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かたこり

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
僧帽筋の位置と部分。僧帽筋 上部線維、僧帽筋 中部線維、僧帽筋 下部線維
かたこりはおもそうぼうすじこる。

かたこりかた、かたこり)とは、症候しょうこうめいのひとつ。かただけでなく、くびこごることがおおい。「かたる」ともう。おもそうぼうすじこる症状しょうじょう[1]厚生こうせい労働省ろうどうしょうによる国民こくみん生活せいかつ基礎きそ調査ちょうさ(2015年度ねんど)におけるゆう訴者りつおとこの2おんなの1める症状しょうじょうである(おとこの1おんなの2とも腰痛ようつう)。

概念がいねん

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こう頸部からそうぼうすじエリアのしょすじしょうじる主観しゅかんてきまったような、こわばったかんじや不快ふかいかん・こりかん重苦おもくるしさやいたみにいたる症候しょうこう総称そうしょうである。頭痛ずつうともなうことがある[1]日本にっぽんでは「かたこり」という名称めいしょうにより「かた」を表現ひょうげんもちいられているが、これは日本にっぽん独特どくとくのものでどう症状しょうじょうしょ外国がいこくではくび背中せなか疾患しっかんとしてしめしていることが多数たすうである。

また頸肩うで症候群しょうこうぐん初期しょき症状しょうじょうである場合ばあいもある。

原因げんいん

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この症状しょうじょうたいする原因げんいんには諸説しょせつあるものの、確定かくていてき診断しんだん方法ほうほう治療ちりょうほうはなく、腰痛ようつうなどとならんで不明ふめいてんがとてもおお疾患しっかんとなっている。

長時間ちょうじかんくび背中せなか緊張きんちょうするような姿勢しせいをとりつづけたり、猫背ねこぜまえかがみなどの姿勢しせいわるさ、ショルダーバッグ冷房れいぼうなどが原因げんいんとされる[1]。それらが原因げんいんあたまうでささえるそうぼうすじやその周辺しゅうへん筋肉きんにくかたかぶときょすじ上後うえごのこすじ菱形ひしがたすじぐんいたじょうすじ脊柱せきちゅう起立きりつすじ)の持続じぞくてき緊張きんちょうによって筋肉きんにくかたくなり、局所きょくしょ循環じゅんかん障害しょうがいこる。それによって酸素さんそ栄養分えいようぶん末端まったんまでとどかず、疲労ひろう物質ぶっしつ蓄積ちくせきしこれが刺激しげきとなってかたこりをこすとかんがえられている。 あるいは、筋肉きんにくつつすじまく出来できしわ(しわ)が原因げんいんとなる場合ばあいもあることが、最近さいきんかってきた。これらは原発げんぱつせいかたこりとわれる。それにたいし、症候しょうこうせいかたこりとわれるかたこりがある。ある疾患しっかんによってこるかたこりであり、頚椎けいついせいしんいんせい疾患しっかんかた関節かんせつ疾患しっかん心肺しんぱい疾患しっかんあご関節かんせつ疾患しっかん耳鼻じび疾患しっかんによる場合ばあいなどがある。

症状しょうじょう

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  • そうぼうすじエリア(とくかた上部じょうぶ)の局部きょくぶあつつうからはじまる。そうぼうすじかた上部じょうぶではあつみがあり、それもかたこりのおおきな一因いちいんとなっている。
  • 進行しんこうするとあつ痛点つうてんやこりをかんじる部位ぶい拡大かくだいする。
  • 筋肉きんにく持続じぞくてき緊張きんちょうによりあつつう部位ぶい拡大かくだいし、深層しんそうすじかたかぶときょすじとげうえすじ菱形ひしがたすじ脊柱せきちゅう起立きりつすじぐん上後うえごのこすじ)にまでりが拡大かくだいすると「しんったようなり」としてかんじられ、筋肉きんにくがこわばり、重苦おもくるしさをかんじるようになる。
    • 主観しゅかんてきには頸部~かた上部じょうぶに「ズシーンとしたかんじ」「なにかものがのっているかのようなかんじ」やかたかぶとこつ脊柱せきちゅうあいだかたかぶとあいだ)やかたかぶとこつ内側うちがわさいに「鉄板てっぱんはいったようなかんじ」としてかんじられることがおおい。
  • 重苦おもくるしさを放置ほうちするといたみをかんじるようになり(「首筋くびすじまでいたい」「りすぎて背中せなかいたくてねむれない」)、進行しんこうすると緊張きんちょうせい頭痛ずつう顔面がんめん上肢じょうし関連かんれんつうしょうじるようになる。

診断しんだん

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  • 触診しょくしん愁訴しゅうそあつつうすじ緊張きんちょうかたゆいり)などがられる。
  • 頸椎椎間板ついかんばんヘルニアなどがないか、Xせん写真しゃしんCTなどで鑑別かんべつすることもある。

治療ちりょう

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薬物やくぶつ療法りょうほう
消炎しょうえん鎮痛ちんつうざい内服ないふくまたは外用がいよう)・すじ弛緩しかんざいこう不安ふあんざいなどがもちいられる。この医薬品いやくひんとして代表だいひょうてきなものは湿布しっぷ(サロンパス、トクホン)、エチゾラム(デパス®)などがある。
症状しょうじょうつよいときはあつ痛点つうてん(トリガー・ポイント)注射ちゅうしゃ神経しんけいブロックおこなわれる。
理学りがく療法りょうほう
鍼灸しんきゅう各種かくしゅ手技しゅぎ療法りょうほう運動うんどう療法りょうほう吸玉すいだま、カッピング療法りょうほう瀉血しゃけつ療法りょうほうマッサージストレッチ温熱おんねつ療法りょうほうみず治療ちりょうほう電気でんき療法りょうほうなどがおこなわれる。
たすきけがかたこりの症状しょうじょう緩和かんわする可能かのうせい示唆しさされている[2]

言語げんご文化ぶんかと「かたこり」

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  • かたこごる」という言葉ことばは、夏目なつめ漱石そうせきによる造語ぞうごとのせつ[ちゅう 1]があり[ちゅう 2]、さらに、それ以前いぜんはいわゆるかたこりの症状しょうじょうとく用語ようご日本語にほんごになく、漱石そうせきが「かたこり」という言葉ことばつくって、その症状しょうじょう自覚じかくするようになったとの言説げんせつがある[3]
    • しかしながら、『もん』の発表はっぴょうとほぼどう時期じきには、「かたこごる」を現代げんだいおな用法ようほう使用しようしているれい[ちゅう 3]られるし、それ以前いぜんより、「痃癖けんぺきり」といった表現ひょうげんられるため、この表現ひょうげん源流げんりゅう漱石そうせきのみにするのは疑問ぎもんがある。
    • また、『それ以前いぜんはいわゆるかたこりの症状しょうじょうとく用語ようご日本語にほんごにない』なる言説げんせつは、『もん以前いぜんにも樋口ひぐち一葉かずはが「かたる」と表現ひょうげんもちいており、また、そもそも、1686ねんには、当時とうじ医学いがくしょ病名びょうめい彙解』において「痃癖けんぺき」として紹介しょうかいされており、その俗語ぞくごが「うちかた」であるとの記述きじゅつがあって、妥当だとうとはいえない。したがって、「かたこり」と言葉ことばまれたゆえ、その症状しょうじょう自覚じかくするようになったと言説げんせつは、正確せいかくせいく。
  • 日本語にほんごにおいては、疲労ひろうなどを原因げんいんとする頚部けいぶ周辺しゅうへん不快ふかいかんいたみを、単純たんじゅんに「かたこり」といいあらわせるために、社会しゃかいてき認知にんち対処たいしょほうへの関心かんしん共有きょうゆうされているともかんがえられており、ぎゃくに、そのような言葉ことばがない言語げんご文化ぶんかけんには「かたこり」はないともわれる[4]。このような言語げんご文化ぶんか特有とくゆう症状しょうじょうれいとしてフランス以外いがいではまれにしか報告ほうこくされないおもあしフランス語ふらんすごばん(jambes lourdes)が世界せかいてきには有名ゆうめいである。フランスでは日本にっぽんでのかたこりとおなじようにおもあしなおすための民間みんかん療法りょうほうなどもおお存在そんざいしている。
  • 英語えいごではかたこりを「stiff neck」「tight shoulders」「shoulder discomfort」「shoulder stiffness」などと表現ひょうげんする。以前いぜんはこのような種々しゅじゅ表記ひょうきられたが、コンピュータースマートフォン普及ふきゅう欧米おうべいでもかたこりがえると、論文ろんぶん最近さいきんは「neck pain」と表記ひょうきされることがおおい。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ もん』(1910ねん新聞しんぶん掲載けいさい)の以下いか箇所かしょ初出しょしゅつとされる。
    「もうすこほう」とべいうったえるようにった。そうすけこめおもところちつくまでには、さんもそこここと位置いちえきえなければならなかった。ゆびしてみると、頸とかた継目つぎめすこ背中せなかった局部きょくぶが、いしのようにっていたべいおとこちからいっぱいにそれをおさえてくれとたのんだ。 — 夏目なつめ漱石そうせきもん
  2. ^ かたこりのクスリ”. メディカルαあるふぁ. BS-TBS. 2022ねん3がつ29にち閲覧えつらん,
    つい発見はっけんかたこりのなぞ”. 必見ひっけん! がテン!?ライブラリー. 日本にほんテレビ (1997ねん6がつ1にち). 2022ねん3がつ29にち閲覧えつらん,
    週刊しゅうかん現代げんだい編集へんしゅう (2019ねん3がつ9にち). “かたこり」という言葉ことばひろめたのはだれか、ごぞんじですか?”. 現代げんだいビジネス. 講談社こうだんしゃ. 2022ねん3がつ29にち閲覧えつらんなど。
  3. ^
    一體いったいとう詩賦しふ文章ぶんしょう時代じだいで、經學けいがくごとかたこごものはいやひであつた。 — 狩野かの直喜なおき、『日本にっぽん國見くにみざい書目しょもくろくいて』(1910ねん)

出典しゅってん

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  1. ^ a b c 公益社こうえきしゃだん法人ほうじん 日本整形外科学会にほんせいけいげかがっかいかたこり」
  2. ^ Furukawa, Yuki. “Tasuki for neck pain: An individually-randomized, open-label, waiting-list-controlled trial” (英語えいご). Journal of Occupational Health n/a (n/a). doi:10.1002/1348-9585.12097. ISSN 1348-9585. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/1348-9585.12097. 
  3. ^ かたこりの歴史れきし”. ロイヒシリーズ. ニチバン株式会社かぶしきがいしゃ. 2023ねん9がつ14にち閲覧えつらん
  4. ^ 矢野やのただしかたこり」とその背景はいけい」『全日本ぜんにほん鍼灸しんきゅう学会がっかい雑誌ざっしだい46かんだい2ごう全日本ぜんにほん鍼灸しんきゅう学会がっかい、1996ねん、91-95ぺーじCRID 1390282679520824960doi:10.3777/jjsam.46.91ISSN 0285-9955 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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