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かんえつ

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漢字かんじ
書体しょたい
篆刻てんこく毛筆もうひつ
かぶとこつぶん 金文きんぶん 篆書てんしょ
古文こぶん
隷書れいしょ 楷書かいしょ
行書ぎょうしょ
草書そうしょ
木版もくはん活版かっぱん
宋朝そうちょうたい 明朝体みんちょうたい 楷書かいしょたい
字体じたい
構成こうせい要素ようそ
筆画ひっかく 筆順ひつじゅん 偏旁へんぼう 六書りくしょ 部首ぶしゅ
標準ひょうじゅん字体じたい
せつぶんかい篆書てんしょたい
さましょ 石経いしきょう
かん字典じてんたいきゅう字体じたい
しん字体じたい しん字形じけい
国字こくじ標準ひょうじゅん字体じたい つね用字ようじ字形じけいひょう
漢文かんぶん教育きょういくよう基礎きそ漢字かんじ
通用つうよう規範きはん漢字かんじひょう
国字こくじ問題もんだい
当用とうよう常用漢字じょうようかんじ
同音どうおん漢字かんじによるきかえ
繁体字はんたいじ正体しょうたい - 簡体字かんたいじ
漢字かんじ廃止はいし復活ふっかつ
漢字かんじ文化ぶんかけん
なかあさこしだいしん
派生はせい文字もじ
国字こくじ 方言ほうげん のりてん文字もじ
仮名かめい たけし おんなしょ
ちぎり文字もじ おんな文字もじ 西にしなつ文字もじ
字音じおん

かんえつ(かんえつご、ベトナム: Từ Hán-Việtかんえつ)とは、ベトナムにおける漢語かんご漢字かんじ語彙ごいう。

概要がいよう

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ベトナムでは日本語にほんご朝鮮ちょうせん同様どうよう大量たいりょう漢語かんご使用しようされた。これらの語彙ごいはベトナム固有こゆう伝承でんしょうかん字音じおん使つかっているてんたんなる借用しゃくようとはことなる。

現在げんざいのベトナムでは漢字かんじそのものは使つかわれていないものの、漢語かんごかずはむしろ増加ぞうかし、現在げんざいもベトナムにおいて重要じゅうよう役割やくわりたしている。新聞しんぶんなどでは70%の語彙ごい漢語かんごであるという[1]

特徴とくちょう

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ベトナムは、中国ちゅうごくおやえん関係かんけいみとめられていないものの、日本語にほんご朝鮮ちょうせんことなって中国ちゅうごく同様どうよう声調せいちょう複雑ふくざつ音節おんせつ構造こうぞうをもった単音たんおんぶし言語げんごてき孤立こりつであったため、漢語かんごれやすく、また nhân(いん、……のために)、tuy(雖、……だが)、do(ゆかり、……によって)、cùng(とも、……とともに)などの文法ぶんぽうてき語彙ごいにも漢語かんごおお使つかわれている[2]音節おんせつでも huống hồきょう乎、なおさら)、đại khái大概たいがい)、bất đắc dĩとくやめ)などがある[3]親族しんぞく名称めいしょう他人たにんたいする呼称こしょうとしても使用しよう)にも ông(おう祖父そふ成人せいじん男子だんし)、bà(ばば祖母そぼ成人せいじん女子じょし)、 cô(しゅうと父方ちちかた叔母おば(おば)・わか女性じょせい)のように漢語かんご多用たようされるが、漢語かんごという意識いしきはほとんどなされない[4]

その一方いっぽう語順ごじゅん中国ちゅうごくことなるため、「電車でんしゃ」を「xe điệnくるまでん)」、「学校がっこう」を「trường họcがく)」のように修飾しゅうしょく修飾しゅうしょくこうおけされる現象げんしょうおおられる[5]

大学生だいがくせいを「sinh viênなまいん)」と[5]のは科挙かきょが20世紀せいきまでおこなわれていたというベトナム固有こゆう事情じじょう原因げんいんである。

かつては、西洋せいよう固有名詞こゆうめいしさえも中国ちゅうごく漢字かんじ音訳おんやくをベトナム伝承でんしょう漢字かんじおんみ、ナポレオンを Nã phá luân(拿破りん)のようにんでいたが、最近さいきん直接ちょくせつ西洋せいようおとから借用しゃくようするようになっている[6]

分類ぶんるい

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川本かわもと邦衛くにえは、現代げんだいベトナム漢語かんご中国ちゅうごく古典こてんからの借用しゃくようという狭義きょうぎにとり、それ以外いがいふくひろ意味いみ語彙ごいを「漢字かんじ」としょうしている(この記事きじでは「漢字かんじ」をふくむ)。川本かわもと漢字かんじ以下いかの5種類しゅるい分類ぶんるいしている[7]

  1. 古典こてんてき漢語かんご日本にっぽんかんからの借用しゃくようふくむ)
  2. 近代きんだい中国ちゅうごく発展はってんした語彙ごいhỏa xaしゃ)は汽車きしゃ意味いみする。
  3. 古典こてんてき漢語かんごだが、ベトナムでいちじるしくことなる意味いみつもの
  4. ベトナムで形成けいせいされた漢字かんじ語彙ごいbắc sửきた)は中国ちゅうごく歴史れきし意味いみする
  5. 重箱読じゅうばこよみ・湯桶読ゆとうよみ:áo dàiアオザイ)の áo は「ふすま」だが、dài固有こゆう。また、áo sơ-mi(シャツ)では sơ-miフランス語ふらんすご chemise借用しゃくよう

歴史れきし

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現在げんざいのベトナム北部ほくぶ紀元前きげんぜんから中国ちゅうごくけい王朝おうちょう支配しはいけ、かん文化ぶんかがベトナムにつたえられた。しかし、ふる時代じだいにはベトナムでの漢語かんご使用しよう限定げんていてきであった。ずいとう時代じだいにはふつそうあいだ漢文かんぶん知識ちしき普及ふきゅうした。本格ほんかくてき漢語かんご使つかわれるようになったのは10世紀せいき以降いこう、むしろベトナムが独立どくりつ王朝おうちょうひらいてからであった[8]。ベトナムの伝承でんしょうかん字音じおん主要しゅよう部分ぶぶんはこのころに成立せいりつしたとかんがえられる。

15世紀せいき前期ぜんきはじむあさ時代じだいには中国ちゅうごく影響えいきょうけたけいりつつくられ、科挙かきょ制度せいど完成かんせいされた[9]

漢字かんじ廃止はいししてから、漢語かんご固有こゆうきかえることもおこなわれたが(飛行機ひこうきphi cơ)から máy bayあらためるなど)[6]あらたにつくられた漢語かんごもある(máy vô tuyến truyền hình無線むせんでんがた、テレビ)など)[10]

言語げんご漢字かんじとのちが

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日本語にほんご朝鮮ちょうせんにおける漢字かんじにももと中国ちゅうごくにない単語たんご表現ひょうげんがあるように、かんえつにもベトナム特有とくゆう表現ひょうげんがある。たとえばキリスト教きりすときょうの「牧師ぼくし」については「linh mụcれいまき)」と表現ひょうげんするが、これは漢字かんじ文化ぶんかけんにはないものである。また、漢字かんじ文化ぶんかけんでの「理論りろん」の意味いみ対応たいおうする言葉ことばを「lý thuyếtせつ)」と表記ひょうきするが、これは古代こだい中国語ちゅうごくごにあった単語たんごを「theory」の訳語やくごとしてもちいたものである。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく公式こうしき名称めいしょうは「Hoa Kỳはな)」とばれ、こちらは中国ちゅうごくでは米国べいこく国旗こっき表現ひょうげんである。

単語たんごおな意味いみまったちがったり語彙ごい意味いみあたらしくわった場合ばあいがある。ベトナムの「giám đốc監督かんとく)」は「理事りじ」を意味いみする。また、「sinh viênなまいん)」という表現ひょうげんむかし過去かこ試験しけん準備じゅんびする受験生じゅけんせい意味いみする言葉ことばであったが、いまでは「大学生だいがくせい」の意味いみ使つかわれている。

和製わせい漢語かんごはベトナムにも導入どうにゅうされ、中国ちゅうごくやベトナムとも共通きょうつうしている。しかし、中国ちゅうごくやベトナムにおいて語彙ごいすで存在そんざいしていた場合ばあい和製わせい漢語かんご淘汰とうたされたケースも存在そんざいする。このような場合ばあい日本語にほんご朝鮮ちょうせんのみで共通きょうつう語彙ごいもちいられ、中国ちゅうごくおよびベトナムではことなる語彙ごいもちいられている。全体ぜんたいてき西欧せいおう由来ゆらい概念がいねん語彙ごい抽象ちゅうしょう語彙ごい共通きょうつうであるのにたいし、具体ぐたいてき語彙ごいことなる表現ひょうげんであることがおおい。

日本語にほんごとベトナムとで意味いみことなる「同型どうけい異義いぎ」のれい
日本語にほんご ベトナム
チュ・クオック・グー 常用漢字じょうようかんじ
医師いし bác sĩ, bác sỹ 博士はかせ
地図ちず bản đồ 版図はんと
博物館はくぶつかん bảo tàng 宝蔵ほうぞう
デモ biểu tình 表情ひょうじょう
学士がくし cử nhân きょじん
能力のうりょく khả năng 可能かのう
裏切うらぎること phản phúc 反覆はんぷく
手段しゅだん phương tiện 方便ほうべん
大学生だいがくせい sinh viên なまいん
事故じこ tai nạn 災難さいなん
天気てんき thời tiết 時節じせつ
図書館としょかん thư viện 書院しょいん
博士はかせ tiến sĩ, tiến sỹ 進士しんし
ベトナム独特どくとくの「えつせい漢語かんご」のれい
日本語にほんご ベトナム
チュ・クオック・グー 常用漢字じょうようかんじ
マルチメディア đa phương tiện 方便ほうべん
特殊とくしゅ部隊ぶたい đặc công 特攻とっこう
領海りょうかい hải phận うみ
ほこりにおもうこと hãnh diện 倖面
マスク khẩu trang くちそう
性的せいてき虐待ぎゃくたい lạm dụng tình dục 濫用らんよう情慾じょうよく
丁寧ていねい lịch sự れきごと
犠牲ぎせいしゃ nạn nhân なんひと
芸術げいじゅつ nghệ sỹ, nghệ sĩ げい
ラジオ放送ほうそう phát thanh 発声はっせい
音訳おんやく phiên âm こぼしおん
もの交通こうつう手段しゅだん phương tiện giao thông 方便ほうべん交通こうつう
刑務けいむかん quản giáo かんきょう
性交せいこう quan hệ tình dục 関係かんけい情慾じょうよく
重要じゅうよう quan trọng せきしげる
またね、さようなら tạm biệt 暫別
美容びよういん thẩm mỹ viện 審美しんびいん
刑務所けいむしょ trại giam 寨監
テレビ truyền hình つてがた
看護かんご y tá
にちちゅうちょうえつ比較ひかくしたれい
日本語にほんご 朝鮮ちょうせん 中国ちゅうごく ベトナム
飛行機ひこうき 비행기 / 飛行機ひこうき 飞机 / máy bay / 𣛠𩙻
phi cơ /
汽車きしゃ 기차 / 汽車きしゃ 车 / しゃ tàu hỏa / 艚火
野球やきゅう 야구 / 野球やきゅう ぼうだま bóng chày / 𣈖もち
会社かいしゃ 회사 / 會社かいしゃ 公司こうし công ty / 公司こうし
写真しゃしん 사진 / 寫眞しゃしん あきらへん nhiếp ảnh / かげ
映画えいが 영화 / うつ 电影 / でんかげ điện ảnh / でんかげ
空港くうこう 공항 / 空港くうこう つくえ场 / じょう sân bay / 𡓏𩙻
phi trường / じょう
時間じかん 시간 / 時間じかん 时间 / 時間じかん thời gian / 時間じかん
えき 역 / えき gaフランス語ふらんすごgare由来ゆらい

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 川本かわもと(1979) p.2
  2. ^ グエン・タイ・カン(1987) p.458
  3. ^ 三根みねたに(1993) p.184
  4. ^ 川本かわもと(1987) p.476
  5. ^ a b 冨田とみた(1988) pp.782-783
  6. ^ a b グエン・タイ・カン(1987) p.461
  7. ^ 川本かわもと(1979) p.1
  8. ^ 三根みねたに(1993) p.201
  9. ^ 桜井さくらいゆかり躬雄「亜熱帯あねったいのなかの中国ちゅうごく文明ぶんめい」『東南とうなんアジア 1.大陸たいりく山川やまかわ出版しゅっぱんしゃ新版しんぱん 世界せかい各国かっこく 5〉、1999ねん、188-190ぺーじ 
  10. ^ 川本かわもと(1987) p.480

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 川本かわもと邦衛くにえ現代げんだいベトナム 漢語かんご・「漢字かんじ語彙ごいしゅう』 I、特定とくてい研究けんきゅう言語げんご生活せいかつ充実じゅうじつ発展はってんさせるための教育きょういくかんする基礎きそてき研究けんきゅう文字もじ言語げんごはん文字もじ言語げんご 研究けんきゅう資料しりょう 4〉、1979ねん 
  • 川本かわもと邦衛くにえ ちょえつみなみじん決断けつだん」、橋本はしもと, 萬太郎まんたろう鈴木すずき, 孝夫たかお山田やまだ, なおいさむ へん漢字かんじ民族みんぞく決断けつだん大修館書店たいしゅうかんしょてん、1987ねん、469-481ぺーじISBN 4469220493 
  • グエン・タイ・カン ちょ漢字かんじ文化ぶんかとベトナム」、橋本はしもと, 萬太郎まんたろう鈴木すずき, 孝夫たかお山田やまだ, なおいさむ へん漢字かんじ民族みんぞく決断けつだん大修館書店たいしゅうかんしょてん、1987ねん、443-468ぺーじISBN 4469220493 
  • 冨田とみた健次けんじ「ヴェトナム」『言語げんごがくだい辞典じてん』 1かん三省堂さんせいどう、1988ねん、759-787ぺーじ 
  • 三根みねたにとおる中古ちゅうこおんこしみなみかん字音じおん汲古書院しょいん、1993ねんISBN 4762924601 

関連かんれん項目こうもく

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