経口 けいこう 投与 とうよ を検討 けんとう せざるを得 え ない(例 れい :ザナミビル )。
吸収 きゅうしゅう された薬物 やくぶつ は血液 けつえき 循環 じゅんかん により生体 せいたい 各部 かくぶ に運搬 うんぱん されてゆく。組織 そしき 間 あいだ の分布 ぶんぷ は、薬物 やくぶつ の組織 そしき 間 あいだ の浸透 しんとう 性 せい (特 とく に血液 けつえき と組織 そしき の間 あいだ の浸透 しんとう 性 せい )、組織 そしき における血 ち 流 りゅう と灌流 の速度 そくど 、薬物 やくぶつ の血漿 けっしょう タンパク質 たんぱくしつ と組織 そしき に対 たい する結合 けつごう のしやすさに依存 いぞん する。
組織 そしき へと運 はこ ばれた薬物 やくぶつ は組織 そしき 内 うち または細胞 さいぼう 内 ない で分布 ぶんぷ してゆく。ここでは、薬物 やくぶつ の脂 あぶら 溶性 ようせい 、毛細管 もうさいかん 透過 とうか 性 せい 、血漿 けっしょう タンパクや組織 そしき タンパクとの結合 けつごう の強 つよ さ、心拍 しんぱく 出 で 量 りょう 、局所 きょくしょ 的 てき 血 ち 流量 りゅうりょう 、局所 きょくしょ 的 てき pH が分布 ぶんぷ に影響 えいきょう する要因 よういん となる。薬物 やくぶつ は灌流の程度 ていど が高 たか い器官 きかん 、例 たと えば肝臓 かんぞう 、心臓 しんぞう 、腎臓 じんぞう などには容易 ようい に分布 ぶんぷ し、逆 ぎゃく に筋肉 きんにく 、脂肪 しぼう 、および末梢 まっしょう 器官 きかん のような灌流の程度 ていど が低 ひく い器官 きかん には分布 ぶんぷ し難 がた い。
薬物 やくぶつ は体内 たいない に入 はい るとすぐに分解 ぶんかい し始 はじ める。大半 たいはん の低 てい 分子 ぶんし 医薬品 いやくひん は肝臓 かんぞう 中 ちゅう の酸化 さんか 還元 かんげん 酵素 こうそ シトクロムP450 により代謝 たいしゃ される。代謝 たいしゃ により生 しょう じた代謝 たいしゃ 物 ぶつ が薬理 やくり 学 がく 的 てき に不 ふ 活性 かっせい な場合 ばあい 生体 せいたい への影響 えいきょう を減少 げんしょう させることになるが、代謝 たいしゃ の結果 けっか 投与 とうよ された薬物 やくぶつ よりも強 つよ い薬理 やくり 活性 かっせい を示 しめ す代謝 たいしゃ 物 ぶつ が生 しょう じることもある。
一般 いっぱん 的 てき な
排出 はいしゅつ については「
排泄 はいせつ 」を
参照 さんしょう
薬物 やくぶつ とその代謝 たいしゃ 物 ぶつ は排出 はいしゅつ 過程 かてい により(通常 つうじょう 糞尿 ふんにょう 中 なか へと)生体 せいたい から排除 はいじょ される。排出 はいしゅつ が完全 かんぜん でない場合 ばあい 、異物 いぶつ の蓄積 ちくせき は正常 せいじょう な代謝 たいしゃ に悪影響 あくえいきょう を及 およ ぼす可能 かのう 性 せい がある。生体 せいたい からの薬物 やくぶつ の排出 はいしゅつ は腎臓 じんぞう 、肝臓 かんぞう 、肺 はい の3ヶ所 かしょ で行 おこな われる。腎臓 じんぞう は最 もっと も重要 じゅうよう な排出 はいしゅつ の場 ば であり、最終 さいしゅう 的 てき に薬物 やくぶつ は尿 にょう として排出 はいしゅつ される。胆汁 たんじゅう 中 ちゅう 排出 はいしゅつ または糞便 ふんべん 中 ちゅう 排出 はいしゅつ のプロセスはまず肝臓 かんぞう で始 はじ まり、消化 しょうか 管 かん を経 へ てその他 た の老廃 ろうはい 物 ぶつ と共 とも に糞便 ふんべん として排出 はいしゅつ される。気体 きたい の麻酔 ますい 薬 やく など肺 はい を通 とお して呼気 こき と共 とも に排出 はいしゅつ される薬物 やくぶつ もある。
腎臓 じんぞう における薬物 やくぶつ の排出 はいしゅつ は主 おも に三 みっ つの機 き 序 じょ による。
化合 かごう 物 ぶつ の潜在 せんざい 的 てき もしくは実際 じっさい の毒性 どくせい (Toxicity)も含 ふく めて議論 ぎろん される場合 ばあい には、ADME-Tox もしくはADMETと表現 ひょうげん されることがある。またコーティング剤 ざい やその他 た の賦 ふ 形 がた 剤 ざい から薬物 やくぶつ が放出 ほうしゅつ される過程 かてい を考慮 こうりょ に入 い れる場合 ばあい は放出 ほうしゅつ を表 あらわ す英語 えいご 、Liberationの頭文字 かしらもじ を取 と ってLADMEと表記 ひょうき される。
定量 ていりょう 的 てき 構造 こうぞう 物性 ぶっせい 相関 そうかん や定量 ていりょう 的 てき 構造 こうぞう 活性 かっせい 相関 そうかん の概念 がいねん を用 もち い、計算 けいさん 化学 かがく を駆使 くし してADME-Tox特性 とくせい を予測 よそく する試 こころ みが行 おこな われている。
投与 とうよ 経路 けいろ の違 ちが いはADMEに非常 ひじょう に大 おお きな影響 えいきょう を及 およ ぼす。