顔かお

顔かお
女性じょせいの顔かおを描えがいた絵画かいが（モナ・リザより）
ラテン語らてんご	faciesa
英語えいご	Face
動脈どうみゃく	顔面がんめん動脈どうみゃく
静脈じょうみゃく	顔面がんめん静脈じょうみゃく
神経しんけい	顔面がんめん神経しんけい

レオナルド・ダ・ヴィンチが描えがいた男性だんせいの横顔よこがお

一般いっぱんに顔かお（かお、かんばせ、英えい: face）とは、頭部とうぶの正面しょうめん、前面ぜんめんを指さす。「面めん（つら）」「面めん（おもて）」ともいう。解剖かいぼう学がくで「顔面がんめん」は、特とくに目めから下したの部分ぶぶんをさす。

ヒトの顔かおには重要じゅうような感覚かんかく器きである眼め、耳みみ、鼻はな、口くちなどが集あつまり、かつ全体ぜんたいが左右さゆう対称たいしょうになっている。視覚しかく、聴覚ちょうかく、嗅覚きゅうかくなどで周囲しゅういの環境かんきょう情報じょうほうを取得しゅとく、状況じょうきょうを把握はあくし、さらに呼吸こきゅうや食事しょくじという生命せいめい維持いじに不可欠ふかけつな活動かつどうを行おこなっている。口くちは発声はっせい・会話かいわによるコミュニケーションで中心ちゅうしん的てきな役割やくわりを果はたす。

また顔かおつきと、顔かおのたくさんの小ちいさい筋肉きんにく（浅あさ頭あたま筋すじ）とそれらをコントロールした微細びさいな動うごきが作つくり出だす微妙びみょうな表情ひょうじょうは、他人たにんから見みた印象いんしょうを左右さゆうする、他たの動物どうぶつには見みられない複雑ふくざつさがある。表情ひょうじょうは感情かんじょうと密接みっせつに関連かんれんしており、意図いと的てきに表情ひょうじょうを作つくることもできるが、完全かんぜんにコントロールすることは難むずかしい。ヒトにとって表情ひょうじょうは言葉ことば（言語げんご）を用もちいない非ひ言語げんごコミュニケーションの代表だいひょうであり複雑ふくざつな社会しゃかい的てきコミュニケーションを可能かのうとさせている。

人間にんげんの顔かおは眉毛まゆげ・まつ毛げ、また産毛うぶげを除のぞけば毛けがなく、肌はだが露出ろしゅつしており、主おもに成人せいじん男性だんせいの顔かおには部分ぶぶん的てきに髭ひげが生はえる。横よこから見みた顔かおは、横顔よこがお（よこがお）という。

人間にんげんの顔かお

人間にんげんの、頭部とうぶの正面しょうめんの大だい部分ぶぶんを顔かおと呼よぶ。

下したは顎あごの先端せんたんから上うえは頭髪とうはつの生はえ際ぎわまで、左右さゆうは耳みみまでがほぼ顔かおである。子供こどもの顔かおは眉毛まゆげ以外いがいに濃こい毛けの生はえた部分ぶぶんがない。たいてい女性じょせいでは成長せいちょうしてもほぼそのままであるが、男性だんせいでは口くちの周まわりから顎あごにかけて髭ひげが生はえる。ただし、その面積めんせき、範囲はんいや毛けの生はえ方かたの粗密そみつ、濃淡のうたんなどは人種じんしゅによっても、個人こじんによっても大おおきな差異さいがある。

顔かおには眼めが左右さゆうに並ならんでいる。その上うえに眉まゆがある。眉まゆの上うえから頭髪とうはつまでの間あいだが額がくである。両りょう眉まゆの間あいだは眉間みけんといい、眉間みけんから下したに鼻はなが出でている。鼻はなの下したに口くちがあり、その下したが顎あごである。鼻はなや唇くちびるの左右さゆうを頬ほおという。

顔かおの役割やくわり

顔かおが形成けいせいされることによる効果こうかは、感覚かんかく器きの集約しゅうやくである。首くびを動うごかすことで感覚かんかく器きの利用りようがたやすくなる。人間にんげんの顔かおは平面へいめん的てきであり、両目りょうめが同一どういつの平面へいめんに並ならぶことで、両りょう眼め視しによるより精密せいみつな視覚しかくが得とく易やすくなる一方いっぽう、草食そうしょく動物どうぶつのような広ひろい視界しかいは失うしなわれている。

顔かおの前面ぜんめんに稼働かどうする感覚かんかく器きが集あつまっていることと、顔面がんめんによる個体こたいの識別しきべつの副産物ふくさんぶつでもあるが、表情ひょうじょうなどの視覚しかく情報じょうほうをより豊ゆたかすることが可能かのうとなった。人ひとの顔かおの毛けがなくなっているのは、サル類るい全体ぜんたいにわたる進化しんかの傾向けいこうの延長えんちょう上じょうにあるが、眉毛まゆげの発達はったつは、ヒトに独特どくとくである。眉毛まゆげは汗あせが目めに入はいるのを防ふせぐ効果こうかがあると考かんがえられているが、表情ひょうじょうに明あきらかな変化へんかをつける役割やくわりも担になっている。

顔かおには個人こじんを特定とくていする識別子しきべつしとなるなど、社会しゃかい的てきな役割やくわりもある。対人たいじん場面ばめんでは表情ひょうじょうによるコミュニケーション以外いがいにも、皺しわや血色けっしょくといった肌はだのテクスチャや顔かおの造形ぞうけいによって、性別せいべつや推定すいてい年齢ねんれい、イメージ、精神せいしん・健康けんこうの状態じょうたい、といった様々さまざまな情報じょうほうを伝つたえる。

形かたちや見みた目め

頭あたまが丸まるいことを「丸まる顔がお」、縦長たてながだと「面長おもなが顔がお」や「細ほそ顔がお」など、頭あたまの形かたちを顔かおで表現ひょうげんする。 また、1980年代ねんだいの一時期いちじき、タレントのタモリが西洋せいよう風ふうや東南とうなんアジア風ふうの濃こい顔立かおだちのことを「ソース顔がお」、涼すずしげで薄うすい顔立かおだちを「しょうゆ顔がお」などと表現ひょうげんしていたが、2010年代ねんだいになり細分さいぶん化かされこの表現ひょうげんが復活ふっかつした。

発達はったつ心理しんり学がく者もので中央大学ちゅうおうだいがく教授きょうじゅの山口やまぐち真美まみらの研究けんきゅうでは、男性だんせい的てきと評価ひょうかされる顔かお（男おとこ顔がお）は、眉まゆと目めの間あいだが狭せまく、顔かおの横よこ幅はばに比くらべて口くちが大おおきく、瞳孔どうこう間あいだの距離きょりに比くらべて顔かおの立だて幅はば長ながい特徴とくちょうを持もつ。対たいして女性じょせい的てきと評価ひょうかされる顔かお（女おんな顔がお）には、上唇うわくちびるが薄うすく、眉山びざんの位置いちが外側そとがわにあり、頬ほおの面積めんせきが大おおきく、眉まゆの面積めんせきが小ちいさく、眉まゆが下さがっている特徴とくちょうがある。

いずれにせよ、ヒトの美醜びしゅうを評価ひょうかする場合ばあい、その重要じゅうような特徴とくちょうのひとつは顔かおの造作ぞうさくであり、美男びなん、美女びじょ、あるいは美人びじん、美形びけいという場合ばあい、その人物じんぶつの顔かおについて言いわれることが多おおい。 また、美形びけいな男性だんせいのことをイケメンと言いうことがある。 どのような形かたちが美うつくしいかは、文化ぶんかによって、また時代じだいによっても異ことなる。例たとえば日本人にっぽんじんは頬骨ほおぼねやあご骨こつが発達はったつしていない顔かおを美人びじんとする傾向けいこうがある。その一方いっぽう、頬骨ほおぼねが発達はったつしにくい欧米おうべい人じんは逆ぎゃくに頬骨ほおぼねを張はっている方ほうが美人びじんとする向むきがあり頬骨ほおぼねを嵩上かさあげする整形せいけい手術しゅじゅつの方ほうが多おおい。 顔かおの見みた目めはヒトにより評価ひょうかが様々さまざまだが、魅力みりょく的てきな顔かおが持もつ特徴とくちょうについては、さまざまな観点かんてんで研究けんきゅうが行おこなわれている（美人びじんの項こうを参照さんしょう）。

近年きんねん、身長しんちょう、体格たいかくに比ひして小ちいさい顔かお「小顔こがお」を好このましいこととしてそれを求もとめる風潮ふうちょうがある。一方いっぽうで北米ほくべい圏けんにおいては「脳のうが小ちいさい」というイメージを与あたえるため「小顔こがお」という概念がいねんは寧むしろネガティブなイメージを与あたえる。

顔かおの大おおきさと特徴とくちょうを持もった細工ざいく物ぶつを面めん、あるいは仮面かめん、マスクという。

動物どうぶつの顔かお

動物どうぶつの顔かおの形状けいじょうは様々さまざまである。サル目めは一般いっぱん的てきに平面へいめんな顔面がんめんを持もち、これはサル目めの特徴とくちょうである。原猿げんえん類るいでは顔面がんめんが毛けで覆おおわれているが、真猿しんえん類るいでは顔面がんめんは、ある程度ていどの範囲はんいで毛けを失うしない、肌はだが露出ろしゅつしている。ヒトはこの無む毛けの傾向けいこうがより極端きょくたんである。

他たのほ乳類にゅうるいでは、ネコ類るいがやや正面しょうめんに眼めが配置はいちし、顔面がんめんらしい形かたちを作つくる。鳥類ちょうるいではフクロウ類るいがこれに近ちかい。これらは両りょう眼め視しで獲物えものまでの距離きょりをとらえる必要ひつようから発達はったつしたものと思おもわれる。愛玩あいがん犬けんの一部いちぶを除のぞいたイヌ類るいや偶蹄ぐうてい目め、奇き蹄目の多おおくは鼻はなが尖とがっている。また草食そうしょく動物どうぶつの多おおくは目めが離はなれており、より広ひろい視界しかいを持もつ。

顔かおの認識にんしき

顔かおを見みるよう指示しじされた人ひとの脳のう内ないで血ち流りゅうの増加ぞうかしている部位ぶい。fMRIによる画像がぞう化か。

脳のう内ないで顔かおの情報じょうほうの処理しょりと関かかわりが深ふかいことが知しられている部位ぶいとして紡錘ぼうすい状じょう回かいがある。紡錘ぼうすい状じょう回かいは、後こう頭あたま葉はの一いち次じ視覚しかく野のの前ぜん下方かほうに位置いちする、腹はら側がわ視覚しかく路ろの一部いちぶを構成こうせいする脳のう回かいである。

他人たにんの顔かおや表情ひょうじょうを検出けんしゅつできなくなったり、記憶きおくできなくなる障害しょうがいとして、相貌そうぼう失しつ認みとめと呼よばれる症候しょうこうがある。相貌そうぼう失しつ認みとめになった人ひとには、顔かおの各かく部品ぶひんの認知にんちが行おこなえるのに（たとえば、この写真しゃしんの人ひとは眉毛まゆげが濃こい、鼻はなが高たかい、など）、その人物じんぶつが誰だれであるかが分わからない、といった事ことが起おきる。例たとえば自分じぶんや自分じぶんの家族かぞくの写真しゃしんを見みせられた時とき、肌はだが白しろい、おでこが広ひろい、といったことは判断はんだんできるのに、それが誰だれの写真しゃしんなのか分わからない、といったことが起おきる。これは先天的せんてんてきな疾患しっかんとしても、後天的こうてんてきな脳のうの損傷そんしょうによっても引ひき起おこされる。

建物たてものなどで、やや高たかいところに窓まどが2つ並ならんでいると、顔かおに見みえることがある。また、人ひとは、天井てんじょうのしみなどに幾何きか学がく模様もようがあると、その中なかに顔かおらしいものを見分みわける場合ばあいがある。これは類るい像ぞう現象げんしょうとも呼よばれている。この現象げんしょうは木々きぎや雲くも、湖面こめん、岩いわや火星かせいの山やまに対たいしても起おきる。人類じんるい学者がくしゃスチュアート・ガスリーはこれが文化ぶんか普遍ふへん的てきな現象げんしょうであることを突つき止とめた。このような現象げんしょうは、人ひとには複雑ふくざつなパターンから顔かおを優先ゆうせん的てきに見分みわける（時ときには誤作動ごさどうする）生得しょうとく的てきな機能きのうがあるため、と考かんがえる研究けんきゅう者しゃもいる。心霊しんれい写真しゃしんの多おおくもこの現象げんしょうによって説明せつめいできると、多おおくの心理しんり学者がくしゃは考かんがえている。のだという。

最近さいきんのデジタルカメラでは顔かお認識にんしきという機能きのうを持もつ機種きしゅも登場とうじょうした。画面がめん上じょうから顔かおと判断はんだんできるパターンを探さがし、自動的じどうてきにそれにピントを合あわせる、というものである。

顔かおと人望じんぼう

顔かおの美うつくしさは重要じゅうようである。なぜなら、顔かおはその人ひとがどの程度ていど出世しゅっせするかを予測よそくする最大さいだいの要因よういんになり得えるからである。顔かおの美うつくしさは、つばの広ひろい帽子ぼうし、レチノイドローション、敏感びんかん肌はだ用ようの洗顔せんがん料りょう、保湿ほしつ剤ざい、SPF30以上いじょうの日焼ひやけ止どめなどで守まもるべきである。

文化ぶんかにおける顔かお

顔かおを使つかった慣用かんよう句く

顔かおはその人物じんぶつを代表だいひょうするものとして扱あつかわれる。

顔かおを出だす

その場ばに登場とうじょうすること。

顔かおが広ひろい

交友こうゆう関係かんけいが幅広はばひろい様よう。

大おおきな顔かおをする

その場ばで尊重そんちょうされるべきことを示しめす

顔かおに泥どろを塗ぬる

自分じぶんの行為こういの結果けっかとして、他人たにんの面目めんぼくをつぶすこと。他人たにんに恥はじをかかせること。「顔かおを潰つぶす」、「顔かおを汚けがす」もほぼ同おなじ意味いみ。

また、顔かおの表情ひょうじょうが対人たいじん関係かんけいにおいて重要じゅうようであることから表情ひょうじょうや感情かんじょうを指さす場合ばあいもある。

顔かおに書かいてある

言いわなくても、感情かんじょうや気持きもちが表情ひょうじょうに出でているさま。

仏ふつの顔かおも三さん度ど

どんなに温厚おんこうな人ひとでも、ひどいことをされればいつか腹はらを立たてるものだ。仏様ほとけさまであっても、顔かおを3回かいもなでられると腹はらを立たてるということから。三さん度ど「まで」は誤用ごよう。

表情ひょうじょうや感情かんじょうの変化へんかによって温度おんどや色いろが変かわることがあることから以下いかのような言葉ことばもある。

顔色かおいろ（かおいろ）を窺うかがう。

相手あいての気持きもちを読よもうとする。「伺う」は誤記ごき。

顔色かおいろ（がんしょく）を失うしなわせる。

驚おどろきによって表情ひょうじょうが失うしなわれる。

顔かおから火ひが出でる

ひどく恥はずかしい思おもいをする。恥はじの感情かんじょうのあまり顔がおが火照ほてる様子ようすを、火ひが出でたことになぞられたい方いかた。

顔かおに紅葉こうようを散ちらす

女性じょせいなどが恥はずかしがって顔かおを赤あからめること。

また、「顔役かおやく」「番組ばんぐみの顔かお」「朝あさの顔かお」など、ある特定とくていの分野ぶんやなどを代表だいひょうする人物じんぶつやものを「顔かお」と評ひょうすることがある。

顔かおをテーマにした楽曲がっきょく

• サザンオールスターズ『顔かお』（アルバム「KAMAKURA」収録しゅうろく）

男おとこが自分じぶんの顔かおに対たいするコンプレックスをテーマに歌うたわれている。

• 東京とうきょう事変じへん『顔かお』(シングル「群青ぐんじょう日和びより」収録しゅうろく)
• RHYMESTER『This Y'all That Y'all』（シングル「ロイヤル・ストレート・フラッシュ」収録しゅうろく）
• 長渕ながぶち剛つよし 『顔かお』(アルバム乾杯かんぱい収録しゅうろく)

参考さんこう文献ぶんけん

• 高木たかぎ修おさむ、大坊だいぼう郁夫いくお（編へん）、2001、「顔かおと美びの行動こうどう学がく」、『化粧けしょう行動こうどうの社会しゃかい心理しんり学がく』、北大路きたおおじ書房しょぼう〈21世紀せいきの社会しゃかい心理しんり学がく〉 ISBN 4762822264

関連かんれん項目こうもく

• シミュラクラ現象げんしょう
• 化粧けしょう

外部がいぶリンク

• 日本にっぽん顔がお学会がっかい：1995年ねん発足ほっそく。学際がくさい的てきな「顔かお学がく」を研究けんきゅうする、世界せかいでも先駆せんく的てきな団体だんたいとしている。
• 能面のうめん 長澤ながさわ重春しげはる能面のうめん集しゅう