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菜種油なたねあぶら

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
キャノーラ
100 gあたりの栄養えいよう
94.5 g
飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん 6.61 g
一価いっか飽和ほうわ 62.6 g
あたい飽和ほうわ 25.3 g
7.45 g
17.8 g
ビタミン
ビタミンE
(115%)
17.3 mg
成分せいぶん
パルミチンさん(16:0) 3.86 g
ステアリンさん(18:0) 1.66 g
オレインさん(18:1) 60.3 g
%はアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける
成人せいじん栄養えいよう摂取せっしゅ目標もくひょう (RDI割合わりあい
出典しゅってん: USDA栄養えいようデータベース英語えいご

菜種油なたねあぶら(なたねあぶら、なたねゆ、えい: rapeseed oil)とは、おもセイヨウアブラナから採取さいしゅした植物しょくぶつ油脂ゆし一種いっしゅ食用しょくようおよ食品しょくひん加工かこうよう使つかわれる。かつては灯火ともしび燃料ねんりょうとしても利用りようされた。2016ねんぜん世界せかいにおける植物しょくぶつ生産せいさんりょうは、パームだい豆油菜種油なたねあぶらひまわりじゅんで3番目ばんめとなっている[1]日本にっぽんでは菜種油なたねあぶら食用しょくようぜん生産せいさんりょうの6わりめている[2]

キャノーラ (えい: canola oil) は、菜種油なたねあぶらのうち、品種ひんしゅ改良かいりょうによって融点ゆうてん比較的ひかくてきたかエルカさん(エルシンさん)とグルコシノレートふくまないキャノーラ品種ひんしゅから採油さいゆされたものである。カナダで開発かいはつされたためこのけられた[3]。したがって、菜種油なたねあぶらとキャノーラ厳密げんみつにはおなじものではない。一方いっぽう日本にっぽん食用しょくようけの国産こくさんおもにエルカさんふくまないエルカさん品種ひんしゅから搾油さくゆされているため、菜種油なたねあぶら呼称こしょう一般いっぱんてきである。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

菜種油なたねあぶらてんぷら使つかうと独特どくとく風味ふうみがあり、日本にっぽんをはじめひがしアジアで古来こらいから食用しょくようとされてきた。一方いっぽう、アメリカでは食用しょくよう禁止きんしされ、認可にんかされたのはキャノーラが流通りゅうつうしだした1985ねんである。

脂肪酸しぼうさん組成そせい[編集へんしゅう]

食用しょくよう必須ひっす脂肪酸しぼうさん[4]

アメリカで菜種油なたねあぶら禁止きんししていたのは、従来じゅうらい品種ひんしゅから採取さいしゅした菜種油なたねあぶらには、過剰かじょう摂取せっしゅにより心臓しんぞう障害しょうがい誘引ゆういんするおそれがある融点ゆうてんが33.8℃とたか飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんであるエルカさん(またはエルシンさんざんもとが40%程度ていどふくまれているためである。なかでもエルカさんぜん脂肪酸しぼうさんざんもとの40%以上いじょうたっし、あぶら多用たようするアメリカがた食生活しょくせいかつではリスクがたかかった。

エルカさんふく種類しゅるい組成そせいは、エルカさん25%–48%、オレインさん13%–51%、リノールさん20%–27%、リノレンさん8%–16%、ほかパルミチンさんステアリンさんかず%である[3]

そこで、主要しゅよう生産せいさんこくであるカナダで品種ひんしゅ改良かいりょうされた結果けっか、エルカさんふくまずグルコシノレート含量も削減さくげんされた(この特性とくせいは “double low” とばれる)「キャノーラ品種ひんしゅ」が開発かいはつされた。キャノーラの飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんは、オレインさんやく60%ともっとおおく、以下いかリノールさん21%–32%、αあるふぁ-リノレンさん9%–15%、パルミチンさんやく5%、ステアリンさんやく2%であり、エルカさんは1%未満みまんである[3]。キャノーラは、ωおめが-3脂肪酸しぼうさんωおめが-6脂肪酸しぼうさん比率ひりつは 1:2で一般いっぱんてき食用しょくようとしてほかれいない理想りそうてき比率ひりつたもち(ωおめが-3脂肪酸しぼうさんおよωおめが-6脂肪酸しぼうさん参照さんしょうのこと)、のこりの大半たいはん一価いっか飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんのオレインさんであり、飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんいちわり未満みまんであるので心臓しんぞうびょう予防よぼう観点かんてんからもすぐれた脂肪酸しぼうさん組成そせいゆうしている[5][6][7][8][9]

菜種油なたねあぶらには、さらに伝統でんとうてき交配こうはい育種いくしゅほうによる品質ひんしつ改良かいりょうにより、オレインさん比率ひりつが70%をえるこうオレインさん品種ひんしゅ開発かいはつされている。

グルコシノレート[編集へんしゅう]

また、搾油さくゆ菜種なたねミール(あぶらかす)には、ヒトもふく動物どうぶつ甲状腺こうじょうせん障害しょうがい関与かんよする含硫化合かごうぶつ一種いっしゅであるイソチオシアネート前駆ぜんくたいのグルコシノレートがおおふくまれている。しかし、グルコシノレートは水溶すいようせいであるため、搾油さくゆされた菜種油なたねあぶらちゅうにはグルコシノレートはふくまれない[よう検証けんしょう]

グルコシノレートるいには、やく120の含硫化合かごうぶつがあることがられており、とくにナタネ種子しゅしには、ヒトをふく動物どうぶつたいして、甲状腺こうじょうせんしゅ誘導ゆうどうするゴイトリン[10]前駆ぜんくたいプロゴイトリン[11]おおふくまれている。一方いっぽうブロッコリーカリフラワーキャベツなどのアブラナ葉菜類ようさいるい食用しょくよう部分ぶぶんおもであり、プロゴイトリンりょうきわめてすくないため、ヒトはしょくしても問題もんだいはない。ゴイトリンは、当然とうぜんヒトたいしても有害ゆうがいである。しかし、葉菜類ようさいるい安全あんぜんなのは、ゴイトリンがヒトにたいして無害むがいということでなく、種子しゅしでなくちゅうのプロゴイトリンりょうきわめてすくないためである。なお、ていグルコシノレートはカナダ・キャノーラ会議かいぎでは、30μみゅーmol/g以下いかさだめられている[12]

最近さいきんのキャノーラ品種ひんしゅ[編集へんしゅう]

欧米おうべいでは、遺伝子いでんしぐみ技術ぎじゅつ利用りようした品種ひんしゅ主力しゅりょくであり、カナダ中心ちゅうしん生産せいさんされ、遺伝子いでんしぐみ作物さくもつGMO)として、大量たいりょう日本にっぽん輸出ゆしゅつされている。なお、菜種油なたねあぶらには遺伝子いでんし食品しょくひん表示ひょうじ義務ぎむ[13]

  • ラウンドアップ・レディー(Roundup Ready, RR)品種ひんしゅ - グリホサートたいせい米国べいこくモンサントしゃ(2016ねんバイエル買収ばいしゅう)が開発かいはつした、除草じょそうざい商品しょうひんめいラウンドアップたいせい農作物のうさくもつ総称そうしょう
  • リバティーリンク(Liberty Link, LL)品種ひんしゅ - グルホシネートたいせい。ドイツ・バイエルクロップサイエンスしゃ(2018ねん当該とうがい製品せいひんとう事業じぎょうBASF売却ばいきゃく)が開発かいはつした除草じょそうざい商品しょうひんめいバスタたいせい農作物のうさくもつ総称そうしょう

生産せいさん流通りゅうつう[編集へんしゅう]

菜種油なたねあぶら生産せいさんだか(2014ねん[14]
くに 生産せいさんりょう (t)
中華人民共和国の旗 中国ちゅうごく 5,702,700
ドイツの旗 ドイツ 3,540,557
カナダの旗 カナダ 3,116,100
インドの旗 インド 2,473,000
フランスの旗 フランス 1,914,600
日本の旗 日本にっぽん 1,073,881
世界の旗 世界せかい 25,944,831

2014ねん時点じてんでの菜種油なたねあぶら世界せかい生産せいさんだかやく2600まんトンである。主要しゅよう生産せいさんこく中国ちゅうごくドイツカナダであり、これら3こく世界せかい生産せいさんの47%をめる[14]2016ねん菜種油なたねあぶら最大さいだい輸出ゆしゅつこくはカナダであり、同国どうこく生産せいさんだかやく94%にたる290まんトンを輸出ゆしゅつしている[14]

2019ねん3月6にち中国ちゅうごくはカナダさんキャノーラの輸入ゆにゅうを「税関ぜいかん危険きけん有害ゆうがい生物せいぶつなん検出けんしゅつしたため」中止ちゅうししたことを発表はっぴょう。この輸入ゆにゅう措置そちは、中国ちゅうごくファーウェイCEOアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく要請ようせいけてカナダで逮捕たいほされた事件じけん報復ほうふくとしてうたがわれており[15]、カナダの外相がいしょう記者きしゃ会見かいけん中国ちゅうごく政府せいふ非難ひなんした。中国ちゅうごくけのカナダさんキャノーラは、2018ねん実績じっせき輸出ゆしゅつがくとして50おくカナダドル相当そうとうりょうとしてほぼやく500まんトンがちゅうくこととなった[16]

世界せかい菜種油なたねあぶら取引とりひき標準ひょうじゅん価格かかくはICEフューチャーズ・カナダ(きゅうウィニペグ商品しょうひん取引とりひきしょ)のキャノーラ先物さきもの取引とりひき価格かかくである[17]

用途ようと[編集へんしゅう]

菜種油なたねあぶらやその植物しょくぶつ油脂ゆしからつくられるサラダ油さらだゆは、ドレッシングなどの食品しょくひん原材料げんざいりょう使つかわれる。しろしぼあぶら油揚あぶらああぶらとしてよく使つかわれるほかてんぷらいたぶつようあぶらとして使つかわれる。

鹿児島かごしまけん一部いちぶでは原料げんりょう菜種なたねあぶせんじして搾油さくゆし、植物しょくぶつはい処理しょりしたものを「赤湯あかゆ(あかゆ)」としょうし、食用しょくようもちいている。精製せいせいしていないため、独特どくとく青臭あおくささとあぶせんじしゅうつよいものである。

かつては精製せいせい行灯あんどんなどの光源こうげん燃料ねんりょうとしても使用しようされ、江戸えど時代じだいにおいては水油みずあぶらえば植物しょくぶつとく照明しょうめいよう燃料ねんりょう灯油とうゆ)としてはほぼ菜種油なたねあぶらことをさす。かず蝋燭ろうそくよりはるかに安価あんかけむりにおいもすくなくこのまれたが灯油とうゆとしては油脂ゆし鯨油げいゆ魚油ぎょゆなど)にくら高価こうか部類ぶるいであった。

日本にっぽんでも食品しょくひん加工かこう廃油はいゆ揮発きはつせいたかエステル燃料ねんりょうとするこころみがあり、使つかふるした菜種油なたねあぶらをバスの燃料ねんりょうにするなどして利用りようされている。これはバイオディーゼルばれ、リサイクルとしてすすめられてきた。一方いっぽう、ヨーロッパ諸国しょこくでは、小麦こむぎ転作てんさく作物さくもつとしてバイオ燃料ねんりょうよう菜種なたね栽培さいばいされ、安定あんていした品質ひんしつのバージンもちいられている。近年きんねんのバイオ燃料ねんりょうブームのため、トウモロコシ同様どうよう食用しょくよう相場そうば影響えいきょうこうむっている。

名称めいしょう[編集へんしゅう]

大手おおて製油せいゆ会社かいしゃは、エルシンさんふくまない、グルコシノレート含量のひくいキャノーラ品種ひんしゅ由来ゆらい菜種油なたねあぶら意味いみとして「キャノーラ」「カノーラ」という名称めいしょうもちいている。「キャノーラ」は、カナダカノーラ会議かいぎ採用さいようした「カナダのオイル」を意味いみするブランドであったが、現在げんざい北米ほくべいはもちろんヨーロッパでもキャノーラ品種ひんしゅから搾油さくゆされたという意味いみでキャノーラオイルが一般いっぱんてきもちいられている。一方いっぽう国内こくない地場じば小規模しょうきぼ製油せいゆ会社かいしゃにおいてはキャノーラ品種ひんしゅではない国産こくさんナタネを原料げんりょうとしているため、菜種油なたねあぶら呼称こしょう一般いっぱんてきである。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ http://www.oil.or.jp/kiso/seisan/seisan02_01.html 植物しょくぶつ生産せいさんから消費しょうひまで|社団しゃだん法人ほうじん 日本にっぽん植物しょくぶつ協会きょうかい
  2. ^ https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/oil/index.html 農林水産省のうりんすいさんしょうあぶらかて生産せいさん実績じっせき調査ちょうさ
  3. ^ a b c 『15710の化学かがく商品しょうひん化学かがく工業こうぎょう日報にっぽうしゃ、2010ねん、1381ぺーじ
  4. ^ https://data.nal.usda.gov/dataset/usda-national-nutrient-database-standard-reference-legacy-release
  5. ^ Canola Oil: Good for Every Body” (PDF). en:American Dietetic Association (2006ねん). 2008ねん11月27にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2009ねん11月27にち閲覧えつらん
  6. ^ Know Your Fats”. en:American Heart Association (2008ねん). 2008ねん9がつ3にち閲覧えつらん
  7. ^ Protect Your Heart: Choose Fats Wisely” (PDF). American Diabetes Association (2004ねん). 2008ねん9がつ3にち閲覧えつらん
  8. ^ AAFP 2006-Changing the Landscape of Chronic Disease Care”. en:American Association of Family Physicians 2006 Scientific Assembly (2006ねん). 2008ねん9がつ3にち閲覧えつらん
  9. ^ Qualified Health Claims, Letter of Enforcement Discretion U.S. Food and Drug Administration” (2006ねん). 2008ねん6がつ17にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2008ねん9がつ3にち閲覧えつらん
  10. ^ "ゴイトリン". 栄養えいよう生化学せいかがく辞典じてん. コトバンクより。
  11. ^ "プロゴイトリン". 栄養えいよう生化学せいかがく辞典じてん. コトバンクより。
  12. ^ http://www.canolacouncil.org/canola_growers_manual.aspx
  13. ^ ナタネのはなし - 奈良産業大学ならさんぎょうだいがくビジネス学部がくぶ
  14. ^ a b c Rapeseed oil production, 2014; Crops/Regions/World list/Production Quantity; unofficial data (pick lists)”. UN Food and Agriculture Organization, Corporate Statistical Database (FAOSTAT) (2017ねん). 2018ねん8がつ13にち閲覧えつらん
  15. ^ カナダの菜種なたね中国ちゅうごく輸出ゆしゅつはなため事件じけん関係かんけい”. 朝日新聞あさひしんぶんデジタル (2019ねん3がつ6にち). 2019ねん3がつ10日とおか閲覧えつらん
  16. ^ カナダ外相がいしょう、キャノーラ輸出ゆしゅつ許可きょかしで中国ちゅうごく政府せいふ批判ひはん”. AFP (2019ねん3がつ6にち). 2019ねん3がつ10日とおか閲覧えつらん
  17. ^ ICE Futures: Canola”. Intercontinental Exchange, Inc. (2017ねん). 2017ねん9がつ4にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]